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KIN

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日本のストリートダンスシーンの過渡期であった2000年代初頭に、アンダーグラウンドで絶大な人気と実力を兼ね備えたHIP HOPチームBUSH BABEEZ!!のメンバーである。ケツメイシをはじめ様々なアーティストのツアーダンサーを務める他、メジャーにおいても活躍を見せていたKIN。そんな生粋のストリートダンサーとも言える彼は、現在、ダンスを通して教育や社会貢献を目指す株式会社One play.の東海エリア責任者として働いてる。幼児教育の一環としてダンスレッスンを行っており、同じダンスとは言え〝教育〟という道を選んだ彼に、その経緯や想いを聞いた。


 

 

  • KIN/鬼頭祐介

 

高校生でダンスと出会い東京に上京。PlayⅣKeeps、BUSH BABEEZ!!、FUCTARD、mo‘breaksとして活動。2008年~2010年Soulja専属バックダンサー、2011年ケツメイシ ツアーダンサーを務め、SMAP×SMAP、東京ガールズコレクション、CDTVなど、数多くのテレビCMやメディア等に出演。現在は(株)One play.に所属し、関東を中心に幼児教育に特化した独自のカリキュラムを取り入れてダンス指導を行っている。

 

 


インタビューは3月中旬に収録したものです。

 

■親の反対を押し切ってダンスをしに東京へ

 

TDM:ダンスを始めたきっかけを教えてください。

KINもともと音楽が好きで、ダンスもカッコいいなと思っていましたね。中学生くらいの時にたまたまTVで見たジャニーズに入りたいと思ってたんです。家があまりテレビを見ない家庭だったので、当時流行っていたダンス甲子園も見てなくて、ダンスを始めるきっかけや環境があまりなかったんですが、高校3年生の時に、友達から「ストリートでHIP HOPダンスをやってる場所がある」という情報を聞いて、行ってみたのがスタートですね。そこで「楽しい!自分にはこれしかない!」と思って、当時、海鮮市場に就職が決まっていたんですけど、親の反対を押し切ってダンスをしに東京に上京ました。
 
18歳で出てきて、散々踊りに明け暮れましたよ。この時期は沢山の刺激と出会いがありましたね。今思えばめまぐるしくも充実した時だったなって思います。
実は25、6歳くらいの時に腰をケガして一度地元の三重に帰った時があったんです。でも、やっぱり東京という街が好きで、東京で挑戦したいという思いが強く再上京しました。Mo’breaksのメンバーは10代からお世話になっているダンスチームで、細く長く今でもたまに活動してます。今年ちょうど20周年ですね。
BUSH BABEEZはリーダーRYO-Zさん筆頭に昔から仲も良くしてもらって当時から沢山遊んでもらいました。
最終的にはメンバーに誘ってもらって一番下っ端でしたが一緒に活動できたことが凄く嬉しかったです。FUCTARDもここからの繋がりがあって結成しましたね。

 

 

TDM:影響を受けたダンサーはいますか?

KINやっぱり原点はBUSHのRYO-Zさんですね。RYO-Zさんは、僕が地元三重にいた当時、既にメジャーデビューしていてテレビのブラウン管を通して見ても華があって惹き付けられました。名古屋出身なので三重の先輩に紹介してもらって直接会いに行きました。そこから関係が続いていますが、男気があって面倒見も良く、いろんな人を紹介してくれたり、良い事も悪い事もいろいろんな事を教えてもらいました(笑)まさに兄貴って存在です。
RYO-Zさんがいなかったら僕もここまでダンスを続けてなかったかな〜なんて思いますね。今はそれぞれ我が道ですが、BUSHのメンバーは、ほとんどが東海の出身メンバーという事もあって絆が深く、またいつか一緒に踊れたらいいなって思っています。

 

■アンダーグラウンドから幼児教育の道へ

 

TDM:One play.のスタッフになったきっかけを教えてください。

KIN2011年僕と、BUSHメンバーKO-SKE君、MASAYAと一緒にケツメイシのツアーダンサーをしていた時に、その時ボーカルのRYOJIさんの付き人と出会がありました。その人が幼稚園や保育園業界とつながりがあって、ずっと子供達の為に何かしてあげたいという気持ちがあってみたいで、その年のツアーが終わってから「せっかくここまで仲良くなったし、俺の繋がりがある幼稚園にダンスを教えに行ってみない?」と僕ら3人に提案してくれたのがきっかけです。その人が今の One play.の社長ですね。

TDM:そこからすぐ幼児に向けたダンスレッスンが仕事になっていったんですか?

