

黒いグルーヴに最新のHIP HOPスタイルを兼ね併せ持つダンスクルーSCRAP MOBのメンバーKEN-G。ダンサー、オーガナイザーとしてアンダーグラウンドシーンで絶大な支持を得ながらも、三代目J Soul BrothersやGENERATIONSのバックダンサーなどメジャーシーンでも活躍の場が途切れないKEN-Gに、ライフスタイルやダンサーとしての想いなどを聞いた!
- KEN-G
(SCRAP MOB)
海外アーティストUSHER,OMARION,Chris Brownに憧れ、15歳よりDANCEを始める。ダンスチーム『SCRAP MOB/スクラップモブ』所属。
都内、渋谷中心に数多くのビックイベント、ビックパーティにゲスト出演しているHIPHOPクルー。
最新のダンススタイルを軸に、様々なスタイルを取り入れ、BLACK CULTUREを意識した、クリエイティブでエンターテイメントなSHOWは幅広い人から支持を得ている。
また、メンバー個々でも幅広く活動しており、数多くのアーティストのバックアップ、振り付け、演出から、イベントオーガナイズ、バトル、コンテストのジャッジ、TV CMモデル、ファッション雑誌モデル、ダンス音源制作等と、クラブシーン、ダンスシーンに欠かせないクリエイト集団で、今、目の離せない若手最有力ダンサーである。
■ 音楽、華やかなステージ、俺にはこの世界しかない!と思った
TDM:ダンスを始めた時期ときっかけを教えてください。
KEN-G:中2の冬です。中学に入って不良の先輩の影響でHIP HOPを聴くようになって、USHERなど踊れるアーティストの存在を知って、「めちゃくちゃかっこいい!」とダンスに興味を持ち始めて、仲間内でブレイクダンスの技を練習していました。
ちょうどその頃、東京でダンサーをしていた10歳上の兄が、25歳くらいで地元の青森に帰ってきてダンススクールを始めたんです。そのダンススクールだけじゃなく、近隣のいろんな所に車で行ってレッスンをやってたんですけど、そこに毎回のように付いて行ってレッスンを受けてました。それまでは兄とは10歳も違うから気を遣ってたんですけど、東京から帰って来た時は俺も中2になって同じレベルで会話も出来たから、いい事も悪い事も兄から全部教えてもらいました(笑)。兄はもうダンスはやってないんですけどね。
TDM:プロになろうと思ったのはいつ頃ですか?
KEN-G:中学までは野球少年だったので、中3までは野球とダンスを両立してやってましたが、ダンスに目覚めてたので、中3の時には「俺はダンスで食べていく!」と思っていました。兄からいろんなダンサーの旨味の部分を聞くわけですよ!そしたら中3の頭の中では、もう「自分が好きな音楽があって、華やかなステージがあって、なんていい世界なんだ!俺にはこの世界しかない!」と思ってましたね(笑)。
それから高校に進学しても、とにかくダンスに時間をかけたかったし、バイトで稼いでダンスに使いたかったので高3で定時制に移ったり、バイトで貯めたお金で年に1回、東京で暮らす姉の家に泊まりながら、ダンス雑誌でスクールのタイムテーブルをチェックして、いろんな先生のレッスンを毎日2、3本ひたすら受けに行ってました。
地元でも、兄が東京で活躍してるダンサーをワークショップで呼んでくれたりして、兄は現DA PUMPのU-YEAH君と同じチームだったので、U-YEAH君はよく来てくれていましたね。だから俺の憧れはずっとU-YEAH君。ひたすら髪型とかファッションを真似してました(笑)。そして高校を卒業して上京したんです。
TDM:イベントのオーガナイザーを始めたきっかけは?
KEN-G:7年くらい前の21歳の頃から始めたんですけど、中学からクラブに出入りして遊んでいた人間なので、昔からいろんなクラブイベントに遊びに行ってたから、そんな自分の好きなクラブで、何か出来たらいいと思ったのと、クラブを知らない後輩や若い子がちょっとでもクラブと繋がるように何か出来たらいいなという想いでイベントをやっています。
TDM:今の若いダンサーはクラブ離れしてると思いますか?
