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朗読劇「My friend Jekyll」特集 shoji × Oguri

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先日絵本を出版し、また一つストリートダンスの可能性を広げたs**t kingzが、今回新たに挑むのは「ダンス×朗読」。“今までにないs**t kingzが見られる”作品になっているということで、今作「My friend Jekyll」に出演するshojiとOguriに話を聞いた。チーム結成以来、自分たちの信じる面白いものを追求し続けてきた彼らも30代半ばになり、今だからこそ感じるダンスシーンへの熱いメッセージも語ってくれた。いつの時代もシッキンらしく楽しみながら踊る彼らのこれからにも期待したい。


 

・s**t kingz

2017 年 10 月に結成 10 周年を迎えたダンス界のパイオニア的パフォーマンスチーム。アメリカ最大級のダンス コンテスト「BODY ROCK」にて、 2010 年・2011 年と 2 年連続優勝を果たし、世界のダンスシーンから注目を 浴びる存在となる。世界各地でパフォーマンスやワークショップを行い、これまでに訪れた国は 20 ヵ国以上。 2013 年より舞台公演をスタートし、4 作目となる 2018 年の単独公演「The Library」では、全国 7 都市 25,000 人の動員を記録した。
近年では、2017 年秋の結成 10 周年を記念した Billboard Live TOKYO/OSAKA での生バンドによる LIVE パフォ ーマンスや、2018 年単独公演「The Library」のオリジナル楽曲全 12 曲を収録したアルバムの発売、2019 年東 北最大のロックフェス「ARABAKI ROCK FEST’19」に単独出演するなど、音楽業界での活躍も話題を集めてい る。また、2019 年 5 月には<踊る絵本>と題して自身初プロデュースの絵本「あの扉、気になるけど」を発売。 全編の絵をメンバーの NOPPO が描き、絵本に仕込まれた QR コードから全 6 曲のストーリーにそったオリジナ ルダンスムービーが見ることができるなど、全く新しい試みが話題となり、予約開始と同時に、Amazon 本カテ ゴリーで 1 位を獲得。ダンス×〇〇〇というコラボで新しいエンターテインメントを作り出すクリエイター集団 としても注目されている

 

 


 

■「ダンス×朗読」への挑戦!

 

 

 

TDM:去年の公演「The Library」や、先日の絵本「あの扉、気になるけど」の発売に続いて、今回は朗読劇と、なんだか“本”に関連づいていますね。

 

 

 

shoji : そうですね。最近のs**t kingzは「ダンス×何か」という事をこれらかもっともっとやっていこうという話になっていて、「ダンス×絵本」をやったり、今回の「ダンス×朗読」をやったり、そういう挑戦をしていきたいと思っています。

 

 

 

今回の「My friend Jekyll」は僕とOguriの2人で、公演ごとに朗読とダンスが入れ替わるのですが、去年の12月に台本の第一稿を頂き、各自で読む練習をして、1月に読み合わせ、そこから、演出家の瀬戸山美咲さんに見てもらいながら個別の稽古に入っていきました。ダンスよりも朗読の稽古メインですね。

 

 

 

TDM : 朗読への挑戦は難しいですか?

 

 

 

shoji : 稽古中の自分の様子を動画に録ったり録音して確認するんですが、自分が思っている読み方と違うんです。ダンスは鏡を見て作ったら自分の姿は想定内だけど、声は自分が普段聞いているトーンとも違うし、「こういう風に聞こえたいな」と思ってしゃべってみても、いざ確認してみるとイメージと違うんですよね。

 

 

 

Oguri:最終的にはダンスを踊る時と同じような自然な感覚になれると思いたいんですが、まだまだですね。散々「こうしよう!」とイメージしているのに、いざ芝居をやってみると思った通りにならないんです。例えば、4×8の中で読まなきゃいけないパートがあるんですけど、そこは「収めなきゃ!」と思えば思うほど緊張してプレッシャーに感じてしまいます。。

 

 

 

shoji : 滑舌も苦労しています。滑舌のトレーニングも受けて、日々練習しています。

 

 

 

Oguri

僕はボイストレーニングも行って、声の出し方や歌の練習もしています。僕の普段の話し方が、すごく喉に当てちゃっているらしくて、枯れやすいみたいなんです。でも、(姿勢を正して) こんな風に喉を開いて声を響かせる感じで話すと、若干高くなるんです。

 

 

 

TDM:ホントですね!聞きやすくなりました!

