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D.LEAGUE特集  TSUKKI

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ブレイキン要素の1つ〝パワームーブ〟を武器に、幼い頃から国内外の大会でタイトルを多数獲得してきたブレイクダンサーTSUKKI。難易度の高い技を次々に繰り出し、天才B-BOYとして世界に名を轟かせ続けている彼は、現役の高校生でありながら、昨年、D.LEAGUEの「Valuence INFINITIES」に加入し、現在はDリーガーとしても活動している。そんな彼に、D.LEAGUE出場を決めた理由や、日々のルーティン、今後の目標などを聞いた。

 


 

・TSUKKI

兄の影響を受け7歳からダンスを始める。ジャンルはBREAKIN’で、中でも特にパワームーブを得意としている。マイナビDANCE ALIVE 2連覇、We are the future 7 to smoke 4連覇など、キッズの頃から国内外のタイトルを多数獲得する実力の持ち主で、未来のBREAKIN’界を担うネクストジェネレーション。Dリーグ22-23 SEASONは「Valuence INFINITIES」 SPダンサーとして出場。23-24 SEASONに「Valuence INFINITIES」に正式に加入。 レギュラーダンサーとしてさらなる成長を遂げている。

 

 

■毎日6時間以上、365日練習を欠かさない

 

TDM:まず、ダンスを始めたきっかけを教えてください。

TSUKKI:先に兄がブレイキンをやっていたんです。家の1階の畳の上にフローリングマットを敷いて作ったスペースで毎日兄が練習しているのを見ていました。自分も見よう見まねで動いたりしているうちに楽しくなって、小1の終わり頃からダンススクールで、23-24シーズンまでKOSÉ 8ROCKSのディレクターをしていたKakuさんに習い始めてどんどんハマっていきました。

TDM:7歳のときの練習と今の練習の違いはありますか?

TSUKKI:最初の頃は、技を求めちゃうんですけど、レベルが上がってきたら結局オリジナリティが必要だと分かってきましたね。でも、いまだに新しい技も練習するし、そこは変わらないです。

 

 

TDM:新しい技はどのように生まれるんですか?

TSUKKI:新しい技に挑戦するときは怪我も多いんですけど、その失敗から生まれる技も多いんです。新しい技を考える人は、動いて考える派もいるし、頭でイメージしたものをやってみる派もいるし、人によるとは思いますが、僕は適当に動きながら考える派ですね。練習の流れは、最初はパワームーブの質が落ちないように練習して、ひと通り練習が終わってから技を考えている感じですね。

TDM:たくさん難易度の高い技を生み出してきた中で、特に記憶に残っているものはありますか?

TSUKKI:僕の代表的なオリジナルの技で、ダブルエリオチェアーキャッチという技あるんですけど、それは実は失敗から生まれた技です。できた瞬間は驚きました(笑)。失敗したときに「あれ?これでキャッチしたらすごいことになるんじゃない?」と思って、練習の方向性を変えて、あの技が生まれました。

TDM:学生生活の中で、練習はいつしていますか?

TSUKKI:大阪にいるときは、学校から16時ぐらいに帰宅して、16時半から18時半まで練習して、夕飯を食べた後1時間ぐらい休憩して、20時から24時か25時まで練習します。そのルーティンを毎日繰り返しています。16時からの練習は、基礎と自分の苦手なとこを克服する練習で、20時からの練習は、ひたすらパワームーブの練習です。

TDM:1日に6時間以上ですね!それを365日毎日ですか!?

TSUKKI:はい。小さい頃から毎日練習することが癖づいているので、基本的には毎日身体を動かしています。僕がやっているパワームーブは、1日でも動かないと感覚を忘れちゃうんです。「今日は身体が重たいな」という日が続いちゃうと、気づいたらできなくなっていることが多いので、毎日動かないとダメですね。例えば、海外に行ったときは、次の日の1発目の練習がきついので、大会の最低3日前には着くように調整しています。

TDM:あのパワームーブの怒涛の展開は、どうやって考えているのでしょう?

TSUKKI:ムーブに関しては、基本的に1から10まで全部流れを作っているので、それを音楽に対してアプローチをする感覚で「これをこうしないといけない」というより、体が勝手に動いている感じです。

1つのバトル大会だと、ムーブ数は平均9~10個だと思いますが、曲はだいたい知っているので、曲と相手を見てどのムーブを出すか決めています。でも、今年9月にユースオリンピックの世界選手権があるんですけど、それはさらに多い数の準備がいるので大変ですね。

TDM:毎日動くということですが、身体のケアはどんなことをしていますか?

