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D.LEAGUE特集  KEITA TANAKA

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ストリートシーンで絶大な存在感を誇り、2012年惜しまれながら解散したBASE HEADSのリーダーであり、DREAMS COME TRUEをはじめ、トップアーティストたちからも信頼の厚いKEITA TANAKA。彼は今年、KADOKAWA DREAMSのディレクターとして、D.LEAGUE 2シーズン連続優勝という快挙を成し遂げた。コアなアンダーグラウンドで生きてきた彼が、D.LEAGUEという大舞台でチャンピオンを獲るまでの軌跡や、次世代に対する真摯な想いをアツく語ってもらった。


 

・KEITA TANAKA

 

2000年以降のダンスシーンに革命を起こした張本人。ストリートシーンで無敵を持ったBASE HEADSを率い、ニュースタンダードを確立。MISIA、BoA、安室奈美恵、倖田來未、SMAP、平井堅、ZEEBRA等、数多くのトップアーティストのツアー、PV、TV、LIVEのバックアップダンサー&振付を手掛け、DREAMS COME TRUEにおいては、14年間バックアップダンサーを務めた。また、数多くのイベントのプロデュース、音楽プロデューサー、映像プロデューサー、自身のアバレルブランドのプロデュースなど幅広く活動。

プロダンスリーグD.LEAGUEでは、1stシーズンからKADOKAWA DREAMSのディレクターに就任し、原石を1から集めたチームで22-23シーズンチャンピオンを奪取、23-24シーズンチャンピオンと2連覇を果たした。また、スタジオKDとしてユースチーム、育成クラスのゼネラルマネージャーとして次世代の育成にも力を注いでいる。洗足学園音楽大学 ダンスコース准教授。

 

 

■「ジャイアントキリングするぞ!」と始まったDリーグ

 

 

TDM:まずはKADOKAWA DREAMS、D.LEAGUE(以下、Dリーグ)2連覇おめでとうございます!

KEITA:ありがとうございます。優勝は嬉しいですけど、MOST CREATIVE DIRECTORはとらなくて良かった。とっちゃうとアワードの場でダンスしなきゃいけないから、逃れられて安心しています(笑)。僕もう現役は引退しているので踊りたくないんですよね。

TDM:そうなんですか!?今回は、Dリーグのディレクターに就任した理由をまずお聞きしたいのですが、Dリーグがダンサーやディレクターを集める際に、最初は断るダンサーもいたとのことですが、KEITAさんはいかがでしたか?

KEITA:そもそもDリーグが僕のことを拒否していたんだと勝手に思ってます(笑)。僕は当初カンタローさん(株式会社Dリーグ代表取締役COOカリスマ・カンタロー)が集めたディレクター候補に入っていなくて、最後にもう1チーム増やさなきゃいけないとなった段階で声をかけてくれたんです。それも当然で、それまでの僕はコンテストやバトルも、もちろんDリーグにも縁がなかった人間だったから、お話をいただいたときは正直「微妙だな」と思ってました。

勝ち負けじゃないところに美学を感じてダンスをやってきた分、引き受けたら自分の人生に対して真っすぐいられないかもと思って、仲間たちに相談したら、「Dリーグはこれから爆発する可能性があるからやった方がいい」という意見だったんです。

当時のダンスシーンは、六本木、新宿、メディア系などのカルチャーがあった中で、渋谷のダンスシーンは大きくて、ファッションや音楽の流行の最先端を作り出していたのですが、「ダンスシーンのど真ん中にいるKEITAが入らなかったら、そこがスポンと抜けたままDリーグが作られていくことになるから良くない」と言われて、やることを決めました。だから僕は、Dリーグに興味がないダンサーたちの気持ちは分からなくはないんです。

 

 

TDM:あえての参画ということだったのですね。実際、参画してみていかがでしたか?

KEITA:今までは、イケてるか、イケてないかで作品を作ってきたけど、強いか、強くないかで作らなければいけないことが、そもそも違ったし、審査項目に〝ファッション〟や〝スタイル〟という項目があるんですけど、僕はダサいと思う衣装なのに満点がついたりすることも納得できなかったし、僕らHIP HOPのニュースクールスタイルは、いろいろなものを混ぜ合わせて進化しているから、新しいものを審査員にジャッジしてもらうのも難しいと思っていました。

でも、そのスタイルを崩さないまま戦うと華やかなブレイキンやPOPに負けちゃうし、他のチームにはコンテストに強いメンバーがたくさんいる中で、僕らは当初、戦えるメンバーも少ないし、いろいろな制約もあって混沌とした中で始まった初シーズンでした。だから皆が思っているよりも僕らは戦っていましたよ。

TDM:具体的にはどんなことと戦っていましたか?

