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DANCE WORKS発表会「PRISON WORKS」特集 大村俊介×JuNGLE

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20周年を迎えるダンススタジオWORKSの発表会「PRISON WORKS」がまもなく開幕。創立時から在籍するインストラクターであり、今回演出をてがける大村俊介と、長年WORKSでのレッスンを大切にしているJuNGLEのダンサーとして生き様をフォーカス。若いダンサー世代に向けたメッセージの詰まった熱いインタビューとなった。まさにダンスに囚われている2人が、自身を築いてきたそのスタンスとは・・・?

 

  • shun
    大村俊介

    ダンスワークス2015年発表会「PRISON WORKS」総合演出。BENI,倖田來未を始め、様々なアーティストの振付・ダンサーとして活躍中。

 

 

 

 

 

  • jungleJuNGLE

    “ヒ─ル”と“fuck”のスタイルで強烈なインパクトを残すジャズダンサーである。

 

 

 

 

 

 

■今、演出をやらなきゃいけない意味があると思います。

 

TDM 今回のテーマは”PRISON”、牢屋という意味ですが、これをテーマにしたのは?

 

大村俊介  自分は、常日頃、踊りのことを考えています。「何でこんなに毎日ダンスに囚われているんだろうな」と思うくらい。そして、きっと僕が尊敬するダンサー皆もそうなんだろうなと。だから、これだけやっていると思うし、いろんなダンススタジオが継続できているのもそうだろうし。それで、ある意味、「僕たちはダンスに捕われている罪人なんだ」と思いついて、このタイトルを決めました。

 

TDM 今までにたくさんの演出経験があると思いますが、演出において大事にしていることはなんですか?

 

大村俊介
 やりはじめた頃は「ダンサーとして、一人の人間としてこういうことが伝えたい」と思うものがあって、それをわかってもらえたら嬉しいという想いでやっていました。演出を何回かやっているうちに、お題を作って、それに向かうような演出をやってみたいなと思うこともあったし、自分の中で「前回の物はもうやりたくない」という積み重ねで、今に至ります。もちろん、誰にも響かなくて、完全な自己満足かもしれないし、たまたまちょっと響くこともあるだろうし・・・だから、大事にしていることが正解かどうかは、いまだにわからないですね。それでも、自分の中に、今、演出をやらなきゃいけない意味があるんだと思います。

 

ダンスや音楽の歴史をなるべく伝えるようにしています。

 

TDM ダンスだけでなく、ミュージカルなど多くの舞台作品に出演もされていて、演出される側に立つことも多いと思いますが、どのような姿勢で臨んでいますか?

 

 

大村俊介 p04その時は、その演出家の人を信じていますね。そうじゃないと舞台にも立てないから。演出家の人がどう舞台を創り上げようとしているのかを、なるべく汲み取って、それに歩み寄ったりします。いろいろなタイプの演出家の方がいますが、まずは自分が演出に寄り添っていきますね。そういう経験も自分が演出する時に役立っています。あと、僕は体育会系の熱い演出家さんが好きなんですよ。その熱意から得たものも次に繋がるものだし、それで成功した時の喜びを舞台に立った時に知ることが多いですね。

JuNGLE 私は、昔からミュージカルの作品などに出ていますが、本当に出たい作品しか出ていません。演出家を見てオーディション受けたりしていました。素敵な演出家だなと思ったのは、シェイクスピアカンパニーのジョン・ケアードが演出の舞台に出た時ですね。私はシェイクスピアを詳しくは知らなかったけど、今までいろいろな人がいろいろな舞台でシェイクスピアの作品をやっている中で、カンパニーの演出家の作品なら大丈夫だろうと思いました。それでもちろん受かって、2ヶ月の稽古中、最初の1ヶ月はシェイクスピアカンパニーのことや、シェイクスピアについてなどの話をされました。でも、そのおかげで作品にスッと入っていけたんです。「こういう演出家もいるんだ!」と思いましたね。それまでも、私が演出やレッスンをする時は、ダンスや音楽の歴史をなるべく伝えるようにしていたので、このやり方は正しかったんだなとも思いました。演出家が伝えることって本当に大事だなと思いましたね。演出家がどれだけ大切か、重要かを知っているから、私はあまりやりたくないんです(笑)。

 

俊君は前身のSIの時代から教えてて、20周年の節目の演出を引き受けたのも素敵だなと思うし、私に作品を出して欲しいと言ってくれたことも嬉しいです。

 

■「時代に合わないからダメ」と言われればそれで結構です。

 

TDM 大村俊介さんが発表会の演出をするにあたって、インストラクターを選ぶ基準はどんな所ですか?