KEN-G:そうですね。クラブ離れは、今の時代は損得勘定で物事を判断する事が当たり前になってきたからだと思います。
今は昔と比べてダンスの仕事が幅広く増えて、ダンスで食べていける環境が昔より良くなってきたからこそ、クラブに出てお金を貰ったり、クラブに出て声援を受ける事を得として考えていない。
昔のダンサーはHIP HOPカルチャー全体が好きだったから、DJや他のジャンルの人とも一緒に遊んでて1つのパーティが出来たりしてたけど、今の子はHIP HOPが好きというよりは、ダンスが好きでやってるから、DJやラッパーやクラブシーンというものに接点も興味もない子が多いんです。クラブの入場料のお金をかけるなら他の所で使った方がいいとか。ダンサー側からも求めてないし、クラブ側からも求められてない。そういう状況ですね。
TDM:ご自身ではそういう世代にどうアプローチしていますか?
KEN-G:そういう状況を諦めてるわけじゃないけど、時代が時代だし、HIP HOPは強要するものでも、無理にやるものでもない。
俺自身も、クラブとの関わり方が昔とは変わっていて、若い時は、注目されているイベントには常に自分の名前がフライヤーに載っていたいと思ってたし、人がクラブのショーでキャーキャー言われてるのを見ても全く面白くなくて(笑)常に自分が出ていたかったし、常に自分の存在意義を示していたかった。
〝チームで成功したい〟という思いがあったから、とりあえずクラブでかまそう!と、常にクラブのイベントを探して、いつでも動けるようにしてたけど、今は、リアルな話、そんなにクラブに対して時間を費やしてもお金にならないんです。それは俺も損得勘定かもしれないけど、好きだからやってるというだけ。だから、今はどっちかっていうと、もうクラブはただ遊びに行く側ですね。
TDM:そう思い始めたのはいつ頃からですか?
KEN-G:チームとしてより個人としての活動が増えてからですね。前までは、クラブに行かない若い子に対して「なんでクラブ来ないんだよ!お前らダンサーだろ」みたいに上から目線な感じだったんですけど、今は「好きだったら行った方がいいんじゃない?」と促すくらい(笑)のテンションですね。
自分らが楽しい環境を作って、それを周りの後輩たちが見て、楽しいんだって事を分かってもらって、向こうから歩み寄って欲しい。常に自分たちが楽しんで、仲間と一緒にお金稼いで、遊びも仕事もWIN・WINの状態を見せられれば、少なからず盛り上がっていくかなと思います。
■何と言われようが、ダンスを通してお金を稼ぎたい
TDM:オーガナイズされているイベントについて教えてください。
KEN-G:今は、YOUNG MOBという深夜イベントを、3カ月に1回のペースでやってます。
自分のイベントの特色は、まずHIP HOPバンドを入れている事。普段自分らが聴いてるHIP HOPを生演奏してくれるんです。バンドの生演奏で3on3のバトルをやったり、バンド×ラッパーの楽曲をやったり、ダンサーとバンドのコラボショーをしたり、お客さんが目で見ても、耳で聴いても楽しめて、反応もいいので続けています。まず今のダンスシーンにはない試みだと思います。
だから、ショータイムが終わった後に、DJタイムの代わりにバンドのセッションタイムがあるんです。勝手にマイクを持ってステージに上がってフリースタイルをするラッパーもいれば、ミュージシャンが楽器を持ちこんでバンドとセッションしたり、ダンサーがサークルを組むなど、ダンスを通しての遊びというのをやりたいと思ってイベントを作っているんです。
あとは今頑張ってる若い子達をピックアップしたり、自分がかっこいいと思った先輩にゲストで出てもらうなどしてますが、前回4周年のアニバーサリーだったんですけど、過去一番の集客動員数で、その光景を見て「やってて良かったな」と思いました。やっぱり自分の好きな事で、周りの人が楽しんでる姿は一番糧になりますね。
TDM:デイタイムのイベントもやられていますよね?
