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クラブイベント「RUMBLE!」特集 Zeebra×MASAKI×ACHI

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日本語ラップで踊り続けるSHOW GUNが中心となって、毎回盛り上がりを見せている「RUMBLE!」が2月23日に開催される。日本語ラップで踊るダンサーが少なかった時代から、日本語ラップによって、よりメッセージ性を強め、ダンスを爆発させられる時代へと変化しているようだ。今回は、「RUMBLE!」をオーガナイズしているSHOW GUNより、MASAKI、ACHI、そして、日本語ラップシーンを牽引し続け、SHOW GUNが所属するレーベルGRAND MASTER代表のZeebra氏に話を聞くことができた。HIP HOPを愛するダンサーだけでなく、音楽関係者にもぜひ読んで頂きたい貴重なインタビューをお届けしよう。


  • Zeebra

    東京を代表するヒップホップ・アクティビスト。ヒップホップレーベル「GRAND MASTER」代表。早くからその才能を開花させ、日本語におけるラップを新たな次元へと引き上げ、ヒップホップ・シーンの拡大に貢献した立役者。97年のソロ・デビューから常にトップの座に君臨し続け、常に上のレベルを追求する姿勢に共感を覚えるリスナーも数知れず、その音楽性の高さや技術(スキル)、存在感と行動力により、男女を問わずリスナーの間でカリスマ的存在となっている。2013年、より良いクラブとクラブカルチャーの創造を目標と風営法の問題点に正面から向き合うため『クラブとクラブカルチャーを守る会』を設立。初代会長として昼夜問わずメッセージを投げかけ続けた結果、改正風営法(2016年6月23日)の施行へとつながり、報道番組や新聞などでも大きく取り上げられた。また、その活動が認められ東京・渋谷区から「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」に任命され、オランダ・アムステルダムで開催された国際会議「Night Mayor Summit 2016」への参加や、ドイツ、イスラエル、インドなどで開催されたコンベンションにも参加し、ナイトエコノミー、ナイトカルチャーの推進にも取り掛かるなど、その活動は多岐にわたる。近年、ZeebraがオーガナイズするMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』が、テレビ朝日とインターネットテレビ「AbemaTV」にて放送され、若い世代を中心に空前のMCバトル人気を起こし、2017年4月1日には24時間体制のHIP HOP専門ラジオ局「WREP」を立ち上げた。

 

  • MASAKI(SHOW GUN / HIPNOTIC BOOGIE)HIP HOPシーンにおいて数々の重要な役割を果たしてきた熱くエナジー溢れるダンサー。JAPANESE HIPHOPのカリスマ『Zeebra』の専属ダンサーとして武道館で行われた20TH Anniversary LIVEを始め多くのステージを作り上げ、また『AK-69』のZEPPツアー、ガイシホール、武道館ライブなどのDANCE総演出 兼DANCER、そしてDABOやAIなどの数々のBLACK MUSICシーンの重要人物達のステージを作り上げてきた。メジャーシーンでも、SHINJIRO ATAE from AAAの総合演出や東方神起の復帰ツアーの振付、嵐の国立競技場ライブや全国ツアーの演出振付の他、KAT-TUN、NEWS、ノースリーブス、SOUTHERN ALL STARS、MISIA、加藤ミリヤなどの振付やダンサー、PV、TV出演など多岐に渡り活躍。Zeebraが立ち上げたレーベル”GRAND MASTER”にSHOW GUNとして参加し、日本におけるBLACK MUSICカルチャーの発信や発展、DANCEやHIP HOPの楽しさ素晴らしさを伝えるための活動をしている。また次世代のダンサーの育成にも力を入れていて、毎年コンテストで数々の入賞やイベント出演オファーを受けるなどキッズダンサーからプロダンサーまで幅広い層の指導を行っている。

 

