05.MAIN TENT

[MAIN TENT]ちょっときて

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Editor: CHITO   Update:2016/08/17

 「MAIN TENT」の店主が、舞台作品を創作する上で核となる「演出」のヒントを、蔵書5,000冊の絵本や児童書からご紹介。絵描きでもある店主直筆のラフスケッチによって、ステージのイメージや、シーンのイメージなど、インスピレーションのきっかけを提供。アイデアの源、わかりやすい起承転結から、予想外のひねりの効いた作品まで、創作に興味のあるダンサーの心をくすぐるコーナー☆

***

「ちょっときて」
瀬川康男
小学館

一つの作品において
踊りで伝えられるストーリーというのは一体
どれくらいの容量なのだろう
自分が作品を作ったり
コンテストの審査などをさせて頂く中で思うこと
例えば
りんごは赤い
は伝わるが
りんごは赤くて丸くて甘い
までは残念ながら
残念ながらなかなか伝わらない

シンプルでわかりやすく
力強いストーリー
丁度よい情報量

絵本の古本屋にダンサーや脚本家などが頻繁に来店するのは
そんな理由もあるのかもしれない

その中でも
足しも削りもせずに
読むだけで
そのまま作品になるであろう1冊
それがこの
「ちょっときて」

瀬川康男さんは1932年
愛知県岡崎生まれ
日本を代表する画家の1人で
松谷みよ子さんの文章に挿し絵した絵本「いないいないばあ」は

出典:Amazon.co.jp

出典:Amazon.co.jp

未だに赤ちゃんに贈るファーストブックの定番として愛されている
その大胆な線の動きは
ダンサーのしなやかな動きと相通ずるものがある
というより瀬川さんの線は踊っている
それも熟練ダンサーのそれのように
手や足、肩のようにわかりやすい場所のみでない
身体の細部の
名称すらないような隅々のパーツが踊る
GUCCHON氏の踊りや
我が師匠IRIEさんの踊りを見たときのあの感覚と似ている

▼GUCCHON氏のダンス(最近のお気に入り)

ストーリーは1匹のちいさなねずみと
それに振り回されるねこの話

1ページ毎にころころ変わる
秋の空のようなねずみの台詞を
まとめてみる
「ちょっときて」
「ちかづかないで」
「あっちへいって」
「いかないで」
「もってきて」
「もっていって」
「すててきて」
「なにかいって」
「…」
「はやくきて」
「ここにいて」
文章はこれだけ
でもここに
踊りが添えられた光景
絵が添えられた光景を想像すると
もうこれで充分だ
2匹の距離感
表情
近づいたり
離れたり
甘えたり
突き離したり
飛んだり
寝転んだり
ちいさなねずみと
おおきなねこが
白い紙の上で
踊っている

この作品に瀬川康男さんは
こんな言葉を寄せている
「おかしかったり
かなしかったり
うれしかったりするもの

出会ったり
別れたり
愛しあったりするもの

生きとし生けるもの

ねこも
ねずみも
ひとも」

舞台予想図

舞台予想図。セットはシンプルだが上手の奥が少し高くなっていたり穴と窓が1つずつあったりするとおもしろそう

願わくば
keone & mariel madrid
木下菜津子× 辻本知彦
NOPPO × ABERE
など
色々な組合せや解釈が観たい作品
個人的には
JUNGLE × yacheemi
なんてのも
パワーバランスが面白いのではないかと思う

 

 

 

*おまけ

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【CHITO】
冨樫チト。本名である。フランス童話「みどりのゆび」のチト少年にちなんで両親から命名される。富士の裾野の大自然の中、植物画と読書と空想の幼少期を過ごす。
早稲田大学在学時よりプロダンサーとしての活動を開始。
舞台演出、振付け、インストラクター、バックダンサーなど、踊りに関わる全てに携わる傍ら、持ち前の遊び心で、空間演出、デザイナー、リゾートホテルのライブラリーの選書、壁画の製作、ライブペイントによる3Dトリックアートの製作など、無数のわらじを履く。
2015年2月、フランソワ・バチスト氏として、住まいのある吉祥寺に絵本児童書専門古書店、「MAIN TENT」をオープン。
氏の部屋をそのまま移動させた小さな絵本屋から、エンターテインメントを発信している。

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tokyodancemagazine

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