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Zabu

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1970年代にニューヨークで流行していたペアダンス「Hustle(ハッスル)」をベースに、Jeff Selby(ジェフ・セルビー)氏が考案した「New Style Hustle(ニュースタイルハッスル、以下NSH)」。このダンススタイルをニューヨークで直に学び、日本に持ち帰って広めているZabu。ストリートダンサーとしても活動してきた彼が、どのようにNSHと出会い、まだ認知度の高くない時期から日本各地にコミュニティを広げてきたのか。また、自身が中心となって立ち上げた「Hustle Break Tokyo」の活動や、パートナーのEriとの出会い、そしてダンス観・コミュニティづくりへの想いについて聞いた。


 

・Zabu

ダンサー、コミュニティープロデューサー。ストリートダンスとパートナーダンスを横断し、ジャンルにとらわれない表現とコミュニティづくりを追求。サンフランシスコ生まれ、東京育ち。2003年よりダンスを始め、2011年に大手企業を退職後渡米。ニューヨークを拠点に、パフォーマンス活動とイベントプロデュースを展開。国外では「Hustle n’ Tussle(NY)」「Taiwan Hustle Congress(台湾)」「Hustle Seoul Night(韓国)」など数々の大会で優勝。「Step Ya Game Up(NY)」「New Style Hustle Worldwide Contest(NY)」などでも優勝を収め、ストリートダンス/ペアダンス両者の国際的な舞台で結果を残している。また、「SDK Europe(チェコ)」「Juste Debout(カナダ)」「R-16(アメリカ)」といった世界大会にも出場、入賞経験を持つ。New York発祥のペアダンス「NewStyle Hustle」を学び、日本での普及に取り組みながら、47都道府県を巡る無料ワークショップツアー「手と手 47project」を完遂。2015年より主催する「Hustle Break Tokyo」は、国内外から多様なバックグラウンドを持つ人々が集まる文化交流拠点へと成長している。2023年には、自身のダンスチームFunkyshitによる自主公演”TIME”を制作総指揮として成功に導き、チケットシステム構築、ファンコミュニティ形成、クラウドファンディングを活用したプロジェクト推進を一貫して手がけた。また、日本初のdanceNFT発行にも携わり、テクノロジー領域にも展開を広げている。メディア出演歴も豊富で、「ミュージックステーション」「NHK Eダンスアカデミー」「SUMMER SONIC」などに出演。大黒摩季、KREVA、木村カエラら著名アーティストのバックダンサーとしても活動。「踊りを伝えるのではない。文化を根づかせる」「楽しさと真剣さを両立させ、未来を耕す」ストリートとソーシャル、ローカルとグローバルを往還し、独自の視点と実践でカルチャーを育て続ける。

Instagram:@zabu_teamblackstarz

WEB site: https://zabu-ent.com/

 

 

■N.Yで出会った衝撃のペアダンス、NSH

 

TDM:ダンスを始めたきっかけは何ですか?

Zabu:兄貴が先にヒップホップやロックダンス、ポップなどをやっていて、それを見て自分も興味を持ったのがきっかけです。中学まではバスケットボールをやっていて、すごく楽しかったし今でも好きなんですが、体力的にかなり限界まで頑張ったので、高校からはまた違ったアプローチで楽しく体を動かしたいと思い、ダンス部のある高校を選びました。

 

 

TDM:高校で実際にダンスをやってみてどうでしたか?

Zabu:本当に楽しかったですね。バスケと違って吐くほど走らされるわけでもないし、音楽に乗って楽しく体を動かせるので、夢中になって毎日踊っていました。そのまま大学でもダンスを続けて、ありがたいことに「BUZZ STYLE」や「BIG BANG」といった学生大会で優勝することができました。このとき、「ダンサーになる」という道も選択肢の一つだったのですが、一度は社会人経験もしておきたいと思い、就職しました。

TDM:会社員からダンサーに転向されたのですね。

Zabu:はい。社会人をやりながらでは思うようにダンスができない状況がすごく苦しくて、悩んだ末に、やはり自分はダンスの世界で生きていこうと決めました。

TDM:そこからN.Yに行かれたんですね。

Zabu:そうです。会社を辞めたあと、父がN.Yに行くことになり、「お前も来るか?」と声をかけてもらって、一緒に行かせてもらいました。そのN.Yで、フリースタイルのセッションに参加していたとき、Tシャツとスウェット姿のおじさんと、タンクトップにホットパンツ姿のお姉さんが、ラフな格好でペアダンスを踊っていて。それがめちゃくちゃカッコよくて衝撃を受けたんです。そのペアが、セントラルパークでレッスンをしていると聞き、すぐ参加しました。それがNSHとの出会いです。

 


N.Yにて

 

TDM:セントラルパークでの様子はどうでしたか?

