

「自分はどういう人間で、どういう人生を歩みたくて、自分の表現は何なのかとか、自分が人に伝えたいことは忘れないように。自分はそれを磨き続けること。一番それが大変だし、一番それが難しいことだと思うんですけど、やはり自分はそこから逃げないようにしなきゃいけない」アメリカを拠点に活動するダンサーRYOTA。自分の心に従い、挑戦し、活動の幅は多岐に渡り、インタビューの中で心に残ったフレーズはここでした。過去でたくさんのダンサーが挑戦してきたアメリカで活躍することの大変さと、その意味を教えてくれたインタビュー。是非最後までご覧下さい。
Ryota Takaji
幼少期からダンスを始め、小中学生時代には数々の有名コンテストにて全国優勝、入賞を果たす。2016年から約3年間LAに単身留学、世界的ダンサーやコレオグラファーのクラスでアシスタントなどを担当。有名ダンサーやコレオグラファーを輩出し続けているアメリカ最大級のダンスコンベンション”Monsters of hip hop”(2019)にて、世界各国約3000人を超える挑戦者の中から選び抜かれた16人のみが出演できる ”The Monsters show” 唯一の日本人キャストに選ばれ、ショーに出演。帰国後も、藤井風やMISIAと共演、Amazon Primeの人気番組「マスクドシンガー」にダンサーとして出演する等活躍の幅を広げており、TOKYO 2020 パラリンピックの閉会式にも出演。2022年末より拠点をアメリカ・ロサンゼルスに移す。韓国系アメリカ人シンガーのEric Namと共演や、世界的にも有名なダンススタジオ”Movement Lifestyle”にてレッスンを行うなど、活動の幅を広げ続けている。
■正にスーパーキッズ世代!!
TDM:ダンスを始めたきっかけを教えてください。
RYOTA:ダンスを始めたのが5歳ぐらいで、地元・大阪のキッズダンスクラスに通っていました。ステップ、ステップ、ジャンプという感じで、何か特定のジャンルでは無かったと思いますが、そこが始まりです。母親がバレエをやっていてダンスを見たりするのも好きで、母の友人の娘さんが近くのダンススクールに通っていて、そこの発表会を見に行ったときに、「やりたい」と言った一言が始まりだったと思います。ダンスのスイッチがその瞬間入ったというよりかは、その前からテレビに映っているアイドルの真似をしたりしていたらしいので、自然な流れで気づいたらダンスを始めていた感じです。今のダンスのジャンルはヒップホップやジャズファンクで、コンテンポラリー的なスタイルもやることもあります。昔は、オールドスクール系のダンスも習ったりしていましたし、コンテストもたくさん出場していました。「DANCE ATTACK!!」(※)では、上位に入賞したこともありました。
※DANCE ATTACK ・・・ADHIPが主催する日本最高峰の中学生・高校生限定ストリートダンスコンテスト
TDM:アメリカではどんな活動をされていますか?
RYOTA:アメリカには20歳から留学して、パンデミックの間は日本に滞在していましたが、トータルすると20代の半分以上はアメリカにいることになります。自分は今のところアメリカでの仕事はミュージックビデオが多いです。数か月前からティーチングも始めました。実は今日初めて(インタビュー当時)MILLENNIUM DANCE COMPLEXで教えてきました。全てレギュラーではなく代講という形ですが、Movement Lifestyleというスタジオや、コリアンタウンに新しくできたRŪTS DANCE STUDIOというスタジオでも教えています。
TDM:パンデミック前と後のダンスシーンの変化はありますか?
