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舞台「CONNECTION」特集 辻本知彦

Off 19999

 

 ■ビジネスではなく、カルチャーを作っていくような出し方をしたい。

TDM
辻本さんご自身で何か演出しようと考えたことはありますか?

 

辻本
やろうとはしたいな~と思ってはいるんですよね。これは多分バランスだと思うんですけど、ダンスだけ踊っていると、自分のバランスが取れなくなってくる。やっぱり創作して外に出していかないと、ダメになってくるというのは、日本に帰ってきて初めてわかりました。クリエイティブじゃなきゃダメなんですよね。でも、それを発表して、それが興行とか公演とか、興行的に乗せるかというと、僕には全関係なくて。単純に外に出すという作業が必要。その出し方がカルチャーを作っていくような出し方をしたいんですよね。 

極端な例で、1回やればそれを10年間やり続けるというものを外に出したくて。2、3年ならいいとか、旬な物なわけじゃなくて、10年やり続ける物は何かなぁって考えた時に、大きくなったらラッキーだけども、基本そこにプライオリティは無い。大きくならなくていいから10年間やり続ける、やり続けたいもの、10年間観て行きたいものをやりたい。それが永続的に続く、僕が死んでもその活動が消えて、僕がリーダーだったらリーダーを譲れる、そういうものは何かなというのを模索しています。

 

そういう意味では、「俺はアーティストだから」と言えます!だから、みんなと違うんだと。芸術気取り、芸術家気取りができる。その遊びをしているのかもしれません。そこが、人にどう見られても構わない表現になっている、ということもわかってる。これは日本人には少ないかもしれません。

 

p06

 

■ストリートダンサーが舞台でどういう表現していくのか。

TDM
今回の共演者の皆さんはいかがですか?

 

辻本
久しぶりに見たTAKAYUKIさんは、やっぱり上手かった。すごく好きでしたね。あと、TATSUOさんが舞台でどういう表現していくのかを、稽古中もずっと見ています。ストリートダンサーが舞台でどういう表現していくのか、その実例をTATSUOさんが担ってくれないと、そのあと、誰も続けないかもしれないという面でも僕はいいのかなと思っています。 

そもそも、誰もが「この作品が絶対にダメだったで終わるはずない」と思って参加していることもあって、自分も勝手に影響して成長してしまう。TATSUOさんがどうクリアするのかは良い要素だと思っています。

 

p04

 

 

■チケット1万円の舞台を観に行きますか?

辻本
これは感性の問題だけども、さっきの思想で話すならば、やっぱりストリートダンサーは8000~1万円前後のチケットの舞台を観に行かないですよね。観に行けないのか、観に行かないのか、いろんな理由はあると思うんですけど。それで、考えるならば、普通の人はチケット3000~5000円の舞台は観に行かない。自分が好きじゃなきゃ、まず3000円~5000円のチケットのチラシは手に取らないし、手に取る機会もない。普通に生活していたら電車やテレビなり、1万円前後の舞台が広告として目に入ってくる。それが商売としてやっているダンスだとわかった上で、自分もそこに立ちたいのかどうか。 

もしくはそれを見て勉強するでもいいんです。「あのダンサーが舞台に上がったら、どうなるんだ?」と、上から目線でもいいから観に来て欲しい。「クラブだったらカッコイイ、舞台だったらダメだな」とちゃんと言えるようになるためでもいい。ダンサーはダンサー的な主観があるから、それだけチケット代を払ったら、そうやって「観てやろう」という見方をしていてもいいなと思うんですよね。

 

僕はそういうダンサーの商売敵でもありますが、5~6年前から、普通に生きてたら、こういう情報の伝わり方でしかないんだという見方をするようになりました。だから、シルク・ドゥ・ソレイユに行くのは最高だった。すごく宣伝もしてくれるし、一般の人がわかる、伝わるというのは、こういうことなんだなと学べました。少しでも自分のセンスに引っかかったら、なぜ本当に1万円くらいの舞台を観に行かないのかなぁと思います。“有名人が出ているから行く”という理由はあっても別にいいと思います。

 

それで、僕らがダンサーとして舞台に立った時に、有名だから観に行くのか、技術が高いから観に行くのか。特に僕と同世代で舞台に立っている人はそういったことも考えながら踊って欲しいですね。政治に対して物を言う感じでいいんですよ。どんどん手を挙げて、それやらなくちゃ、善悪をハッキリさせるんじゃなくて、「うん、いいものは絶対こういうことだよな!」となれる感覚を少し考えてもらいたい。

 

TDM
今後の自分のチャレンジは?