Zabu:本当に自由な雰囲気でした。集まった人たちが手をつないで踊るだけじゃなく、Jeff Selby(ジェフ・セルビー)、Nicole Mercado(ニコール・メルカド)、Robyn Baltzer(ロビン・バルツァー)という3人(※1)のレクチャーもあって、フレンドリーな空気がとてもよかったです。その後も皆で練習したり、イベントに一緒に行ったりと自然に広がっていきました。

(※1)Jeff Selby、Nicole Mercado、Robyn Baltzer:NSHのオリジネーターたち。

TDM:そこから日本での活動に?

Zabu:はい。2012年から、日本でもこのスタイルを広めようと活動を始めました。最初は一緒に踊る人がいなくて、大学のサークルや自分が教えていたレッスンの最後に「こういう踊りもあるんだよ」と紹介していました。でも、その場は盛り上がっても、なかなか継続してやってくれる人がいなくて…。「これは一緒に練習できる相方を作らないと」と思っていたところ、Eriちゃんに出会いました。

 

■相方Eriとの出会い

 

TDM:Eriさんとの出会いは?

Zabu:「WEFUNK」というイベントの運営に関わっていたとき、チラシを配るために蒲田の「TAP JAM」という生バンドとダンスのセッションイベントに行きました。そこにスーツ姿で現れて、生バンドに合わせてバレエを踊り出したスラッとした女性がいて、「なんだこの人!」と驚いて、終わった後に声をかけたんです。彼女も僕の踊りを覚えていてくれて、「普段どんな踊りしてるんですか?」と聞かれたので、「NSHっていう踊りがあって、一緒に練習する人を探してるんです」と話したら、「やりたい!」って言ってくれて、一緒に練習するようになりました。

TDM:Eriさんはもともとバレエダンサーだったんですよね?

Zabu:バレエ経験はありましたが、当時は英語関係の仕事をしていました。スーツで仕事帰りにそのままイベントに来て、そのまま踊っていたみたいです。最初の練習場所はリニューアル前の宮下公園。Eriちゃんはトイレでスーツから着替えて、Tシャツにバスパン(バスケットパンツ)姿で出てきたんです。「ストリートダンスっぽくしようと妹さんからバスパンを借りてきた」と聞いて微笑ましかったです(笑)。

 

イベントの様子

 Zabu & Eri

 

■最初は一人で。少しずつ仲間が増えていった

 

TDM:まだ日本ではほぼ知られていなかったNSHを、どのように広げていったのでしょうか?

Zabu:当時は他にやっている人がいなかったので、一人で種をまく感じでした。自分が教えていた大学のサークルや、大手スタジオのレッスンの最後に「こういうダンスもあるよ」と紹介して、興味を持ってもらえる人を探していました。でも、継続してやりたいと言ってくれる人はなかなかいなくて…。だからEriちゃんと練習しながら、いろんなパーティーやイベントに踊りに行っていました。その一つが「SPEAKEASY」というパーティーで、ここでGENKIさんとYU-KIちゃん(※2)に出会いました。

TDM:そこからまた広がったのですね。

Zabu:はい。GENKIさんはハウスダンスコミュニティに長く関わっている大先輩で、そこからまた若いハウスダンサーたちとも繋がっていきました。彼らもまた周りにNSHを広げてくれて、どんどん若い層も増えていきました。その中で今も一緒に「Hustle Break Tokyo」の運営をしているU-MI君もいます。当時は、ムーブメントをみんなで作っている感覚があってすごく楽しかったですね。

(※2)  GENKIとYU-KI:元「Hustle Break Tokyo」オーガナイズチームのメンバー。GENKIは、HOUSE DANCEクルーPYROのメンバー。

TDM:そもそもNSHとはどんな踊りなのでしょうか?