KIN僕その当時は飲食業をやっていたのですぐには参加できなかったんですよ。それから丸4年経って、ちょうどダンスも仕事も違う視点からいろいろ見てみようと思っていた時に、 Oneplay.社長の熱意に押され入社させてもらいました。
それまではKO-SKE君が中心となりOne play.の地盤を作ってくれていて、首都圏にある保育園や幼稚園にダンスを教えに行く外部講師という形がだんだん広まっていきました。

同時に今の相方twoyoc (PlayⅣkeeps)ともチームを組み始めてこの歳で改めダンスの楽しさを実感しましたね。子供を指導していく上で自分もプレイヤーという立場に戻って来れたことに感謝してます。

今年でOne play.設立8年目なんですが、一から自分達で切磋琢磨しながらやってきて、ようやく4年目くらいの時から軌道に乗ってきた感じですかね。まだまだですが。
講師自身のレベルも上がってきてダンスやダンサーの良さが教育現場のに認められるようになってきたと思います。結局人対人の仕事なのでやっぱり講師の人間性、信頼性がものすごく大切でそこで契約も決まったりするんですよね。

TDM:何人のスタッフと講師でやられてるんですか?

KIN社員が7人で、アルバイトスタッフ入れると50人くらいですかね。最近では社長が「会社らしくなったね」と話しています(笑)。

 

 

■子供はピュアだから、何事も全力で向き合ってきてくれる

 

TDM:入社前もキッズに教えていたのですか?

KINキッズは教えてませんでした。僕はずっとアンダーグラウンドのクラブシーンや深夜営業の飲食バーで働いたり、大人のレッスンしかしていなかったので、入社して初めて保育園に行った時は、もう…完全に別世界でしたね(笑)。
今でも鮮明に覚えてます。初めて行った保育園のダンス指導の日に、子供達の目の輝き方が純粋過ぎて、そのキラキラした瞳に心打たれたんです。それまでほとんど夜の世界でしか生きてこなかったのでカルチャーショックでした。最初は子供を触るのも怖かったんですが、その時KO-SKE君のレッスンを見て、作られたレッスンのカリキュラムがしっかりあって、分かり易くこれは勉強したいと思いました。

後はKO-SKE君がこんなに真面目に素晴らしい先生やってるんだと思って感心しました(笑)
そこから僕もどんどん現場にいかせてもらい子供達と触れ合う中でたくさんの学びがあり、場数を踏んで少しずつ慣れていって今に至る感じです。

TDM:主な活動スケジュールを教えてください。

KIN午前中は保育指導の中に組み込まれている正課レッスンと言うのがあります。午後は習い事の一環ですね、課外スクールとしてのレッスンです。年小クラスから小学校6年生(会場によっては中学生も)までが対象で、多い時で週5回、毎日都内近郊を午前午後転々と回って、いろんな子供達と触れ合いながらダンスをしています。

基本的にレッスンの会場は、幼稚園保育園のホールや教室を借りてます。そこに卒園児の小学生も習いに来たりという感じですかね。

TDM:1年の流れや内容は園によって違うんですか?

KINそうですね。1年間の流れは、園によって違いますね。契約の内容や「ここで発表させたい」という園からの要望ものがあるので、逆算してそこに照準を合わせて取り組んでいく形が多いですね。
内容はある程度こちらで作ったカリキュラムを元に実施させてもらってます。
 
Oneplay.は現役ダンサーが教えてくれるという事が売りでもあって、One play講師ならではのダンスを提供していけるようスタッフ間で意識していますね。
子供達はほぼ皆初心者、ゼロからのスタートだから、どこまで出来るようになるかにも寄るんですけど、いかにそんな状況からダンスを通した成長を導いてあげれるかが僕ら使命なのかなと思います。

TDM:具体的にはどうやって進めていくんですか?

