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吉田亜希

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エアリアルパフォーマーの吉田亜希は、20代は一流アーティストの現場で空中を舞った。その後、海外に挑戦するも本番前に突然の契約破棄、それを機に、今春から胸を高鳴らせて地方移住する。そんなドラマチックな出来事の一つ一つが、彼女を魅力的なパフォーマーに進化させてきたのだろう。ピュアなエアリアル愛と感性を持つ吉田亜希の新たな門出にエールを込めて、今回のインタビューをお届けしよう。


 

・吉田亜希

幼少期から体操競技を始め、大学卒業後アクロバット&フライングのショーに出演。所属中、ダンスに興味を持ちバレエ、コンテンポラリーダンス、ストリートダンス、演劇等の 身体表現を学び、同時に空中パフォーマンスと出会う。tissue (aerial silk),ring(aerial hoop),aerial net,code,trapeze等の様々な空中パフォー マンスにふれアートサーカスの世界に魅了され、米英国にエアリアル修行におとずれる。Ayumi Hamasaki、Ryu Siwon、郷ひろみなどアーティストライブエアリアル振付・出演、ショーレストランエアリアル振付も手掛け、現在エアリアルティシューを中心にサーカスの枠にとらわれない独自のスタイルで空中の自由な表現を模索。近年ではオリジナルのパフォーマンス器具にも関心を寄せ 空中でのトリックだけでなく空中での表現や空間演出に定評がある。

 


 

■決められた内容からはみ出したくなりました。

 

TDM : エアリアルを始めたきっかけは?

吉田:もともと中学入学時から器械体操をやっていたんですが、ダンスにも興味がありました。あるとき、シルク・ドゥ・ソレイユの「キダム」を見に行って、ティシューの演技を観た時に衝撃を受けました。人が浮いているように見えて、リアルじゃなくて、映画とかの回想シーンを見ているような感覚になり、自分もやってみたいと思ったのがきっかけです。

 

でも、何から始めていいのか分からなかったのですが、「体操もダンスもエアリアルもやってる人たちがいる」と聞き、女性アクロバットダンスカンパニーのG-ROCKETを見学して見たのがエアリアルとの出会いです。

 

 

卒業後は、アクロバットを活かした何かをやっていきたいと漠然と思っていました。その後3年間、東京ディズニーシーでワイヤーに吊られたり、ティシューを使うパフォーマーになりました。多くの人に楽しんで頂けて、とても楽しかったんですが、だんだん決められた内容だけをやることからはみ出したくなってしまって、辞めることにしました。

 

ちょうど辞めた年に、愛知での万博「愛・地球博」があり、若井田さんHiROKOさんと、万博のオープニングショーにエアリアルとハーネスで参加させて頂けることになりました。それをきっかけに、エアリアルをもっと学びたいと思い、若井田さんのレッスンに通い始めました。

 

若井田久美子:日本国内でのエアリアル・パフォーマンスの第一人者

 

若井田さんが開いた養成所の1期生として、演技やエアリアルのほかに、バレエとコンテンポラリー、HIP HOPも学びました。現在、その養成プログラムは開講されている時とない時があるんですが、当時はいろんなことを学ばせてもらえて、本当にいい環境でした。養成所に通いながら、横内謙介さん演出の舞台やアーティストのコンサートにも出演させてもらう中、ご縁があって、浜崎あゆみさんのコンサートに参加することになりました。

 

浜崎あゆみさんのパフォーマーとして過ごした7年間

 

 

TDM:どんなきっかけだったんですか?

 

吉田

オーディションを受けたんですが、合否の連絡ではなく、「北海道に来て欲しい」という連絡があり、その時期浜崎さんがツアーをしていた北海道に行って、エアリアルの演目を作って本人に見せました。次は神戸に呼ばれて、行ったら「じゃ、今日からデビューで。」と言われて、「え!?今日から!?」という感じで、2009年のNEXT LEVELというツアーからデビューしました。

 

TDM : どんな経験でしたか?

 

吉田:2016年まで約7年間参加させて頂き、本当にいい経験になりました。演出の方に歌詞の内容や世界観の指示はされるのですが、パフォーマンスとしては過去に例のないものが多いので、他のアクロバットの方とペアで空中での技を作ったり、ご本人と一緒にやりながら作ったり、いろんな可能性を試しながらやらせてもらえたので、すごく勉強になったし、楽しかったです。整った設備の中でエアリアルができる環境を提供してもらえたことは、本当にラッキーだったなと思います。人や環境には本当に恵まれているなと感じますね。

 

TDM:なぜ辞めることになったのですか?