KEITA:初年度は先輩や仲間内からも、SNSのDMでも「そんなんじゃ勝てない」とか「ディレクターやめた方がいい」とか、いろいろなことを言われました。でも僕は、Dリーグで僕の生きてきたHIP HOPやダンス感に基づいて、自分たちのパイを広げるために戦いたかった。

そもそもHIP HOPは、アフリカンアメリカンやプエルトリカンたちが、自分たちの生活をより良くして、自分たちの権利を獲得したいと外に外に広げてきたものなのに、ある時からダンスシーンの人たちは外に広げようとしないで、「薄まる」とか「セルアウト」とか言い出して、広がるものを悪とするようになった。

いつの間にかHIP HOPが、ing(現在進行形)ではなく伝統芸能になっている。それはHIP HOPやストリートの理念からはズレてるんですよ。だから僕は、このDリーグという土俵で、どれぐらい僕たちがカッコいいのか、見せることができれば、下の世代のダンサーたちの世界も広げてあげられると考えています。

TDM: そういった思いがあったのですね。

KEITA:そうですね。僕はコンプレックスの塊でかなり偏った考えを持っていました。もちろん心を込めて作っている人たちは別ですが、そうじゃなく業界として成り立ってしまった、いわゆる〝日本の芸能界〟が嫌い。それらへのアンチテーゼとしても〝ジャイアントキリング(下位の者が上位の者を負かすこと。番狂わせ)〟が、僕らのチームのテーマであり目標でもありました。バトルやコンテスト畑じゃなくても戦えるということも示したかった。

TDM:メンバーはどのように選んだのでしょうか?

KEITA:最初からほぼオーディションです。セレクションと呼んでいますが、それで集めた高校生集団。ほとんどが高校生で、初めましての子もいたので、初年度は僕のマインドも理解していないし、ダンス界がどうなっているのかも分からない子たちの集まりだったから、 どう向かっていけばいいかも分からなかったですね。

初年度は前例もなく、北海道から九州まで全国から集まったので、引っ越しや転校をさせるために全員の親御さんに会いに行きました。地元の学校にも行かせられないから、校長先生にも挨拶しに行き、KADOKAWAは高校を持っているので、そこに入れてもらったり、いろいろなことをしました。学校の先生とは常に連絡をとっていましたしね。

TDM:そのメンバーとジャイアントキリングを達成するために、ディレクターとして伝えたことはありますか?

KEITA:プロフェッショナルの立ち振る舞いを意識させるために、いろいろなルールを課しました。これはダンス界が悪いんですけど、いつまで経ってもダンサーは社会の人たちからタメ口で話されるんですよ。インタビュー受けてても「そうなんだね」とか言われちゃう。サッカー選手には言わないでしょ。それってなんでなんだろうと思うけど、やはりダンサーが〝子ども〟だからだと思うんです。

スタジオに行った時にダンサーがヤンキー座りしてタバコを吸ったり、 床に座ったりするけど、僕はメンバーに、「俺らはプロだから、そんなことしたら即クビにしてやるからな!」と宣告しました。あとは時間ですね。僕らは団体で全てのブランディングをしているので、団を乱すような行動は許さない。そういう厳しいルールを課して、「まず3年間でジャイアントキリングするぞ!」と伝えました。

 

 

■全てメンバーでクリエイトできる仕組み作り

 

TDM:プロダンサーとして立ち振る舞いを意識させたんですね。

KEITA:ダンス界の固定概念とかですかね。「ラフで酔っぱらい風だけど、かっこいいよね」みたいな価値観はもちろんあるんですけど、そっちばかりにフォーカスし過ぎて、広げなかったのはダンス界の負の遺産です。僕も子供ができましたけど、「子供を大学まで育てあげるのに、お前らほんとにそれでいけるの!?」と思うし、日本の経済状況だって馬鹿じゃなければ分かるはず。だから、お金のことも「今アメリカに行こうとしたらどのくらいかかると思う?」「今のレッスン料の平均単価分かってる?」などメンバーに1から説明しました。