 

 

大村俊介 今回もオファーしたけどスケジュールが合わなかった人もたくさんいますが、自分には体を動かして汗をかくことしかできないので、その場所に行く、その人に触れる、説明する、二度手間であろうと、何回もそれをすることしかできない。それくらいしか僕の熱意が伝えられない。別にそれは努力とも思わないし、できないことは補うしかなくて、それは自分が動くことだけ。それをやっていれば響いてくれることがあるのは、今までの経験で分かっているから「よし。また、気合入れて、演出、やるか!やるしかないな!」って感じ。でも、正直、嫌だよ(笑)。皆、ただ振りをもらってシンプルに踊っているのが一番楽しいもんね!ダンサーだから!

 

 

JuNGLE (笑)。でも、その大変さを分かってるからこそ、やすやすと引き受けてないってことだよね。

 

大村俊介
うん!そう!だから、シンプルに、自分の好みですね。「この人が何をやっていても好き。」「この人が創るものが好き。だから見たい。」と自分の想いが響き合える感覚を持っているのが基準です。

 

JuNGLE p09それでいいと思う。ワークス自体も大きくなっているから、インストラクター100人全員は出せないしね。それをチョイスするのも演出家の仕事だと思います。そして、出したかったのに、声がかからなかった人も、悔しいと思っていいと思う。そこから、次につながるはずだから。

 

大村俊介 そこで切磋琢磨が産まれると良いね。最近は発表会やイベントがたくさんあるから、作品を発表する場が溢れすぎている気がします。年寄りの小言みたいになるけど、昔は作品を出す機会が少なかったからこそ、作品を出させてもらう1回に賭ける集中の仕方もすごかったし、振付や構成を悩みに悩んで、出した結果、お客さんからは良くない反応をもらうことも普通にあった。でも今は、普通に出せるようになったから、そこまで情熱をかけたものじゃなかったり。流れで創られた作品は正直、見ればすぐわかる。そういうものにだけはしたくないし、自分は命をかけてモノを創ります。

 

 

JuNGLE 私も、発表会は毎回新作で勝負するタイプだから、作品を使い回すのは、生徒に説明して、わかってもらっていればいいと思うんですけど、いろんなトラブルも聞いているので、私の中ではあり得ないと思ってます。

 

大村俊介
海外のパクリとかも見るしねー。本当に、溢れ過ぎちゃっている。だから、ネットで動画はほとんど見ないようになったもん。ダサくても良いから自分から生み出す様にしています。

 

 

JuNGLE 私もビヨンセとかジャネットジャクソンとかマドンナのPVとか大好きで、DVDを買って見るんだけど、見ると振りを覚えちゃうから、サラっとしか見ないようにしてる。あとは、ステージの使い方とか、演出とか、お金の掛け具合とか違いすぎて、それを見るのがショックで見ないようにしてますね。レッスンの時はポピュラーな曲を使ったりしますが、作品の時には使わない様にしています。あと、なるべく、振付がない曲にしてるし、発表会で振付されていない曲でやることにしています。どうしてもポピュラーな曲でやりたい時は、別の部分で一瞬匂わせるとか、オチとして使ったりすることもありますが (笑)。

 

 

TDM 大村俊介さんの振付のインスピレーションはどこから?

 

大村俊介 これも自分の好みですね。曲を聞いて感じることをやるだけですね。今までいろんな振付をやらせてもらっていますが、僕は流行っている動きとかは知らないし、流行の音楽も知らないんです。それで「時代に合わないからダメ」と言われればそれで結構ですし、自分はそれでいいと思っています。ただ、自分が思ったことをやるだけ。それだけですね。

 

■今は仕事というより、もっとプライドとハートとすべてを持ってやっています。

 

TDM 自分のダンス人生に影響を与えた転機はありましたか?

