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Red Print公演「Toys」特集 MIHO BROWN×小林香

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Red Printはスーパー女性ダンサー達が笑い×ダンス×演技で見せる新しいエンタメ集団。彼女たちの3作品目となる公演「Toys」が間もなく上演される。演出に招かれたのは数々のミュージカル作品を手掛けてきた小林。彼女が仕掛ける演出にメンバーのMIHO BROWNは大きく心躍らせている。どうやら本作がレップリの新境地になりそうな予感大!彼女たちの痛快な挑戦を是非その目で見届けてほしい。

 

  • MIHO BROWN
    東京都出身。90年代の日本において”Girls Hip Hop”というジャンルを築いたダンスチーム「Brown Sugar」のリーダー。平井堅、久保田利伸、黒沢薫、ZEEBRA、などのダンサー、ディレクター、コレオグラファー、TOYOTA bBCM、映画出演に加え、宮本亜門演出ミュージカルやダンスとお芝居とお笑いのエキセントリックダンステイメント集団「Red Print」に所属し舞台に立つなど幅広く活躍。またYuko Sumida Jackson主宰、認定アウェークニングインストラクターとしてYUKO氏の長期サブで劇団四季にて指導にも励む。

 

  • 小林香
    京都市出身。演出家。脚本・作詞・訳詞も手がける。近作に、NHKエンタープライズ「DNA-SHARAKU」(脚本・演出・作詞/作曲=井上ヨシマサ)、サンリオ・ピューロランド25周年NEWパレード「ミラクルギフトパレード」(脚本・演出/作曲=ヒャダイン)、OFF BROADWAY MUSICAL「ラディアント・ベイビー」(訳詞)、「YOSHIO INOUE sings Disney」(構成・演出)等。日比谷シアタークリエでは【SHOW-ism】シリーズ全作の脚本・演出・作詞を手掛ける。「ユイット」「ピトレスク」「TATTOO 14」「Underground Parade」「DRAMATICA/ROMANTICA」等。作詞家としても活躍しており、第81回NHK全国学校音楽コンクール・高等学校の部に、課題曲「共演者」を書きおろす。

 

ダンサーをミュージカルの世界に引っ張ってくるのが好きみたい。

 

TDM 小林さんの演出家としてのお仕事のスタイルを教えていただけますか?

 

 

小林 p05大きく分けると3種類ほどあります。1番多く依頼がくるのは、オリジナルのミュージカルの創作。その場合は脚本、演出、作詞をします。2つ目は、海外ミュージカルの演出とその歌詞を日本語に訳す作業。3つ目は、コンサートやディナーショーの構成・演出や、作詞です。オリジナル作品の場合、長いものだと2年前から打合せをしますが、それくらい余裕があるのは幸せな方です。数ヶ月で作らなきゃいけないことが多いですね。体を壊さずにいかにやれるかが勝負です。今は、Red Print含めて3本ほど作品を同時進行しています。今回のToysは、今年5月にお話を頂きました。私とRed Printさんには何も接点がなかったので、依頼が来た時は本当にびっくりしました。

 

 

 

MIHO 私は陰ながら小林さん演出の作品を拝見しておりました。今枝珠美さんが出演した「TATTOO 14」や、原田薫さんのソロ公演「モノクローム」など、数々楽しませていただいていまして、それで今回、私が、女性ダンサーの演出経験の豊富な小林さんを推薦させていただいたんです。

 

 

小林 そうだったんですね。MIHOさんが繋げてくださったんですね。ありがとうございます。

 

 

MIHO 私はもともとフレッド・アステア、ジーン・ケリーなどのミュージカルが好きなんです。最近は劇団四季の劇団員の方にエクササイズやリズムトレーニングの指導をする機会もあり、今ミュージカルと接点があり嬉しいです。

 

 

 

小林
私はダンサーの方をミュージカルの世界に引っ張ってくるのが好きみたいで。2011年の「Underground Parade」というミュージカルには、原田薫さん、YOSHIEさん、大貫勇輔さん、佐藤洋介さん、港ゆりかさんに出ていただきました。セリフも言ってもらったし、小さなソロも歌っていただきました。すごいダンサーたちがあんなにも緊張している姿は初めて見ましたね(笑)。ダンスの世界で一流を極めている人は、感性で演技もできるはずなので、不安はなかったです。多少、歌う時に音程がズレるとか、声がプロの歌手の様に伸びやかに出るわけではないとしても、お客様の前に出せるクオリティまで高められる人たちだと思っています。その後、皆さんミュージカルにたくさん出るようになりましたよね。面白いものですね。