  • ACHI(SHOW GUN / Rockwilder)
    神奈川県横須賀市生まれ。筑波大学在学中に結成したstack’sで数々のコンテストで結果を残し、2005年単身上京。2006年、MAA、GOTO、TAKE、KOUKIとともにRockwilderを結成し、東京を中心に全国的に活動する。東方神起、倖田來未、w-inds.、松下優也、CRAZYBOY、3代目J Soul Brothers、安室奈美恵、黒木メイサ、Crystal Kay、板野友美など、数多くのアーティストのバックダンサーや振付を歴任。2012年にSHOW GUNに加入し、プレイヤーとしてだけでなくイベントの企画や運営にも携わっている

 


 

日本語ラップをメインにしたコレオバトル「RUMBLE!

 

TDM:クラブイベント「RUMBLE!」を始めたきっかけは?

 

ACHI:「RUMBLE!」のオーガナイズはSHOW GUNを中心にやっています。SHOW GUNは2010年からMASAKIさんを中心に日本語ラップを使うダンスクルーとして活動してきました。僕は途中から入ったんですが、日本語ラップを使って表現する時に受ける熱い気持ちや、言葉のフローからもらうインスピレーションなどを、もっと周りのダンサーも巻き込んで、ダンス界全体として共有したいと思っています。時期的にも、テレビで「フリースタイルダンジョン」が盛り上がってきていたので、ダンス界でも同様のムーブメントが起こせたらなと思って、2017年に「RUMBLE!」を始めました。

 

TDM:「RUMBLE!」をオーガナイズしてみて、手ごたえはどうですか?

 

ACHI

俺的にはめちゃくちゃ手ごたえがあります。日本語だからメッセージを込めやすいし、バトル形式なので、普通のショーに比べて熱さが違います。それを見て「みんな凄い!」って思いますね。

 

いろんなダンサーに「日本語ラップを使ったコレオバトルに出てください」というオファーをするんですが、正直、最初は不安でした。例えば、そのダンサーが日本語ラップで踊ってるのも見たことがなかったり、普段ショータイムが活動のメインの人だったりもするので、日本語ラップを使って、しかも戦うことに対して抵抗があるだろうなと。以前は日本語ラップを使うことへの抵抗がダンサー界全体にあるのかなという空気も感じていたので。でも、「実は高校生の時に餓鬼レンジャーを聞いてたんだよね」とか「この間ツアーで回ったHIP HOPグループの音源をレペゼンしたいから出場するよ」とか、ただ踊っているだけでは分からなかったその人の生い立ちの中で、意外と日本語ラップとの接点がある人がいたんです。

 

 

Zeebra:俺は審査員やらせてもらったけど、すごく楽しかったし、本当に凄かった。「ラッパー本人とフィーチャリングもありじゃん。」と思った。

 

でもこの構図は、今始まったことではなくて、昔のダンスイベント「MAIN STREET」とかでもやっていたし、当時のダンサーとはすごく繋がっていたから、PVを撮る時も、いいダンサーが出てくれて、ラッパーもダンサーもDJもみんなで一つのコミュニティになってHIP HOPシーンを作っていて、とても意味があるなっていう感覚があった。それが「RUMBLE!」でもできるといいと思う。

※Zeebra氏がダンサーと交流し始めたエピソードは過去のインタビューで!

 

 

ラッパーの認知度を高めた「フリースタイルダンジョン」

 

TDM:Zeebraさんから見て、日本のラップシーンはどんな状況でしょうか?「フリースタイルダンジョン」が流行って認知度は高まったのかなと思うのですが…。

 