 

 

JuNGLE 私は、15歳からダンスをやっているんですが、高校のダンス部の体験で「はい!やります!」って決めました。その時はモダンダンスでした。ヒップホップという言葉もまだ明確にはなかったですね。それから、高2の時にZOOを見ていて、番組を見に行ったこともありました。高校に行って、部活やって、ママに内緒でディスコ行っていました(笑)。その時から「ダンスで飯を食う」って決めていましたね。本当に、ただただ楽しくダンスをやっていました。あとは、23歳で大切な人を亡くして、それをきっかけに、「その人の分も踊らなくちゃ」って思ったのが大きな転機でしたね。

 

大村俊介
p01僕は、もともと板前だったんですけど、板前の仕事をしている時に、踊りはまったくしていなかったんですけど、急に「踊りたいかも!」と思った時がありました。それから、気がついたら板前を辞めていました。それで、無一文で東京に出てきました。それからは、割と必死でした。22~23歳でダンスをはじめ、はじめたのが遅いから必死で、25歳までにはインストラクターになると決めていました。とにかく、何も知らず、一生懸命やっていましたが、僕も「楽しい!」しかなかったですね。家を継ぐって約束をしていたのに、親を裏切ってダンスをはじめちゃいました。そこから10年間勘当されて、親には会えませんでした。

 

32~33歳くらいの時に、父親が倒れて、さすがに見かねた姉から電話があったんです。「一度帰ってこい」と。

その時に、今の自分の状況を考えたら、一応、仕事もある、でも、全部なあなあにやってる気がしました。舞台にも出ていたけど、すごく調子に乗って踊っていたと思います。親が死ぬかもしれない時に、親を裏切ってまではじめたダンスに自信を持って親と会える状況じゃないと思ったんです。僕の転機はその時ですね。

 

そこから、どの仕事にも全部に命を注いでダンスに関すること全てをやろうと思いました。ちゃんと自分が好きで、望んで、自分の意思で、プライド持って生きていくんだったら、本当に裸一貫で、いつでも恥ずかしくない状況で生きていかないと、そんなの命かけてやる必要ない!と思いました。

 

それまではどちらかといえばダンスを「仕事」としてやっていました。でも、今は仕事というより、もっとプライドとハートとすべてを持ってやってるから、ダンスを仕事と思えないですね。

 

 ■踊りの中毒性。

 

TDM お2人のスタイルはジャズですが、ジャズの魅力ってなんですか?

 

 

JuNGLE p14それまで、タップとかモダンとかバレエとかいろいろやってきたけど、一番、言葉を表現できるかなと思います。だから、好きです。私は音楽が本当に大好きだから、音楽にすごく敬意を持っているし、自分が大好きな音楽に自分が振付をできることをすごく有難いと思っています。私は作品でもレッスンでも、あまり詰め込んだ振付はしなくて、それぞれが自由に自分自身で動く“間”の部分を作っています。そういう“間”を作ることができるのも、ジャズダンスの良さだと思っています。「右足、左足、どっちからでもいいので、好きに歩き出してください。」と、その自由さもジャズならではの楽しさだと思っています。

 

 

大村俊介
確かにそうだね。でも、結局、他のジャンルも全部同じ気もしますね。生きていく上で日々いろんな感情があって、例えば、「あの時のあの気持ちってこの曲に近いのかな」とハマる曲があって、そういうイメージで振りを作ったりする。それは歌詞があろうとなかろうと関係ない。バレエは形が決まっているから、同じ感情を表現しても、身体のポジションでの表現が決まっているけど、ジャズはそこで、指も、関節も全部使える、細かい繊細な動きができるところが僕は好きです。昔は、言いたいことが多すぎて、とにかく振り数の多い動きを創っていた気がします。でも、歳を取ってくると、それが一つでいいんですよね。スッと手を上げるだけでもいい。そういう風に表現の仕方は変わってきますね。

 

JuNGLE 確かに、歳もあるよね。21歳くらいからそれをやっていたらスゴイかも。胴上げするよね(笑)。

 

 

全員

(笑)。

 

 