RYOTA:パンデミックをきっかけにL.Aを離れた人も多いですが、パンデミック後にL.Aに来た人たちもたくさんいます。人が増えている分、オーディションがプライベート(招待制、関係者のみ)になって、そもそもオーディションに呼ばれるまでが第一関門になりました。エージェントには所属していますが、コレオグラファーが直接知っている子を集めてのオーディションをしたりするので、オーディションに行くきっかけも昔より減っていると思います。SNSもすごく大事で、そこから抜擢されるような人たちも増えています。
最近の仕事では僕も、エージェントではなく突然InstagramのDMで声をかけられて、アーティストもわからずに引き受けたんですけど、とても有名なアーティストでした。名前が知られているアーティストはエージェントから依頼されることがほとんどなので、インスタのDMからこんな有名なアーティストとお仕事出来るんだ…みたいなことがあって、そういう時代なんだなと思いました。
ティーチングも、アメリカだと日本人が外国人ですから、声をかけてもらえることはありがたいけど、「受けに来てくれる人いるのかな?」と思いながら行ったら、意外とたくさん来てくれて嬉しかったです。「どこから見つけて来てくれてるんだろう?」と思いますが、たぶんSNSで見つけてきてくれているんでしょうね。直接的な反応はなくても、「知らないところで見てくれてる人は見てくれているんだな」と実感しました。
■アメリカに滞在している理由
RYOTA:Monsters of Hip hopという、いわゆる名が知れているコレオグラファーとかダンサーがみんなそこを経験してきたショーがあり、それに出たいと思ったきっかけがありました。ダンスを応援してくれていた母親が、自分が中2ぐらいのときに病気が発覚し、長らく闘病生活を続けてたんですが、自分が留学している間に亡くなってしまったんです。そのときにダンスに対する気持ちがなくなり、ダンスをしないならアメリカにいる意味もないというのが自分の中にありました。でも日本に帰ってダンスを続けれる気もしなくて、でもお母さんと一緒に小さい頃から頑張ってきたことでもあったから、ここでやめるのも違うんじゃないかなと思って、「このタイミングで結果が出なかったらやめよう」と思って実力試し的な気持ちでMonstersのショーのオーディションに行ったんです。
結果が出なかったらダンスはもう辞めて、新しい道を探そうと思いながら受けに行ったんですけど、そのときいいところまで行けたんですけど、結果的に駄目でした。でも、こんなに悔しいって思ったことないぐらい悔しくて、辞めるとか無理だ!って思って、逆に火がついたんです。そこから半年ぐらいかな。アメリカのいろいろなところに行って、チャレンジしたんですけど、その年はショーに出れませんでした。父親とも話し合って、その年に結果が出なかったら日本に帰ると決めていたので、一旦帰国はしたんですけど、Monstersのショーは諦めたくないと思っていたので、翌年アメリカと日本を行き来して2019年にショーに出演出来ました。
Monstersのショーという大きな目標としてやってきたことを達成したってなったときに、アメリカにまた戻ってきたい気持ちもあったけど、東京に住んで日本でプロのダンサーも経験してみたいなと思ったのが2019年の夏頃で、そこから準備を進めて2020年の2月に上京したんですが、そこからすぐパンデミックに入りました。パンデミック中もいろいろ考えつつ、日本でダンスの仕事も経験しましたが、やはり自分はアメリカでダンスがしたいなと思いました。アーティストビザが取れたタイミングや日本での仕事の兼ね合いもあり、渡米出来たタイミングではビザが2年ちょっとしかなかった状態で、まだまだやりきれていないところもあり、少なくともあと数年はアメリカで活動したいなと考えています。
TDM:次の目標はありますか?
