

Broadway Dance CenterことBDCにてチケット完売のパフォーマンス「Girlie Bomb」が好評を博している。演出・振付を手掛けるKAZUMI-BOYがTDM初登場。 “ダンサーになるつもりはなかった”彼が数々のキャリアを残していくことになった経緯とは。また、教えに対する持論は多くのインストラクターに届いてほしい。
“鬼”と呼ばれる彼のダンスと生徒への愛にあふれたインタビュー。
●KAZUMI-BOY
第1回公演から数々のK-Broadway/BDC公演に参加。 1995年のニューヨーク、ロサンゼルス公演では演出、振付、出演の3役をこなし、ニューヨークタイムズ紙からも高い評価を受ける。郷ひろみ、内田有紀、少年隊、SMAP、西田ひかるなどの振付で活躍。その他にも、赤坂プリンスホテルディナーショー「Girly Bomb」の演出を手掛ける。涼風真世コンサート、和央ようかコンサート、春野寿美礼コンサート、瀬奈じゅんコンサート等の振付を担当。また安寿ミラディナーショーにゲスト出演。2001年より宝塚歌劇団の振付を手掛ける。以来、花、月、雪、星、宙組の全組に多数振付を提供。
2011年 帝劇100周年記念公演『ニューヨークに行きたい!!』振付
2013年6月 坂東玉三郎・鼓童 主演 愛音羽麗 特別出演 『アマテラス』振付
2013年10月 帝劇『エニシング・ゴーズ』振付
2013年 坂東玉三郎演出『鼓童ワン・アース・ツアー 神秘』振付 等
■「ダンスは芝居をやるための必要なアイテムだと思っていました。 」
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まず、ダンスをはじめたきっかけから教えてください。 |
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ダンサーとしてはどんな仕事をされていたんですか? |
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エンターテイメントカンパニーという、セレブな人たちのパーティで踊る仕事だったんですけど、実はそこのオーナーは有色人種が嫌いで、特に日本人は嫌いだったんですけど、ダンスで認めてもらえたのか・・・、なんとか働けることになりました。 |
編集部注:壮絶なニューヨーク生活についてはKAZUMI-BOYオフィシャルブログで!
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「なんのために日本に帰るんだろう?」となっていた時、当時のBDCの社長がニューヨークに来て、「日本で公演やるから、とりあえず1度帰ってきたら?」と言われて、帰国しました。それで、シアターアプルでのBDCの公演に出ました。でも、やっぱりニューヨークに帰りたかった。だから、すぐにバイトをはじめました。すぐにお金になるのは踊りだったから、知り合いの代行したり、個人レッスンしたりしたら、すぐお金が貯まったんです。ですが、あれよあれよと仕事が来るようになってしまったんです。BDCの教えをはじめたり、郷ひろみさんの振付をやることになってからは、芸能界からどんどん振付の仕事が来るようになって、ニューヨークに帰るきっかけがなくなってしまったんです。それが、24歳くらいの時ですね。 |
■宝塚との出会い
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早い段階で振付師として活躍されていたんですね。 |
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そうですね、教えも振付もダンサーも何もかもが同時進行でした。演出はもうちょっと後かな。初演出がBDCのニューヨーク公演でした。それまで発表会の演出もしたことなかったのに・・・それが29歳くらいの時。あの時はプレッシャーで血反吐が出るかと思いました(笑)。 |
■ひどい振りがもたらした即興力。
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絶えず創り続けていらっしゃるんですね。 |
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振付は考えていかないんですか!?即興ですか? |
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大体そうですね。教えているクラスのコンビネーションもその場で創ります。もちろん、昔はそんなことできなかったんですけどね。昔は3日前くらいから一生懸命考えていました。 |
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どうしてそのスタイルになったんですか? |
KAZUMI-BOY | :![]() |
ある日、クラスに行ったら、コンビネーション用のCDを忘れちゃったんです。でも、代わりに何かやらなきゃいけない。だから持ってるCDでその場ですぐにやらなきゃいけない状況になったわけです。その時に、この世のものとは思えないくらいひどい振りができあがりました(笑)。だって、世の中にはインプロビゼーションでどんどんやる人がいますよね。「これが自分のレベルなのか・・・」と思い知りました。そして、「ひどくてもいい!生徒も辞めたきゃ辞めろ!」くらいの気持ちになり、それ以来、家のCDラックの前で目をつぶってピッと選んだCDから曲を選び、その日はこれで振りをやるというルールを自分に課すことからはじまりました。うちの中にあるCDだから、自分で入手したとはいえ、仕事上、クラシックからスパニッシュ、いろいろあるので、その日はそんな気分じゃなくてもジャンルもアーティストも問わずに選んで「今日はそれを使う!」という風に決めてやりはじめたら、即興力みたいなものが上がっていきました。 |
■経験を重ねるごとにこだわりは持ってない方がいいと思います。