TDM:お金のことまで!でも、大事なことですね。

KEITA:みんな高校生で入ってきたので何も知らないんですよ。だから、「トップダンサーが90分レッスンやって稼げるのはこのくらい」「たまにバックダンサーと呼ばれる華やかな仕事もやったとしてのだいたいの合計年収」など具体的に割り出して「これがお前らの求めるものか?」と。「もし、嫌だったら変えるしかないし広げるしかない。広げるためには結果が必要だから、俺らは優勝するしかない」と鼓舞していました。

TDM:考え方を1から教育したんですね。

KEITA:実務も全部教えています。例えば、僕が事故にあって急にいなくなっちゃうみたいな場合もあるし、僕がディレクターを辞める可能性もあるけど、企業としては投資しているからには続けないといけないわけだから、誰がいなくなってもある程度、再現可能な状態にしておかなきゃいけないんですよ。

だから僕はメンバーに仕事もお金のことも全部やらせていて、今は皆、企画書も作れるし、台本も作れるようになってきているので、いつ僕がいなくなっても大丈夫なように徐々に仕上がってきています。

TDM:計画的ですが、組織作りの構想ははじめからあったのでしょうか?

KEITA:いや、とんでもないです。「あと2カ月で開幕しますからね」という状況で、名前もロゴも決まってないし、音楽を作る人も衣装もメイクもいない。まず選手もいない状態で「さあ、どうしますか?」という感じだったので、それらを2カ月で一気にやりました。

まず名前を考え、意味を考えながらロゴデザインして、コロナ禍だったから対策をしながらセレクションをしました。曲も用意しなきゃいけないけど、曲なんか作ったことないから「どうすればいいんだろう?」からの始まりでした。制作の部分でも、2週間に1回作品を作るためには、スタジオが週6必要なのに、出された収支に入っていなかったから、俺が予算案を作り直して話し合いをしました。

BASE HEADSのメンバーも協力してくれて、クリエイティブディレクターにはGENが就任してくれています。初期の頃はSHIGEもコレオグラファーとしていてくれたし、顧問のような立場でINO-Dがいてくれています。それ以外に、ビジネスに精通した人にも入ってもらっていますけど、撮影はYO-SINがやってくれたり、基本的に僕らの仲間でずっとやっています。

TDM:23-24シーズンが終わって、この4年の中でDリーグに対しての想いは変わりましたか?

KEITA:先ほども言ったように、3年間でジャイアントキリングするために、3年間、全てに対して敵だというようなイメージでやっていたので、いろいろなことをシャットダウンして、とにかく動きました。それが3シーズン目までのDリーグとの関係値。4シーズン目の23-24シーズンでは全然変わりました。

TDM:どのように変わったのでしょう?

KEITA:良くも悪くも、自分たちの土俵っぽくなってきちゃった。だから刺激が足りなくて、刺激を自分たちの中に求めるしかなかった。今までの全ての作品を超えられるように、過去の自分たちと今の自分たちを戦わせる、いわゆる仮想敵を作って戦い続けたシーズンでした。

TDM:2週間に1つ作品を作るのは大変ではないですか?

KEITA:まぁ、これだけやってきている分、名だたるラッパーやトラックメーカーたちと繋がっていますからね。

でも、今のDリーグは、原盤権をDリーグとチーム半々で持つスタイルで、トラックメーカーにとっていい条件ではないので、いろいろ大変です。

例えば、僕らダンサーは、5分のショータイムを作るのに、静かなところや盛り上がるところなど音楽に抑揚を生まなきゃいけないし、女性ボーカルから男性ボーカルになって欲しいなどもあるし、1曲の中でそれを包括するのは難しいから、だいたい3、4曲使うことになる。

それをDリーグでやろうとなると、4曲作って1曲に編集しなきゃいけない。4曲ということはコスト4倍。最初からその設計でトラックを作ってもらって、ボーカルも何人か入れて、みたいなことをできる回もあれば、できない回もある。

できなかった場合、バラバラのデータをもらって、ラップや歌もできるメンバーに声を入れてもらって、自分たちで組み直して録音したり、いろいろなことをしながら作っています。

TDM:歌入れも自分たちでするんですか!?