Zabu:NSHは、もともと70年代に流行したペアダンス「Hustle」をベースに、Jeff SelbyたちがN.Yで考案した新しいスタイルです。ただ、明確な定義がされていないので説明が難しく、しかし、だからこそ踊り手の自由な発想でいかようにも変化を加えられるという魅力があると思います。Hustleの3拍子や6拍子のリズム感を持ちつつ、ストリートダンスの感覚を取り入れて、より自由でオープンなペアダンスに進化しています。型がないわけではなく、最初にHustleのリズムを体に入れた上で、どんどん自由な発想で広がっていくのが特徴です。

TDM:NSHの魅力とは?

Zabu:一番の魅力は、自由度の高さだと思います。ベーシックなステップやリズムのベースはありながら、その上で自分なりのアレンジや違うジャンルの要素を自然に取り入れられる。「こうじゃなきゃダメ」という制限がないので、余白の中で遊ぶ楽しさがあるし、ゆっくりした曲でも、アップテンポな曲でも、自分のペースで楽しめるんです。ただ、最初から全てが自由だと難しいので、レッスンではある程度の型をゆっくり説明した上で、徐々に自由度を広げていくようなイメージで進めています。

TDM:ストリートダンスシーンとNSHシーンの違いはありますか?

Zabu:どっちが良い悪いではなく、特徴の違いがあるように思います。ストリートダンスシーンの中で僕が素敵だなと思うのは、もちろん現場によりますが、パーティーの中で自然に生まれるグルーヴを大事にしているところ。素敵なダンサーさんたちは「ふるまい」「ファッション」「音楽にノっている姿」が優しくてお洒落でカッコいい。パーティーでガツガツ踊っていると周りのお客さんに迷惑がかかってしまう事がありますよね。ただ、カッコいい人たちは空間に完璧に溶け込みながらグルーヴし続けていて、その人たちがいるだけでパーティーのクオリティのレベルが上がっている感じがするなと思うときがあります。NSHシーンはどちらかというとペアダンスをメインに楽しむスタイルなので、みんなガンガン踊ります。ゲストでお呼びしたDJの方々も毎回そこにびっくりしてくれます(笑)。変化はしてきているものの、良くも悪くもスポーティーな色がまだ少し強い印象で、僕はそこに先述したような「カッコいい存在感」をもったキャラクターが増えてきたらいいなと思っています。NSHの活発なエネルギーの中にストリートダンスのパーティー感覚、音楽の楽しみ方がもっと入っていくと、より面白くなるんじゃないかなと思っています。

TDM:15年近くNSHを続けてきた中で、ターニングポイントはありましたか?

Zabu:はい。NSHを通して知り合った方からご紹介いただき、Mitsueさんというすごい先生と出会ったんです。サルサの世界でも超一流の方で、人と人がペアで踊るときの「身体の使い方」や「ペアダンスをする上での心構え」を丁寧に教えてくれた。その経験が今の自分のNSHのスタイルにも大きく影響しています。ペアダンスは、ただリード&フォローするだけじゃなく、お互いの感覚を繊細に感じ取るものなんだと深く理解できたのは、Mitsueさんとの出会いのおかげです。最近はなかなかお会いできておりませんが、今でもMitsueさんは僕の中でとても大事なペアダンスの師匠ですね。

 

 

TDM:イベント「Hustle Break Tokyo」について教えてください。

Zabu:偶数月の第3水曜日に開催しているイベントです。必ずペアダンスのバトル「Jack & Jill(ジャックアンドジル)」を行っています。これは、即興でパートナーがシャッフルされて、その場で即席のペアを組んで踊るバトル形式です。お互い初対面で、音楽に乗って一緒に踊るので、ダンスの柔軟性やコミュニケーション力が試されるコンテストスタイルです。そして2022年からは、年末にNSHのバトルとストリートダンスのパフォーマンス、スペシャルなDJによるパーティータイムをお届けする 「Hustle Break Tokyo Grand Championship(通称:グラチャン)」を開催しています。最初は、僕とEriちゃん、そしてGENKIさんとYU-KIちゃんの4人で立ち上げた小さなパーティーを毎月開催していましたが、毎月やるのはなかなか大変で、GENKIさんとYU-KIちゃんも仕事の都合で離れたこともあり、今は僕とEriちゃんを中心に偶数月開催にして、各回のプロデューサーをコミュニティ内から立てるスタイルにしました。

TDM:毎回違うプロデューサーを立てるメリットは?