KEN-G:はい。去年からMOBというデイイベントを始めたんですけど、そこにもコンテンツとしてバンドを入れて、バンドを通してHIP HOPや音楽を楽しんでもらうというコンセプトでやっています。〝このイベントでしか見れない〟っていうコンテンツがないと厳しい時代だから、その1つとしてバンドがいいかなと。
ダンスイベントではあるけど、形式ばったMCとかはいないし、クラブでやるからには、ただダンスだけ踊ったら帰るというのは絶対嫌なので、DJタイムも楽しんでもらえるようにはしています。
俺のイベントはいろんなアーティストを呼んでいるので、そういう人たちとも繋がりを広げて、各々の活動に活かして欲しい。俺もクラブから繋がって活動場所が広がったりもしてるので、たががクラブといっても、人と人とが繋がれる可能性は無限大だと思ってます。
TDM:深夜イベントをやっていてデイタイムもやろうと思ったのはなぜですか?
KEN-G:単純に自分の幅を広げようと思ったんです。自分がダンサー以外にオーガナイザーとしても可能性がもっとあると思ってるし、俺は〝ダンスを通してお金を稼ぎたい〟と思ってるので。誰に何と言われようが、どれだけ稼いでようが、しっかり芯があって、しっかりと伝わるいいものを提供してれば「イベントでお金を稼いでいます」って堂々と言えると思うんです。
たくさんイベントがあればダンサーたちの収入が増えるからというのもあります。バイトしながらダンスをやってるより、ダンスで生活出来る環境を作ってあげる事が大事なのかなって。ダンサーもお金を稼ぐという動きをしていかないと広がっていかないと思うんです。お金ばかりではよくないからバランスは大事ですけど、俺はどうせだったら自分が好きだと思ってやってるダンスで稼ぎたいし、ダンサーたちには稼ぎたいと思ってて欲しい。
TDM:今イベントで若い子にノルマを課しても、売らずに自腹を切る事も多いと聞きますが…
KEN-G:それに対しては「それはまったく意味ないよ」と教えます。もちろんその子の意識次第で対応は変えますが、ダンサーでやっていきたいと思ってる子には言います。俺は、若い時にノルマをかけられる事自体嫌だったので、「じゃあ、そのノルマの倍以上人を呼ぶんで、逆にギャラください」って言ってお金を貰ってきたし、人を呼べるって事で一目置かれるから、いい時間に踊らせてもらったりして地位を確立していったので、ノルマを売らないとかは俺からしたら本当にそれはナンセンスな事ですね。
■地位向上のために、ダンサー自身がもっと確立する事が必要
TDM:ご自身の中で、ダンサーとオーガナイザーのバランスはどんな感じですか?
KEN-G:俺はそこをセパレートしてなくて、イベントを主催してるのもダンサーの俺だし、ライフスタイルですね。自分で言うのも何ですけど、俺フットワークがめちゃくちゃ軽いんですよ。誘われたらすぐ行くし、興味があるものなら1人でも全然行くし、人と話すのが好きなので、「この人カッコいいな」って思ったら男女関係なくナンパして話すし、そういう意味では、人よりは経験値が多いと思うんです。人や環境と繋がってるから、いろんなものを吸収して視野を広く出来る。だから、ダンサーはダンサーだけという考えにはならないですね。
でも、収入源としてのメインはバックダンサーですかね。縛られるのが好きじゃないので、レッスンもあまりやっていません。好きな時に好きなようにやりたいので(笑)人の下にいたくなくて、常に自分で動かしていたいタイプなんです。
TDM:その姿勢はバックダンサーの現場でもそうですか?
KEN-G:そうです。この姿勢は、バックダンサーの現場でも活きる事が多いです。例えば、「先輩のいう事は絶対」とか、指示があった通りにやるというよりは、来た指示に対して一回飲み込んで、「だったらこうやった方がもっと良くないですか?」というような意見が言える。それは自分で物事をやってる人間ならではの強みかなと思います。
TDM:それはある意味、とても強気ですよね。
KEN-G:俺は自分でいろいろやっている分、舐められたくないという気持ちが強いんです。
ダンサーって、まだまだ現場での立ち位置は下なんですよ。一見ステージの上では華やかな職業かもしれないけど、実際はそんな事なくて、まだまだバンドやクリエイター、カメラマンなどの他の業種の人より扱いが雑だと感じます。
身体動かして、頭も使って、個人事業主で、めちゃくちゃ大変ですごい職業なのに、そこに対しての費用対効果がまだまだアンバランスだと思います。でも、ダンサーの中には、この仕事がなくなったら食べていけないっていう人もいるから納得いかない指示にも従ってしまう。そこに抗ったら仕事が無くなっちゃうから、その環境でやっていくしかない。
ダンサーが上に立ちたいとかではなくて、他の業種と同じレベルでフラットにいれる環境を作るためには、ダンサー自身がもっと確立しなきゃいけない。だから人と同じ事をやっててもダメなんです。
TDM:そういう環境の中で、ご自身で気を付けてる事ってありますか?