KEITA:僕たちはそうです。他のチームはどうか分からないですけど、似たような状況ではあると思いますよ。2週間に1回曲を作って、権利関係を全部パスしていくのは大変な作業です。

TDM:音楽を用意するだけでも大変な作業ですよね。

KEITA:そこから、振付、衣装、小道具、カメラワーク、ライティングも全部自分たちでやる。これを2週間に1回やっているわけです。1人ではそんなことできるわけないので、僕はメンバーたちができるような仕組みにしました。アーティストと呼ばれる人たちは皆やっているわけだから、メンバーたちでしっかりクリエイトできるようにしようと。まぁ、アーティストもこのペースではやらないですけどね(笑)。僕が作っていたらネタも尽きますが、振付も何もかもメンバー皆でやっているので大丈夫です。

 

 

■リスペクトを込めての「DREAMS」

 

TDM:KEITAさんのディレクターとしての知識や才覚はどのように培われたのでしょうか?

KEITA:僕、現役だった時代の後半はダンススタジオでレッスンやってないんです。ダンススタジオで雇われるというのが嫌になって、スタジオを全部辞めて、全部自分でレッスンやワークショップを管理してやっていました。各スタジオと、「僕が70%、スタジオ30%という内訳でやりませんか?交通費・宿泊は僕が持つので、その代わりグッズ売らせてください。グッズの収益の何パーセントは渡します」みたいな交渉も全部自分でやっていたので、お金の計算はなんとなくできるようにはなりました。あとは、僕はAKS としてDREAMS COME TURE(以下、ドリカム)とずっとやってきたので、その経験が一番大きいです。

TDM:ドリカムダンサーでは、さまざまなアプローチをされていましたよね。

KEITA:初めて海外のステージに立たせてくれたのもドリカムだし、国立競技場も、全ての土地のアリーナもドームも全て連れていってもらいました。こうあるべきというプロのマインドも教えてもらったし、ビジネスの仕方から後輩たちのフックアップの仕方まで、ありとあらゆることを教えてもらいました。だからチーム名にも入れてるんですよ。リスペクトを込めての「DREAMS」です。

TDM:言われてみれば!まさかそこから来てるとは思いませんでした!その経験があったからこそ、今のディレクターとしての姿があるんですね。

KEITA:間違いないですね。ドリカムから半分以上スピリッツはいただきました。

 

■大きく発展して欲しいからこその提言

 

TDM:23-24シーズンが終わって、 今どんな思いがありましたか?

KEITA:22-23シーズンにチャンピオンをとって、KADOKAWA DREAMSとして世界に打って出たいと思っていたけど、オフシーズンが3カ月しかなかったので、ベトナム・タイ・インドネシア・ロンドンと4カ国のみ行って、主要なイベントのゲストショーや、コンテストに出たりしてみましたが、なかなか大きいインパクトを打ち出せなかった。だから、23-24シーズン優勝して、2連覇したら、この先が見えてくるのかなと思って戦っていましたが、正直その先は繋がっていなかったんですよね。

例えばサッカーだとしたら、Jリーグで日本チャンピオンになったら、ワールドカップがあって、ヨーロッパリーグやブラジルなどへ繋がっているけど、Dリーグはまだワールドカップがあるわけでもないし、チャンピオンになった後の景色を見て、「これも自分たちで変えていかなきゃいけないんだ」と気づいてしまった。

ジャイアントキリングを掲げてずっとやり続けていたのに、チャンピオンになることは過程の1つでしかなかったと気づいて、そのときはメンバーもモチベーションを保つのが難しかったと思うけど、これから別のチームが優勝した時のためにも、僕らが何か残しておかないと続かなくなってしまうと奮起して、爪痕を残すために、Dリーグチャンピオンとしてインドネシア・韓国に行って、いろいろなファンビジネスを展開しようとしています。

TDM:この現状を打破するためには、KEITAさんとしては何が必要だと思いますか?