大村俊介 勘違いしないで欲しいのは、ダンスを無理矢理やるくらいなら、やらなくていいと思います。続ける人は勝手に続けている。

 

 

JuNGLE 「踊りはやっぱりやめられない」という中毒性があるよね。本当に素晴らしいビジョンを持っている人はやめていないと私は思ってしまいますね。最近「覚悟」という言葉が好きで、これも歳を取ってからじゃないと感じないかもしれませんが、”踊りを選んだ”という覚悟、覚悟があるダンサーが好きです。踊りだけじゃなくて何の仕事でもいいんだけど、やっぱり続けるって大事だなと思います。

 

TDM
今回の発表会での作品について聞かせて下さい。

 

大村俊介 俺はクソみたいなナンバーを作ってます(笑)。ダメな意味のクソじゃなくて、いい意味のクソです。初心者でも踊れるんじゃないかなというナンバーです。”作品”じゃなくて、あえて”ナンバー”です。うまいとかテクニックとかまったく必要なくて、その人たちが舞台の上で、とにかく一生懸命踊れば成立するナンバーを作りたかったんです。ダンサーがこれだけ増えてきて、「上手さを見せよう!」というのも、もちろんそれも大事なんだけど、根本にある一番忘れちゃいけないことが、その一瞬、舞台でも何でもいいんだけど、”そこで生きること、叫ぶこと”だと思う。「俺は今こう思ってる。でも、ダンサーだから踊る!とにかく踊る!」みたいなナンバーを今回は目指して作ってみました。

 

今回は初めての人だらけで。19人いるんだけど、知ってるのは5~6人くらいしかいなくて。人見知り発揮で最初は大変でした(笑)。

 

 

JuNGLE p01私はあまり大人数で作らないようにしていて、少ない人数にさせてもらってます。私の作品はユニゾンがほとんどないですし。「ここは自由に歩いて下さい」とかそういうレッスンをしています。発表会の作品の時も、私の言う台本を説明して、それで生徒それぞれが捉えた役柄として、「あなただったらこの机の周りにどう集まりますか?」と投げかけながら作っていきます。たぶん、生徒は大変だと思うんだけど、でも、外に出ると、そういう仕事も多い。私があまり一から振付される様な仕事をやってきてないというのもあるし、皆で揃えるのが苦手なのもありますが。あと、発表会とかリハーサルの短い期間の時に、スタッフさんがいなくちゃ、私たちは舞台に立てないということは全部教えるし、先輩には挨拶するようにとか礼儀も教えるようにしてます。「舞台で私たち踊ればいいんでしょ」みたいに捉えられるのが嫌だから。今回はそういうのもちゃんとわかっている人を選んで出てもらってます。

 

 

 

■「大変なことはたくさんあるけど、今この瞬間、一生懸命踊っていれば、大丈夫だから!」

 

TDM
今回参加しているダンサーたちに向けて、作品や演出を通してメッセージはありますか?

 

 

大村俊介
p152年前、WORKSの発表会で演出した時は「皆でいい思い出を作りましょう!」というメッセージだったんですが、今回は「うるせー。とにかく黙って踊れ!」です(笑)。ダンスは好きだけど、続けるのは大変だし、あーだこーだいろんなことがあって好きなことをやっていくのって大変だと思うんです。だけど、今回は、結局、最終的に、「よし!踊るか!」「いいから黙って踊ろうぜ!」という、お客様ではなく、どっちかというとダンサーたちに対するメッセージの方が強いですね。 

「大変なことはたくさんあるけど、今この瞬間、一生懸命踊っていれば、大丈夫だから!それで見えてくるものがあるんじゃない?」という。だって、一生ダンスに捕われていかなきゃならないんだよ?(笑)。さっきの覚悟じゃないけど、捕われるってそういうことだから。だったら、「黙って踊ろうぜ!」ということです!

 

JuNGLE その通りだと思う、踊るしかない私たちって、嬉しいことだね。

 

TDM ダンスに囚われた皆さんの姿を楽しみにしています!ありがとうございました。

 

[PICK UP] DANCE WORKS 2015年発表会「PRISON WORKS 」

 

interview by Akiko and imu

’15/07/09 UPDATE

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tokyodancemagazine

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