 

辻本
これは言って本当にいいのかわかりませんが・・・ダンス辞めたいです。 

ダンスが日常化していることが嫌なんです。どういうことかというと、今思えばダンサーは、昔はすごく変わった職業でした。20代でチャレンジしている頃の方が、アーティスト気取りできた。今では気取りとかじゃなくて、身に付いてしまって、生活のルーティーンが人と変わっていると全然思わない。前はダンスやっていることで人と変わっていて違うことをしている感じがしたけど、今はそれをまったく感じなくなってしまった。そうやって踊っているのが嫌なんです。今ぐらいのトレーニング量であれば、違う仕事をしてもダンスはできる気もします。あと、今の年齢だったらできると思います。チャレンジというか、目標ですね。

 

いつか本当に辞めて全然違うことしてやりたいなと企んでます。以前だと生命のことを理由にしていました。職業として終わりを告げようとする前に、じゃあどれだけできるかを自分に投げかければ死に物狂いでできるのかなと。こういうインタビューでも、人が言わないこと言いたいんですよね。チャレンジしたいというか。でも、批評するのが日本では難しい。何が起こっているかというと、日本のダンスは商売なんですよね。

 

でも、僕はアートでやっていた。だから、難しい。人の悪口を言うと、「おい、商売の邪魔すんな」となるんだなと。だけど、アーティストからすると、ちゃんと言わなければちゃんと答えは返ってこない。だから、もうちょっと自分が大きくなって矛先が来る時になったら、ちゃんと批評して、バッシング受けるまでしようと思います。ダンサーの誰々が下手、なのになぜ売れてんだとちゃんと悪口が言いたいですね(笑)。

 

けど、まだ今じゃない、もっと僕がバッシングされてから言ってやろうと。責任感を持って言わなくちゃ、普通のお客さんと一緒だから。「じゃあ、お前はどれぐらい踊れるんだ」と言われてしまう。そのためにも、観に来てもらうなり、僕もちゃんとやらなくちゃ、言えないなと。逆に、もうダンスを辞めてもいいと思ったら言える。でも、それはずるいですね。「お前、辞めるから言えるだろう」と言われそう。前までは生命が終わる前に自分がしたいダンスがあったんですよね。でも、それが消えちゃったんです。

 

TDM 消えたのはなぜですか?

 

辻本
これは深くなるけど、死ぬのが恐くなくなったんですよね、前より、単純に。前は死を感じたらしょうがなく踊ってしまう自分が居たりしたんだけども・・・だから年齢だと思います、脳が変わっちゃったと思う。死を受け入れたというか、今このまま死んでもいいなと思ったんです。前は“死ぬ”と考えると「やらなくちゃ!」とトレーニングしてしまう自分が居たかもしれないけども、今は別にそれが「死はいずれ来るもんだなぁ」と思います。 

大人になったんですよね、ちょっとね。受け入れないとやっていけないという方向性になった。単純に僕は人生の後半に来てると思っているので。今37歳で、長生きしないと考えて、64歳で設定しているので(笑)。そう考えると、50、60歳の人ってもっと僕よりも半分は過ぎて、僕よりも死を感じている。だから、僕よりももっと諦めたり、チャレンジしたりする線引きが激しいんだと思う。だから、その年代の人の言ってくることを噛み締めようと思いました。俺よりも思っているんだ、思わざるを得ない状況だろうなと。

 

p02

■そういう所で大澄さんが好きだなと思っています。

辻本
それが今の僕にとっては今回の演出である、大澄さんです。慣れた作業では無く、「こっちがいいかなあっちがいいかな」と彼が振りの一つ一つを悩んで作っているんですよ。決まるまでが長い。でも、でき上がったものに対して僕は時間かけて良かった、心地いいなと思います。つまり、僕のさっきの思想で言うと、大澄さんのそういう作業が嫌に思わないです。「良いものができるなら悩んでもいい!」と僕は勝手に思って、そういう所で大澄さんが好きだなと思っています。

 

TDM
今回このオファーを受けた時のお気持ちは?

 

辻本
ダンサーの中で有名になった人って誰かな?と考えたときに、例えば、SAMさんだったり、最近だったらケント(KENTO MORI)、そして、大澄さんかなと。逆に、「舞台を大澄さんが作らなければ、誰が作りますか?やっぱり僕らがあなたが作っていったら、多くの人が気になるはずだ」と思う。そして、この作品がその最初ならば、それを応援し、賛同できるのは、嬉しいことですね。あとは、初演作品に関われることも嬉しいですよね。初めて参加することでいろんな知恵になります。 

大澄さんが演出する初めての世界を、この距離で覗かせてもらっています。おもしろいかどうかは、やる前にわかるもんじゃなくて、全員でおもしろいものを創ろうとしています。よく思うのは、一回共演した人とは大体5~6年は共演しないんです。だからこそ、「もうこの組み合わせはない。次はないと思って、思い切りやった方がいい。」と自分に言っているんですよね。「TATSUOさんと踊ることもうないからね、だからやっておかないともう終わるよ!」と。もし次の共演があるとしたら、その時は歳を重ねてセンス上がったりするのかもしれないけど、絶対身体能力は落ちている。

 

だから、今、話しておかなくちゃいけない。おじさんになってから話すのはできるから。僕が、今というタイミングで、ストリートダンスのレベルがこれぐらいなのは今しかないと想像しています。そういう「今しかできない」の繰り返しで、生命を延ばしていくみたいなものだから。

 

TDM
とても興味深いお話をお聞きできました。舞台も楽しみにしております。ありがとうございました!



interview by Akiko and imu

’15/03/16 UPDATE

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tokyodancemagazine

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