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赤澤かおり×須藤奈々子

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少し前になるが、2016年9月、須藤奈々子演出の、赤澤かおりソロパフォーマンス「きみ、ボク」を観れてすごく嬉しかった。ダンサーが2人で演出とソロ公演をやってみたことに意味があると感じた。公演形式でやることでメッセージを強く発信できる。その発信方法も作り方もクオリティも、時代によって変わり続けていくだろう。今後、新しいエンタテインメントを追求していく過程で、ダンサーが表現者として独り立ちしていくために、彼女たちの様に、ダンスだけではない表現力で、空間を全うする作業に取り組む必要もあると思う。

 

  • S__102875141赤澤かおり
    広島県福山市出身。2005年に東京へ上京。様々なダンスを学び、現在はJAZZダンサーとして舞台、公演などで活動中。独自の感性を活かした作品づくりでも新たな境地を開拓している。2017年1月、ダンスコンテスト『JAZZ SENSATION vol.7』にて優勝。2016年9月ソロパフォーマンス『きみ、ボク』を東京にて上演し。2017年2月広島にて再演予定。

 

 

 

 

 

 

 

  • S__5783606須藤奈々子
    1988年生まれ。17歳よりダンスを始める。20〜22歳まで、MARIKO(CHAOS)MOMO(ENTER)とのチーム「Un-HEAD」で都内クラブを中心に活動。2010〜2012年、「ELEVENPLAY」所属。以降、舞台、メディア、ライブなどのダンサー出演や振付助手など多岐にわたる経験を積み、現在は自身の創作活動に力を注ぐ。

 

 

 

 

■いい作品を見て創作への刺激を受けました。

 

TDM 「きみ、ボク」、お疲れ様でした!まず、あれをやろうと思ったきっかけは?

 

 

 

須藤奈々子
2016年5月にコンテンポラリーダンサーの熊谷拓明さんの一人ダンス劇「サナギ男が笑う時」を観て、2人ともかなり刺激を受けたのがきっかけです。Kaeruさんのエアリアルスタジオがクローズするときのイベントで、クローズしてしまうことへの想いも伝わって来て本当に素敵でした。

 

 

 

赤澤かおり
その時の熊さんの踊りは、ただ踊りを見せつけるでもなく、演技しすぎるでもない、なんとも言えない自然体の表現でした。見終わった後に、奈々子も私もお互いに思うことがあり、「何かやりたいね!」とすぐに盛り上がって決まりました。

 

 

須藤奈々子
私は振付や演出をいろいろやっていきたいなと思っているタイミングでもあって、とてもいい作品を見て創作への刺激を受けました。最初はソロ公演とは決めていませんでした。やりたいことを2人で話しているうちに私の頭の中にはかおりさんが1人で踊っている画しか浮かんでこなくなってしまって、他の誰かを誘うことも考えたんですが、他に浮かびませんでした。

 

 

TDM
創作活動としてはまず何から始めましたか?

 

 

須藤奈々子
okP1030447rまず、私がもともと、かおりさんの踊りから、“ダンスの妖精”というイメージを抱いていまして(笑)。このイメージから広がる作品になればいいかなと思いました。それから、「普段目に見えないものが見えてくる世界」「その世界に生きる生き物の感覚を表現したい」と提案して、かおりさんに伝えたら、「面白そう!」と言ってくれました。

 

 

 

赤澤かおり
それから、「この曲で踊りたい!」とか「ビー玉を水に落としたい!」など、私のやりたいことをピンポイントで伝えていって、奈々子に膨らませてもらい、やってみては変更し、という作業を繰り返して創作していきました。

 

 

 

TDM
制作期間はどれくらいでしたか?

 

 

 

赤澤かおり 2ヶ月くらいです。前半は、個々に振付して持ち寄ったりしながら、最後の2〜3週間は2人でしっかり作りこんで固めていきました。

 

 

■とても不思議な感覚で、とても心地よい感じでした。

 

TDM
奈々子さんは今回描いてみて、どうでしたか?