KEITA:僕個人としては、もっとDリーグと向き合いたい。平野さん(株式会社Dリーグ代表取締役CEO 平野岳史氏)やカンタローさんと、本当に腹を割って、Dリーグとして、これからどういう風に展開していくのか話し合いたい。

スポンサーについても、今は僕らが自分たちでスポンサーを取りにくい現状があります。いくら1,000万円出してくれるという企業があっても、Dリーグにメインでついてるスポンサー企業と競合する企業はつけられない。もちろんその意味も分かるんですが、それだけのリターンが今はない状況です。

サッカーや野球のチーム運営の年間指標を見たら分かりますが、収益システムはスポンサー料で出来上がっているんですよ。チケットの売上などもありますが、一番大きいのはスポンサー料。運営するためにある程度、緩和して欲しいし、今はグッズも売りにくいシステムがあったり、いろいろな制約があるので、そこを一緒に改善していきたいです。

そして、一番大変なのは楽曲作りです。製作費はそこまで問題ではなく、問題なのは〝権利〟なんです。トラックメーカーは、楽曲が売れた時、 例えば、何百万回と再生された時に、その何パーセント貰えますか?というのが今のスタンダードな考え方です。TuneCoreというシステムのスプリット(楽曲の収益を自動分配できる機能)でお金を得るというのがトラックメーカーの常識なので、若い子たちは、例えば、10万円ぐらいで楽曲を作って100万回再生で100万円稼ぐということをやっています。

TDM:音楽の著作権は、ダンス界にとっても大きな課題ですね。

KEITA:そうですね。音楽の著作権は全ダンサーが関係してくる難しい問題で、僕らがやっていることはダンサーの権利の獲得。だから、そこを見ずして、外野のダンサーが「なんかDリーグってさぁ~」と文句言うのは少し違うかなと思います。

他人の曲を使って踊るだけじゃなく、その曲の著作者に何か返せているか考えてみて欲しい。もっと掘り下げれば文化の盗用とか、いろいろな問題があるけど、そこに対して何かアプローチできているダンサーは少ないんじゃないかな。

世の中がBlack Lives Matter(黒人に対する人種差別に抗議する運動)をやっているときにだけ声を上げて、「カルチャー」だという意見は多いけれど、継続することが大切。継続していなければ何にもしてないに等しいと思われてしまうかもしれない。だから、僕たちは絶対そこは負けずに自分たちで頑張っているんです。

TDM: ダンサーの権利も獲得しながら、Dリーグ自体も広げていければいいですよね。

KEITA: Dリーグとはパートナーシップで歩んでいかなきゃいけないから、きちんと話し合って更に広げられる方法はないのか、経営側と現場で一緒に模索していかないといけないと思います。2連覇した僕らが現状を打破する方法を見つけられなかったら、この先も誰もできないと思っています。

僕らが海外に出て広げるコストは自分たちで出すから、Dリーグの制約をある程度、緩めて欲しいです。うちはまだ自分たちのスタジオでレッスンをやっていて、千葉にもスタジオを建設中なので収益を生んでいけるようになりましたけど、選手16名の年俸と、スタジオの建設費に家賃、衣装代、音楽制作費、全て賄わないといけないわけですから切実です。

ユースチームも50人弱抱えていて、その下にジュニアもいますから、ディレクターとしてただ単に試合を戦っていくというだけじゃなくて、存続させる方向を考えなきゃいけないので、僕はそっちの方をメインに動いています。

 

             

スタジオに飾られた今までの目録と、衣装の数々

 

             

KDユースの衣装

 

TDM:それはダンススキルとは別のスキルなので、普通のダンサーは難しいですよね?

KEITA:そう思いますよ。僕は執行役員などと普通に話して、予算も全部話し合って決めます。ディレクターがやる仕事じゃないように思われるかもしれませんが、やらなかったら存続できなくなるのでやっています。

でも、僕みたいなタイプはマネージャーになるべきで、ディレクターは純粋に戦いにフォーカスするダンサーがなればいい。ちゃんと金勘定できる人を置いておくべきで、ダンサーにそれをやれというのは無理ですよ。たとえディレクターがそういう意識を持っていても、スポンサー企業側が同じ意識を持っていなかったら難しいですしね。

さっき話した権利の問題に関しても、僕らは、音楽の著作権の他にも肖像権とかいろいろな権利を有してるのに、その定義や範囲が分からないままだったら、ただ単に戦うことができてもビジネスにはできないんですよ。そこは、ディレクターたちも権利の問題をちゃんと勉強しなきゃいけないと思います。

だから、僕はディレクター会議をやった方がいいと思っています。団体として開催して、ディレクター全員で話して、知識や経験をシェアしないといけない時期にきてると思うんですよね。僕のところで貯めていても無意味。僕もシェアして欲しいしね。

TDM:経営側と現場がもっと近い場所にいて、皆で改善していこうということですよね。

KEITA: そうやって皆でDリーグを大きくすればいいんじゃないかなと思っています。もっと現場の意見を伝えていきたい。

…と、僕、なんだかDリーグの欠点みたいな話ばかりになってますけど(笑)長所もいっぱいありますよ!

