05.MAIN TENT

[MAIN TENT]マットくんのふねふねヤッホイ!

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Editor: CHITO   Update:2016/12/01

 「MAIN TENT」の店主が、舞台作品を創作する上で核となる「演出」のヒントを、蔵書5,000冊の絵本や児童書からご紹介。絵描きでもある店主直筆のラフスケッチによって、ステージのイメージや、シーンのイメージなど、インスピレーションのきっかけを提供。アイデアの源、わかりやすい起承転結から、予想外のひねりの効いた作品まで、創作に興味のあるダンサーの心をくすぐるコーナー☆

今回は想像力とは何かを可視化してくれる貴重な一冊。

***

「マットくんのふねふねヤッホイ!」 / ピーターシス

演出をする者にとって

必要な能力とは何だろう

例えばSHUN君のような人を巻き込む熱量

例えば梅棒のイマジンのようないざという時の決断力

例えばDAZZLEの長谷川君のような緻密な構成力

きっと色々あるのだろうが

その中でも欠かせないもの

その答えが

この本の中には詰まっている

この

見かけは可愛らしい

いかにも小さな子ども向けの本

良識あるオトナの皆様なら

間違いなく

これは自分にはカンケイナイモノ

としてスルーしてしまうに違いないこの表紙

ところがどっこい

ここには例の問いの答えがのっている

今パッと閃いた

 

少しカッコよさげな言葉

演出とは想像力と創造力だ!

そう

その2つのソウゾウリョクの内の1つ

想像力を

目に見える形ではっきり見せてくれるのがこのピーターシスの一冊だ

 

ピーターシスはチェコスロバキア出身の作家で現在はNY在住

絵本の世界に衝撃を与えたのはそのNYを舞台にした「マドレンカ」

「マットくん」が少し子どもっぽいと思われるなら

まずこのマドレンカをお勧めしたい

madorenka

 

行ったことのある人にはわかるだろうが

NYを歩くということは

世界を歩くこととほぼ等しい

人種の坩堝

文化の坩堝であるNY

(僕にとってはスタジオFazil’s)

主人公マドレンカは乳歯が抜けたことを報告しに

インド人の新聞屋やドイツ人のおばさまなど

家のぐるりを訪ね歩く

そしてその訪ねた先でそれぞれの国と

その奥にあるそれぞれの文化と触れる

一周して自宅に戻って来た頃には

彼女は乳歯を通して

世界と文化を一周して来ている

絵本のよいところは例えばそのインドの文化を

見開きまるまる1ページ使って細密かつ妖しさに溢れたシスの絵で堪能できることだ

 

しかもこの絵

横にしたり

逆さまにしたり

ぐるぐる回しながらじゃないと読めなかったり

視点をあっちゃこっちゃに移動しながらでないと読めなかったり

何というか

大袈裟に言えば

手のひらの中に地球をすっぽり包んでいる気にさせてくれる

乳歯を通して

世界と文化と自分が繋がる本

「マドレンカ」

これで絵本に対する子どもっぽいとか可愛いというくだらない既成概念を取っ払った後に

そう

だいぶ回り道したが

今回紹介したいのがこの一冊

「マットくんのふねふねヤッホイ!」

p01

想像力とは何かを可視化してくれる貴重な一冊

マットくんは2、3歳の子ども

今日はソファとタオル

そして棒で遊んでいる

そのソファがマットくんには何に見えているのか

(演出家はそのソファを何に見せたいのか)

そのタオルはマットくんには何に見えているのか

(演出家はそのタオルを何に表現したいのか)

そういった本である

名作だ

子どもが遊んでいるとき

彼ら

彼女らには世界がどう見えているのか

1つの答えがここにある

子どもの頃は誰もが持っていたあの目

そして稀に

その目を持ち続けたまま

オトナにれなる人も存在する

そんなダンサーを

小説家を、映画監督を

そして演出家を

僕も何人か知っている

 

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【CHITO】
冨樫チト。本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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tokyodancemagazine

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