Zeebra

2000年前後に一度日本でラップが流行った時があったんだけど、2005年くらいからEDMブームが来て、そこから10年ほどはHIP HOPが落ち込む冬の時代に入った。その時、どうすればまたHIP HOPが上向きになるのか考えてたんだけど、2000年代後半から、次世代のうまいアーティストがどんどん出て来て、現在30代半ばくらいの奴らが完全に新しい雰囲気になっていたから、そこを盛り上げることで新しい波ができたらいいなと思ってた。たまたまその時期にBSスカパー!の番組内のコーナーで始まった「BAZOOKA!!!!高校生RAP選手権」(以下、高校生RAP選手権)がいい感じに盛り上がったから、「お、バトルが盛り上がるのか。だったら、とことん盛り上げ切ってしまおう。」と思ってた時、幸いなことに知り合いから「じゃ、民放でやりましょうよ!」と言ってもらえたので、始まったのが「フリースタイルダンジョン」。

 

でも、最初は「高校生RAP選手権」をそのまま持って行きたいと言われたんだけど、すでにBSスカパー!で盛り上がっていたからそれはできなくて、たまたま俺がイベントにしようと温めていた企画の仮タイトルが“フリースタイルダンジョン”で、ルールや内容は今とは少し違ってたんだけど、テレビ朝日の人がその企画書を見て乗ってくれたんだ。「もっとダンジョン要素を出すために、ゲームっぽくしよう。」「ものすごくうまいラッパーをモンスターにして、チャレンジ形式にして、ラスボスを出したりしよう」「ラスボスだったら…般若かなぁ」って感じでどんどん話が進んでいった。般若も「面白そうですね」と言ってくれて、他のメンツもどんどん決まっていったんだよね。

 

おかげさまで、「フリースタイルダンジョン」は盛り上がってくれて、その効果として大きかったのは、ラッパーが何を言っているのかが多くの人に伝わったこと。それまでは、韻を踏むといっても、実際よくわからない人が多かったと思うんだけど、ラッパーが、ただ、yo-yo チェケラッチョって言ってるだけじゃなくて、結構頭使わないとできないんだってことがやっと伝わったと思う。

 

昔から、HIP HOPにおいて音源とMCバトルはまったく別もので、MCバトルが強いからってその人の音源は売れない。これはアメリカも同じで、アメリカのMCバトルで優勝してる人はあまり知られていない。日本もそうなると思うし、だからこそ、今は音源の方を盛り上げるのにはどうしたらいいかなと考えてる。

 

俺としては「高校生RAP選手権」でT-Pablowとかが出て来てて、「こいつらは可能性があるぞ」と思った。前々から「こいつにならシーンを託せる」と思えるような若い奴がいたら、俺はいつでも裏方に回ると思ってたけど、それがついに来たと思った。次世代を軸にHIP HOPシーンを盛り上げることが一番正解だと思ったので、2014年、GRAND MASTERというレーベルを立ち上げることにした。そこにはラッパーだけじゃなくてSHOW GUNもアーティストとして所属してるよ。そして、まだまだ音源の盛り上げが足りないと思って2017年に立ち上げたのがインターネットラジオのWREP。

 

アメリカではラジオがHIP HOPに関してものすごく影響力がある。ラジオのいい所は、ビジュアルがイマイチなアーティストでも、音楽が良ければOKってこと(笑)。アメリカのラッパーは、正直、不細工な奴らはいっぱいいるけど、いい音源を持ってれば人気者になれる。だから、日本でもHIP HOPのラジオ媒体があればいいと思ってた。

 

2016年、風営法の改正運動をしていた時に、渋谷のクラブのVISIONやstudio missionなどを経営している村田大造さんに「いつも面白いことを考えてるね。何かやるときは混ぜてよ。」と言ってもらって、「面白いこと、ありますよー!」とすぐにラジオの企画書を持っていった。その段階でロゴやサイトデザインも作り込んでたんだよね。それから、大造さんのおかげで、WREPも立ち上げられて、2010年くらい以降から出て来た世代と一緒に盛り上げている最中ですかね。

 

アメリカもそうだけど、ベテランでも何年もヒットしていけるわけではないし、今話題になれる俺と同世代のHIP HOPアーティストは10人もいないと思う。Jay-Z、Snoop Dogg、Busta Rhymes、NAS、Fat Joe…くらいかな。それはもう世の常としてしょうがないけど、彼らがもう一度注目されるためにはもっとHIP HOPシーンが大きくならないといけない。だからこそ、まず今は若い子を中心にしていくのが大切かなと。

 

TDM:Zeebraさんご自身で具体的な企画書を作られているなんてすごいですね!