TDM:(笑)。では、ここからは長所を教えてください!

KEITA:もう、これはね…個人では絶対成しえない規模感ということです。日本の本当のトップ企業を集めないと、これだけのインパクトは生み出せなかったという歴史的快挙なんです。ソフト面はまだ改善の余地があるという話なんですけど、ハード面はすごいです。東京ガーデンシアターをあれだけの日数押さえれること自体がすごい。

僕らも最近、自分たちでワンマンライブをやってみましたが、あの規模でやると製作費は莫大な額です。動かす人数も、オペレーションも考えたらとてつもない時間と労力とお金がかかっている。配信もあって、囲み取材も付けてもらって、という環境を用意してもらって、僕らは出るだけというのは、すごいことだと思います。

TDM:ワンマンのときは自分たちで全部やらなければいけないですもんね。

KEITA:そうですよ。アルバイトやお弁当の手配、照明や特効、養生して撤収して……云々かんぬんで軽く4桁いきます。そこで興行の大変さを知ったからこそ、改めて「Dリーグありがとう!」と思いましたね。だから、文句ばかりではなくて(笑)、本当に感謝している部分が大きいです。大きく発展して継続して欲しいからこそ提言しています。

 

■僕らはDリーグの申し子として次の景色を作る

 

TDM:KADOKAWA DREAMSとして、次の目標はありますか?

KEITA:いろいろありますが、純粋に、僕らKADOKAWA DREAMSは Dリーグの申し子だと思っているんですよ。だから、外を見る理由というのは、Dリーグを大きくするためです。僕らは、チャンピオン獲った2回とも、海外に行ったときは、日本の大使館や総領事館に行ってご挨拶して、〝海外に行くのはちゃんと国際交流のうちの1個のダンス〟という形を作っています。僕らのPRももちろんあるけど、僕らがやっていることは最終的に全て次の世代への橋渡しでしかないんですよ。

TDM:〝Dリーグの申し子〟とは、自覚と覚悟を感じます。

KEITA:次を担う子たちのために僕らは強くならなくてはいけないし、次の景色を作らないといけなんです。Dリーグを卒業するとか、選手にも卒業していって欲しいなんてイメージは僕にはなくて、Dリーグが世界最高峰になって欲しい。戦いという面ではですね。世界にワールドカップ、オリンピックがあるように、Red Bullの大会と双壁をなしてもいいですよね。

ワールドカップ構想はもちろんカンタローさんも思ってくれていると思うんですけど、ハードにいくらお金をかけても、中のソフトが動かないと意味がない。今動けるソフトの一番といったら2連覇しているKADOKAWA DREAMSしかない。今、2連覇した僕らが成し得なかったらDリーグを大きくしていけないという使命感も持っているし、背負っている責務はすごく大きく感じています。

例えば、世界のタイトルを僕らがとって、次のチャンピオンシップには世界の名だたるコンテストやコンペティションのヘッドハンティングチームが来ている未来を作らなくてはいけない。そういうアクションをたくさん起こして、世界に窓口を開いてDリーグをどんどん大きくしていきたいです。

TDM:自分たちのためというより、次の世代のためという意識なんですね。

KEITA:ストリートダンスでよくあるのは、「俺らのスタイルってこういう感じ」みたいなのって、今やっている僕らはいいけど、スポンサーが「あなたたちのそのスタイルのためにお金を出してるんじゃないから辞める」となったら、何年後に入ってこれるはずだった子たちの可能性を絶つことになる。自分たちが生きる数年間のために、いろいろな人たちの可能性を切ってしまう。好きなスタイルや、やりたいこともあっていいけど、ちゃんと続けられるだけの物を作って欲しい。それが出来ないなら誰かからお金を貰わずに、自分でお金を出してやればいい話。

TDM:お金を貰うなら自己満足ではダメだということですよね。

KEITA:もっと大きく言うと、日本の子供たちの中にも少なからずこのDリーグを夢見ている人もいると思いますが、もっと経済状況が悪くて所得も低い東南アジアでもダンサーはたくさんいるんですよ。潤っていない中で、芸能界ともくっついていない中で、純粋にダンス頑張っている子たちがいます。その子たちのうちの1人でも、KADOKAWA DREAMSに入団が決まって、年俸500万円もらえるようになったら、むちゃくちゃ夢があると思いませんか?