 

吉田:自分の年齢的に動けるのは長くないかもしれないと思った時に、一度も海外でチャレンジしていないと思って、一回くらい日本以外の場所で自分の全てを出し切ってみたいと思いました。有難いことに他にエアリアル出来る方が入ってきたので、円満に辞めさせていただきました。

 

海外公演と契約するも、本番を前に突然の契約解消

 

 

TDM:その後の活動は?

 

吉田

ちょうど辞めた後に、私のパフォーマー人生を変えてくれたKaeruさんから、エアリアルのスタジオstudio missionを立ち上げるというお話を受けて、レッスンを受け持つことになりました。また、演劇やダンス、美術、テクノロジーとアクロバットをミックスしたような瀬戸内サーカスファクトリーさんと一緒に活動し始めました。カンパニーでも会社でもなくて、代表の田中未知子さんがおひとりで立ち上げられた、香川を拠点にしている一般社団法人で、どんどん仲間を増やしながら、地方の美術館や彫刻が置かれた公園などでパフォーマンスしていて、とても面白い団体です。

そして、念願の海外への挑戦もありました。オーディションに受かって、マカオにあるホテルのレジデンスショーと2年間の契約をしました。私としては2年は長いかな?と思っていて、代わりを立てれば辞められるという条件だったので、1年で辞めて若いパフォーマーにチャンスをつなげよう!と考えていました。海外の空中パフォーマンスの舞台設備を間近に見ることができることも勉強になると思っていましたが、リハを3か月以上重ねて、プレス用のショーも完成し、あとは本番を迎えるだけ!という状態の時に、突然、演者とスタッフがホテルの会議室に呼ばれて、「今回の契約はなかったことにしてほしい。このショーはやりません。」と言われたんです…!その結果、残念ながら3か月半で帰国することになってしまいました(苦笑)。

 

TDM:え!突然ですか?

吉田

はい(苦笑)。日本人は私一人で、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、マレーシア、シンガポールなど世界各国、年齢もバラバラで、いろんな人がいました。どうやら、クオリティとして、ビジネス的に成功するものではないという判断になってしまったそうです…。幸い、お金関係のことはすべてケアしてもらいましたが、私たちとしては、あのショーをお客様に見てほしかったなと残念な気持ちになりましたね。正直、今回のことでエアリアルの辞め時なのかなとも一瞬過ったのですが、好きすぎて絶対辞められない!と思いました。同時にそういう大好きなものに出会えていることがとても幸せだなと感じました。

 

そして、身軽に。香川へ移住を決意

 

TDM:帰国後は?

 

吉田

マカオに1年行くと思って、家も解約していたし、仕事も調整していたので、「自分は今すごく身軽だ!今までチャレンジできなかったことが出来そうだ!!」だと思いました。そこで、瀬戸内サーカスファクトリーの方とお話して、香川でしかできない活動と、人材育成を目指しているという今後のビジョンにワクワクしまして、この春から香川に移住することを決めました。

 

昔は東京じゃないといろんな活動が出来ないんじゃないかなと思ってましたが、今は、地方でもできることがあると思っています。今後は香川を拠点に、自分のペースで、東京はもちろん国内外でパフォーマンスしていきたいです。

 

TDM:東京でやる意味ももちろんあるとは思いますが、今は地方を拠点に芸術やパフォーマンスを発信している集団は珍しくないので、きっと面白い発信が可能な時代なんだと思います。

では、最後に、吉田さんにとってのパフォーマンスの魅力、日々大切にしている事は何ですか?

 

吉田:パフォーマンスをしていて見ている人とステージとの間で、ものすごいエネルギーを感じる事ができた瞬間は何とも言えない感覚になり鳥肌が立ちます。特にエアリアルは高所でのパフォーマンスなので非日常を感じる事が出来たり見ている人へのインパクトは大きく、ダイナミックなものから美しく繊細なもの、アクロバティックなものや踊っているかのようなもの、日常が空中に浮かんだようなものまで表現の幅は広くあるので、その時その空間にあったパフォーマンスをクリエイションできるのは魅力の1つです。

 

大切にしている事は、パフォーマンスはもちろん環境や身体作りも含めて、出来る出来ないを判断するのも大事だけど、出来るようにするにはどんな方法があるかを考えるようにしています。

 

TDM:新天地でのご活躍も応援しています!本日はありがとうございました!

interview by AKIKO

edit & photo by imu

’19/04/01 UPDATE

 

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tokyodancemagazine

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