 

 

 

須藤奈々子
私が観たかった世界を見ることができました。ただ、お客様からは「難しかった」という感想も頂きましたし、頭の中がふわーっとしたまま帰られた方が多かった印象を受けました。それがいいのか悪いのかはわかりませんが、抽象的な作品をつくると、こういう反応があるんだな、と学びました。

 

私の想いをかなり詰め込んだのですが、それは伝わりきれてはないんだなと感じました。私の中では、物語の起承転結や、すべての行動に意味を持たせてたんですが、なかなか全部が伝わらないよなぁと感じました(苦笑)。ですが、観終わって色々質問してきてくれた方との会話は面白かったし、何より嬉しかったです。

 

千秋楽は客席から観たんですが、作品の中で、始まりと終わりに自分でも意図していなかったリンクを見つけた瞬間に感動しました。こんなことが起きるんだなと驚きましたね。いろいろな反省ももちろんありますが、今後に生かしていきたいです。

 

 

 

TDM
かおりさんは舞台に立ってみてどうでしたか?

 

 

赤澤かおり
P1030331まず、「ひとりだけで1時間の舞台に立つというのは、どういうことだ!?みんな私のことしか見ないんだよね!?」というドキドキから始まり、本当に冒険のような時間でした。客観的には見れないので、奈々子の感覚を信じてやっていました。本番は、果てしない緊張感に襲われるのだろうと覚悟しておりました。でも奈々子の作った世界にいる生き物になれていたせいなのか、観客の目の前で私ひとりが立ってるのですが、ひとつ遠いところからたくさんの人にこっちを覗かれているような…なんだか緊張だけでもない、とても不思議な感覚でした。でも、それはとても心地よい時間でした。 

終わった後は、とにかく「やりきったー!」と思えました。お客様からは、「なぜかわからないけど涙が出てきた」という感想を頂けたり、私が演じた生き物の捉え方がそれぞれ全然違って面白かったですね。

 

 

 

TDM
演じる時間とダンスの時間は半々くらいに見えましたが、やっていた時はどっちの感覚が多かったですか?

 

 

 

赤澤かおり
「さぁ!踊ります!」「芝居します!」と感じることはなく、すーっと流れていく感覚でした。自分としても、切り分けられない表現がすごく好きなので、目指していたところでした。

 

 

■プロは目指さず、マイペースを選ぶダンサーもいる。

 

TDM
30歳目前のおふたりの世代は、今、何に反応して、何に向かって頑張ってるんでしょうか?

 

 

 

須藤奈々子
それぞれ自分の好きなものや極めたいものを定めつつ、それに対してどう取り組んでいくのか、自分発信で何かをやり始める人が増える時期なのかなぁとは感じています。

 

 

 

TDM
プロを目指してる人も多いですか?

 

 

 

赤澤かおり
そこは・・・難しいですね。本当に好きなダンスだけやっていこうと思うと、そこまで踏み込まず、マイペースを選ぶ人もいます。

 

 

 

須藤奈々子
上の世代にも下の世代にも素敵なダンサーがたくさんいますし、年齢的にも自分自身について考えることは増えているだろうし、人それぞれのペースがあるんだ、と感じることは多くなりました。

 

 

 

TDM
今後の目標や目指していることは?

 

 

 

赤澤かおり
ダンサーという表現者としていろんな場に立ちたいです。そのためにも今回のようなソロだったり、作ることにも意欲的に取り組んでいきたいです。いろんな人に見てもらったり目にとめてもらえるようものを、自らどんどん発信していきたいと思っています。

 

 

 

TDM
大きな舞台に立つことには興味はありますか?

 

 

 

赤澤かおり
昔はミュージカルにも出させてもらったりしたことはあるんですが、そこでもたくさんの出会いもあり、学べることがありました。そこを経たことで、さらに舞台の大小にかかわらず、自分のやりたいことが見えてきて、自分の身体をさらに追求していきたいと思っています。

 

 

 

TDM
何か衝撃を受けた作品や人物はいますか?

