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梅棒6th OPUS「GLOVER」特集 伊藤今人×梅澤裕介×YOU

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ダンス公演が続く今秋。梅棒の新作公演「GLOVER」もまもなく開幕。彼らは定期的かつロングラン上演、地方公演も実現し、ファンを増やしながら活動している。舞台力に優れたダンスカンパニーの新作公演に演劇界、ダンス界、お笑い界からも注目が集まるだろう。主宰・伊藤今人と、その女房役・梅澤裕介、そして、近年梅棒公演に欠かせない存在、ジャズダンサーYOUによるクロストークでは、今作の見どころのみならず、今後も多様なストリートダンサーが生きていくであろう“ダンス公演”についての興味深い意見も飛び出した。

 

  • 1475425629008伊藤今人(梅棒)
    梅棒のリーダー。「観る人の心を動かすのは技術ではなくハートだ!」という信念に沿って、梅棒創設時から作品を作り続ける「梅棒の頭脳」。ゴリラのモノマネが得意。そのイカツい姿と頼り甲斐のあるクチビルとは裏腹に、ストレスを苦に胃を痛めて一人日光に旅立ってしまうガラスのメンタルの持ち主。
    サッカー・野球・バスケなど、スポーツ全般をこよなく愛す。特に選手のデータ分析を好み、選手それぞれのこだわりや競技スタイルを一度語り出すと止まらない。その分析能力と、独特のトークスタイルでダンスシーンでは梅棒と同時にMCとしても活動中。梅棒の演出能力を活かして対外作品も手がける。旅館の再生計画、新設レストランのサプライズイベント、アーティストのLIVE演出など、今日もどこかで世界を熱くする。

 

 

 

  • 1475425623754梅澤裕介(梅棒)
    「梅棒」の「梅」とはまさしく彼の名前から。結成時から団体を支え続ける「梅棒の骨格」。曲がった事、筋の通っていない事が大嫌いで、作品づくりから団体運営まで、常に正しい方向へとチームを導く影のリーダー。そのアツさ故に代表の伊藤とぶつかる事もしばしば。常に客観的な視点で物事を見据える人格者である一方、自分の発したボケには誰よりも先に自ら笑う。手柄を誰にも褒めてもらえないとスネてしまう…といったかわいい一面を持つ。大学時代から役者としての評価は常に同期の伊藤の一歩先を行き、伊藤は苦汁を飲み続けたとかそうでないとか。
    朝の帯番組やCMに出演し、某夢の国でのアクターを務め、数多くの舞台公演にも立つなど、俳優として幅広い分野で活躍している。

 

 

 

  • 1475425642814YOU
    ジャズダンスチームMuddy FeeTにてダンスコンテストでの受賞を重ねる一方で、様々な舞台に出演。インストラクター・振付師・バックダンサー等、多方面で活躍中。凛としてキレのある中にも情熱的な表現が魅力。梅棒公演には今回で5回目の出演となる等、過去全ての公演に携わる、梅棒を語る上では不可欠な存在。

 

 

 

 

 

 

梅棒の技術顧問・YOU

 

TDM まず、YOUさんは梅棒に最も近い女性として、ここ数年の梅棒公演に欠かせない存在となっていますが、そもそもの出会いは?

 

 

伊藤 p1010250出会いは、約7年前。僕が知り合いの公演を見に行った時に、ひときわ異彩を放っていた人がいました。終演後、サインをもらいに行ったのがYOUちゃんでした (笑)。そのあと梅棒の公演を見に来てもらったり、飲んだりしてるうちに、Legend Tokyoでの作品に出たいと言ってくれたんです。その時のLegend TokyoではDAZZLEさんが優勝して残念ながら、悔し涙を流しましたね。次のLegend Tokyoでは 男だけでやろうと決めていました。なのに「私を絶対出してください!」と直談判しに来たんです。でも、「男だけで行く!ごめん!」と断った・・・にもかかわらず、全部のリハ、合宿、ミーティングにも来て、メンバーの誰よりも参加率が高く、正面からいつも見てくれて、コーチ状態になってくれてましたね。その時、ダンス初心者に近いメンバーもいたのですが、YOUちゃんは徹底的に振りを揃えてくれました。そして、全然褒めてくれない(笑)。ストイックに向き合ってくれましたね。

 

 

 

TDM その効果は出ていましたね。梅棒の踊りが変わったと思いました。

 

 

伊藤 そして、その時のLegend Tokyoで優勝できました。だから、YOUちゃんは優勝メンバーの1人なんです。本番の衣装が名前入りの特攻服だったんですが、全員の名前を刺繍した特攻服をプレゼントしました。そんなことを経た仲なので、その後の公演はすべて技術顧問としても関わってくれています。でも、よくも飽きずに…梅棒の何がいいんだか(笑)。

 

 

TDM YOUさんにとっての梅棒の魅力は?