Zabu:それぞれの個性が出るので、イベントごとに全然違う雰囲気になるのが面白いんです。例えば、ハウサーの子がプロデューサーをやるとHOUSEのリズム中心になるし、シティポップ好きの子だとその世界観に寄った選曲やパフォーマンスになったり。ただ、誰でもお願いするわけではなくて、きちんとコミュニティへの貢献意識やマネタイズに対する責任感もあって、かつ内容もかっこいいものにできる人にお願いするようにしています。プロデューサーにとっては、自分のやりたいことを公式なイベントとして発信できる機会になりますし、運営側も大きなチャレンジの際の資金作りになるので、双方にとってすごくいい仕組みになっていると感じています。

 

■金曜夜の活動「ゆるフラ」

 

TDM:「ゆるフラ」についても教えてください。

Zabu:「ゆるフラ」は、“ゆるいフライデー”を略した名前で、毎週金曜夜にやっているカジュアルな活動です。最初に30分くらい、超ベーシックなステップのプチレクチャーを無料で行って、そのあとは自由時間。練習したり、喋ったり、友達を作ったり、踊ったり、それぞれが自由に過ごせる場所になっています。冬や真夏はスタジオをレンタルするのでそのときは割り勘ですが、基本は公園などで無料開催。「活動を応援したい!」という人には募金してもらえる仕組みにしていて、これも少しずつ積み立てて、年末のスペシャル回にDJを呼んだり、海外ゲストを招いたりする資金にしています。

TDM:今の時代の中で、コミュニティをどう作っていくかは大事ですよね。

Zabu:もう実際にいろいろなことが起こっていて、NSHから始めて、ペアダンスやダンスに興味を持った人が、他のペアダンスを習ってそのままそっちのコミュニティにどっぷりハマっていったり、ストリートダンスのナンバーに出てみることになったり。軽い気持ちでダンスに触れる初めの一歩としてNSHのコミュニティに人が集まり、他のコミュニティへ繋がっていく「ダンスシーンへのやんわりとした斡旋」の特性を持ってきている。NSHコミュニティがさまざまな人たちにとって「あった方がいいもの」になれば、この文化が継続できる可能性が上がっていくと思うので、とてもいい傾向だと思いますし、自分自身がお世話になったダンスシーンへ微力ではありますが恩返しができたらいいなと思っています。ただ、ペアダンスと同じで、自分だけの理想を相手に押し付けるのではなく、相手にとって何が嬉しい事なのかを考えられるWIN-WINの関係性を築くマインドを持った人やコミュニティをしっかり見極めて繋がっていく事が大事であると考えています。

 

 

■ダンスだけじゃなく、日々一秒一秒の過ごし方が大事

 

TDM:ダンサーとしての活動以外にもいろいろ活動されているのですね。

Zabu:僕は、ダンスが好きで続けているのですが、20年くらい続けるうちにダンスを高尚で特別なものとしてとらえなくなってきました。「ダンスはすごいもの」というよりは、ダンスも、音楽も、音響や照明などの空間の演出も、そこで出会った人との繋がりも全て素晴らしい、という捉え方。そういう考えでいると、いろいろな人と話しやすくもなるし、刺激も受けやすくなるんです。よくダンサーと話していると、ダンサー以外の方々を「一般の人」と呼んだりしますが、僕は、自分自身も一般の人だなと思うんです。全ての人が一般の人であり、見方や場面が変われば「特別な人」になりうる。ダンスだけじゃなく、日々一秒一秒どう過ごしているのかが大事なのかなと思います。

TDM:ダンスを軸に、プロデュースやコミュニティ作りをされているのですね。

Zabu:そうですね。最近では空間演出にも力を入れていて、イベントも、空間の暗さや、そこに何色の光があったらいいのか、リラックスできるエリアの音量はどのくらいがいいんだろうなど、全部ひっくるめて雰囲気を作って、いい音楽がいい音質で流れる空間ができたらいいなという思いでやっています。空間演出をしっかり考えておくことで、来てくれたお客さん達に対してしっかりとおもてなしをしたいと考えています。最近は、NSHのワークショップでも、場所によっては、家からプロジェクターやライト(照明)を持っていって、スタジオに設置してクラブみたいな空間を作ってやることが多いです。音質のいいスピーカーや、光と匂いなどいろいろなもので空間を作ってから踊ると、没入感がすごくて、五感を刺激されてやる気になってくれるんです。たとえば、能登半島でボランティア活動をしたときも、ダンスワークショップや仮設住宅の方々の集まりに音響と光を取り入れた演出を加えて、地の子どもたちや住民の方たちと一緒に楽しめる空間を作りました。また、市ヶ尾高校のダンス部にレクチャーしに行ったときには、ただ振付を教えるだけでなく、プロジェクターを使って映像を投影したり、音響を整えたりして、ちょっとした「体験型レッスン」みたいにしてみました。台湾のダンススタジオでワークショップをさせてもらったときも、機材を持ち込んで、その場で空間をクラブ風に演出して、言葉が違っても「楽しい!」が自然と伝わるように心がけました。

