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アクロバットパフォーマー 亀山敬佑

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海外でのショーに憧れる日本人パフォーマーは少なくない。その理由の一つは、日本よりも高いショーのクオリティとレベル。その背景にはショービジネスの大きな成功があり、実力高いパフォーマーが育ち、活躍している。その中で、10年以上その夢に挑み続け、現在も奮闘中というアクロバットパフォーマーがいる。日本で活躍の場が与えられながらも、安住を求めず、夢を叶えるために初心を忘れずに努力し続ける亀山敬佑氏だ。「夢を追うのに早いも遅いもない」。彼が大きく羽ばたくその日を願い、TDMは全ての夢を追うパフォーマーの背中を押し続けていくべく、彼の夢へ挑む姿勢にスポットを当ててみた。

 


 

  • 亀山敬佑

    image1大阪府堺市出身。高校生の時に器械体操部に所属。高校卒業後にスタント事務所に入り、同時にストリートダンスも始める。東京ディズニーランドとユニバーサル・スタジオ・ジャパンを経て、舞台や、EXILE、三代目 J Soul Brothers、きゃりーぱみゅぱみゅ、遊助、浜崎あゆみなどアーティストのLIVE等にも出演。現在はサンリオピューロランドでのショーに出演しながら様々なステージでも活躍中。

 


■エンタテイメントショーの魅力「この世界でやっていくしかない!」

 

TDM : この道に進むことになったきっかけは?

 

亀山:昔からジャッキー・チェンの映画が好きで、スタントに憧れていました。高校卒業後は進学や就職をするつもりはなく、スタントマンになることしか考えていませんでした。両親はスタントをやることを反対していました。そのためまずは、両親を説得させてスタントの事務所のオーディションを受けました。高校では器械体操部だったので、アクロバットができることをアピールしながら、独学の演技や殴り合うシーンを一生懸命やって、なんとか合格できました。そして、事務所に入ってすぐディズニーのスタントパフォーマーのオーディションがあったのですが、それに合格すると、反対していた両親もだんだん認めてくれるようになりました。今では活躍を応援してくれています。

 

TDM:ディズニーダンサーをやってみて、何が印象的でしたか?

 

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実は、その時はディズニーランドに行ったこともなく、事務所から受けに行きなさいと言われて受けてみただけでした。正直、地元・大阪にUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)ができたばかりだったので、ディズニーランドよりはUSJの方に興味があったんです。でも、受かることができて、そこからディズニーへの印象が大きく変わっていきました。それまで、僕は映像の世界に魅了されていたのですが、エンタテイメントショーに初めて触れ、目の前のお客様から拍手や歓声をいただいて、「こんな世界があったのか!」とすごく感動しました。他の共演者のプロ意識もすごくて、何もかもがキラキラして見えて「このエンターテイメントの世界でやっていくしかない!」と思いました。

 

ディズニーのスタントパフォーマーになってから、たまたまUSJでブレイクダンサーがストリートパフォーマンスをしている映像を見ました。僕は高校卒業時に、スタントの活動をしながら、OCAT(大阪シティエアターミナル)や地元の駅でブレイクダンスも練習していたので、ブレイクダンスでパフォーマンスができるのに魅力を感じました。それから、すぐオーディションに応募し、合格することができてUSJで働くことになりました。USJではストリートパフォーマンス、パレードにも出演しながら、ターミネータのショーでは念願のスタントもやりました。USJでのパフォーマンスは約3年間、24歳まで続けました。

 

 

■自分の体が動く今、挑戦しないでどうするんだ!

 

 

亀山:USJでの生活が定着してきた頃、千葉県・舞浜の常設シアターで行われていたシルク・ドゥ・ソレイユの「ZED」を見に行きました。それまでシルク・ドゥ・ソレイユは素晴らしいと話は聞いていましたが、初めて生で体感して、「これは、日本のエンタテインメントと全然違う!こういうショーに出演したい!」と思いました。その衝撃で、エンタテインメントの本場ラスベガスとロサンゼルスに勉強に行きました。そこでラスベガスのショーをすべて見て、ジャネット・ジャクソンやマドンナのバックダンサーをしているSohey君とも知り合うことができて、彼のいろいろな話に刺激をもらいました。アメリカのエンタテインメントは、施設や舞台に関してのお金のかけ方が全然違うんです。そして、自分もあの大きなステージに立ちたいと願うようになり、海外進出という夢を追いかけて、今に至ります。その間も、お金をためては何度もアメリカに出向いて、オーディションやワークショップを受けたり、ショーを見にいきました。

 

TDM:すごく行動派ですね。この10年間で心境の変化はありましたか?

 

亀山:USJを辞めてから10年が経ちますが、気持ちの波もありつつ、様々な活動をやってきました。国内でのパフォーマンスやレッスンを受けたり教えたりしながらも、何度も海外のディレクターの方に、動画を送ったり、オーディションを受け続けています。ですが、最終選考ギリギリまで行ってもダメ、受かりそうなのにビザの関係でダメ、などが何回もありました。「もう駄目だ。諦めて日本でやっていく方がいいのかな。」と何度も思いました。でも、その度に「やっぱりアメリカに行きたい、行くべきだ」と思うんです。海外でパフォーマンスすることを夢見ながら諦めた人も周りにたくさんいますが、行きたい想いが強い人は絶対に行くべきだと信じて挑戦し続けています。

 

TDM:諦めかけてもその情熱にまた戻れるのは、どうしてですか??