 

 

 

YOU
p1010256梅棒の作品を見た時に、振付や構成が私とはまったく違う作り方でした。その中身が知りたくなったので、参加したいと思いました。梅棒は世代を問わず、誰もが楽しめる作品を産みだせる唯一無二の存在。そこに惚れ込みました。

 

 

 

伊藤 僕が一番好きなダンサーが梅棒を好きでいてくれることが未だに信じられないし、嬉しいですね。

 

TDM 梅棒とってYOUさんは今どんな存在ですか?

 

 

 

伊藤
男だけだと甘えが生じるんですが、「それって違うんじゃない?」と意見をくれて、引き締めてくれます。「ダンスエンタテインメントグループでいる以上、ダンスで魅せることも追求しなきゃダメでしょ」と。そのための練習方法も具体的に提案してくれます。僕らは、ダンスが上手いやつらに対抗するためにダンススキルよりもアイデアや面白さを追求していく素地があるのでそことのバランスを取ってくれます。

 

 

 ■柔軟な感性を持つ今人とぶれない芯を通す梅澤のグッドバランス。

 

TDM
梅棒における梅澤さんの存在は?

 

 

 

伊藤 p1010294梅澤は良くも悪くも頑固です。僕は常に”柔軟であれ”と思ってる人間なので、いろんなものを見て、スタイルを変えていくことを恐れません。いろんなものに流されて曲がってしまいそうになる時に、梅澤が「それは梅棒でやるべきことじゃない。」と引き戻してくれます。梅棒らしさを貫くべきところ、そこは なびかなくていいと言ってくれますね。梅澤がいつも脚本助手として僕のやりたいことを一番聞いてくれています。僕は脚本をゼロから生み出すことが苦手なタイプです。僕がやりたいことを思いつきで言っていくと、どうしても揺らいでしまうんですが、梅澤がそこに一番大事なことを気づかせてくれて、作品に芯を通してくれます。

 

 

梅澤 でも、僕はそんな柔軟な今人が羨ましいし、すごいなと思います。その彼のやり方でいわゆるダンス界の新たな突破口を開いたわけですから。

 

 

梅棒で生きていく。「梅棒5カ年計画」

 

 

TDM 梅棒は今何年目ですか?

 

 

 

伊藤
梅棒ができてからは15年です。大学1年生の時に大学生イベントに1〜2回出るために僕と梅澤が中心になって結成しました。こんなに続くと思ってませんでしたね。それから1曲でストーリーダンスをするようになってからは10年。そのスタイルで2009年のJAPAN DANCE DELIGHTで特別賞をいただき、2012年にLegend Tokyoで優勝、その直後から舞台公演をやるようになって4年です。

 

 

 

TDM 最初に梅棒を見た時のインパクトはすごかったですね。もともと舞台公演を見据えて活動していたんですか?

 

 

伊藤 p1010288いえ、僕はもともと、学生の時から劇団に入っていたので、梅棒と並行しながらも小劇場界に身を置いていました。当時、梅棒が賞をとって注目を浴びつつも、今後梅棒をどうしようかと思っていました。ふとメンバーの生活を考えた時に、僕は役者やMCをやったり、他のメンバーもインストラクターとか仕事がある中で、メンバーの鶴野だけ梅棒しかなかったんです。「梅棒がなくなったら就職する」と言っていて、こりゃ未来に繋げなきゃいけないなという使命感がありました。そこで、「梅棒5カ年計画」という資料をメンバーに提出したんです。

 

 

TDM それにはどんな内容が書かれていたんですか?

 

 

伊藤
以後5年間の目標動員数です。「1万人動員の公演を年に2回やれば、月20万稼げるぞ。そしたら梅棒で生活できるぞ!」という内容です。しかし、その計算は荒く勝手に出したものでしたし、実際はまだ達成できていません。でも、第三回目の公演で、年に1万に動員は達成できましたし、メンバーも他の仕事が増えたりして、生活も自然と変わってきましたね。おかげで、鶴野はダンスで生活できています。

 

TDM
メンバーを思って作った資料のおかげですね。

 

 

 

■主役・大貫勇輔、梅田彩佳との共演。

 

 

TDM 今回の新作公演で挑戦していることは?
 

