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鈴木優人×TAKAHIRO×菊地賢一 ~音楽×ダンス×スイーツ@Hakuju Hall特集~

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近年、さまざまな「ストリートダンス×α」の広がりは感じているが、今回<ストリートダンス×クラシック×スイーツ>というコラボが実現することに注目したい。TAKAHIROは5年前のインタビュー以来、2回目のTDM登場。風格ある眼差しと言葉を一つ一つ丁寧に選びとる姿からは、数々の一流の現場を踏んできた経験が表れ、今回の企画に胸を躍らせているのが伝わってくる。チェンバロ奏者の鈴木氏、パティシエの菊地氏という各界を牽引する才能との掛け合わせが、果たしてどんな空間を見せてくれるのか。とても未知数であり、だからこそ興味深く、まだまだ新しいダンスの可能性を感じられそうなこの企画に期待したい。

 

  • タカヒロTCCジャンプ正面脚クロスTAKAHIRO/上野隆博 (ダンス)
    プロダンサー。1981年9月4日生まれ。2006年、アメリカ・ニューヨークの、ヒップホップの聖地とも呼ばれる劇場、アポロ・シアターの全米放送のTVコンテスト「ShowTime at the APOLLO」に出場、番組史上最高記録となる9大会連続優勝を果たし、米国プロデビュー。09年には歌手マドンナのワールドツアーダンサーを務め、アルバム「Celebration」の日本でのプロモーションの総合演出も手がける。News week Japan誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選出され、NY Times紙では、「驚愕の表現者」と評されるなど、世界で活躍するパフォーマーとして大きな注目を浴びる。最近では、欅坂46の振付が話題となっており、その他、TV、CM、PV振付・出演、様々なダンスコンテストの審査員や司会、映画出演など、ダンサーの枠にとどまらず活動の幅を広げている。また、大阪芸術大学客員准教授、滋慶学園COMグループの名誉教育顧問を務めるなと、教育にも力を入れている。NHK-FMの「古楽の楽しみ」にレギュラー出演。

 

  • Photo: Marco Borggreve

    Photo: Marco Borggreve

    鈴木優人(チェンバロ)
    1981年オランダ生まれ。東京芸術大学作曲科及び同大学院古楽科修了。ハーグ王立音楽院修士課程オルガン科を首席で、同音楽院即興演奏科を栄誉賞付きで日本人として初めて修了。第18回ホテルオークラ音楽賞受賞。アムステルダム音楽院チェンバロ科にも学ぶ。鍵盤奏者(チェンバロ、オルガン、ピアノ)及び指揮者としてバッハ・コレギウム・ジャパンや横浜シンフォニエッタはじめ国内外の公演に多数出演。15年2月まで首席指揮者を務めた横浜シンフォニエッタとは定期演奏会、サントリーホールのオープンハウス等で定期的に共演を重ね、音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスでは、オリジナル楽器でバロックから現代音楽まで意欲的なプログラムを展開。数々の作品や音楽祭の演出・指揮を務め、作曲家、エグゼクティブ・プロデューサー、ミュージック・アドバイザーなど、各方面から大きな期待が寄せられている。NHK-FMの「古楽の楽しみ」にレギュラー出演。

 

 

 

