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DANCE DANCE ASIA東京公演2019特集 KATSUYA

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世界で活躍する日本とアジア気鋭の振付・演出家、ダンサーが舞台作品を共同制作するプロジェクト「DANCE DANCE ASIA(以下、DDA)」の東京公演がまもなく開催。5年目を迎える今回のDDAでは、6週間のクリエーションによる共同制作2作品と日本とアジアのスペシャルユニット3作品が発表される。その内の一つ、Team 3Tの作品において、振付・演出補佐を担当するKATSUYAは、今回でDDAに参加するのは4度目。実力あるBBOYでもある彼が踊らずして、舞台作品に携わる事で生み出そうとしているものとは…?今作への意気込みと、彼のように多様性を持ち始めているBBOYシーンについても語ってもらった。

 

「What if… Just dance それでも僕はダンスを続けていく」振付・演出 3T(スリー・ティー/ベトナム)


 

  • KATSUYA

1990年生まれ、熊本県出身。ダンサー。小学生の頃からダンスを始め、日本最大のダンスイベントOld School Nightで3回優勝、世界最大のブレイクダンスイベントBattle Of The Year(ドイツ)で準優勝。テレビ番組『スーパーチャンプル』(CTV)などに出演。活動の場を東京に移してからも世界大会UK BBOY Championships(イギリス)のソロバトルで日本代表、Battle Of The Yearで「The Floorriorz」として3連覇など、世界のダンスイベントで好成績を収める。また、国内外を問わずショーケースやワークショップ、舞台作品への出演多数。

 

  • DANCE DANCE ASIAとは

ストリートダンスを通してアジア域内のダンサーの交流を促進すると共に、ストリートダンスを軸とした舞台作品の共同制作を行うプロジェクトとして、2014年にスタート。本プロジェクトを通して、様々な表現力をもつ個性豊かなアジアのダンサーが、相互に刺激し合いながら一つの舞台作品を作り上げる過程を通じて、ストリートダンスの新たな地平が開かれている。また、ストリートダンスに限らず、演劇、音楽、映像、美術等、様々なジャンルで活躍するクリエイターとの協働によって、舞台公演におけるストリートダンスの更なる可能性が広がることを目指している。今年7月に東京公演、秋にはタイおよびベトナム公演を控えている。

 


 

■過去のDDAで感じた“演出”の可能性

 

TDM:KATSUYAさんが日本人ダンサーで一番DDAに関わってきた回数が多いという事ですが、最初に関わったのはいつですか?

 

KATSUYA

最初は2015年3月に90’sとして参加したベトナムとタイ公演でした。それまでは、個人的に海外のダンスバトルに参加したり、短いショーを作ることは行っていましたが、その時はストリートダンスで30分の舞台作品を作るという、自分たちにとって初めての経験だったのでいろいろ大変でしたね。

 

その次が2015年11月の公演「A Frame」でした。約70分間の作品で、俺的にはあれに参加出来て良かったと思っています。東南アジア勢との交流も良かったですし、OguriさんとJillianの演出やディレクションがすごいなと感じました。

 

まず、あの2人は俺たちダンサーの誰よりも早く稽古場に来て、誰よりも遅く帰る。そして、「こうしてほしい」という内容もすごく的確だし、俺たちの意見や希望も聞いてくれて、本当にすごいなと思いました。

 

それまで、なんとなく演出のイメージって、演出家の「こうしたい」に対して、演者がどれだけ形にしていけるかだと思っていたのですが、「A Frame」で感じたのは、OguriさんとJillianの演出は、演出家としての「こうしたい」もありつつ、俺たち演者の個性が強かったのもあって、演者の「こうしたい」とのバランスをうまく取ってくれました。

 

結果、本番のステージでは、自分たちだけでは出せなかった表現や見せ方が出来る作品に仕上がったなと実感しました。気づいたらそうなっていたという感覚でした。それと今になって思うのは、もう1人の演出家・スズキ拓朗さんの要素も入っていたからかなと。当時はなかなか気づけなかったのですが、スズキさんがフレームを使う事や色々なアイデアを出してくれたと聞いたので、ストリートダンサーのOguriさんとJillianではない視点も相まって、いいバランスで演出してもらえたのかなと感じます。

 

いや~、「A Frame」はめっちゃ好きな作品なんですよね~(笑)。

 

TDM:その後、Team HamdiのダンサーとしてDDA東京公演2018に出演、そして今回のオファーをもらった時はどういう気持ちでしたか?