 

 

 

Oguriそうなんです。だから、普段のこの話し方の癖を直していかないといけないなと。

 

 

 

TDM:滑舌も練習すれば直るという事ですね。

 

 

 

shoji:その滑舌の先生は、元々ミュージカルでダンスもやっていた方で、仰っていたのが、「ダンスはレッスンに行かないと練習出来ないけど、滑舌に関しては一日中しゃべらない人はいないから、日常生活の中でも意識し続ければ常に練習出来る。だから、ダンスよりも滑舌を直す方が楽だよ。」と言われました。

 

 

 

舞台などでお腹から出ている発声を聞いていると、見ているお客さんはストレスを感じないそうなんですが、逆に、喉から出している発声を聞いていると、お客さんも無意識に委縮してしまって、見終わった後に喉が枯れたりする事があるそうです。だから、舞台を見ていて心地よく見れる人と、何か違和感を覚える人の違いは、どこから声を出しているかによる、と、先生が仰っていました。

 

 

 

 

 

■今までにないs**t kingzをお見せします。

 

 

 

 

 

TDM:「ダンス×何か」というバランスを考えた時に、絵本「あの扉、気になるけど」では、絵本に隠れているQRコードを読み取ると、その場面に合ったs**t kingzのガチのダンスが見れましたが、あのダンスはどの様に構成していったのでしょうか?

 

 

 

shoji : まず、絵本のストーリーだけを読んで、物語は分かりやすく理解できる絵本を作ろう!となり、、そして、尚且つ、ダンスムービーだけを単体で見ても面白いものを収録しようというスタンスで作りました。絵本に収録するダンスムービーだからと言って、踊りを子供向けに簡単にしてしまったら、s**t kingzでやる意味が薄まってしまうかなと思ったので、ダンスはガチで踊ってます。最初はダンス動画を見ないとストーリーが繋がらないようにしようとかいろんな案も出たんですが、やっぱりs**t kingzのダンスがそこまで説明的ではないので、まずは分かり易いストーリーがあって、その情景を掻き立てるようなワクワクするダンスを入れられたらいいねという事になり、あのバランスが完成しました。

 

 

 

TDM:今回の「My friend Jekyll」はダンス的にはどういう挑戦になりそうですか?

 

 

 

shoji:まず、今までのs**t kingzの舞台で見せてきたダンスとは全然違う印象になると思います。結構シリアスで、ある意味、物語の役になりきる事も挑戦ですし、Oguriが読む朗読の速度や、今回ツインギターの生演奏もあるんですが、弾き方によって毎回ダンスが変わってくるので、それも挑戦です。ギターの弾き方も明確なメロディではなく、僕たちの踊りとか雰囲気に合わせて弾く場面もあるので、決まったテンポがないんです。踊りが音に合わせるのではなく、音が踊りに合わせてくれる感じです。

 

 

 

TDM:聞いているだけでドキドキしますね。いろんな挑戦をしながら、ストリートダンサーが出来る事を増やしてくれるs**t kingzですが、FMヨコハマで放送されていたレギュラーのラジオ番組「踊る門には福来たる」でも、培ったものはあったのでは?

 

 

 

shoji:あれは本当に楽しかったですね。絵本の記者会見でNOPPOが作画担当としてきちんと質問に答えてしゃべったんですけど、あれは、ラジオをやる前だったらたぶん無理だったと思うんです。ラジオをやらせてもらった事で、誰かから振られなくても自分からしゃべれるようになりました。 “ラジオは人を育てる”と聞いていたんですが、NOPPO含め、メンバー皆、すごく成長させてもらいました。

 

 

 

TDM:ダンサーでトークが上手い人はもっとしゃべるべきだと思いますし、しゃべれる人は今後ダンスシーンが広がる上でも貴重な存在になっていくと思います。

 

 

 

shoji:話すという点では、ダンスって、世界の共通言語と言われますが、それはダンスをしている人たちにとっての共通であって、ダンサーじゃない人たちに向けて踊る時には、こっちが共通言語だと思って言葉も使わずに踊っても、やっぱり伝わりきらないと思うんです。「ダンス+ダンサーじゃない人にもわかる言葉」が添えられると、よりダンスを受け入れられやすくなったりすると思います。ダンサーだけがわかるコアな内容だけでダンサーじゃない人にも伝えようとするのはなかなか難しい。そこに言葉が添えられると「これってこういう表現なんだ!」と伝わって、興味を持ってもらえたら、言葉がなくなってもダンスだけで伝わっていくようになると思うので、やっぱり、言葉も大事ですね。

 

 

 

 

 

■今の時代を作っているのは、今の子たちだけではない

 

 

 

TDM:お2人から見て、今のダンスシーンはどう映っていますか?