要するに、 海外でオーディションして選手たちを獲得するみたいなことを、盛り上がるような形でやった方がいい。それだけダンスはすごい力と説得力を持っている。Dリーグには、上場企業が集まっていて、国の機関と繋がりや、薬物撲滅運動など、さまざまなことをやっていて、これだけのポテンシャルがあるんだから、そこに目を向けて欲しい。他のチームも、Dリーグにそれだけのポテンシャルがあることを理解して、海外にどんどん行って欲しい。

ダンスが人を動かしていくという原点ですよ。それには「俺らのスタイル」とか、音楽がどうとかも関係なくて、もっとピュアな原点なんです。

TDM:とても壮大なお話の原点が、実はとてもピュアなダンスの原点とは素敵なお話です。

KEITA:俺が見てる限り、その原点で動いていると思うのはケント・モリ君。彼の活動はあまり知られていないと思うけど、1人でいろいろな行政回って、子供たちといろいろやったり孤軍奮闘している。ARなどの最新技術をどうやって組み合わせていけばダンサーとして権利を獲得できるか、スポンサーをつけて自分を使って実験して…みたいなことを1人でやっている。あのマインドの原点って、次の世代への橋渡しなんじゃないかな。

そういう行動と、ストリートダンスは比べるものではないけど、ストリートダンス界も、広げて繋げていくことを誰かがやっていかないと10年後もこのままになってしまうという危機感があります。

 

 

■Dリーグは早く僕をPR担当にしたらいい(笑)

 

TDM:Dリーグは今後、対外的にどのような働きかけが必要だと思いますか?

KEITA:国内に眠っている多数のダンサーたちの目を、もっとDリーグに向けることですね。今年始まったSDリーグ(日本一のダンススタジオを決定するための大会)には、ストリートのコアなダンサーもナンバー出していると聞いて嬉しかったです。そうなってくるのが正解。Dリーグを充実させるためには下支えが絶対必要なんですよ。最初はアプリがあったから、東京の一極集中ではじまったけど、地域単位でチームの本拠地を構えて、どんどん地域に根差していくべきだと思います。僕らは川崎に本拠地を置いて、川崎の行政と組んで、僕たちが川崎のアンバサダーになる意気込みでやっていました。

例えば、九州出身のメンバーが多いKOSÉ 8ROCKSが九州に本拠地をおいて、ブレイクダンスで「やっぱり九州最高~」とかやったら、九州は超盛り上がりますよね。 川崎の場合、Jリーグだとフロンターレ、Bリーグだとブレイブサンダースが地域と連携していて、試合時には、お店も人も川崎中が応援一色になります。ダンスもそうなったらいいですよね。

TDM:地方は独特の文化も色濃くあるので、まとめるのはなかなか難しそうですよね。具体的にはどのようなことが必要だと思いますか?

KEITA:オリンピックでブレイキンのディレクターをやっていたKatsu Oneさんと話したら、オリンピックで競技になるにあたって、世界中のブレイキンのレジェンドたちに会いに行って、「ブレイキン界とオリンピックは、スポーツとカルチャーという感じで離れてしまっているけど、僕らはこういう思いでやっているし、そこを離したくないから、オリンピックにそっぽを向かないでくれ。やるか?やらないか?のどちらかだと言うなら、やった方が絶対いいんだから」と説明して回ったと言っていました。

それをDリーグもやった方がいいと思う。僕が直接話せば、アツい思いが伝わって、「Dリーグいいじゃん!」という気持ちに変わると思う。だからDリーグは、はやく僕をディレクターから引退させて、DリーグのP R担当にしたらいいと思います(笑)。「どうも初めまして」で、大御所たちに会いに行って、生意気と思われても、酒でも飲みながら熱く語って「なるほどね」となってもらう。そこでSDリーグの重要性も語ればいい。でも、それはとても労力のかかる作業だけどね(笑)。

でも、僕は全ダンサーたちにご挨拶したいんですよ。うちじゃなくて他のチームを応援してくれていいし、KADOKAWAのことをディスっても全然いいから、Xで言い合って(笑)盛り上げて欲しい。〝KADOKAWAみたいなスタイルが本当じゃなくて、もっとルーズでいいんだよね論争〟とか始めて欲しいです(笑)。

 

■Dリーグやダンスは皆のものであって欲しい

 

TDM:現在の活動はディレクター業に専念しているのですか?