 

伊藤
今回はシェイクスピア原作のロミオとジュリエットを梅棒流にアレンジしたらどうなるか、ということに挑戦しています。 誰もが知っている原作ありきのストーリーは梅棒で初めてなので、注目していただきたいですね。

 

 

梅澤 あとは、主役が梅棒ではないところも初挑戦です。大貫勇輔くんと梅田彩佳さんを客演にお招きしました。

 

伊藤 p1010281大貫くんとはそんなに交流はなかったんですが、お互い存在は知っていて、ダメ元でオファーしてみたらOKだったので驚きました(笑)。ちなみに、稽古に参加した彼を見てわかったのは、あいつは相当ハッピー野郎でしたね。王子キャラなのかなと思いきや、ファンキー要素も持ち合わせていて、かなりのパーリーピーポーということが判明しました(笑)。楽しく稽古させてもらっていますよ。

 

 

 

YOU 梅田さんは自主練をとても熱心にやっていてすごいです。もしかしたら、こちらが気を使うかな?と思いましたが、みんなと作っていこう!という雰囲気を自然に出してくれています。

 

 

伊藤
そうそう。自主練の時にフォローしたほうがいいかな?と思ったんですが、黙々と振りを練習してくれていたので、プロ意識を感じました。また、驚いたのが、音をかけて通すときに、セリフを自分で言いながらやり始めたんです。それは梅棒がある程度練習を重ねてきたら、感情をつかむためにやるやり方なんですが、それを最初からしかも自主的にやり始めたんです。きっと自分に必要だと思ったんでしょうね。さすがだなと思いました。

 

 

 

TDM
素敵な相乗効果が生まれているんですね。客演を主役に招こうと思ったのは?

 

 

伊藤 梅棒以外の方を主役にしてみたらどうなるのか、ずっとやってみたかったんです。また、今回の劇場が過去最大規模のため、大貫くんや梅田さんの参加によって、観にきて頂く客層も増えると思いますので、いい機会だなと思いました。

 

■ロングラン公演のメリット。

 

 

TDM 最近ロングラン公演ができるダンスカンパニーが増えてきましたが、ロングラン公演の効果はいかがですか?

 

 

 

伊藤
p1010284これは役者をしていて身についた意識ですが、ロングラン公演をやらないと僕らを知らない人が見てくれないんです。数回公演だと知っている人にしか見てもらえない。ロングラン公演をやれば、知らない人が口コミで後半になるにつれて来てくれるようになります。今ではSNSなどの力もありますし、他人の評価を見てから見に来る方も増えています。噂が回るまでには時間がかかりますし、見に行ってみようかなと思ったときに残り1週間ほどの公演期間があるとスケジュールを組みやすい。あとは一生懸命作ったものを数回で終わらせるのはもったいない!と単純に思うところもあります。

 

 

 

TDM
ロングラン公演の作品となると、何か作り方で気をつけることなどありますか?

 

 

 

伊藤 それは特にないですね。ただ、短期間の公演よりは体力勝負になります。ミュージカルのロングラン公演の場合、主役はダブルキャストなことがあります。それは集客目的もありますが、喉や体力を保持するためです。梅棒はそれに近いですね。過去に梅棒もダブルキャスト公演をやったこともありますが、今回はシングルキャストなので体力勝負、頑張ります!

 

■ダンス界と演劇界の歩み寄り。

 

TDM 今、ストリートダンスシーンの一部は、クラブカルチャーから興行になっていく成長段階を経ているのではないかと思います。その渦中に梅棒さんもいるわけですが、今後のストリートダンスの舞台公演の可能性をどう感じていますか?

 

 

伊藤 DAZZLEさんや僕らが、ストリートダンスの舞台公演の道を開いて以来、舞台のノウハウを知るダンサーや、ストリートダンスを知る舞台スタッフさんも増えているので、ダンス公演自体は増えていくと思います。日本はカテゴライズしたがる文化なので、ダンス界、お笑い界、演劇界とハッキリ分かれていますよね。僕はたまたま昔から演劇とダンスの2つをやってきて、そこにたまたま笑いも結びつけることができたので、多方向に向けた作品を作ることができています。 でも、ダンスだけをやっていれば、ダンス公演に演劇のお客様を引き寄せるのは難しいでしょう。かたや、最近は、演劇界側もダンサーを振付師や役者として起用する機会も増えているので、ダンス界に歩み寄っている傾向も見られます。近い将来、うまく演劇界も認める演劇要素を取り入れられるダンサーが出てくれば、ダンサーが舞台で動員を獲得していけるかもしれませんね。客層に関してもダンス界と演劇界のファンが融合していけるかもしれません。