 

Zeebra:俺、何でも屋さんなんだよね。企画書作るの、意外と楽しいよ?(笑)。

 

ダンスキャリアは自分が好きな音楽で積みたい。

 

Zeebra:MASAKIたちは、今までイベントとかで、MCバトルをじっくり見たことある?

 

MASAKI:イベントでたまたまやってると楽しく見てましたけど、DVD買ってまで見るとかはなかったですね。

 

ACHI:僕も、昔BBOY PARKで見たことはありましたが、じっくり見るようになったのは「フリースタイルダンジョン」からです。

 

MASAKI興味があったか無いかで言うと、無かったかもしれないです。俺がダンスを始めたのはファッションとか見た目のカッコよさからですが、HIP HOPを勉強するうちに、先輩たちが作ってくれたMIXテープで日本語ラップも聞くようになりました。そのうちの一つがDJ HASEBE featuring.ZEEBRA&Mummy-Dの 「アイスピック」です。

 

一番日本語ラップとハマったのを感じたのは、ジブさんとツアーを回らせてもらった時ですね。自分の好きな音楽でステージに立てた。その時に、絶対に日本でダンサーとしてキャリアを積むなら、自分が好きな音楽で積みたいと強く思うようになりました。ダンサーの仕事は、最近だとアイドルに振付をすることが主になってしまいがち。それがダメなわけではないんですが、俺の場合、深夜のショータイムなどで大好きなHIP HOPの音源で表現していることが素直に出せる仕事はほとんどない。でも、ジブさんのツアーをやらせてもらったときに、「これがやりたいことだ!」と感じました。さらに、ジブさんの背中を見て、自分が動かないと何も変わらないと教えてもらったので、自分がかっこいいと思うアーティストを見つけたら、最初はギャラも関係なくとにかく自分からどんどんアピールしていったし、SHOW GUNも立ち上げて、自分たちがかっこいいと思うダンスを発信するようになっていきました。SHOW GUNのショータイムで日本語ラップを使うようになってきたのは、実際に日本語ラップのクオリティが高くなってきて、かっこいいものが増えたのもありますね。

 

Zeebraたしかに、2000年後半からすごい勢いでいいトラックが増えているからね。1990年代に日本のHIP HOPが形になったけど、その後しばらくは、初期のものだけが中心になってしまった。でも、その後の冬の時代には、初期に中心にいた人たちもいなくなっていった。俺はずっと昔からフロアが盛り上がる音楽がマストだと思っているんだけど、だんだん若い世代のそういう音源が出てきたんだよね。

 

自分たちが踊るってことを考えた時に、例えば、クラブでかかった音楽で踊るのは受動的でしょ。だからこそ、クラブでかかる曲はちゃんと作りたいってずっと思ってて。一時期DJがあんまり日本語の曲をかけないことが気になってたけど、2000年代後半から若いアーティストがどんどん踊れる曲を作れるようになってきたから「これはかけなきゃダメでしょ!」と思って、2010年に俺とDJ CELORY、DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!と3人でKUROFUNEというユニットを作った。KUROFUNEでは、とにかく「和物をクラブでかけます!」「日本のラップもフロアで踊れるよ!」ということを全国ツアーで伝えた。なぜこのメンバーになったかというと、日本語ラップを大きなフロアでかける、そして踊らせるということに意識が高かったから。結果、DJ NOBUは抱えきれないくらいの若手を抱えてるし、DJ CELORYも勢いをキープしてる。そういう意味で、あれはすごく意味のあることだったんじゃないかなと思う。