KEITA:他にも洗足音楽大学ダンスコースの准教授をしています。僕が身体を動かしてダンスを教えるというよりも、ダンスをどうお金にしていくかというダンスビジネスの座学を教えさせて欲しいとお願いしているところです。

TDM:これからのダンサーにとって座学も大切になってきますね。

KEITA:そうです。トウキョウダンスマガジンさんが歴史をまとめておいてください!本当はSEIJIさんが存命のうちにまとめておけばよかったと思いますが、これから5年、10年でどんどんOGたちがいなくなっていく可能性がある中で、日本のストリートダンスの歴史っていうのは、誰かがまとめて文献化しておかないといけないと思っています。

TDM:はい!(笑)TDMは日本の最古のWEBサイトで、歴史を刻むために続けている部分も大きいです。

KEITA:ストリートダンスの日本書紀みたいになればいいですね(笑)。

TDM:今回も、10年前のKEITAさんのインタビューのリンクを貼らせていただきます。10年前と、今のKEITAさんをリンクさせたいので…。

KEITA:え!10年前の僕大丈夫ですか!?(笑)不安だなぁ(笑)。そういう意味でも、Dリーグが投資して歴史をまとめて、日本のダンスシーンを作り上げてきた功労者たちにアワードで功労賞を授与するとかしたらいいと思いますけどね。

 

 

TDM:いいですね!では、ご自身個人として今後の目標や、何かやりたいことなどはありますか?

KEITA:ディレクターをいつまで続けるか分かりませんが、 俺は全ディレクターの中で1番Dリーグのことを愛しているという自負がある。その愛してるDリーグや、ダンス自体も、 誰かだけのものじゃなくて、皆のものであって欲しいという思いが根本にあるんです。さっきも言ったように、その皆というのは日本以外にもたくさんいるから、その子たちへの導線を引くことをディレクターでいるうちにやりきりたいなと思いますね。

僕ができることはたぶんそこまで。その先の世界を繋げてくれるのは、僕が育てるこのKADOKAWA DREAMSなのか、誰なのか分からないですけど、きっと次の世代がやってくれるんじゃないかなと思います。

KADOKAWA DREAMSとしては、来年7大都市を回るツアーをするので、全部満員にしてきます!最終地点はアリーナ2DAYS押さえているので、6,000人の2回公演、全部で1万2000人の7割を、手売りではなく一般販売で埋めたという結果を絶対リリースします!

〝アーティストのバックアップではなくて、芸能事務所からデビューしたのでもなく、Dリーグから純粋にダンサーとしてやってきたチームが、アリーナ2DAYS埋めることができた〟というような事実を積み上げていくことでしか、人もお金も、行政も企業も動かせないんですよ。行政は特に前例主義だから、前例さえ作っておけば、次の世代の子たちにパスもできる。それは、誰が何と言おうと来年やってみようと思っています。

TDM:次世代に繋がるKADOKAWA DREAMSの今後の活躍に期待しています!今日はありがとうございました!

 

 

interview & text by Yuri Aoyagi

interview & photo by AKIKO

’24/09/26 UPDATE

 

 

★他のDリーガーの活躍はこちらもチェック!

■新番組・ダンスバトルエンターテインメントショー『R4 STREET DANCE』がフジテレビで放送中!

放送:フジテレビ(関東ローカル)毎週月曜24:55~(全12回予定)

配信:FOD、TVer

(FOD Premiumでは、限定のオリジナルエピソードも多数配信中!)

出演:レップ:中務裕太(GENERATIONS)、宮近海斗(Travis Japan)、谷口太一(DXTEEN)、RAN(MAZZEL)

Dリーガー:calin(LIFULL ALT-RHYTHM)、JUMPEI(avex ROYALBRATS)、TAKI(SEGA SAMMY LUX)、TAKUMI(CyberAgent Legit) ほか計20名

MC:堤礼実(フジテレビアナウンサー)

天の声・ナレーション:TAIGA

公式X(旧Twitter):@r4sd_fujitv

公式Instagram:@r4sd.dance.fujitv

公式TikTok:@r4sd.dance.fujitv

公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/b_hp/R4_STREET_DANCE/index.html

 

 

■「第一生命 D.LEAGUE 24-25 SEASON」10月13日(日)開幕!

 

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