TDM:たしかに、殺風景なスタジオで受けるより非日常感があってやる気になりそうですね。照明などもご自身で持っているんですね。

Zabu:はい、アーティストでVJなどもやる兄(※3)の影響が大きいです。兄のアトリエは光や絵、音楽や映像など、彼自身が作った作品や集めたアイテムが絶妙なバランスで展示されていて、非常に面白いんです。そこからインスピレーションを受けて、いろんな空間演出に僕もチャレンジしてみています。先日行った「Hustle Break Tokyo」の10周年を祝うイベントでも、自分たちのコミュニティ以外の人たちや、違うバックグラウンドの方たちもたくさん来て欲しくて、クラウドファンディングをやったり、小学生たちを招待したり、年配の方やハンディキャップを抱えた方なども来ていただいたんですが、そういうさまざまな方たちが一緒に楽しめるように、くつろげるように芝生を置いてリラックスエリアも作ったり、音楽と空間演出をして皆さん楽しんでくれました。

(※3)兄:Zabuの実兄。Shinjiro Tanaka氏。  Instagram:@tnk02

 

▼HUSTLE BREAK TOKYO 10th Anniversary

 

■皆がフラットに来れる第3の居場所を作りたい

 

TDM:今後はNSHをどう広げていこうと思っていますか?

Zabu:コミュニティに関しては、いろいろな方向に枝を伸ばしていくために2つ考えていることがあります。1つは、僕はやはりストリートダンスが好きなので、ストリートダンスシーンの方々に興味を持ってもらいたいなと思っています。今試験的にやってみたいと考えているのは、あえて殺風景なレンタルスタジオなどを借りて照明やDJ機材等を持ち込み、異空間をクリエイトしていくセッションです。いい空気を皆で作るパーティーのようなセッションを作って、その中でサラっとレクチャーするようなことをしたいですね。ペアダンスを始めるきっかけには、「友達にパーティーに行こうと誘われて、そこでペアダンスに出会ってハマった」といった、「別の目的で行ったらたまたま出会った」ケースが多いんです。まずは上質なパーティー空間を作って、おもてなしや協働を体感していただくところからNSHに親しんでもらった方がダンサーは照れがなくていいのかなと思っています。もう1つは、ストリートダンサー以外の方々へのアプローチです。例えば先日は、公民館を借りてお料理会「Rhythm & Plate (リズムアンドプレート)」をやりました。一度、生徒さんで料理が得意な方と一緒に企画して開催したところすごく好評で、その後、「Hustle Break Tokyo」の運営メンバーでもあるAnnaちゃんと一緒に、定期開催を目指して復活させました。NSHコミュニティ内の人だけではなく、そのお友達などさまざまな方が集まってくれました!もはや踊りではないんですが(笑)。作りたいものを作って食べて話す。終わった後に踊りたい人が踊れるように別の部屋も借りておきました。もちろん照明もいっぱい持って行って照らしました!

TDM:なぜ、ダンスとは関係ないお料理会なのでしょう?

Zabu:ダンスに興味がなくても、誰でもご飯は皆食べるから入りやすそうだなと思って。そこで出会った人たちが、お互いに興味を持って、お互いのアクティビティに行くようになるという出会いの場でもありますね。「NSHってどんな踊りなんですか?」「普段はどんな踊りをしているんですか?」みたいな会話ができて、次は「ゆるフラ」に来てくれたりする流れが作れたらいいなと思っています。また、「大人が青春したっていいじゃない!!」をテーマに、これまでにNSHの合宿を2回開催しました。初回はNSHのみにフォーカスした合宿という感じでしたが、2回目からは、ピラティス、ソウルダンス、ハウス、ラテン、ダンスホール、身体操作トレーニングなど、参加者それぞれが「先生役」になって、自分の得意なものをシェアする形に進化しました。他にもチーム対抗の運動会をしたり、夜はBBQをしながらDJタイムで踊ったり、プチバトルをしたり。大人たちが本気で遊ぶ、そんな時間を作れたのがすごく嬉しかったです。

TDM:大人のサークル活動みたいな感じですね。合宿となると旅行代理店やツアーコンダクター的な業務も出てくると思うのですが、全てやられたんですか?