 

KATSUYA:Hamdiの作品は、8割くらい振付をもらって、演出された通りに踊る感じだったので、自分は、演出家と意見を交わしながら作る方が合うタイプなんだなと気づけました。そして、今回、最初にプロデューサーの方から「演出の3TがKATSUYAに振付・演出補佐をやってほしいと言っているのだけど、どうですか?」と連絡をもらいました。3Tの事はもともと知っていたのですが、自分が踊らずに演出をするのはやった事がないので、最初はとても迷いました。

 

でも、演出や振付を1度やってみたいという気持ちもあったし、これも何かのタイミングだなと思いました。3Tは演出経験がある人なので、彼のアシスタントとしてやらせてもらえるのはありがたいし、演出をやってみて、自分に合わないなと感じてもそれも経験なのでチャレンジしてみたいと思いました。DDAに初年度から関わってきた者として、これも縁だと思って引き受けました。

 

■振付・演出補佐に初挑戦

 

TDM:今回の作品を進めるにあたって、どんなやりとりから始まりましたか?

 

KATSUYA:リハが始まる前に2回、日本で会いました。1回目は彼の考えている内容を聞いて意見交換。2回目はリハの前日で、どういう風にサポートすればいいかを3Tに聞いてみたのですが、「“男”をテーマにする。あとは俺を信頼してくれ。」と言われました。

リハが始まると「ここの振付を考えて欲しい」などの指示はありつつ、ほぼ3T主体なので、俺はそれを見て「もっとこうしたら」と思う事があったら伝えて、「確かに。そうしよう。」という時もあれば「いや、このままでいく。」というやりとりがある感じです。

 

TDM:3Tさんが作品を作る上で判断基準にしているのは、どんな所だと思いますか?

 

KATSUYA:お客さんに考えさせるように作っているのかなと思います。わかりやすくする所も大事ですが、あえてはっきりさせない事とのバランスにこだわっているようです。3Tは、作品を観終わった後、観客から色々質問されたいと言っていました。きちんと答えるし、そこにコミュニケーションが生まれるから、それを大事にしたいそうです。リハで俺が「こっちの方がわかりやすいのでは?」と問いかけると、「いや、これはあえてこのままでいく。」と言う時は、「なるほどな」と納得出来ます。

 

TDM:作品において、今の課題は?

 

KATSUYA

今、前半の稽古を終えて、ある程度作品のベースが出来上がったのですが、これからの課題としては、群舞とソロのバランスの持っていき方です。日本人は協調する文化があるからか、群舞は強いけど、自分の個を出すのが東南アジアメンバーよりは弱く、逆に東南アジアのメンバーのソロはいいけど、群舞が弱い。そういった群舞とソロの時のバランスをどう見せていくかだと思っています。

 

TDM:今回の出演メンバーを紹介してください。

 

KATSUYA:東南アジアメンバーは3Tが、日本人メンバーは俺が声を掛けました。

 

 

GEN ROCは群馬出身のGOOD FOOTのメンバーで、今、最も若手で上がってきているBBOY。今の段階で舞台にチャレンジ出来るのは彼にとってもいいタイミングじゃないかなと思い、誘いました。

 

Sakyoは去年一緒にトリプルビル※に出た時に知り合いました。約3か月間一緒にいて、気も合ったし、間違いないスキルの持ち主。Sakyoは青森に住んでいて、自分がフランスで得た経験を地元に持って帰りたいと言っていました。だから、今回のDDA東京公演の経験は、国際交流も出来るし、彼にとってもプラスになるんじゃないかなと思います。

 

※トリプルビル:世界的ダンス・フェスティバルのリヨン・ダンス・ビエンナーレと、日仏友好160周年記念の「ジャポニスム2018」と連携した、日仏コラボレーション企画。2018年9月に横浜公演、9月から11月までパリを皮切りにフランスとスイス各地で2ヶ月半にわたるツアー敢行された。

 

Chenoはタイの99 FlavaというクルーのBBOYです。今33歳でタイでのBBOY界の大御所。俺は結構長い付き合いなのですが、考え方がすごくしっかりしていて、ダンスも素晴らしいし、大学時代にコンテンポラリーダンスについても学んだそうです。だから、3Tや俺が何も言わなくても、「ここはこうした方が良さそうだね。」と作品や進め方を理解してくれているし、今回のメンバーの中でも最年長なので、若いメンバーをまとめてくれています。

 