  • 菊地賢一(クレジットなし)菊地賢一(パティシエ)
    1978年12月16日神奈川県生まれ。有名洋菓子店アルパジョン、ヴォアラにて5年間の研鑚の後、活躍の場をホテルに移す。パークハイアット東京にて5年間実績を積み上げるとともに、コンクールやデザートなどあらゆる洋菓子テクニックに取り組む日々を送る。海外ではグランドハイアット・シンガポールにて研修。その後フランスへ渡り、ジャン・フランソワ・フーシェ氏の元、パークハイアット・パリ・ヴァンドームにてアントルメやアシェットデセールの腕を磨く。在仏中、フランス三大コンクール「ガストロノミックアルパジョンコンクール」優勝。2009年1月に帰国。同年~12年3月まで自由ヶ丘のパティスリーでシェフパティシエを勤めると同時に、個人の仕事として製菓学校講師や製菓関連企業のアドバイザー業務を行うなど、パティシエとしての仕事の幅を広げていく。12年4月~6月、開業を前に、以前より感銘を受けていたフランス・パリのトップパティシエ、セバスチャン・ゴダール氏の元に渡り彼の菓子作りを学ぶ。現在、自らのパティスリー「レザネフォール」を渋谷区恵比寿に開業。毎日の店の菓子作りに加え、プロ向けの講習会講師、学校講師、企業アドバイザーの仕事、ケータリングや百貨店催事など、活躍の幅を広げている。

 

 

■「こうあってもいいんだ」という自由で新しい扉が開かれるステージ。

 

TDM 今回のコラボレーション企画に向けて、期待していることはありますか?

 

 

 

菊地
普段、スイーツや造形物を作るデモンストレーションはやっていますが、今回の様に短時間で見せることはやっていないので、スイーツ作りをお二人と一緒にどう見せようか、そこが大きな挑戦です。難しいとは思いますが、楽しみですね。

 

 

鈴木
とてもユニークな企画で、この素晴らしいお二人とできてとてもワクワクしています。僕の演奏するチェンバロは、マリーアントワネットが聞いていたような格式高さもあれば、田舎町にもあった人々に馴染みのある楽器です。いろんな場面をこのハクジュホールに作り上げたいと思います。菊地さんに関しては、前から菊地さんのお菓子が大好きで、僕自身もお客さん目線として、菊地さんがどんな風にお菓子を作ってるのか興味があります。ダンスとのコラボレーションとしては、これまで勅使川原三郎さんとか黒田育世さんなどコンテンポラリーダンサーの方とは共演、経験がありますが、ストリートダンサーの方とは初めてです。TAKAHIROさんと話している時に、ピピッと動くだけでも面白いんです。音楽では、アーティキュレーションと言って、音の止め方、音の切れがカッコいいという表現があるんですが、それを感じましたね。TAKAHIROさんのダンスは打ち込みに近いとされているのでチェンバロとは合うな、と確信しました。

 

チェンバロの音楽は、ベートーベンやシューベルトなど、一般的にクラシックだとイメージしているものよりも前の時代のもの。王様が帰ってきた時や、王様がケーキ食べる時のBGMといった、もっと音楽が実務的なものだった頃からあります。感覚としてですが、そこがTAKAHIROさんのダンスと通ずるものがあるなと思っています。チェンバロの楽曲ときっと合うと思っているこの直感を、当日証明したいと思います。

 

 

TAKAHIRO
P013人とも35歳前後の同世代なんです。この年齢まで1つの職種をやってくると、「こうあるべき」というメソッド、美学が自分の中に生まれてきます。それに対して、今回のコラボレーションは「こうあってもいいんだ」という自由で新しい扉が開かれる感じがして、そこが非常に楽しみです。まさか、ダンスをやってきた先に、スイーツ業界とクラシック界を牽引している菊地さんや鈴木さんとコラボできるとは思いませんでした。お二人とも今回の冒険によくぞ足を踏み入れてくださったなと(笑)。そんな3人がそれぞれ面白がっていますし、その気持ちでものづくりができるので、本人たちが一番楽しんでいるということが、非常にこの舞台の魅力になると思います。また、ダンスは基本的に視覚を刺激するものですが、聴覚と味覚において視覚を超えるスペクタクルが待っているはずです。さらに、その奥までいくと、嗅覚や触覚も待っていることでしょう。今までにない感性を刺激する舞台になると思います。

 

世の中、コンピュータで制御されている音楽が多い中、人の手が生み出された楽器の音と初めて合わせた時に、自分の体がコンピュータの音に慣れてしまっていたことに戸惑いを感じました。ストリートダンスの特徴として、ビートが等間隔でつながり、「音ハメはこの1エイトハーフでやる!」といった世界ではないわけです。リズムは流れるように続いていくし、作り方が呼吸に近いんです。