TSUKKI:ケアはストレッチですね。あとは、練習後は疲労が溜まっているので、次に残らないようにサプリメントを摂取しています。高校に入ってから怪我が増えたので特にケアするようになりました。手首を使うことが多いので、身体を支えるときに手首が痛くなることや、疲労が溜まった状態で動くと怪我に繋がることはたまにありますが、ダンス人生の中では今のところ大きな怪我はなく順調です。

 

 

■イミグレーション(入国審査)で踊ったこともあります(笑)

 

 

TDM:Dリーガーの生活や、海外に長期間行く生活は、なかなか高校に通えないと思いますがどうしていますか?

TSUKKI:通信制高校に通っています。入学前に最初に何十校も回って話を聞きましたが、どこも単位が必要で、出席日数が足りないと進級できないので、D.LEAGUE(以下、Dリーグ)もあるし、海外もあるし…と考えると、絶対学校に行けないだろうなと思って、通信制じゃないと無理だと判断しました。でも、その中でも通学コースがある学校なので、海外に行っているときはパソコンで課題を出したりしていますが、大阪にいるときは学校に通っています。

TDM:とはいえ、普通の高校生とはまるで違う生活ですよね。

TSUKKI:本当に違いますね。通信制なので文化祭などはまったくないんですけど、Dリーグをやっていると、チームのメンバーと練習したり、一緒に過ごしたりするのが楽しいので、いい経験はできていると思いますが、同世代と過ごしていないのは、今に始まったわけではなく、小さい頃から周りは大人ばかりだったので慣れてはいますね。

TDM:そうなんですね。中学校生活もそんな感じだったのですか?

TSUKKI:中学校ではダンスをやっていることを周りに言いませんでした。一部の人だけは知っていましたが、中学校の頃も頻繁に海外に行っていたので、全く学校に行かない時期も多くて、周りからしたら「たまに来る人」みたいな感じだったと思います。その頃は、学校は行けば楽しかったですけど、海外の方がダントツで楽しかったですね。

TDM:海外の大会に出るようになったのはいつ頃ですか?

TSUKKI:海外に初めて行ったのは小3のときのフランスだったんですけど、そのときは親と行きましたが、1人で初めて海外に行ったのは小6です。

TDM:小6で!?身の回りのことや食事のことも1人でしていたのですか?

TSUKKI:最初の頃はさすがにチームのメンバーや大人に頼っていましたが、そのときからずっと1人で行っているので、そこは大変でしたね。だから、海外ではいろいろな経験をしました。それこそアメリカのL.Aでは近くで発砲音を聞いたこともあります。

 

 

TDM:当時から英語は話せたのでしょうか?

TSUKKI:ある程度は話せましたが、中学生ではほぼ完璧に話せていたので、向こうも「もう1人で来てくれ」となったんです。今は事務所に入っていますが、親は英語がまったくできないので、当時は海外からのオファーや連絡関係は基本的にInstagramのDMで来るので、自分で受けてやり取りしていました。

TDM:その英語力はどうやって習得しましたか?

TSUKKI:いわゆる英語の勉強というのはまったくしていなくて、小3から中1ぐらいまで頻繁に海外に行っていたのでそこで覚えました。だから、完璧な文法ではないですが普通には話せます。例えば、僕はまだ未成年なので、イミグレーション(入国審査)で親の書類が必要な場合が多いのですが、書類が揃っていなかったときなどは入国審査官もガツガツ英語で突っ込んでくるので、中学生の頃は困っていましたが、今はもう慣れました。

TDM:そういうときはどうやって通過するのですか?

TSUKKI:イミグレーションのところで1回踊ったこともあります(笑)。大会に出るためにフランスに行ったときに、「こういう大会があって…」と、大会のフライヤーを見せて40分ぐらい説明しても、「まだ信じられない。この歳で1人で来るのはありえない」と、まったく通してくれなくて、最後に「じゃあ踊れるか?」と言われたので、その場で踊ったら、「わかった。じゃあ行ってこい!」と、通してくれました(笑)。

TDM:すごいエピソードですね!海外の食事で苦労することはありますか?