C-Lilはラオス人で25歳。ラオスで唯一、世界大会でも名前が知られているBBOY。彼はパワームーブが主体ですが、本当にすごいです。BBOYから見ても、あんなに出来る人はなかなかいない。人間的には、日本語も上手で、めちゃくちゃかわいい奴です(笑)。

 

CANCELはベトナム人で、やんちゃですが、いい踊りをします。唯一今回初めて会ったBBOYなのですが、3Tと同じS.I.N.Eのメンバーでもあり、彼を見ているとホントにダンスが好きなんだなと伝わってきます。彼の表現力と爆発力も今回見所の1つになると感じていますね。

 

■外の世界と繋がり始めたBBOY

 

TDM:今のBBOYのシーンはどんな感じですか?

 

KATSUYA:少し前までは、大きい世界大会が年に3~4つあって、それに向けて日本予選に勝たないと海外に行けるチャンスはなかったのですが、今は、国内外でBBOYのイベントも増えたので、わざわざ日本予選から順を踏まなくても、自分でお金を払って直接海外に勝負しに行く人もいます。

 

BBOYの人口は増えていて、レベルも上がっています。今活躍している現役BBOYは個人的な感覚だと23歳以下くらい。24歳以上になってくると、バトルでの優勝を目指してやっていくのか、仕事を持ちながら趣味としてやっていくのか、ダンスとの関わり方が変わっていくような気がします。俺らが子供の頃に見ていた先輩たちは何歳になっても優勝を目指していた気がするんですけど、今は、好きな事としてダンスを続けるという選択肢が増えたのかなと。でも、そのスタンスってある意味、本質的というか、ちゃんとカルチャーとして捉えていて、勝ち負けも大事だけど、そこに重きを置きすぎない人が増えているという事なのかなと思います。今はまだ二極化しているとは思わないけど、これから分かれていくのかもしれないなと感じます。

 

今、新しい流れとしては、BBOYは自分達がやってきた事を使って新しい未来を作っていこうという動きがあります。例えば、スケーターって、スケートボードが好きで、その為のアパレルブランドを立ち上げて、例えば今ではSUPREMEとかTHRASHERなど、一般の人たちにまで浸透しているものもあったり、スケボーを撮影していたのがきっかけで、今では映画を撮っている人もいたり、もともとそのカルチャーが好きな気持ちありきで、そこから広がって、違うフィールドとクロスオーバーしている。同じような事が、BBOYにも起きていて、BBOYが色々な人と繋がったり、新しい事に挑戦するなど、どんどん外の世界を見ている印象がありますね。

 

■BBOYの多様化

 

TDM:KATSUYAさんは人材育成も行っていますよね。

 

KATSUYA

はい、俺たちがやっている人材育成プログラム「THE FLOORRIORZ Academy」では、ブレイキンを教えるのがベースですが、DJの方を呼んでDJ体験をしたり、グラフィティを描いてみたり、カルチャーも教えています。あとは、整骨院の先生に来てもらって、身体の事を勉強するなど、ダンスだけではないことも学べるようにしています。

 

また、アカデミーの生徒には、自分たちで考えて生み出せるようになって欲しいと思っています。今の子たちはレッスンやイベントが当たり前のようにあるから、与えてもらうのが当たり前になっていて、もしイベントで負けても、また来週次のイベントがあるから、あまり負けた事を考えなくなるし、レッスンもありすぎて、先生に言われた事をじっくり考えなくなる。そうなると、ダンスだけじゃなくても、全て与えられるのを待つようになってしまう。それはよくない。

 

アカデミーは、1年単位でカリキュラムを組んで、毎年ブラッシュアップしているのですが、前半は基礎を教え、後半になるにしたがって、どんどん自分で考える時間を増やしています。立ち上げて今年で4年目になりますが、今年度は小学2年生~25歳くらいまで20人くらい入学していて、1コマ2~3人の講師が付いています。

 

TDM:ダンサーとして生きていく事を目指している後輩のBBOYたちは多いですか?