 

 

 

shoji

一時期、スタジオが乱立した時に、聞いた事もない若い高校生くらいのダンサーがレッスンを持ち始めてすごく抵抗があったんです。「そんな若さで何を教えられるの?」って思ったりしました。でも、最近海外とか行くと、ワークショップで呼ばれてる講師がNat BatSierraSean Lewなど、10代の子たちが少なくないんです。彼らのSNSのフォロワーは100万人以上いて、それが基準で世界中に呼ばれている。その現実を見た時に、「日本にも10代でもいいダンサーはいるのに、この子たちはそういうプロモーションが出来ていないんだな」と感じるようになりました。

 

 

 

だから、最近考え方が変わって、ダンスを教える時に年齢は関係ない。もしかするとその子たちのダンスのピークは今かもしれない。だったら、彼らのダンスが評価される土壌を俺たち上の世代がちゃんと認めてあげないといけないな、と。

 

 

 

もちろん上の世代からしか学べない事もあるし、そこからきちんと習う事も間違いではないんですけど、例えば、俺が10代の子たちのレッスンに行って、新しくて面白いダンスを習ってもいいわけで、ストリートダンスってそういうもんだよなって思うんです。そして、10代の子たちにしか教えられないものを教えに行くべきだなとも思うようになったので、日本の若いダンサーたちも自分たちでどんどん発信してほしいし、そういうものを俺たちも認めてあげて、彼らをサポートしてあげられるようなムーブメントになっていったらいいなと思います。

 

 

 

うちらは映像よりも、“生”の感覚に痺れてきた世代。だけど、ネット動画が普及して、そこでいろんなものを見て、ヒントを得たり、ネット動画のおかげでs**t kingzを海外の人に知ってもらうことができてチャンスが広がりました。だから、動画も使い方次第。一つのダンスの表現だと思うし、ダンサーとしてのスキルだとも思います。ただ、そればっかりになると、“生”の良さを知っている俺たちからすると、「ダンスの面白さはそれだけじゃないないんだよ」と思っちゃう気持ちもありますけどね。

 

 

 

ただ、最近思うのは、今の時代を作ってるのは、若い子たちだけじゃないということ。今は、僕たち上の世代が作ってきたものの残りでもあると思うんです。今の時代がダメと感じるのは、若い子たちがダメなんじゃなくて、僕たちの世代が残したものだと思うんです。。若い子たちがスタジオのレッスン動画でピックアップされる事を目標にしているのも、前の世代がたくさんレッスン動画をアップし続けた結果、若い子たちがそこに乗っかっただけだし、今の世代がやってる事は次の世代に残っていく。だから、今の子たちがinstagramの動画に固執しているのは、あくまで上の世代がやってきた名残なので、それを上の世代が否定するのはすごく可哀想な事だと思います。もし今の世代に不満があったり、変わって欲しかったら、上の世代がちゃんと残したいと思うものを残していかないといけないし、その為に何をするのかが大事であって、ただ今の若い子たちに「変わりなよ」と言うのは、難しいし酷な事だと思います。

 

 

 

Oguri

いや~、その通り(笑)。最近、読んだ本に書いてあったのが、「産まれた時からあるものはそういうものとして受け入れられるのに、30代後半になると新しいものを拒否し始める」ということ。例えば、携帯というものが生まれた時からある人は、最初から受け入れられるんですが、30代後半の人は携帯が出てきた時に「何だこれは」と拒む傾向があったそうです。そう考えると、まさに、自分も拒否をし始める年齢に近づいていて、若い子たちのダンスを受け入れづらい自分もいます。でも、今俺が10代だったら「誰が何と言おうと、これがいい!」ってどんどん信じたものをやると思うし、それは自然な流れだとも思うので、俺の好き嫌いで決めつけないで、彼らを受け入れたいし、俺は俺のやるべき事をやりたいなと思います。

 

 

 

でも…年を取るとつい言いたくなっちゃうんですよね(笑)。「今の若い子たちは・・・」って言うのが気持ちいいんでしょうかね。

 

 

 

shoji :

ダンスに限らずみんなそうなんじゃないかな。自分の記憶って美しいんですよ。でも、自分たちの生きてきた時代がそんなに美しくて素敵だったのかなんて誰にも分らないし決められない。Oguriだって、昔L.A.のレッスンでピックアップされなかった日の夜はめちゃくちゃ不機嫌で、ピックアップされる事にこだわってましたからね(笑)。そんなタイプの人間が今の若い子たちのピックアップにこだわる姿に文句を言うのはお門違いなんですよ(笑)。俺も「今の子たちはユニットばかりで全然チームを組まないよな~」って文句言ってましたけど、s**t kingzを組む前まで20個くらいユニットをやってたんですよね(笑)。最近、それに気づいて、「たくさんユニットをやった結果s**t kingzに巡り合えた…みんな、ユニットをやった方がいいよ!」という考えになりました(笑)。

 

 

 

 

 

■いつもと違うs**t kingzをお楽しみに!!