 

 

TDM
ダンサーが舞台のノウハウや脚本や演出を学べる機会が増えるということですね。

 

 

 

伊藤
例えば、キッズダンサーが、先生が出ている舞台を観て、バックダンサーだけではないダンサーの生き方を知ることも大切ですね。最も感受性が豊かな幼少期であれば、演技に対する先入観や苦手意識も持ちにくいですし、柔軟に受け入れていけるので、演劇だけ、ダンスだけと囲わずに、いろんな表現に触れさせてあげることできると思います。実際、美優という梅棒公演に出てくれていた子は、バリバリのキッズダンサーなんですが、梅棒公演で演劇に触れてからは、今では小劇場で役者としても舞台に立っていますよ。

 

TDM
梅棒がダンス界と演劇界をつなげているんですね。

 

 

伊藤 p1010261役者しかやったことのないやつと、ダンスしかやったことない人が同じ舞台に立つので、刺激しあっていろんな相乗効果が生まれます。素晴らしいジャズダンサーYOUちゃんも周りの役者に感化されて、今では誰よりも前向きに役作りしてきてくれますからね。

 

 

YOU 最初は難しかったんですが、だんだん自分が今まで生きてきた経験の中から、チョイスした感情とそのキャラとして演じた時の感情が一致した時に面白いと思えるようになってから演技にハマってきました。ダンスを始めた頃に似ていて、難しいんだけどハマってしまう感覚です。

 

 

TDM 梅澤さんは役者というベースからダンスを取り入れていった経験者として、ダンスにトライしようとする役者の方へ何かアドバイスはありますか?

 

 

梅澤
p1010299どちらの立場も同じだと思いますが、最初はダンサーが演じること、役者が踊ることが恥ずかしいんです。でも、ダンスも台詞と同じで、何か理由があってその動きになるので、それを理解できれば恥ずかしくなくなります。ちなみに今、その合致が最もできているのは原田薫さんと森山未來さんだと思います。どちらの世界でも渡り歩かれていて、んもー羨ましくてやんなっちゃいます(笑)。

 

 

 

TDM 確かに!でも、そういうダンサーが今後増える可能性がありますよね。

 

 

伊藤 …マジか(汗)

 

 

全員 (笑)。

 

 

■過去最大のスケールと迫力に注目!

 

TDM
最後に今回の公演の見どころとお客様にメッセージをお願いします!

 

YOU
私がダンスを始めた頃、ジャズはジャズでも「ジャズヒップホップ」「スタイルヒップホップ」「ジャズファンク」など名前がたくさん出てきた時でした。皆、自分のジャンルをリスペクトしていた分、自分のジャンル以外に対しての壁を持っているように感じていました。 そんな中、私はいろんなダンスをやっていて、周りからは「なんでジャズだけにしないの?」「ヒップホップだけにしないの?」と言われていましたが、ダンスが好きだったのでやり続けていました。もしかすると、本当は舞台や演劇を見たいのに、素直になれなくて見に行けない人もいるのかもしれません。そこを一歩乗り越えて、今まで自分が見たことのないものを見たり、行ったことのないところに行く1歩目を踏み出して欲しいです。私はその1歩目を梅棒で踏み出せました。今回もその姿もぜひ見に来てください。

 

 

梅澤 日本人は、舞台作品を「どれだけ私を楽しませてくれるの?」と品定めするように観る人がいます。でも、梅棒は誰もが見て、「あー面白かった」と楽しんで帰ってもらえる作品が作れる数少ない集団だと思うので、品定めする気持ちは抜きにして、梅棒を観て、「楽しかったね〜」と言いながら帰りに美味しいご飯を食べて帰ってもらえたら嬉しいです。
 

 

伊藤
p1000806毎回梅棒の公演ではチャレンジをしています。今までは日常的なものを描く事が多かったんですが、今回はファンタジー要素が大きいです。また、過去最大のスケールと迫力にもご注目ください。それは会場やストーリーだけでなく、舞台装置や、キャストの人数が一番多いことにも表れています。主役の大貫くんや梅田さんがどんな梅棒テイストにアレンジされているのかもお楽しみに!

 

 

 

TDM
また新たなインパクトがもらえそうですね!今日はありがとうございました!

 

 

[PICK UP]世界とアイツは、俺が救う。梅棒6th OPUS「GLOVER」

 interview and photo by AKIKO and imu

’16/10/04 UPDATE

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tokyodancemagazine

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