 

MASAKI:俺が見てきた日本のHIP HOPシーンで何かが起きた時は、ジブさんが仕掛けてるから本当に凄いと思っています(笑)。たまに、ダンスのこともジブさんに相談しに来るんですけど、とてつもない発想のアドバイスをもらいます。めちゃくちゃ考えてるし、発想力が人並外れてるんだと思いますね。

 

Zeebra:単純にアメリカのHIP HOPと比べて、「まだ日本はああなってないな。あんな風になるためにはどうしようか。」って思うことがほとんどだったりするんだけどね。

 

MASAKI:昔は正直、ノれないものも多かった。俺の中ではトラックもそうですけど、フローでノれるかどうか、踊れるかどうかで決まると思ってます。俺が最初に日本語ラップで「踊りたい!」と思えたのはジブさんでした。そして、日本語ラップの良さにハマっていきました。ただ、MCバトルを見る面白さよりは、ダンサーなので踊ってる方が楽しいですね。

 

Zeebra:MCバトルもまだまだ発展途上だと思ってる。言葉の戦いと言う意味では結構高いレベルにまで来てると思うんだけど、音楽として考えると、全員が音楽としては成立してるわけではないと思う。もちろん音楽面を意識しているラッパーもいるんだけど、やっぱり、ウェイトとしては言葉や内容のほうが今は大きい。でも、そもそもラップはリズムにのっけて言葉を放つものなので、そのリズム感がしっくりきて、音楽として成立するやつらが増えていけばいいなと思う。でも、そうなりつつあるとは思うので、これからが楽しみだね。

 

歌詞の意味を理解して踊っているか。

 

 

TDM:ACHIさんは日本語ラップをどうとらえていますか?

 

ACHI:もともと学生の頃、ジブさんやNITRO(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)とかが流行っていて、よく聞いていました。レッスンで俺がジブさんの「Street Dreams」を使っていたらMASAKIさんが「日本語ラップ聞くんだね」と話しかけてくれたことがきっかけでSHOW GUNに入ることになりました。最初は、アメリカのHIP HOPに憧れてダンスをはじめましたし、聴いているのも洋楽が多かったんですがSHOW GUNに入って日本語ラップをどんどん知っていくうちに、意味の分かる音源で振付できることで、表現に感情が込めやすいし、伝わりやすい。作った人の生い立ちやメッセージを踊りにすることを大切にしていきたいと思うようになりました。

 

Zeebra:歌詞の意味って大事だよね。真面目なダンサーは海外の音源を使う時にちゃんと意味を調べると思うんだけど、その作業を徹底できているダンサーはまだ一握りだと思う。昔、スパイク・リー監督の映画「Do The Right Thing」のオープニング映像で、パブリックエネミーの「Fight The Power」がかかってる中で、妹役の子がひたすらはちきれて踊りまくっていた。

「Fight The Power」って、「世の中の権威と戦え」みたいな、ものすごくメッセージ性が高い歌なんだけど、それを理解した上での踊りだから、ダンスもかなり強い。あれを見て、日本もメッセージ性の強い楽曲で、それを強く表現できるダンスが生まれないとダメだなと思った。だから、意味をわかった上で表現できる日本人ダンサーがもっと増えていかなくちゃいけない。逆に考えるとそういう楽曲を俺たちも作らなきゃいけないなとも思う。

 

MASAKI:俺も最初は歌詞の意味も分からず、ただ見た目やカッコよさだけを追求していたけど、日本語ラップも聴くようになって中身が分かるようになったら、内容とダンスの意味が違うことが気になってきた。俺がキッズダンスコンテストの審査員をやらなくなった理由もそこなんだけど、例えば人が死んだ曲やエロい曲で子供たちが笑顔で踊っているのを見るのが悲しくなったんだよね。基本的にダンスを審査するのが好きじゃないのもあるんだけど、そういう現実が嫌になっちゃった。歌詞の意味は調べればわかることだし、ダンサーは歌い手のメッセージをちゃんと受け止めて表現していくべきだと思う。

 

戦うもの、ライフ、リアル。

 

TDM:皆さんにとってHIP HOPの概念とは?