KINまずは元気良い挨拶からですね。その後先生と子供たちとの約束もしますね。ダンスをする上で大切なコミュニケーションのなので。
 そこからは、子供の身体の成長に合わせたストレッチ、ジャンプ運動を実施してます。
子供は元気にパワフルに動いていても、身体の使い方が自分自身では分からなかったりするんですよ。カリキュラム中にそういった動きも取り入れリズムに合わせて実施してます。
レッスンの後半は、よりダンスを楽しんで欲しいので「誰が一番大きく動けるのー?先生も負けないぞー!」と、テンションを上げて僕達講師自身も本気で楽しんでレッスンの一体感を作る事が出来るよう心掛けています。

 

Oneplay.のレッスン風景

 

TDM:幼児を教える時に、これは大事!というポイントはありますか?

KINわかりやすく一言で言うとNHKの体操のお兄さん的な(笑)テンションとメリハリでどれだけ惹き込めるかが大事ですね。子供ってテレビやマジックなんかをボーっと見るじゃないですか。そんな感覚になった感じで、言葉遣いも顔もパチッと切り替え普段の自分からガラッとシフトチェンジしてその場に立っています。最近では、そっちのキャラの方が慣れてきちゃったくらいです(笑)。とにかく、子供を惹き込むというのがポイントで、時には園の担任の先生達も巻き込んで一緒にやってます。
あとは、選曲も重要ですね。ダンサーとして沢山かっこいい音楽には出会ってきましたが幼児教育の中ではブラックミュージックは通用しなかったりもします。邦楽でも洋楽でもPOPで明るい楽曲を使うようにしていますね。ここ最近で一番子供たちの反応が凄かったのは2018年はDA PUMP「U.S.A」ですね。2019年は「パプリカ」かな。他には、「踊るポンポコリン」等アニメの主題歌になるような曲はやはり人気ですね。

TDM:毎回テンションを上げるのは大変じゃないですか?

KIN子供達は凄くピュアだから、何事も全力で向き合ってきてくれます。だからこっちも本気で伝えないと伝わらないんですよ。大人のレッスンだと、お互いにある程度考える事が出来るので、「だいたいこんな感じでいくよ」というのが伝わり成立するんだけど、それが通用しない。でも、子供達とこっちから出すテンションが通じ合える瞬間があって、その分かり合えた時が凄く嬉しいんですよね。その一瞬というか、その空間というか、もちろん緩急をつけながらのレッスンは心がけますが気持ちは常にテンションmaxですね。冷静と情熱の間って感じです。

 

■ダンスが大好きだから、何があっても頑張れる

 

TDM:幼児を教えるには、どういう人が向いてると思いますか?

KIN正直、向き不向きはあると思います。どれだけダンスが上手くても出来る仕事じゃないという事は痛感しています。やっぱり真面目で元気で、子供好きというのは強いと思いますね。後は人としてのモラルがしっかりある人。園に入るので、僕達 One play.ってアクセサリー系ピアスなどを着けていてはダメなんです。ダンサーのイメージって今となればだいぶ良くなってきたけどやっぱり年配の先生方や昔ながらの考えを持ってる方達からは一見だらしないイメージもあったりします。だからこそ One play.でしっかりとしたレッスンを提供し信頼性を築きそんな概念を覆したいって思いもありますね。
ただ今のOne play.スタッフは若い子のが多いんですがしっかりものが多くとても助かってます。逆に僕らの年代で、ある程度一線で活躍してきたダンサーが一からこれをやろうとすると、一度自分のプライドを捨てないといけないパターンもあるから難しい人は難しいと思います。それはその人が思う事だからいいと思いますし、僕の場合はこんな環境でもダンスと触れ合いながら出来る事が凄く嬉しくて純粋に楽しめたんですよね。 
とにかく僕は凄くダンスが大好きなんです。音楽が好きで、ダンスが好きで、純粋に楽しんで踊っているので、何があっても根本この気持ちがあるからこの仕事も頑張れるんです。

 

 

TDM:最初から子供がお好きだったんですか?

