女子のみで構成されたアニメーションダンスクルー“NEO-Geisha”。アニメーション界のパイオニア・黄帝心仙人率いるタイムマシーンの元メンバーであるNANOIとmarukoを中心として結成され、世界で称賛を浴びる彼女たちがこの夏、満を持して自主公演「THE CHANGE」を行うことが決定!ゲストにパントマイム界の重鎮KAMIYAMA、三味線奏者の匹田大智を迎え、おそらく世界初となるアニメーションダンスのみの舞台公演はいったいどんなステージになるのか!? リハーサル真っ只中の2人に話を聞いた。
- NEO-Geisha
女子のみで構成される、ロボット・スローモーションなど人間離れした動きを主とするパフォーマンス集団。2018年アメリカズ・ゴット・タレントに出演、アーティストのライブ・PV・ CM出演など幅広く活動中。
- NANOI
Dance Artist (パフォーマー/振付師/インストラクター/プロデューサー/ディレクター)「Asia’s got talent」 Golden buzzer獲得。アニメーションダンスチーム「タイムマシーン」の元メンバー。現在は、女性だけで構成される「NEO-Geisha 」のリーダー。「アメリカズ・ゴット・タレント」や「Genalations MV」など国内外で大会、メディア出演。独自では、CM、MV振付、パフォーマンスなど幅広く活動中。
- maruko
4歳からクラシックバレエを始める。大学時代はコンテンポラリーダンスに没頭するも、卒業後は普通のOLとなる。社会人からストリートダンスを始め、勢いで会社を辞めた現在はダンサーとして挑戦中。タイムマシーンの元メンバー。現在は女性だけのアニメーションダンスチームNEO-Geishaのリーダーとして活動し、海外コンテストで入賞、イベントやCM出演等。
■アニメーションダンスとの出会い
TDM:お2人がそもそもアニメーションダンスを始めたきっかけを教えてください。
maruko:私は、小さい頃から高校までクラッシックバレエをやっていて、大学時代もコンテンポラリーダンスをやっていたんですけど、そのまま普通に社会人になって、ふと大学のときに友達がやっていたポップダンスを学園祭で観たことを思い出して、急に「やりたい!」と思ったんです。でも、ストリートダンスはまったく分からなくて、誰が有名とかも知らなくて、ネットでたまたま見たレッスン情報を頼りに行ってみたのが仙人(黄帝心仙人)さんのレッスンだったんです。
NANOI:私は、安室奈美恵ちゃんやSPEEDの世代なので、当時、かっこいい!と思って、録画したビデオを見ながらマネしていて、中学くらいからダンスを習いたいと思っていました。でも、親が習わせてくれなくて、高校に受かったとき「お願いだから習わせて!」って頼んで、渋々OKをもらい、千葉の地元のスタジオに習いに行ったのが始まりです。そこではヒップホップとジャズのクラスに通ってたので、20歳くらいになるまでアニメーションという言葉すら知りませんでした。でも、そこで仲良かったダンス友達が「東京のワークショップに行こう!」と誘ってくれて、行ったのが、アニメーションとヒップホップが混ざったようなスタイルのFREE※のワークショップだったんです。「なにこのジャンル!? 」と思って、初めてそこでアニメーションというものを知って、日本のどこで習えるんだろうとミクシィで調べたら仙人さんが出てきたので、レッスンに行ってみたのが始まりです。それが7年前くらいですね。
※FREE:LAの有名ダンサー&コレオグラファー。トウキョウダンスマガジンでのインタビュー記事はこちら。
TDM:では2人が出会ったのは仙人さんのレッスンだったんですね。互いの第一印象はどうでした?
仲良くなれなそうだなと思ってました(笑)。全然違うタイプの人だという印象で、最初は会っても挨拶だけしかしてませんでした。でも、レッスンを受けてるうちに、とあるイベントに出るという話になって、仙人さんから「女の子2人でやればいいじゃん」と言われて、2人で組んでみたんです。
NANOI:全然タイプが違うから、逆に合ったのかもしれないですね。
maruko:それから、仙人さんが「DANCE@HERO」というコンテストに出るために、生徒の中から何人かピックアップしたチームを作ることになって、選んでもらえたんです。そこから“タイムマシーン”としてチームで3~4年くらい活動していました。
TDM:NEO-Geishaを作ったきっかけは?