 

MASAKI「自分の正しいと思うことを追い求めよう!」という精神があるもの。それをどう表現するかはそれぞれの感性だから否定しないけど、俺は誰に何を言われようがそこを伝え続けていきたい。それがHIP HOPの良さだと思う。

 

今のアメリカのHIP HOPでは、女だ金だドラックだしか言ってない人もいるけど、それはきっと黒人が裕福になった上で生まれた結果の一部だと思う。でも、根本は戦うもの。過去に奴隷としてアメリカに連れてこられて、正しいものを正しいと捉えていくために、力を合わせて暴力ではないところで生まれてきたものがHIP HOPだと俺は学んできた。それは日本でも重なるところがあると思っていて、少なくとも俺はHIP HOPを知ったおかげで助けられてきたことがたくさんある。実際に、何かと戦ってる子供たちや自殺したくなるような苦しみを持ってる子たちに「こうやったら回避できるよ。」「みんなが思ってることが正しいと伝えてくれている音楽が世の中にはあるよ。」と伝えていきたい。だから、メッセージ性の強い音楽を使って動画を上げたりしている。

 

ダンス力も必要だけど、ただ上手いんじゃなくて、自分からメッセージを届けることがダンスにはできるから、そこを伝えたい。それを世の中に伝えるためにはやっぱり今はエンターテインメント要素が必要で、俺一人の考えだと絶対できないようなアプローチをSHOW GUNのメンバーに教えてもらった。実は、SHOW GUNの前にも日本語ラップを使ってショーをしていたんだけど、それだけでどんどんゲストとして呼ばれなくなっていったんだよね。でも、今では、SHOW GUNのおかげで若い世代にも伝えることができるから感謝しています。

 

Zeebra:HIP HOPの概念を言葉にするのは難しいとは思うけど、一つ言葉で挙げるとしたら‟ライフ“人生かな。黒人の怒りから生まれたものだけど、今となっては喜怒哀楽すべてを表現できるものになった。どっかから持ってきたことではなくて全部がリアル。自分たちの経験や周りで起きていることが歌詞になってる。

 

1980~1990年代の日本の音楽って、ほとんど作詞家とアーティストが別々だった。だから、いくらそのアーティストが歌っていても「この人の話じゃないし、なんだかな~」と思ってしまう。でも、HIP HOPはほとんどがアーティスト本人による歌詞で、近所の魚屋の話までも出てくるし、それがリアルと言うか、地に足がついている気がする。

 

ただ、一つ引っかかっているのは、今のアメリカのHIP HOPは、ROCKが衰退した時と同じような一途を辿っているような気がする。ROCKも荒廃する時に破滅的な音楽が増えていたけど、HIP HOPも「薬や銃を持つのを辞めよう」と言っていたのに、今は肯定している。最近ラッパーがタトゥーをバンバン入れているけど、1980~1990年代前半にはほとんど入れてなかった。でも、この背景には、さっきMASAKIも言ったように、黒人が経済的にも地位的にも潤ったからだと思う。

 

ACHI:僕はダンスからHIP HOPカルチャーに入ったんですが、さっきのMASAKIさんが言っていた気持ちにもすごく共感して、それこそがSHOW GUNの芯だと思いました。MASAKIさんがメンバーそれぞれのHIP HOPの考えを認めて、まとめてくれて今のSHOW GUNの形があります。自分の場合、普段はあまりHIP HOP感を押し出しているわけではないですが、HIP HOPの概念は、さっきジブさんが言った通り、リアルと言う言葉が一番ハマるかなと。

 

 

ストリートダンスが得た市民権。更なる課題。

 

TDM:今のダンスシーンをどう感じていますか?