 

 

 

 

 

TDM : お2人にとってs**t kingzの好きなところは??

 

 

 

Oguri:とにかく居心地がいいんです。自分を客観視しないでいられる。踊ってる時はもちろん、4人でスタジオにいる時から。「これを言ったらどうなるかな…」なんて思わないし、気を遣わないでいられます。

 

 

 

shoji:この4人じゃないと出来ない事がいっぱいあるところですね。一人で絵本は出せないけど、s**t kingzだと出せた。そして、これからも4人でやっていきたい事がいっぱいあるんです。例えば、5分ではなくもっと長編の映像作品をs**t kingzで作った事がないので、いつか作ってみたいです。s**t kingzは「これしかやらない」と決めつけずに、いつまでも変わり続けながら、今後もいろんなクリエイターの方と面白いコラボしていきたいですね。

 

 

 

Oguri:確かに。僕らは“世界を作る”のが好きなので、例えば、VRの眼鏡がなくても、VRみたいに見える舞台とか…めちゃくちゃ大変そうだし、お金かかりそうですけど(笑)。でも、大変かもしれないけれど、誰かに先を越されるのは悔しいので、自分でやってみたいですね。

 

 

 

shoji:それくらい大変な思いをしてs**t kingzが作ったものを、その時限りではなくて、若い子たちに引き継いでもらう作品があっても面白いかもしれないですね。

 

 

 

TDM : そもそも今回、s**t kingzの4人のメンバーの中で、なぜお2人がやる事に?

 

 

 

shoji:もともと、ステージ上でしゃべる事に興味があって、挑戦したいと思ったのが我々だったからなんですけど、次回はkazukiとNOPPOがやるかも…?(笑)。

 

 

 

Oguri:でも、s**t kingzでトークショーをした時に、罰ゲームで負けた人は、笑い禁止の全力一人芝居をするという企画があって、kazukiもNOPPOもやったんですけど、それが、面白かったんですよ。「あ、出来んじゃん。」と思いました。

 

 

 

shoji : kazukiはストーカー、NOPPOはサイコパスの役をやったんですが、どちらもちゃんと怖かったです。

 

 

 

Oguri:だから、絶対あの2人も演技は出来るので、いつか朗読劇も4人バージョンでやってみたいですね。

 

 

 

TDM:では、最後に、今作の見どころを教えてください。

 

 

 

shoji : イギリスの古典が原作で、日本語版も出ていますが、脚本・演出家の瀬戸山さんが今回用にアレンジしてくださいました。時代背景は昔のイギリスなので、車じゃなくて馬車や執事が出てきたり、普段言わない言い回しがあるので、それも大変です(苦笑)。

 

 

 

でも、とにかく、いつもと違うs**t kingzの舞台がお見せ出来るのが見どころです。まず、僕にとってはステージで役として話す事が初めてなので、そこは本番でどうなっているのかを楽しみにして頂きたいです。踊っている時も、決められた振付を踊るわけじゃないシーンが多く、Oguriの言葉に寄り添って踊っている時など、いつもの感覚と違って、不意に自分じゃない何かになっている時があります。そんな僕らを新鮮に感じてもらえたらと思います。

 

 

Oguriの朗読は基本上手なので、ノってる時はスムーズなんですけど、たまに何度か言い直す時もあって、「あれ?このセリフ、多めだな」と思いつつ、僕も同じ動きを何回も繰り返したり、そういうリンクも見どころです(笑)。

 

 

 

Oguri:やばいな~、気を付けます(笑)。今shoji君が話してた自分じゃない自分が出る感覚が羨ましいです。俺は自分に客観的になっちゃうというか、引いちゃうんです。周りを気にせず演技に没頭する事が出来ず、「今、これは上手く出来てるかな?」といちいち気にしちゃって、それだと面白くないんだろうな~とは思います。本番までに克服できるように頑張ります。

 

 

 

shoji:あとは、同じ台本なのに、互いが読むと、物語に出てくるキャラクターの解釈が違うので、回によって、受ける印象が違うと思います。なので、ぜひそれぞれの回を見比べて頂いて、楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

 

TDM : お2人の挑戦を楽しみにしています。今日はありがとうございました!!

 

★[公演情報] shoji&Oguri from s**t kingz 新舞台「My friend Jekyll(マイ フレンド ジキル)」

interview by AKIKO
edit & photo by imu
’19/06/02 UPDATE

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tokyodancemagazine

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