KIN実は、僕は子供が苦手だったんですが感動しやすいタイプなので、子供達のピュアさにやられました。子供は個性の塊なんです。ダンサーも個性がある人っていいじゃないですか。レッスンの中で1~2分なんですけど、自由に踊って自分らしさを大切にする時間があるんですが、「ここは自由でいいよ!誰が一番元気にカッコよく踊ってるかな!?」と言うと、ずっとゾンビダンスしてる子とかいるんです(笑)。そんな光景を見ていたらどんどん子供達のことが好きになりました。
ダンスは子供たちにとって凄く自分を表現しやすい場所だと思うんですよ。音楽がかかって、グルグル回ってる子もいれば、こっちの子はジャンプして飛び跳ねて自分をアピールしているみたいな表現力がその子の個性につながると思ってます。発表会や運動会に向けて、しっかり指導して練習してもらいますが、根本は皆が音聞いてダンス踊って笑顔になってもらいたいというのが第一にありますね。

TDM:発表会はどんな場所でやるんですか?

KINOne play.オフィシャルイベントとしてスポーツチームのサポートダンサーが多いです。Jリーグ、Bリーグ、Fリーグのオープニングアクトやハーフタイムショーをやらせてもらっています。300人くらいの子供達を一気に行進させて踊らせたりするんですが、その時期は、2カ月間くらい全部の会場で、同じ曲で同じ振付を指導し、1度全体リハーサルをしてから本番に挑みます。なかなか普段経験できない実践の場だと思いますので子供たちにとってもとても良い経験になり好評です。とても盛り上がりますよ。後は年に1回の合同発表会は都内大ホールを借りて実施しています。
僕ら講師にとっての活力になるしパワーの源になります。子供にとってアウトプットする事がすごく大切で可能性は無限だと感じます。

発表会リハーサル風景

 

■東海エリアの子供達にもダンスの楽しさを伝えていきたい

 

TDM:今後はどういった活動をされていく予定ですか?

KIN僕は、6月から東海エリアにこの活動を広めるために名古屋に拠点を変えます。時期は、コロナウィルスの影響で変わるかもしれませんが、出身が三重県なので、やっぱり地元に貢献したいという気持ちと、たまたま社長の地元も三重県で繋がりもあり、3年前いくつか保育園を紹介してもらったのがきっかけで東海エリアもスタートしていく事になりました。そこで体験レッスンを実施させてもらった際、今後も是非取り入れたいという声を頂いて今の Oneplay.東海エリアがスタートしましたね。今年度からは本格的に僕も拠点を東海に移し広めていこうと思ってます。

今名古屋で活動しているBUSHのRYO-Zさんも僕らの活動を気にかけてくれていて、東海で動けるスタッフを紹介してくれたんです。スタッフは信頼性が大事なので、人材を探すのが大変なんですが、その辺を見極めて紹介してくれて凄く助けられました。

TDM:今後の目標を教えてください。

KIN拠点が東海になるのであっちでも1人でも多くの子供たちにダンスや音楽の楽しさを伝えていく事が第一の目標です。東海もこの首都圏くらいまで大きくしたいかな。子供と接してると日々学びなので、これからも学び続けていきたいと思いますが、僕らのやってる事は、ダンサーにもダンスシーンにも幼児教育の場にも、絶対今後活かされると思ってます。頑張っていきたいですね。

 

 

TDM:最後に、子供にダンスを習わせたい、習わせている親御さんにメッセージをお願いします。

KIN子供は無限の可能性と才能を持っていると思います。我が子を信じ1番近くで応援してあげて下さい!僕達は限られた時間の中でしか指導することしかできません。でも応援してくれる家族がいたり、美味しいご飯作ってくれたり、送り迎えしてくれたり、衣装を作ってくれたり、という家族の支えが子供にとって何よりのパワーにつながると思います。もちろんアメとムチを大切に、家族で良い環境を作ってあげて欲しいなと思います。
 そして、子供達は絶対に親への感謝の気持ちを忘れずに、好きな事を頑張って挑戦して欲しいなと思いますね。ダンスはもちろん、これからいろんな事にチャレンジしていくと思うんですけど、親への感謝の気持ちを忘れずに頑張って欲しいですね

TDM:東海エリアでの活躍も期待しています!今日はありがとうございました!

 

interview &edit by Yuri Aoyagi
photo by AKIKO
’20/4/30 UPDATE

 

Oneplay.の詳細はコチラ!

 

 

 

 

 

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tokyodancemagazine

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