 

ACHI:ダンスシーンではここ10年くらいバトルがブームになりましたよね。その時期から、ダンサーの中で、バトルやフリースタイルが中心な人たちと、俺たちみたいにショウタイムで振付をして、クラブやいろんなところで踊る活動の境目がはっきりしていると思います。フリースタイルが得意な人は、エンタテイメント色の強いクラブショーが苦手だったり、逆に、ショウタイムや振付メインでやってる人たちは、スキルが欠けていたり、バトルではあまり結果が残せなかったりする。普段聞いている音楽の種類も、違う。どちらかがいいとか悪いとかではなくて、そういう両者に分かれてきているなと。バトルで優勝をするのってすごいことだと思うんですが、ショウタイムや振付メインで活動する方がまだまだ仕事として成立している方が多いように感じます。

 

 

Zeebra:ラッパーたちもおなじで、MCバトルに出る奴と、音源を作ってリリースする奴らのスタンスは違う。かといって、どちらがいい悪いは決められなくて、バトルの場合、順位が絶対につくから、わかりやすいけど、音源をリリースしてもTOP10にランクインしなかったからといってダメではないし、ただ売れたらいいというわけでもない。リリースする音源に関しては、ある意味、善し悪しが必ずつけられるものではなくて、結果が出ないものだね。

ダンスに関しては、今年の出初式をNHKニュースのアカウントが紹介してて、そのトップ映像が消防署のダンスサークルで、消防隊員がトーマスやラビットを決めてる映像だった。

 

 

アメリカでも警察官がストリートダンスを踊ったりもするから、日本もそうなってきたんだなと思った。これは、教育の中にHIP HOPダンスが入ったからだと思う。ストリートダンスが市民権を完全に得たんだと感じたよ。義務教育化にはいろいろと心配する声も聞いたけど、結果よかったなと思うね。あとはEXILEやDA PUMPが全国の子供たちが踊れるダンスを伝えてくれているのも、とてもいいことだなと思う。

 

ACHI:去年の11月に行われたSSDW(Shibuya Street Dance Week)に参加した時にも、世の中ではもう自分が把握できないくらいすごい数の人たちがストリートダンスを踊っているんだなと、ダンスシーンが確実に大きくなっていると感じました。

 

MASAKI:ただ、自分が子供を持つ親として思うのは、これだけ市民権を得て、需要があって、影響力も出てきたからこそ、ダンサーの生活面も充実できたらなと。もう少しダンサーが現実的に生活できる環境を作りたい。その為には、アメリカみたいにエージェントができるとか、企業単位で動いてもらえたら変わるのかなと。

 

Zeebra:ラッパーに関しても、生活ができているラッパーには何人かのスタッフがついていて、そのスタッフも生活ができる状態になっている。それだけたくさんの仕事をこなしているんだけど、スタッフがいるからこそ大きなプロジェクトをこなせるようになる。そういうことがダンサーにも必要なのかもしれないね。

 

クラブでのショータイムなどは、リハ代や衣装代、経費含めると、ほぼみんなノーギャラに等しいわけでしょ。その単価を上げるためには、一つはイベントのキャパだと思う。たとえば、俺が昔、自分のギャラを上げ始めた時に「それはうちのキャパを満員にしても払えません。」と言われたんだけど、「例えばスポンサーをつけるのはどう?今まで以上にこのビジネスは大きくなれるから、いろいろ当たってみてほしい。」と話をしたことがある。そういうビジネス感覚があるオーガナイザーや企業が増えることが大切かもしれないね。あとは、CLUB CITTA’とかZeppクラスのダンスイベントにシンガーが呼ばれてフィーチャリングしてステージを作るとか。そういうイベントが増えるのもいいことかもね。

 