KEN-G:誰とでも対等に話すようにしています。あとは、いい事でも悪い事でも言いたい事は言います。ケンカ腰ではなく、いちダンサーとして「俺はこう思います」という意見はしっかり言います。仕事だからもちろんわきまえるけど、気持ち的にはスタンスは変えたくない。常に普段の自分で臨んでます。
■好きな事やって、稼げて、周りもハッピー、が理想!
TDM:今後の活動を教えてください。
KEN-G:実は、今ワクワクするような新しい繋がりが出来たんです。e-Sportsといって、オンラインゲームの競技があるんですけど、その大会のハーフタイムなどにダンスのショーが入ってるんです。YouTubeで観てても、率直に言っていいものが出来てなくて、自分だったらもっといいものが出来るのにと思って、思い切ってe-Sportsのプロチームの代表にTwitterのDMで「個人的にもファンで大会の様子を見させてもらってますが、自分だったらもっといいものが出来るし、ダンスもe-Sportsもお互いに盛り上がってるシーンなので、協力すればもっとカッコいいものを作れると思うので一緒にやりませんか?」ってオファーをかけてみたんです。そしたら連絡がきて、なんと一緒にやる事になったんです!
e-Sportsの大会は、YouTubeの生配信で2~4万人くらいの人が観るようなデカいマーケットなので、企業のスポンサー料がとてつもないんです。成功させればダンサーにも新しい活躍の場を作れるし、自分としても新しい仕事なので掴めたら大きいですね。
TDM:すごい行動力ですね!具体的にはどんな動きがあるのでしょう?
KEN-G:近い日程で言うと、12月23日に俺の主催で大会をやります!でも、実はその日は、もともとデイイベントのMOBをやろうとして会場を押さえてたんですけど、その日に別の大きいイベントが重なっていて、出て欲しいダンサーが思うように集まらなかったんです。でも、箱押さえちゃってるし、何か面白い事出来ないかと考えた時に、e-Sportsの事が浮かんで、今回は完全に頭を切り替えて、MOBは諦めてe-Sportsの選手たちを呼ぶ大会の中に、ダンスを組み込むというイベントにシフトチェンジしました。
でも、俺1人ではさすがに仕事量が多いので、チームメイトと普段から一緒につるんでる仲間の、数字が得意で頭がいい信頼出来る2人に入ってもらって3人で動いてます。初めての事だからどうなるかわからないけど、まだダンサーで手を出してる人はいないから、ここらでかましておこうかなと!(笑)。
TDM:新しい試み楽しみですね!では、今後の目標を教えてください。
KEN-G:ダンスだけじゃなくて、ダンスを通していろんな事をやっていこうかなと。ダンスって、どんなイベントでも華やかにする事が出来るので、企業のイベントなら企業向けに、音楽関係のイベントならその層に伝わるようになど、適材適所で面白い事が出来る。その入り口を増やしていって、ダンサーがもっとプレイヤーとして活躍出来る場を作っていきたいんです。
人とコミュニケーション取るのが好きなので、様々な案件の話をもらう機会も多いし、それに対して人材をキャスティングしたり、頑張ってる後輩に振ってあげたり、そういう架け橋が出来ればいいですね。
自分のダンスも含め、もっとダンサーの素晴らしさっていうのをどんどん伝えていきたいと思ってます!ま、そうとは言え、まだまだ挫折もするし、やらかす事だっていっぱいあるんですけど、好きな事やって、稼げて、周りもハッピー、っていうのが理想ですね!
TDM:理想をぜひ実現させてください!本日はありがとうございました!
interview &edit by Yuri Aoyagi
photo by AKIKO
’19/12/2 UPDATE
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