 

 

 

赤澤かおり
自分が関わる作品によって、刺激を受ける対象や見方が変わりますが、最近は、コンテンポラリーの作品を見るのが好きで良く観に行っています。先日は、熊谷さんや平原慎太郎さんの作品を観たり、また、過去には、柴一平さん、熊谷さんの作品にも出させてもらったこともあります。

 

今までコンテンポラリーを深くやってきたわけではないんですが、レッスンをたまに受けると、ジャズとはまた違った角度から、自分の身体と向き合える感覚があります。作品は抽象的で、一目見ただけではわからないものが多いのですが、「あれってこういうことかな?」と想像するのも楽しいです。最近はそういう表現に挑戦してみたいなとも思っています。

 

 

■赤澤かおりの才能。

 

 

TDM
自分にとって、相手の魅力とは?

 

 

 

赤澤かおり
okP1030421奈々子とは変に気を使わず、遠慮せず本音を言いながら対等に創作できてやりやすいです。ものづくりの感覚も私と違う部分を持っていて、同じ作品でも見方が全然違って面白いですね。尊敬しています。

 

 

 

須藤奈々子
かおりさんは、安定のダンス力に加えて、振付のセンスも大好きで、持ってる感覚も全部好きなんです。普段から尊敬していますね。人柄も面白いです(笑)。

 

 

 

TDM
踊るときは自分のどんな感覚と向き合っていますか?

 

 

赤澤かおり
腕をただ上げるのも、ブンッと上げるよりもクッと上げた方がいいかなとか、細かいことにこだわりはあるかもしれません。そのこだわりを体の隅々で表現できるようになりたいとは日々考えています。

 

 

 

 

須藤奈々子
彼女はそれを、こだわりの投げつけとかではなく、自然体に表現するという印象があって、それってすごいことだなと思っています。自分と向き合うことが好きと言っていましたが、それが本当に伝わるし、観ていて爽快だし、本当にただひたむきに向き合ってるんだなと見ていて感じます。

 

 

 

TDM
どんなスタンスでこれからのシーンに挑んでみたいと思いますか?

  

 

 

須藤奈々子
P1030376面白いなとか素敵だなと思ったものや人など、私がそれらをどう捉えたのか、ダンスで伝えていける作品をつくっていきたいです。今回は、自分の中にある衝動的な感情をストレートに表現するというのではなく、才能溢れる彼女の表現と私自身の感覚や思考をどう重ねて物語を伝えていくのか、その挑戦でした。

 

いろんな好みや意見があるとは思いますが、そこから生まれる発見にも出会いたいし、スタイルを決めないで枠にとらわれず、やり方やアプローチを変えればまた新しい観点が見えてくるのでないかと思っているので、挑戦し続けたいと思っています。

 

やればやるほど課題は山積みで、つくる過程で何が何だかわらなくなってしまう時もあるし、自分の感覚ってなくてもいいよなと思ってしまうこともありますが、時間をかけてつくることで見えることはあり、それはとても楽しい作業なので、その都度、自分の精一杯を信じて、それをコツコツと積み上げていきたいです。

 

 

 

赤澤かおり
私にとってダンスが1番素直に伝えられる表現です。それがどこまでできるのか、これからももっと追求していきたいです。S__5783612

 

今回のソロパフォーマンスを2月26日に広島で再演させていただくことになりました!私の地元が広島なんですが、ここ最近広島のイベントでナンバーを作りに行ったりして、つながりができ始めました。今回の公演準備も広島のみんなが動いてくれて実現できたので、本当に感謝しています。やっぱり、地元で何かできるのはとても嬉しいですね。お近くの方は是非足をお運びください。

 

 

[PICK UP]赤澤かおりソロパフォーマンス 広島公演 「きみ、ボク」

 

 



interview by AKIKO
photo by imu

’17/02/06 UPDATE

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tokyodancemagazine

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