NANOI:
私は、ダンスを始めた19歳の頃から「生徒たちを育てて、一緒にチームを組んで、プロとしてやっていきたい」という夢があったので、タイムマシーンを抜けて落ち着いてきた頃、marukoに「こういうチームやりたい!」って相談したら「やろうよ、やろうよ」って言ってくれたので、生徒に声をかけて始めたんです。私がレッスンを初めて持ってから10年来の生徒もいて、その子は当時小5で今20歳を超えても一緒にやってるので、夢がかなった感じですね。
TDM:メンバーとのコミュニケーションはどうやってとっていますか?
NANOI:
2カ月に一度はミーティングをして、「私はこう思っていて、皆とこういう風にしていきたいと思ってる」と、ちゃんと伝えるようにしています。その後、皆はどう思ってるかも聞いて意見もちゃんと取り入れるようにしています。メンバーの中には、プロになりたい子もいれば、ダンスもやりたいけど、他にも頑張りたいものがある子もいる。例えば、美容関係に興味があって「メイクも勉強して、NEO-Geishaの助けになりたいと思ってます」と言ってくれている子もいたりします。
■精神が鍛えられた「アメリカズ・ゴット・タレント」
TDM:今までやってきて大変だったトラブルなどはありますか?
maruko:
トラブルというか、去年アメリカの「Body Rock 2017」という大会に出たんですけど、頑張って3位をいただいて、「これ持って帰るの!? 」というくらい大きいトロフィーをもらったんですよ。で、それから滞在中ホテルのテレビ台に置いていて、次の宿泊先だったFREEの家に移動するときに見事に忘れて、2、3日後に、FREEに「お前らトロフィーは?」って聞かれて、初めて気づいたんです(笑)。
NANOI:全員まったく覚えてなくて(笑)。知り合いにお願いして送ってもらって無事に届きました(笑)。
TDM:すごいエピソードですね。「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演したときの契約書を提出するときも大変だったと聞きましたが…。
maruko:あれは本当に大変でした!ホント細かくて、受験勉強をしてるみたいでしたね。
NANOI:あのときは全てが大変で、精神が鍛えられました。使う音を提出したのに「権利的に通らないからダメ」と言われて、いろいろ音を探して何度も提出してもダメで出発の1週間前にやっと音が決まったので、振付して、あと2回しか練習できないというときに「動画を送ってくれ」と言われて送ったら、返信が来て、「これはあなたたちのパフォーマンスじゃないわ。音楽のせいでよく見えてないからやっぱり音変えて!」って言われたんです。そこからまた家でずっと編集してて、不安で仕方なくて、初めて音作りしながら泣きました。
で、現地に行ったら行ったで、メンバーに未成年がいたので、未成年は7時以降はダメとか、3時間以上いたらダメとか規則があって、大人が1人付いてホテル戻ってくれと言われたのに、撮影もあったりしてバタバタ。そして、ようやく本番となって気持ち整えてたのに、予定時間の30分後に「今日の本番はなくなりました。明日になります。」と言われたり…。アメリカではよくあることみたいだし、パフォーマンス自体はなんとか乗り越えてやれましたが、終わるまではずっと落ち着かなかったですね。
■自主公演への想い
TDM:自主公演をやるきっかけは?
maruko:もともと長い作品を作りたいという話はしていて、制作を手伝ってくれてる人からの後押しもあったり、今回やる会場の方が興味を持ってくださって、会場を貸していただけることもあって決めたんです。
NANOI:内容の軸は私たちが考えましたけど、どういう流れでいくかなどは、皆の意見を聞いて、話し合いましたね。今年の1月くらいからずっと話し合ってます。
TDM:この公演で伝えたいメッセージは何ですか?