 

亀山

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「なぜ東京に来たのか、なぜこの世界で頑張っているのか」を考えるようにしています。「本当にやりたいことは、コレじゃない。」「教えることは歳を取ってからでもできる。自分の体が動く今、挑戦しないでどうするんだ!」と。そう思うってことは、自分がそれを求めているということ。妻も子供も、自分の道を好きなように突き進みなさいと応援してくれています。

 

TDM : 初心を忘れず、自分の内なる声に耳を傾けるということですね。影響を受けた人との出会いはありますか?

 

亀山:九州男児新鮮組のKENTAですね。彼とは、一緒にラスベガスにシルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けに行きました。彼は合格し、僕は不合格でした。そして、オーランドでの「La Nouba」のショーに出演が決まり僕を招待してくれました。正直、悔しさもありましたがショーは本当に素晴らしかったです。KENTAは本番が終わってからも、夜中の4時くらいまで練習していました。僕よりも若いですが、彼の行動や考え方は独特で、熱があって、今でも夢を追いかけているし、たくさん刺激を受けています。

 

 

TDM : その時はどんなオーディションだったんですか?

 

亀山:ダンスの振り写しはあるのですが、「動物になってみて」などの色々なテーマが与えられて、自由演技をします。その時は2日間あって、10次審査くらいまでありました。全世界から1000人くらい受けに来ていました。

 

 

■一つのことをやり続けるのは得意!

 

 

TDM:自分の得意なことと苦手なことを教えてください。

 

亀山:得意なことは、一つのことを、やり続けることです。これは得意です。どんなことでも、好きになれるというか、苦じゃないですね。好きじゃなくても興味を持てるようにできます。ただ一つ、苦手なことは、振りを覚えることです(苦笑)。振り覚えへの興味も持てるようにします!(笑)。

 

TDM : 自分のパフォーマンスで大切にしていることは?

 

亀山:一番は、見ている方を楽しませること。そのために、まず自分が楽しむようにしています。

 

TDM : 好きな作品や音楽はありますか?

 

亀山:好きな作品はシルク・ドゥ・ソレイユの「O(オー)」です。あの音楽、舞台セットは素晴らしく、特に、シンクロの美しい演技、乱れない足さばきには魅了されました。音楽は、マイケル・ジャクソンが大好きです。

 

TDM :将来、自分の目指すパフォーマー像は?

 

亀山

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「日本人でもこれだけできるんだ!」と海外の人たちに驚かれるようなパフォーマーになりたいです。やっぱり、海外のパフォーマーは跳べるだけでなく、踊れる人がたくさんいます。ラスベガスの「Mystere」のショーに出演してるロス・ギブソン(Ross Gibson)は元々タンブリングのチャンピオンでもあり英国のプロダンサーでした。難しいタンブリングを決めた後に、ピルエットを何回転も回って感性も素晴らしいんです。そして、そういうパフォーマーが活躍できている背景としては、ショービジネスの環境が日本よりもちゃんと成立している現実があります。観客動員も多いため、莫大なお金が動きますし、パフォーマーを目指す人が多い。そういう意味でも、日本のショービジネスシステムも変えていきたいです。

 

TDM : いつか出てみたいショーはありますか?

 

亀山:いろいろありますが、2017年8月からドバイで始まった「La Perle」というショーですね。これは、シルク・ドゥ・ソレイユの「O」を手掛けたフランコ・ドラゴン(Franco Dragone)が手掛けた水を使ったショーで、まだ実際には見たことないんですが、映像で見る限りとんでもないことになっています!

 

 

■エンタテイメントを愛しているから、いばらの道でも突き進む!

 

 

TDM : 失礼ながら、パフォーマーとしては‟若い“とは言えないお年ですが、身体的にはどんなケアをしていますか?

 

亀山:今年34歳なので、年齢的にもパフォーマーを長く続けるためには20代とは違ったケアが必要だと思います。お酒は好きなんですが、日常的な飲み会は基本的には断ります。その代わり練習や体のケアをしたり、他にやるべきことがあると考えます。一番気を付けているのは、体重を増やさないこと。柔軟性と体幹を意識した質の良い筋肉をつけるようにしています。打ち上げなどで飲みに行ったら次の日は絶対走りますね(苦笑)。

 

TDM : 世界のエージェントへ向けて、自己PRを!

 

亀山:心から作品を理解し全力で表現して自分にしか出せない空気感をだします。エンタテインメントを愛しています。

 

TDM:最後に、亀山さんのように海外を目指すパフォーマーの皆さんにメッセージをお願いします。

 

亀山okP1170485僕は高校の2年間しか器械体操をしていなくて、ダンスも高校卒業後にやり始めました。周りに比べれば遅いスタートですが同じ境遇の人はたくさんいると思います。ですが僕は環境に恵まれて今までたくさんのステージに立たせていただきました。一番大切な事は情熱を持ち続ける事だと思っています、それさえあれば勝手に行動するし、生活自体も変わります。そして導いてくれる人や力になってくれる人も現れるから。

 

何があっても、続けること。モチベーションが下がったり、誘惑や犠牲にしなくてはいけないこともたくさんあると思いますが、楽な道へ行かずに、いばらの道でも、自分の気持ちを曲げずに突き進んでほしいです!!

 

TDM :海外の大きなショーで活躍する亀山さんの姿、楽しみにしています!今日はありがとうございました!

 

interview & photo by imu
edit by Yuri Aoyagi & imu

’18/08/22 UPDATE

 

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tokyodancemagazine

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