TSUKKI:普段の食事に関しては、制限した方が絶対いいという人もいるけど、僕はまったく意識してないので、好きなものを食べていますが、 2年前にヨーロッパに2カ月滞在していたときは、食事がほぼパンやピザでしんどかったです。

 

 

■「また1つ新たな挑戦ができるな」と挑んだDリーグ

 

 

TDM:個人でそれだけ活躍していた中で、Dリーグというフィールドに活動の場を広げたきっかけを教えてください。

TSUKKI:僕はずっと個人でやってきたので、Dリーグにお誘いいただいたときは「また1つ新たな挑戦ができるな」と思いました。東京に住まないといけないことを迷っていましたが、大阪と行き来してもいいということになったので「じゃあとりあえずやってみよう」という気持ちで、最初は1シーズン3回だけ出場という契約で出ました。

でも、いざ本番になると、2週間かけて練習した成果を何千人もの人が見ている舞台で出せるという経験が楽しくて、「絶対やろう」と気持ちが固まりました。負けたときはすごく悔しい気持ちにもなったけれど、それがだんだん自分の中で次の戦いへのワクワクに変わっていったんです。

TDM:Dリーグに出たことで周りの反応とか変わりましたか?

TSUKKI:変わりましたね。頑張れという人もいれば、辞めた方がいいという人もいて、本当に反応はさまざまでしたが、僕は人に何かを言われて動くタイプではないので、自分の興味があったのでやってみようと思いました。

TDM:普段個人で戦うときと臨み方の違いはありますか?

TSUKKI:僕はこれまで、ショーケースの経験もなかったし、人と合わせることもありませんでしたが、チームでは協力が大事なので、そこが違います。練習も、自分の練習の疲れ方と全然違って、振りを覚えたり、自分のソロも、どう音にはめられるかを考えないといけないので、考え疲れが多いです。でも〝皆で力を合わせてショーを作る〟という普段できないことを経験できています。

TDM:その経験が自分の踊りに何か影響を与えていますか?

TSUKKI:そうですね。ショーがあるときはショーの練習しかしませんが、終わった後に皆で自由に練習しているときに、いろいろなインスピレーションは受けています。それに、僕らのチームはヒップホップの曲が多いので、皆が流している曲を聞いて「こんな曲もあるんだ」「こういう繋げ方もあるんだ」と勉強になっています。だから、今はDリーグも、コアなブレイキンのシーンも、どちらもめちゃくちゃ楽しいです。

 

 

TDM:メンバーで影響を受けた人はいますか?

TSUKKI:すごいなと思ったのはSEIYA君ですね。細かく指示もできるし、何回やっても何回でもきちんとできるし、皆が疲れていても、もっと質を上げようと上手くテンションを上げてくれるんです。正直、SEIYA君がいなかったら、皆ネガティブになっていたんじゃないかなと思うことはたくさんありました。

TDM:Dリーグの作品作りについてお聞きしますが、2週間のスパンの中で、新しい作品作りから本番までの流れを教えてください。

TSUKKI:基本的に僕らは週4で練習しているのですが、最初の1週間はひたすら作って、次の週1~2日をもうちょっと詰める時間にあてて、最後の2、3日間はずっと通しで固める練習をしています。ギリギリまで調整することも多いので、そのときは大変ですね。ただ、やはりあの舞台でこれを出せないかもと考えちゃうと、全員「もうやるしかない」というモードに入ります。

TDM:音楽や衣装はどのように決まるんですか?

TSUKKI:音楽はシーズン入る前に決まっていることが多いですが、衣装は本番3日前とかにできることが多いです。僕はパワームーバーなので、重たかったりストレッチが入っていない衣装だったりすると、調整が大変です。

TDM:これからのDリーグに期待することはありますか?

TSUKKI:ブレイキンは今年オリンピック種目に入ったので少しは知られていますが、一般の人からしたら「プロダンスリーグって何?」となるので、 それがサッカーやバスケのリーグと同じように一般の人に知ってもらえるようになればいいですね。

これだけすごいことをやっているのだから、テレビにもメディアにももっと取り上げて欲しいです。あと、自分の周りの友達や大阪のダンサーでも、Dリーガーになりたいという声も聞きますが、東京に住むことが難しいと考える人も多いので、Dリーグが全国であるといいなと思います。

 

 

■ブレイキンのカルチャーの部分も大事にしたい

 

 

TDM:ブレイキンは、スポーツ的な要素と、ダンスとしてアートやカルチャー的な要素と両方あると思いますが、ご自身の意識はどうですか?