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振付や演出をされる上で意識していること、その軸のようなものはありますか? |
KAZUMI-BOY | :![]() |
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※鼓童;
佐渡ヶ島を拠点とする和太鼓芸能集団。
人間国宝の坂東玉三郎氏が芸術監督を務め、KAZUMI-BOY氏は昨年より振付家として携わっている。
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・・・本当は役者になりたかったんだけどなー。いつの間にかこんなになっちゃった(笑)。日舞でもないし、洋舞でもないし、バレエじゃないしジャズじゃないし、神楽っぽくもあり、伝統芸能のテイストも入れようと思ったし、なんだこれは!?というものを目指そうとその時は思いました。ジャンルにとらわれてはいけないんです。事実、そうでないとあの世界観には合わないから。その場で、その現場で色を変えていく、欲されているスタイルに近づける作業ですね。だから、自分なりの軸やこだわりを持っていると動けないんです。ある仕事では、振付を考えていったのに、衣装が急に変わって役に立たなくなったこともありましたし、撮影現場に応じて振付を変えなきゃいけないこともあって、そこでも即興性が求められました。そうなると、自分に確固たるイメージを最初に創り込んでしまうと、頭がにっちもさっちもいかなくなる。だから、ものを創る時にニュートラルでいられる部分はすごく大事です。もちろん、ある程度の「こうでなきゃダメ!」というものもベースとして持って創るけれども、それはあくまで漠然としていなくてはいけなくて、“方向性がそれなければ何でもあり”という考え方でいないと、いろんな人の意見についていけなくなるし、アイデアも広がらない。“こだわる”ってすごく聞こえがいいけど、経験を重ねるごとにこだわりは持ってない方がいいと思います。それでも、人間誰しも、こだわっちゃうことはあります。だからこそ、現場では「こだわらない!」って決めているかも。それがもしかしたら軸かもしれない。 |
■無理難題が無理難題でなくなる。
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・・・本当は役者になりたかったんだけどなー。いつの間にかこんなになっちゃった(笑)。 |
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いやいや(笑)。役者からダンサーになろうと思った瞬間はあったんですか? |
KAZUMI-BOY | :![]() |
うーん。ダンサーの定義を高揚感を持って踊ることとするならば、その作品には、ニューヨークの師匠の作品で出会ってしまったので、それを超える作品は今に至るまでないですね。踊りたいって思うものはあるんだけど、あの作品を超えるものというのは俺の中ではありえない。自作自演の作業もしてきてるけど、それですら追いついてないなと思います。だから、もしあの時ニューヨークに行かずに、日本でダンスのトレーニングを10年続けていたとしても、この感覚には追いつかなかったでしょうね。 |
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20代前半で得た感動や努力はその後の人生の価値基準にかなり影響しますからね。 |
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そうですね。「あの時にあれだけ頑張れたんだから、やれないわけがないだろう。」と次々と自分を奮い立たせる基準になっていきましたね。ニューヨーク時代を経て、BDCのニューヨーク公演の演出があって、あれも、ものすごいプレッシャーの中で、心身共に疲れ果てましたけれど、それもクリアすると、また次の難題がどんどん大きくなっていく。無理難題が無理難題でなくなっていきます。 |
■たぶんね、足がもげても行くと思います。
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レッスンをしている時に大事にしていることはありますか? |
KAZUMI-BOY | :![]() |
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結構怖いんですか?ブログのタイトルもすごいですもんね(笑)。 |
KAZUMI-BOY | :![]() |
最近になって、後輩たちから、「昔KAZUMI先生にこうやって怒られた!」って話を言われるんですけど・・・どうやら、私は鬼みたいです(笑)。 |
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でも、そこに愛があるんでしょうね。 |
KAZUMI-BOY | :![]() |
何を持ってそう捉えてもらうかは人それぞれだと思いますけどね。あとは、極力、代講は出さないようにしていますね。本番初日で現場に行かなきゃいけない時はしょうがないけど、教えをするということは、自分のトレーニングをさせてもらう場だし、実際にお金をいただいている人を目の前にして、どうしたら伝わるかを考え続けることは、すごく自分の中でいろんなものが活性化されるんだと思います。たとえ、顔ぶれが同じでも、昨日と同じ踊りをするわけじゃないし、同じものを踊りたくても踊れない。絶対に同じクラスはありえないし、その日、その瞬間、その空間でしかありえないもので、本当に一期一会。そんな新鮮味が絶対に損なわれない場を、できるだけ欠席したくないと思って休まないようにしています。あと、そこに受けに来てくれる人、待っていてくれる人がいるというのは、すごく幸せなこと。自分の踊り、自分の教えのためにお金を出して、毎回毎週来てくれて、それが1人や2人じゃなくて、これまでに車買えたり家が買えたりする金額をずっと俺のレッスンにつぎ込んでくれている生徒さんがいっぱいいるわけです。