Zabu:僕ひとりで全部やったわけじゃなくて、仲間たちと役割を分担して運営しました。僕自身は、全体の指揮を取りながら、AIを使ってオリジナルソングを作ったり、思い出ムービーを作ったり、照明やプロジェクターを持ち込んで空間演出をしたりなど、適宜必要なものを担当しました。これからも「大人が本気で青春できる場所」を増やしていきたいと思っています!

TDM:コミュニティ作りにフォーカスするきっかけがあったのでしょうか?

Zabu:N.Yから帰ってきた当時2012年、ダンス業界に「ナンバーイベント」が現れていて、知り合いのダンサーから誘ってもらったんです。スタジオの発表会以外で個人で作品を出展できる機会は面白いなと思って僕もナンバーを出したら、N.Yから帰国直後だったこともあって50人くらい集まったんです。「おお、これだったらイケるじゃん!」と思っていたら、ナンバーイベントの数が増え、流行り廃りもあり、どんどん人数が少なくなってきて、「人というのはこんなにも簡単にいなくなっていくんだな」と感じたんですよね。相手が悪いのではなくて、一期一会を大事にできていなかった自分に非があると反省しましたし、とても悩みました。それもあって、温もりのあるコミュニケーションを大事にコミュニティ作りをしていきたいと考えています。

TDM:独自のスタンスを築いているZabuさんから見て、今のダンスシーンに感じることはありますか?

Zabu:バトルが多いなと思います。僕がダンスを始めた当時は、お馴染みのチームやクルーがいて、クラブイベントなどでそのクルーが出てくると「うわ!あのクルーだ!」と皆が盛り上がった記憶があります。心踊るパフォーマンスに憧れた身としては、バトルのバチバチも素敵ですが、カッコいいクルーがもっとたくさん出てきたらワクワクするなあと感じています。

TDM:今後の目標を教えてください!

Zabu:全都道府県にコミュニティがあって、年に1回のパーティーで皆が集まるという環境を作っていけたらいいなと思っています。例えば、クラブチッタなど大きな会場でバトルのグランドチャンピオンシップや都道府県ごとのパフォーマンスなどを組み込み、日本各地の人たちや海外から来た人たちなどが混ざり合って、皆でペアダンスをするパーティーを作りたいです。そして、その先にはZERO TOKYOのように複数のフロアがあるクラブで、フロアごとにR&B、 HOUSE、 Afro Beat、 Soul、 Funk など、異なる音楽が流れる空間をお客さんが自由に回遊できるようなNSHのビッグパーティーができたらいいなと思っています。そこに、僕の先生のJeff 、Nicole 、Robyn を呼んで、「日本ではこんな感じになったよ。君たちが始めてくれた踊りは最高だよ。ありがとう!」と言えたら、恩返しになるんじゃないかなと思っています。今は、仙台、鹿児島、大阪、札幌は、現地にコミュニティのリーダーになるような方々がいるので、もっとそういう人を増やしていけたらいいなと思っています。地元に住んでいて根付いてる方々が旗を振っているというのが大事だと思うので、そういった方に出会うためにももっと行動していきたいですね。あとは、今「NSHといえばこの曲だね!」という曲を作りたいと思っています。その曲に合わせる振付を、ベーシックの技を入れて数え歌のように作れば、〝この振付を覚えるとベーシックの技は一通りできます〟という1個パッケージができる。それを皆で踊れば一体感が生まれるし、楽曲を作ってくれた方のライブに皆で行ったり、応援の輪が広がったりすることもいいことなのではと思っています。

TDM:今後の展開をとても楽しみにしています!今日はありがとうございました! 

 

★NSHをもっと詳しく知りたい方はコチラ

 

interview & text by Yuri Aoyagi

interview & photo by AKIKO

’25/06/14 UPDATE

 

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tokyodancemagazine

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