 

今までストリートダンスの形式が染み付いた僕の体が、鈴木さんの奏でる旋律に歩み寄り、鈴木さんもまた音ハメの僕に近づいてくれることもあるでしょうし、改めて音に向き合える公演になると思います。今回はマドンナのハングアップも演奏して頂きますしね。

 

 

鈴木
今回、ハングアップという、いわばポップスを演奏するにあたっては、聴いている方に軽く見られないようにしたいと思っています。なんとなく弾いてみたと思われないように、TAKAHIROさんにいろいろと教えてもらいながら、しっかりと演奏したいと思います。

 

 

TDM
ご自身の制作過程の中で、好きな作業はどこですか?

 

 

 

菊地
P1040210一番楽しいのは、最初ですね。例えば、イチゴを選んだ場合、「その香りを主張するものにしようかな、生地はどうしようか、何と組み合わせようか、形はイチゴを連想させるものにしようか、ピスタチオの色も足そうか…」と考えてる時が一番楽しいです。あとは、旅先でアールグレイと黒タピオカのドリンクを飲んだ時、「今度この組み合わせで作ってみようかな」とヒントにしたり、もともと馴染みのあるケーキでも材料や形を組み替えて作ってみようとか、いろんなところからイメージは生まれます。それから実際に作り始めると、思ったより酸味や食感が違ったりして、大変なこともありますが、最後に出来上がったときの喜びもありますね。

 

 

 

TDM
菊地さんのお店に伺った時に、お菓子のビジュアルが鮮やかでワクワクしました。

 

 

 

菊地 20代の頃は最先端なものばかりを追いかけていました。30代の今は、クラシックなお菓子を作っていますが、そこにはモダンな要素も入ってくるので新しく見えるのかもしれません。また、見たときの迫力は意識していますね。買いにいらっしゃる方は女性がほとんどなので、華やかなものを好まれます。お菓子はチョコやナッツや生地など、茶色くなりやすいんです。それをどうやって色味を出していけるか考えています。新鮮さは日常になってしまうと薄れてしまいますが、そんな時は僕が初めてパリのパティスリーに足を踏み入れた時に感じたインパクトを思い出すようにしています。いつもそれは心がけています。

 

 

 

鈴木
P1040201まさに僕も同じですね。作曲の場合は、「どんな曲を書こうかな?」の時間はとても楽しいですね。ただ、作ってる途中は「2度と作曲はやらないぞ!」と思うくらい苦しいんですが、曲ができると「よし、次も作るぞ!」とやる気になります(笑)。あとは、演奏の場合は、事前にここのハーモニーは素晴らしいとわかっているのに、本番で自分の音楽に乗せられてしまって、グッと高揚する時がまれにあります。また、自分の曲ではない曲を演奏することがほとんどなのですが、その作曲家と分かり合えた気がする時も嬉しいですね。あとは、いい仲間との本番の後の打ち上げで乾杯する時ですね(笑)。そして、今もこの公演を3人で何をしようかなとワクワクしています。TAKAHIROさんの頭にマカロンタワーを乗せて、落ちないように踊ってもらおうかなー (笑)。菊地さんもTAKAHIROさんも、そこまで僕と遠くない感覚を持っていらっしゃると思うので、互いの持ち味を活かして、自由に作り合えるのがとても楽しみです。

 

 

 

TAKAHIRO
僕も、みなさんと同じで何を作ろうかなと考えている時が楽しいですね。また、「これはいい作品だ!」と自信が持てた作品を人前に見せる直前までもとてもウキウキしますね。そういう作品を常に作り続けられるように日々意識しています。

 

 

■エンタテイメントとは、人に見せるためには観る人とのコミュニケーションがあって成り立つ

 

 

TDM
これまで転機になった出来事はありましたか?