そういう人に対して、疲れたとかちょっと用事ができたとかの理由では絶対に休めない。しかも2度とこの時間はないんだから。たぶんね、足がもげても行くと思います。ま、振付はできないかもしれないけど(笑)。去年、11年ぶりに長いお休みをいただきました(笑)。こういうスタンスで今までやって来ているから、休みが欲しいとか自分としても言えないんです。でも、続けてきたからこそいろんな出会いも得られたし、そういうものを逃すのが怖いと思っていた時期もあります。だから、休めなかった。もちろん、こんな生活をしてきてるから、体をぶっ壊した時は休まなくちゃいけなくて、それはそれで反省をしましたね。42歳の時、過労で倒れて、1ヶ月半くらい入院したんですけど、あの時は毎日のように泣いていました。仕事もキャンセルしなきゃいけないし、いろんな人に迷惑をかけるし、こんなだらしないことしちゃってどうしようと。あの時、初めて自分の不甲斐ないところで泣きましたね。 |
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ダンスをはじめてから、忙しい時期が続いているんですね。 |
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でも、楽しいお仕事ですからね。楽じゃないけど。でも、頑張れるうちは頑張りたいです。 |
■愛ある鬼。
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今回の「Girlie Bomb」は1998年初演したものの再演ということで、当時と今のダンサーたちに共通しているところはありますか? |
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はい、ちょっとピッと穴を開けたら、ブシュー!ってエネルギーが出て来そうな感じがします。そういうのって、表に出る機会がなくて、中に溜め込んだままくすぶっちゃうと、充満していたものが破裂してくれるならいいんだけど、理由なく萎えたり、消滅していくことってありますよね。それはすごくもったいないし、発色できる場所を与えてあげれば、いくらでも発色できる予感がする人たちが、最近は集まって来たかなと思ったので再演の話をお受けすることになりました。初演の時は、今のBDCのベテランダンサーたちが若手として出演しています。当時の公演をやるきっかけになったのも、いつもセンターではなく、脇でしか踊っていないけど、なにか放つものをもってる子たちがいて、このままだといつまででもセンターになれないだろうなと思って、そういうダンサーを集めてやってみたいと思ったからでした。あの時も今回もプロトタイプという実験的な公演になっていて、40~50分とそんなに長くないものです。当時のダンサーにはすごく刺激になってくれたみたいで、やる気につながったし、おかげでその翌年もやれて、観てくださった方のつながりで、赤坂プリンスホテルのディナーショーにも呼ばれました。
あの時は、彼女たちのパワーが前面に出ていたんですが、今回はそれだけじゃ嫌だなと思っています。“ガーリー”という言葉は、女の子っぽいという使われ方もするけれども、実はあまり上品な言葉ではなく、挑発的な意味合いもあるので、今回はエロかっこ良く、女の子にしか出せないエロを色濃くしたいと思っています。それが初演と違うところですね。 |
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かなりリハーサルがハードという噂を聞いております。 |
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あれ?そうですか?(笑)。初演に比べたらだいぶ優しいと思うけど・・・(笑)。当時なんて、ダンサーが持ってるバッグが気に入らなくて「それセンスない!」って言ったり、「もっと化粧考えろ!スッピンで来るな!」とか言ってましたね(笑)。「Girlie Bomb」のリハーサルには3つの掟があります。
「ヒールを脱ぐな」、「スッピンで来たらクビ」、「普段からお洒落に気をつかえ」。今のところ誰も破っていませんね(笑)。でも、これって大事なことなんです。昔、TRFのCHIHARUが、自分のレッスン前に化粧をはじめてたので、「どうせ汗で落ちるんだからしなくていいじゃん?」って言ったら「ダメ!気合が入らない。」って言ったんです。あー、そういうものなんだなと。女性にとって化粧は、自分を良く見せるもの。たとえ独りよがりだろうが、家を出る時に「よし、いくぞ!」と、ちょっとでも見てくれを良くするためにするわけですよね。 中には、毎日のことだから慣れっこになって、進歩がなかったり、殴られたかのようなアイシャドウの付け方で平気で街を歩いたりする人もいるけど、そういうのじゃ困るよっていうことです(笑)。 人からお金をもらって踊るんだから、人前に立つこと、自分を良く見せる化粧をするとはどういうことか、その意味合いを考えて欲しいということです。 |
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ごもっとも!!では、最後に今回の「Girlie Bomb」の見どころをお願いします。 |
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すごくためになるお話がたくさん聞けました。残念ながらチケットは完売と言うことですが、来年また会場を変えて上演されると聞いています。これからのKAZUMI-BOY先生、“Girlie”たちの活躍を応援してます!ありがとうございました! |
interview & photo by AKIKO
photo & edit by imu
’14/12/28 UPDATE
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