 

 

 

TDM 確かにあの時代からダンサーがミュージカルに出ることが増えた気がします。

 

 

 

小林 そもそも私はダンスがいっぱい入っているミュージカルが好きなんですが、日本で上演されるものは歌がメインのミュージカルが多い。ですから、自分がオリジナルを作る時は、できるだけダンサーが活躍できるものを作るようにしています。ダンスを観て楽しい!と思うのは、理屈じゃないですからね。

 

 

 

MIHO
私もミュージカルの中のダンスは大好きで、ダンスと演技が分かれてもいつの間にか、踊りながら歌もあって、コミュニケーションが取れている自然なバランスが好きですね。

 

 

 

小林
なので、今回のRed Printの公演はできるだけミュージカルにしたいと思ってるんですよ。

 

 

 

MIHO やーだー!超嬉しい!!!(笑)。
 

 

 

小林 10名もメンバーがいると、いろんな考えの方がいると思うので、「Red Printはミュージカル集団じゃない!」と思う方もいるかもしれません。しかし、第3回目の今回は私が演出になってしまったがために、ちょっと、ミュージカル寄りの作品にトライしてもらえると嬉しいなと思っています。

 

 

■Red Printの未来の為に私の演出にトライしてもらいたい。

 

 

TDM 今回、出演するダンサーたちにはどんな経験をして欲しいですか?

 

 

 

小林
Red Printのメンバーは今回10人。思っていることは10通りだと思いますし、しかも全員女性の集団。まとまるはずがないですよね。それが、過去に2回も公演をやっていらして、よくまとまってらっしゃるなと思うんです。Red Printはあと5回、10回と公演を続けていきながら、自分たちの方向性を見つけていくと思いますが、今回の3回目に関しては、皆さんがどこに向かって活動していくのかを探るためにも、今回私と一緒に挑戦してもらえたら嬉しいです。

 

 

 

MIHO もともとRed Printの集まり方は、同じ世代で、 役者でダンスも踊る人、ダンサーでお芝居も挑戦したい人を集めて何かやろうということで、私にも声がかかったんです。そこで、作品のダンスとお芝居の比率について話し合ってきていますが、私は結成前から、お芝居よりもダンス多めのミュージカルのような演技がいちばんやりたいと言い続けてます(笑)。

 

 

 

小林 なるほど。皆さんの共通項がダンスなんですね。ですが、今回はミュージカルなので、演技も多くなりそうですし、1曲くらい歌っていただこうかなと考えています。

 

MIHO はい、ぜひやってみたいです!

 

 

 

一流のダンサーは彩られた色を最終的には自分の色にしてしまう。

 

 

TDM
MIHOさんが演じる時に意識していることや、楽しんでいることはありますか?

 

MIHO
p02与えられたものだけをやりこなすのではなく、自分の心がどう動いたかを意識しています。それがないと予定調和になってしまうし、棒読みになってしまい、その人の人間性が出てこないんです。だからと言って自分を出しすぎても違う。作品の縛りの中で、自分の感性でどれだけ遊ぶことができるのか。全身全霊でぶつかっていき、演出家さんとのやり取りでどんどん引き出され、新しく進化した自分やメンバーたちと、苦しいことも多いですが、基本楽しみながら役に入っていきます。

 

 

 

TDM ストリートダンサーの中には、まだ演出で彩られることに抵抗がある人もいるのが現実です。それはプライドだったり、恥ずかしさだったりいろんな原因があるかもしれませんが、Red Printさんのように、表現の引き出しがひとつ増えると捉えればとても面白いことですし、今後ダンサーの輝く場所として確立されていくんじゃないかなと思います。
 

 

 

 