 

 

菊地
19歳から挑み続けていたコンクールで、ずっと優勝できないでいました。最初は先輩に背中を押されて参加していたんですが、だんだん本気になってきて、1年間かけて本気でトライしているのに、頑張っても銅賞で、その時期は本当に辛かった。自分の技術もいいところまで来たと感じていて「これでダメなら辞めよう」と思って臨んだ年も、カスリもしませんでした。その翌年、力を抜いて、自分の好きなお菓子を作ろうと開き直ったら優勝したんです。それが26歳でした。「大事だったのは他人が見ていることや技術だけではなく、オリジナリティだったんだ」と気づき、そこから人生が変わり始めたと思います。

 

 

 

鈴木
僕も似たような経験があります。試験でいい成績をもらえた時は、わりと破茶滅茶な演奏をしている時でした。型にハマらないものが良い時がありますね。まさにこの公演もその類のものになるでしょう。

 

 

 

TAKAHIRO
P1040180僕はお二人とは逆の経験があります。僕は、鏡と自分だけでオリジナルなダンスをやってきました。ダンススタジオや師匠とは出会わず、アニメや歌謡曲など自分の好きな曲でとにかく身体を動かすのが楽しくてやっていました。それからアメリカに行って、アポロ・シアターのオーディションに出た時、審査員から「君はアポロ・シアターを馬鹿にしているのか。ここはヒップホップエンタテインメントの聖地なのに、君がやっているのは何だ?」と言われました。頭をカナヅチで殴られたような感覚で、目が覚めました。僕はそれまで、何でも主語が「僕の」作品、「僕の」アートにこだわって作っていました。しかし、本来エンタテイメントとは、人に見せるためには観る人と僕との関係性、コミュニケーションがあって成り立つものなんだと気づくことができました。オリジナリティは自分だけのものではなく、観客をいかに楽しませて、なおかつ自分らしさを出せるのかが大切。それから、視聴者のことも考えて作るスタイルに変わっていきました。

 

 

 

TDM
みなさんの共通点として、海外でもご活躍されていますよね。

 

 

 

TAKAHIRO
最近は、インターネットでいろいろわかってしまうから、海外に行く若者が減ってるそうです。

 

 

 

TDM
プロを目指してる人も多いですか?

 

 

 

TAKAHIRO
そこは・・・難しいですね。本当に好きなダンスだけやっていこうと思うと、そこまで踏み込まず、マイペースを選ぶ人もいます。

 

 

 

菊地
僕は幸いにも、インターネットが浸透する前にフランスに行けたので、よくわからないフランスを感じれたのが逆に良かったですね。本でしか技術や写真を見ていない状態で行ったので、全身でフランスを感じましたね。

 

 

 

鈴木
日本人の我々にとって、海外は字のごとく海を渡らなくてはいけないので、腰が重く感じる人もいるかもしれませんね。ヨーロッパは陸続きで小さな国がたくさんありますし、彼らにとっては他国に行くことはそんなにハードルが高いことではないんですよね。ただ、インターネットをコミュニケーションとして使うことは意味がありますが、赴かないと絶対わからないことがたくさんあります。きっと日本は豊かで恵まれてるし、海の外に行くことそのものが難しいことなんだと思いますが、とりあえず行ってみればなんとかなります!

 

 

 

TAKAHIRO
P1040146僕も、海外に行って本当に良かったです。知らないが故の勘違いパワーに助けられることもたくさんありますね。仲良く話してたら、後からこの人あんなにすごい人だったの!?とか(笑)。知らないからこそ仲良くなれたというか。そして、この舞台に対してもハードル高く感じている方も、きっとここでしか感じられないことがたくさんありますので、ぜひお待ちしております!

 

→[PICK UP]音楽×ダンス×スイーツ。チェンバロとTAKAHIROが踊る“お菓子”な世界。

 

interview by AKIKO
photo by imu

’17/02/17 UPDATE

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