 

KATSUYA:ん~…半々くらいじゃないですかね。バトルやオリンピックのように点を競うスポーツとしてやっていくのか、カルチャー的にライフスタイルとしてやっていくのか、その人口の割合は半々くらいかなと思います。特にブレイキンは若者が活躍出来る文化だと思うから、俺自身、40歳になった時に若い子たち相手にバトルしたいとは多分思わないです。

 

ストリートダンスの美しい所って、現場で起きている一瞬一瞬が素晴らしいと思っていて、その反面、歌とか他の芸術みたいになかなか形として残らないから、ある意味、残るようなものを作っていかないと、自分がダンスをやっていた意味も残らない。だから、自分はもっと何かを残していきたいので、今の自分はカルチャー寄りになっているのかなと感じます。でも、スポーツなのかカルチャーなのか、バランスが大事。どっちかだけが正解ではないし、ちゃんと両方の感覚を持ちながらバランスよくやれるのがベストかなと思います。

 

TDM:ブレイクダンスは今やオリンピックの正式種目になるかもしれないところまで盛り上がっていますね。

 

KATSUYA:はい、もし正式種目になれば面白そうですね。でも、カルチャーからの視点では、スポーツになるという事で、賛否両論あるみたいです。どうやって順位を決めるんでしょうね。一般の人にもわかりやすく、かつ、ダンサーも納得出来る採点方法にしないといけないと思うんですが、日本ではその辺をKATSU1さんが中心になって動いています。

 

TDM:KATSU1さんはBBOY界にとってどういう存在ですか?

 

KATSUYA:いちBBOYとして、こんな事も出来るんだ!というのを見せてくれるし、その道を後輩たちにも切り拓いてくれている人だと思います。オリンピックの事だけでなく、まだBBOYが海外に行くようになる前から、1人で海外に行って、海外のチームのメンバーになったり、外国人ダンサーを日本に連れてきて、俺たちも海外と交流しやすくしてくれたり、すごい人です。人としてはものすごくピュア。好きな事に対して子供みたいに純真で、踊りもまっすぐです。

 

TDM:BBOYの多様化を担う一人になっているんですね。

 

KATSUYA:そうですね。BBOYの中には、ブレイキンの枠組みの中だけでは評価されにくいけど、何か別の才能と共に評価される子たちもいます。そういう子たちは、ブレイキン+何かで自己表現しているように思います。

 

俺の場合、ここ数年は舞台に関わる機会を頂くので、有難く挑戦させてもらっていますが、舞台の人間だとは思っていないです。ただ、舞台の表現に携わらせてもらっていることで、バトルやショーを踊る時に、活きているものもたくさんあります。今までダンスをどう踊るかって事しか考えてなかったのが、こう踊るとこういう風に見えるんだろうなという事まで気に出来るようになりました。舞台での自分もバトルやショーでの自分も、いい相互作用が出来たらいいなと思いますね。

 

■BBOYだけで創り上げられた作品に乞うご期待!

 

TDM:KATSUYAさんにとってDDAに参加する事は、どんな経験ですか?

 

KATSUYA:とてもいい経験です。

 

今年1月に、マレーシアでBBOY以外のジャンルの人が参加するバトルのジャッジをやったのですが、結構色々な人からDDAの話をされました。「2015年のベトナムのワークショップに参加したよ!」とか「俺の彼女が去年DDA東京公演に出たんだよ!」とか 。3Tもベトナムのダンサーたちに「俺も連れてって欲しい」とよく言われると言っていました。だから、DDAは今や東南アジアで、ものすごく影響力を持っていると思います。若いダンサーたちもDDAに参加する事でダンス人生が変わる人もいると思います。

 

TDM:最後に今回の作品の見どころを教えてください。

 

KATSUYA

ダンサーには、演出も振付も踊っているのも全員BBOYで構成されているので、BBOYがここまで出来るんだ!という所を見てほしいですね。そこで1つの衝撃を与えたいです。今回のメンバー5人はBBOY界的にも各々活躍しているいいメンツなので、普段舞台を観ないダンサーでも楽しめると思いますね。彼らが舞台でもどう活躍してくれるのかが、見どころだと思います。

 

一般の人には、シンプルにブレイキンの魅力を感じてほしいです。これから世の中でブレイキンを見る機会も増えますが、ブレイキンの面白さを見せられると思います。

 

今回の作品にはポジティブなメッセージが込められているので、ダンサーにもダンサーじゃない人にもそれを受け取って帰ってもらえたら嬉しいです。是非見に来てください!

 

TDM:ありがとうございました!

 

★[公演情報]「アジアのストリート発、新たな表現を拓くダンス 「DANCE DANCE ASIA–Crossing the Movements 東京公演 2019」

 

 

interview by AKIKO
edit & photo by imu
location at FLAMES中目黒
’19/6/29 UPDATE

 

 

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tokyodancemagazine

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