小林
これまで多くのダンサーの方に私の舞台に出ていただきました。例えば辻本知彦さん、KENTO MORIさんなど、そういう一流のところで仕事をしている方々、ちゃんと自分の足でキャリアを築いてきている方々は、ものすごく素直です。演出家の言うことを聞いて、まずはやってくれます。「俺はこうやって表現したぜ」と言わんばかりにやりきってくれます。身体を使って表現してきた人の演技は大概すごく自然なんです。頭じゃなくて、テクニックだけでもなくて、心で感じたものを出してくるので本当に素晴らしいと思います。彩られることに抵抗がなく、こちらから彩られた色を最終的には自分の色にしてしまうんです。その無言の駆け引きがすごく楽しいですね。私が渡したものだけではないものを出してくれるから、何が出てくるのか楽しみで、1人でほくそ笑んでいます。たぶん、今回のRed Printの皆さんもそうなると思っています。

 

 

TDM 起用したダンサーの踊りは、事前に情報として見るんですか?
 

 

小林 あまり見ないですね。歌手の方の場合は事前に聞くんですが、ダンサーさんの場合はもう身体に出ているから、わかりやすいです。あとは、ダンサーの方は新しいものへの感度が高く、その鋭敏なセンスが舞台にも出るので、ダンサーの方が舞台に出ると、舞台がお洒落になりますね。それがとてもすごいと思います。

 

 

MIHO 演出家さんのこういう引き出し方、すごいですね。今回の配役がとても面白いんですが、それも過去の公演映像を見ただけで決められたということですよね?

 

 

 

小林
過去の公演映像ではなくて、一度打合せが始まる前に、30分ほど私とフリートークした時がありましたよね。あの時に感じた皆さんのキャラクターで決めました。あとは、自己紹介の仕方。バラバラですごく面白かったです。

 

 

 

 

MIHO わー!あの時に人間観察されていたんですね。なるほど。作品に臨む気持ちが、あらゆる場面に影響してくるということがわかりますね。自己紹介の時点で、どこまで気持ちを持っているか。みなぎっている人もいれば、エンジンをふかしている人もいる。もちろん、ふかしていることは悪いことではないし、本番までに、変われる可能性を持っているという意味では面白い。小林さんが私たちを深く知らない状態で決めていただけて、良かったです。観にこられる方もキャスティングを楽しみにしてほしいですね。

 

 

 

TDM
昔から人間観察がお好きなんですか?

 

 

 

 

小林 それもありますが、自分も今まで、誰かに言われた一言ですごく解き放たれたり、ちょっとしたことを見抜いてもらったことでピックアップしてもらったりしました。それが舞台を作る中でも起こせたらいいなと思います。ただ、私はみんなを導くために褒めるのが得意じゃなくて、本当にいいと思えないとうまく言えないんです。本当にいいと思えない時は黙ってしまうので、何も言われない人は不安になりますよね。よく見ていないと気づけないこともあるので、Red Printさんのことも、観察し続けたいと思っています。

 

 

 

MIHO
いろいろバレそうだな~(笑)。ただ、小林さんから何も言われないからって不安がらずに、自分の内面が相手に伝わる様な人間力はつけていきたいですね。

 

 

 

小林
確かに、Red Printさんは各自が活躍されているので、何も言われなくても自分がどこに居るのかは皆さんお分かりだろうなと思います。ただ、ダンスはわかるけど演技となると突然わからなくなる場合もあるので、そこを引き出せたらと思います。

 

 

テーマ性、人の在り方でも魅せられる最強の自分でありたい。

 

小林 p04女性だけのダンスユニットはあると思うんですが、Red Printさんのようにさらに演技にまで手を出してる方たちは珍しいんでしょうね。男性のユニットの方がショービズでは主流な中、女子だけでしかも結構な人数でやるのはかなりチャレンジングだと思うんです。しかも次は、結構な回数で公演を打つとなると、頑張りどころですよね。でも、そうやって、半歩くらい先に目標を据えないと頑張れないと思いますし、やる気がみなぎっていてとてもいいと思います。役と役者との関係と一緒で、私がRed Printさんのどこに共感するかによって、変わっていくと思います。決して若くないし、ビジネス的には大変と言われている女性だけの集団でありながら、パワフルに舞台を作るのは素晴らしいことだと思います。

 

 

 

 

MIHO やはり女性だけでは厳しいことが多いのでしょうか?