RYOTA:ワールドツアーも回ってみたいし、色んな仕事を経験したいと思ってます。アーティストだと、昔から聴いて育って来たJanet Jacksonと仕事するのは長年の夢です。振付師だと、特に今のエンターテイメント業界を引っ張っている人として、Sean Bankheadというコレオグラファーと仕事してみたいです。どんな作品作りのプロセスなのか、数々のアーティストに求められる理由やダンサーから尊敬される理由は何なのか身近で体感してみたいと思います。コンテンポラリー系の作品を作るTessandra Chavez という女性の作品も好きです。アワードショーのパフォーマンスとか、大きなブランドのコマーシャルなどもやってみたいです。
■自分を磨き続けること。一番それが大変なことだし、難しいこと。
RYOTA:多分アメリカでも日本でも関係ないと思うんですけど、エンターテイメントやアーティストのバックダンサーとかは特にルックスや身長、人種とかにもすごく左右される世界なので、ダンスや表現することが好きでダンスに愛があっても、仕事となると別物なんだなと思います。
お仕事はあくまで他の人や会社のためにやることだと思っているので、有名になったとしても、自分はどういう人間で、どういう人生を歩んでいきたくて、自分が表現したいことは何なのか。自分が人に伝えたいことは忘れないようにしたいです。自分を磨き続けること。一番それが大変だし、一番それが難しいんですけど、そこから逃げないようにしなきゃいけないなとすごく思ってます。
TDM:アメリカで活動する魅力を教えてくだい。
RYOTA:特に自分がやっているスタイルは、いわゆるコマーシャルダンスというか、流行ものなんですよね。流行りによってすごく変わるスタイルなので。自分が見ている限りでは、やはりその流行りの発信はL.Aからが多くて、そういう意味でやはりエンタメの中心地なんだと思っています。例えば発信地が別の場所でも、L.Aの人がそこから影響を受けてやり始めて流行る、ということが多いと思います。
いろいろなアーティストや音楽が生まれた土地でもありますし、それこそ歴史的な作品、例えばMichael JacksonとかJanet Jacksonなどのパフォーマンスもそうですけど、そういう歴史的なものを作った振付師本人達から学べる機会もあるし、そういう人たちと一緒に働けるチャンスがあるのがやはりアメリカだと思います。
現実的な話でいうと、物価の違いもありますがダンサーに支払われる金額も日本とは違います。職業としてはすごく認められているんですよね。しっかり成立していてシステム化されてるというか、エージェントがしっかりあるのもそうですし、パフォーマーとしての権利はちゃんとある感じがします。
TDM:今後ビザの更新ができたとしたら?
RYOTA:最近ティーチングを始めたというのもあって、いろいろな国とか、ヨーロッパやアジアの方にも呼んでもらえるようになりたいですし、日本で活動してもっと自分のことを知ってもらえるようにも頑張りたいです。
自分にできることや自分に向いていることとか、そういうのを見つけるのにはまだまだ時間がかかりそうですけど…。L.Aは単純なところでいうと、本当に天気も良いし、いろいろな空間がいちいち広いこととか(笑)、自由気ままに生きていける場所なのかなと思います。
東京に住んでいたときに、パンデミック中にもかかわらずいろいろな人とのつながりでお仕事をもらえて楽しかったし、すごく恵まれていてとてもありがたかったんですけど、自分がここに居続けていることを想像したときに、人から助けてもらえるこの環境に甘えて努力をきっと怠るだろうなと思って。絶え間なく声をかけてもらっていると、もっと良くなりたいっていう思いが薄れていくかもしれないと思いました。
たぶん自分にとってアメリカってチャレンジの場所なんです。アメリカには昔から憧れていたダンサーがいるので、その人たちと肩を並べて踊れるダンサーになりたいというのがずっとあって、その気持ちはずっと忘れずにやりたいなと思っています。もちろん日本でもどこにいても、自分次第で充実した生活は送れるんでしょうけど、、アメリカでダンサーをするっていうのは心の底では小さい頃から思っていた夢だから、「これで合っているのかな?」とか、「こんな目標を自分に達成できるのかな?」と、たくさん迷うけど、自分で答えを出してやらなきゃいけないっていうのは一番自分が分かっているので逃げられない。アメリカに住み続けるだけでも大変だし、もちろん仕事が続くかも分からないし、この環境で生活し続ける大変さを覚悟して、チャレンジし続けたいですね。全然まだまだなので!
TDM:チャレンジがんばってください!今日はありがとうございました。今後のご活躍楽しみにしています!
interview & text by AKIKO & Sayuri
Editor: TDM staff Update:2024/03/04
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