NANOI:
今、AIやロボットが発展していますが、発展すればするほど人間が危なくなってくる。仕事もロボットができるから、人間がいらなくなったり、どんどん怖いことが増えて、いつか未来になったらAI vs人間になるとも言われ始めていたりする。そういう問題をどうにか表現できないかなと考えたときに、今回の“日本”というテーマの、江戸時代くらいからある芸術文化と、未来のそういった世界のことを全部ひっくるめて伝えたいと思ったんです。
maruko:進化することはすごいと思う反面、怖いなって思うんです。日本は、伝統を大切にする国で、昔の日本には美しいものがいっぱいある。でも、それを忘れかけてる人はいっぱいいて、そこも忘れないようにしたいよね、という思いもあります。
NANOI:江戸のシーンがあるんですけど、本物の芸者さんたちにもお話聞いてアドバイスをもらったり、日本舞踊のワークショップを受けて「扇子の出し方は本当はこうだよ」とか「正座の仕方は横からこう座るんだよ」とか教えてもらったりしました。そういうことを知っててパフォーマンス作るのと、知らないで作るのは違うかなと思ったし、日本の人たちにも、適当に“Geisha”って名乗ってると思われたくないって思ったんです。でも、全部やっちゃうっとそっちになっちゃうので、上手く取り入れながら作っていきたいと思っています。あとは海外の人に、日本の文化を私たちなりに、自分達が面白いと思っているダンスとの融合で伝えていきたいと思っています。だから、「この内容は伝わってるのか?」ということが一番気になります。振付にも意味を持たせて内容を伝えていかなきゃいけないので、メンバーやスタッフさんにも私たちの意図が伝わるように、脚本も文章にしてあって、映像の絵コンテも作って、1時間くらいのイメージビデオを作って見せました。
TDM:細かいですね!もしや、お2人ともA型ですか!?(笑)
maruko:
NANOI:以前、自分が細かすぎるのか悩んで、仙人さんにも「なんで他の皆は細かく連絡したりしないんですかね?」って聞いたことがあるんですが、「NANOIとかmarukoみたいな人は珍しいよ。そんなにちゃんと毎回言ってきたり、すぐ作業する人ってなかなかいなかったよ」って言ってくれたことがあって、「そうなのかもしれないな」って思いました(笑)。
TDM:2人のバランスがとてもいいですね!
NANOI:そうですね、どちらか一人ではダメだったと思います。
■世界中でたった1チームしかできないようなパフォーマンスをずっと続けていきたい
TDM:今後のNEO-Geishaの目標を教えてください。
NANOI:仕事が増えてくると、やりとりやお金の問題などが出てきて、それを全て私たちがやっているとトラブルも出てくるので、今後はどこかのプロダクションなどと契約し、所属という形をとろうと考えています。今は全部自分たちでやっているから、パフォーマンスだけに集中できないときも多いので、もっとやるべきことに集中できる環境を作りたいと考えています。あとは、NEO-Geishaでレッスンを開いたり、今回みたいに三味線とコラボしたり、ダンスだけじゃなく広い視野を持ってどんどん展開していきたいですね。
maruko:NANOIはそういうことを考えられるのがすごいと思う。今やっていることをどうやったら仕事にしていけるか、形にできるかを考えるのが得意だよね。
NANOI:
私、無駄なことが嫌いなんです。趣味としてやってるんだったら、なんでこんな時間もお金もかけてやってるんだろうって思っちゃう。常に「なんで自主公演やってんの?」「ここからどうなるの?」って自分に問いかけちゃうんです。
maruko:私はそういう風に考えられなくて、どうしたらダンス上手くなるかな?って考えるほうが好きなんです(笑)。
TDM:やっぱりいいバランスですね!では、最後に自主公演の見どころやメッセージをお願いします。
maruko:今回の舞台は、アニメーションというダンスで1時間の舞台をやろうという挑戦なので、たぶん他ではやったことない舞台だと思うし、しかも、それにプラス三味線の大智君とパントマイムのKAMIYAMAさんと、どう融合するのかにも挑戦していて、見たことあるような舞台はやらないので、絶対楽しめると思います!皆が面白いと思ってもらえるものを作っているので、観に来てください!損はしません!
NANOI:
世界中に、アニメーションスタイルを女子だけでやってるクルーは他にないと思うので、私たちは世界中でたった1チームしかできないようなパフォーマンスをずっと続けていきたいと思っています!そして、ダンスだけではなく、いろんな方面を見て、いろんな人たちに好きになってもらえるようなチームになれるように頑張ります!
TDM:今後の活躍に期待してます!本日はありがとうございました!
interview by AKIKO
photo by imu
edit by Yuri Aoyagi
’18/07/29 UPDATE
■関連リンク:[PICK UP]アニメーションスタイルで繰り広げられる長編ダンス作品。NEO-Geisha公演 「THE CHANGE」
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