

Editor: CHITO Update:2015/09/20
「MAIN TENT」の店主が、舞台作品を創作する上で核となる「演出」のヒントを、蔵書5,000冊の絵本や児童書からご紹介。絵描きでもある店主直筆のラフスケッチによって、ステージのイメージや、シーンのイメージなど、インスピレーションのきっかけを提供。アイデアの源、わかりやすい起承転結から、予想外のひねりの効いた作品まで、創作に興味のあるダンサーの心をくすぐるコーナーのはじまりです☆
***
「まよなかのパーティー」
まよなかのパーティー
ダンサーが興味を惹かれそうなこの素敵なタイトル
児童文学の名作「トムは真夜中の庭で」のフィリパ・ピアス氏による短編だ
この物語にはドラゴンも出て来なければ
悪い魔法使いもいないし
言葉をしゃべるウサギだって出てきやしない
けれども
ごく普通の家の中で起きるたった一晩の出来事に
ハラハラし
そうだよね
あるある
と共感し
至る所にささやかに張り巡らされた伏線が
次々に回収され
これがこうでこうなったから…
成る程こうなるんだ
と納得する
まるでピタゴラスイッチのように
最後にスカッと爽快な気分にさせられる
起承転結の完璧なエンターテイメントのお手本のような作品
ではまずセットから
この作品
一つの家の中で全てが展開
そしてそれぞれの部屋の位置が
ストーリーの展開上そこになくてはならない場所に配置されいる
ということで
まずはセット図面を
そして物語へのいざないは一匹のハエ
「まよなかに一ぴきのハエがチャーリーを起こした」
こんな一文から物語は始まる
M1 暗闇を飛び回るハエとベッドの上で格闘するチャーリー少年
ハエの羽音でのコンテンポラリーなソロが似合いそう(僕の勝手な配役では 熊谷拓明 君で見てみたい!)
薄いサスを入れるか
SSで見せるか
紗幕越しのシルエットでもよいな
セットはベッド一つかな
と想像が膨らむ
そして羽音がすっと消え
ハエが耳の中に⁈
暗転
導入は完璧
さてそこからの流れをざっと説明すると
→慌てて隣の部屋のマーガレットを起こしに行くが…
何故かマーガレットのベッドはもぬけの殻で…→
→両親の寝室へ
ハエなんか入っていないよ
早く寝なさい(伏線1)→
一階のキッチンに水を飲みに行くと…→
マーガレットと犬のフロスがそこに!→
こっそりミルクを温めるが焦がし…→
回した換気扇の上は妹のアリソンの部屋なので…→
ついに末っ子のウィルソンも参加し兄妹全員でポテトケーキをたいらげることに…
そして
物心がまだついていない
お喋りな末っ子対策に
兄弟は傘や帽子や毛布を使った壮大な作戦
名付けて
真夜中のパーティーを開く!
このパーティーシーン
引用元:http://katsudo.exblog.jp/
座頭市のタップや
引用元:http://blog.jami-ru.com/?
ダンボのピンクの象の行進
引用元:http://thimbleuponyourindex.tumblr.com/post/307341811/moulin-rouge-by-baz-luhrmann
ムーランルージュのカンカンのような
いわゆる華のシーン
ダンサー冥利につきる盛大な場面になること請け合い
しかも10人の演出家がいれは
10通りの全く違う表現の仕方になるに違いない自由度
衣装も音楽も全て
想像力の働かせどころ
自分の脳内で日々ひらかれるパーティーを
ここぞとばかりにアウトプットして欲しいシーン
あとは翌朝のスカッとした締めでお話はおしまい
是非ともどなたか
舞台化してみて下さい
「真夜中のパーティー」
chito a.k.a.フランソワバチスト氏がご紹介しました
【CHITO】
冨樫チト。本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。
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