ダンサーとDJとラッパーではファンの作り方が違う。何百人のファンベースはダンサーとDJは難しいよね。だって、レッスンやレギュラーイベントに行けば簡単に会えるから、生徒や友達レベルでのファンの作り方になってしまう。昔って雑誌でダンサーがモデルをなっていたり、よりスター性は出せてたから、今後はそういう見せ方も考えた方がいいのかもしれない。もちろんリアルなヒップホッパーとは現場で会えるものだとは思うんだけど、スターにするという観点では、もう少し壁があったほうがいいのかもしれないね。

 

RUMBLE!」からヒーロー誕生を目指して。

 

Zeebra:今って、レッスンしているダンサーがかなり増えてるんでしょ?ダンサーが稼ぐためには一番手っ取り早いかもしれないけど、俺もラップを教えたこともあるんだけど、教えることがメインの稼ぎになってしまうのは少し抵抗がある。

 

収入のメインがそこになると、その人は、ダンサーではなくてインストラクターになる。教えをやってもいいと思うけど、同時に、ショータイムや振付でも稼げる人が増える方が未来は明るいよね。

 

ACHI:俺もレッスンを毎週やりつつも、それだけがゴールではないし、後輩たちのためにも、自分がショータイムに出たり、イベントをオーガナイズしたりすることで、自分が得たお金を誰かに回していけたらいいなと思うんですが、まだまだダンスシーンで回っているお金が少ないのかなと感じます。

 

そういう意味でも、「RUMBLE!」での目標の一つとして、ダンサー会を飛び出して活躍するヒーローを生み出していきたいと思っています。ヒーローの数を増やしていって、イベントを大きくして、ダンスの認知度を広げて、スポンサーをつけるためのプレゼンもしていきたいです。

 

過去に、SNSにあげた「RUMBLE!」の動画を見て、アーティスト側から「ぜひ一緒にステージを作りたい。」という連絡をもらうこともあります。そんな繋がりを増やして、もっと確かなものにしていけたらと思います。

 

「RUMBLE!」の時の出演者のエナジーはすごいんですよ。みんな実はこんなこと感じてるんだなっていうリアルが知れますし、驚くことが多いです。

 

TDM:では、最後に「RUMBLE!」に来てもらいたいお客様にメッセージを!

 

ACHI:今まで開催してきて、ものすごく手ごたえを感じています。現場に来た人にしか分からない部分があるので、まずは足を運んでみてもらえたらそれが全てだと思います。

 

MASAKI:さっきも言った通り、俺の中でのHIP HOPで拘っているのは戦い。自身のネガティブなことに打ち勝って、純粋に自分のエナジーを出すことがどれほど凄いことなのかを感じてもらいたい。俺がRUMBLERたちに対してそれを感じるから。だからこそ俺たちは続けてる。ダンサーならダンスとの向き合い方について感じられると思うし、一般の人もダンスの凄さを感じられるし、アーティストの人たちも「こいつらと一緒にライブをやりたい!」と思ってもらえるダンサーと出会えると思うので、ぜひ感じに来て欲しいです。

 

Zeebra:この企画自体は、日本語ラッパーにとってうれしい企画だからどんどん盛り上がって欲しいし、それこそラッパーも見に行ってもらいたい。エンタテイメントが大きくなればなる程、ダンサーの力は本当に必要だから、それを研究してほしい。あとは、使われている音源を聞いて、いい音源を知ったり、踊りやすさって何だろうって思ったり、逆に自分のラップの改善点に気づけるチャンス。気持ちよく踊れる音楽をラッパーにも知ってもらいたいです。

 

TDM:熱い話をお聞きできました。ありがとうございました!

 

SHOW GUN×DANCEHOLIC Presents
『RUMBLE! vol.5』
日程:2019年2月23日(土)
Open 16:00
Start  17:00
会場:CLUB HARLEM
〒150-0044
東京都渋谷区円山町2−4 Dr.ジーカンス
前売り ¥2500
当日     ¥3000
*入場時、別途ドリンク代¥500が必要となります。
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