TSUKKI:今のブレイキンでいうと、スポーツに変わってきている気がします。それこそオリンピックの大会は点数制になっているので、やはり批判も多く聞きますが、オリンピックを頑張る人はそこで頑張っていいと思う。でも、僕はカルチャーの部分も大事にしたいですね。

TDM:なるほど。カルチャーを大事にしつつ、オリンピックも挑戦してみようという感じでしょうか?

TSUKKI:そうしていかないとブレイクダンサーは生きていけないと思います。スポンサーを獲得するという部分もあるし、スポンサーを抱えている以上、大会に出て結果を残すという使命もありますから、結果を出すために日々頑張っている感じです。

 

 

TDM:ご自身のダンサーライフについて考えることはありますか?

TSUKKI:今時点で、明確に考えているわけじゃないんですけど、ブレイキンのダンサーの現役引退の平均が30~40歳くらいなので、そこまではやりたいなと思っています。 やはり怪我で辞める人が多いので、そこだけは気をつけています。

TDM:これからの目標を教えてください。

TSUKKI:まずはユースオリンピックが2026年に、今年の12月にはRed Bull BC One World Final と、世界選手権がたくさんあるので、今はそこに集中しています。

TDM:では、最後に応援してくれているファンの方たちにメッセージをお願いします!

TSUKKI:ありがたいことにファンの方がたくさんいてくれるし、Dリーグだけじゃなくても、普通の大会も見に来てくれたり、Dリーグの前日とかはSNSでたくさんメッセージくれたり、いつもとても感謝しています。チームとしては23-24シーズンはCHAMPIONSHIPまで進んだものの初戦で負けてしまいました。24-25シーズンはぜひ勝ちたいので、皆さん応援よろしくお願いします!

TDM:ありがとうございます!今後のさらなる活躍に期待しています!

 

interview & text by Yuri Aoyagi

interview & photo by AKIKO

’24/08/24 UPDATE

 

 

★他のDリーガーの活躍はこちらもチェック!

■新番組・ダンスバトルエンターテインメントショー『R4 STREET DANCE』がフジテレビで放送中!

放送:フジテレビ(関東ローカル)毎週月曜24:55~(全12回予定)

配信:FOD、TVer

(FOD Premiumでは、限定のオリジナルエピソードも多数配信中!)

出演:レップ:中務裕太(GENERATIONS)、宮近海斗(Travis Japan)、谷口太一(DXTEEN)、RAN(MAZZEL)

Dリーガー:calin(LIFULL ALT-RHYTHM)、JUMPEI(avex ROYALBRATS)、TAKI(SEGA SAMMY LUX)、TAKUMI(CyberAgent Legit) ほか計20名

MC:堤礼実(フジテレビアナウンサー)

天の声・ナレーション:TAIGA

公式X(旧Twitter):@r4sd_fujitv

公式Instagram:@r4sd.dance.fujitv

公式TikTok:@r4sd.dance.fujitv

公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/b_hp/R4_STREET_DANCE/index.html

 

■9/8(日)ユナイテッド・シネマアクアシティお台場にて「D.LEAGUE CINEMA FAN MEETS」開催!

 

 

★Dリーグから新たにスタートするSDリーグの詳細はこちらをチェック!

■日本初・全国のスタジオダンスリーグ「SD.LEAGUE(エスディーリーグ)」決勝戦が8月17日(土)開催!

全国153のスタジオから各地方予選を勝ち抜いた34チームが激闘!

日本トップのダンススタジオが決まる決勝をお見逃しなく!

「第一生命 SD.LEAGUE 2024決勝」

開催日時:8月17日(土)14:30〜

ゲストパフォーマンス:KADOKAWA DREAMS

会場:KT Zepp Yokohama

配信:Dリーグアプリ・Sportsnavi
https://sports.yahoo.co.jp/livestream/dleague/dance/240803001

 

★次回のDリーグ情報はこちらをチェック!

■「第一生命 D.LEAGUE 24-25 SEASON」10月13日(日)開幕!

 

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