 

 

 

小林 例えばミュージカルですと9割が女性のお客様で、そういう畑では男性のユニットの方が有利だと思います。その中でRed Printとして表現の場を作っていて、世の中へのメッセージを持ってやっていらっしゃることに、私なりの共感を見つけたいと思っています。

 

MIHO p01今日のインタビューで小林さんの客観的なご意見をお聞きして、やっぱりダンスも人生も自分次第だなと改めて思いました。小林さんがとても話しやすく、気さくなお方だということもわかってとても嬉しいです!私たちメンバーはダンサーが多いので、見てもらえるお客様もダンサーが多いのですが、ダンスをひとすじにやっている人が表現の幅を広げることに興味を持ったり、憧れたりしてもらえたら嬉しいです。私も歳を重ねて来てダンスひとすじの表現から演技の方に行ってしまうの?と思われがちなんですが、そうではなく、昔も今も意識していることは、どんな音で、何を感じて、どういう踊りを踊ってどんな自分でいるのか。ダンスにいつもそういう事は意識してきたし、それは何を着て、何を食べて、どうライフしていきたいかという人の在り方だったり。テーマを持って表現していきたいし、ステージの上で最強の自分でありたいです。ダンスを見るという体制に入った観客は、スキルだけではなく、テーマ性、人の在り方、楽しいと思って心がその動いたその笑顔も見たいと思うはずなんです。そういう意味も含めて私は、演技や歌もダンスもぜんぶが一つになったものが好きです。

 

小林
そういう意味でも、原田薫さんはとても素敵ですよね。演劇とダンスのバランスがとても素晴らしい。MIHOさんもミュージカルに出られては?

 

 

 

MIHO そうですね。まだダンス多めのミュージカルの経歴としてはアンサンブル止まりなので、今後はどんどんミュージカルにも挑戦していきたいです。
 
 

 

小林
それに向けた何かを、今回「Toys」でやれたら。ダンスと演技がごく自然で、分断されていないものがやれたらいいですね。

 

 

 

MIHO やっぱり、まだミュージカルに対して抵抗がある人も周りにいます。なんで急に歌うのか、セリフで言えばいいじゃないかと。私は歌で表現するのは大好きなんですが…。
 

 

小林  そういう方には、“歌の翼”を是非見て頂きたいですね。歌詞を書く者からすると、そこまで言葉でベタベタと言わなくてもいい時に、歌の翼で引っ張っていけますから。ミュージカルにおいて、セリフではみ出てしまう気持ちを表現しているのが歌。歌う必要があり、絶対に歌わなきゃいけない時があるんです。ただセリフを歌にしているわけではないんです。ミュージカルに抵抗のある方も良いミュージカルに出会って是非“歌の翼”の感動を味わっていただきたいです。

 

 

MIHO そうですよね!!それを是非いろんな人に伝えたい!!

 

 

 

TDM
今後の小林さんとRed Printとの化学反応が楽しみですね!では、最後にお客さまにメッセージをお願いします!

 

 

 

 

MIHO 全身全霊を賭けて取り組みますので、一番輝いてる私たちを観に来て頂いて、とにかく楽しんでもらいたいです!

 

 

 

 

小林 なかなか稽古スケジュールが合わない中で、各個人が努力して成長することを期待していると思うので、その辺りをしっかりやりたいと思っています。あとは、物語にも共感してもらえるように努力したいですね。Red Printの魅力はキャスト一人一人の個性なので、それを見せつつ、物語のメッセージでも魅せられるようになりたいです。ダンサーが演技をすることで、新たなフィールドに進んでいく彼女たちの力強さ、その面白みを発見してもらえたらなと思います。そして、それはお洒落なことだと思ってもらえたら嬉しいです。これまでのRed Printの皆さんはコメディのイメージかもしれませんが(笑)、お洒落な時間を作れたらと思います。

 

 

 

 

TDM
お洒落な時間、楽しみにしております!今日はありがとうございました!

 

 

[PICK UP]エンタメ集団Red Print×演出・小林香、新作公演 『Toys』

 

 

 interview and photo by imu

’16/11/09 UPDATE

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tokyodancemagazine

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