■誰が観ても等しくいいと思える物を自分で作りたい。
辻本 | : |
自分なりに、すごくゆっくりゆっくりそうだなそうだなと納得しながら生きてきています。だから、昔のセンスが忘れられないんですよ。上手くなる前の自分も覚えているし、ダンスがキレイなのが分からない人の気持ちもわかります。僕はへたくそな時代を経てきているから。僕が下手くそな時代を知っている人と話すとおもしろいですよ。例えば、ストリートダンスの要素を手に入れた時の練習を近い人たちには見せていました。そして、2~3年後に、もう一度彼らに見せて、「ね?上手くなったでしょ?」と言っていました。明らかにわかるくらいに、ジャッジメントとして、人にも自分の成長を見てもらうんです。それは自分の喜びにもなるし、あからさまに上手くなったという事実を手に入れられる。それをやるぐらい、まだできないこと、下手な時期だとわかっていました。
例えば、僕の今のポップのレベルとしては、どれぐらいできるかはわかっている。その状態で、「本当にポッパーで世界チャンピオンのKITEを相手にしたら、通用するかな。いや、バトルしたら勝つまで行くからね!」という念頭で練習します。実際にそのレベルまで行けると思いません。だけど、その“勝つまで行く”というレベルに自分を持っていけた時に、僕が使うのはバトルではなくて、舞台上です。
最終的に舞台でポップのエッセンスを見た時に、「バトルの方がすごいのに」と言われたくないんです。違う次元で物事を捉えた時に、比べる物じゃないけども、舞台で「あの人のポップは誰が観ても等しくいい」と思える物を自分で作りたいなと思っています。 |
■僕は人と違う。マイノリティ。
辻本 | : |
HIROさんがオーガナイズしているダンスイベント「RAISE UP」という企画はすごくいい。6年もやってると聞いてビックリしました。HIROさんと「SEKAI」と言うパフォーマンスで共演した時に知って、そこから毎月第2木曜日に行っています。単純に週に一回の練習を家で1年間やるのと、クラブで1年間やるのだと上手くなり方はまったく違いますからね。そこをわかっていたから、最初は家で練習していましたが、クラブで練習したいなと思ったので、とりあえず1年間行こうと去年から行き続けています。1年後、周りからどう見えるかなと。
おもしろい話で、僕の疑問でもあるんですが、曲を聴いて、どうやって身体を動かすのかと見ていると、みんな、周りを見て踊ったり、本当にその一発目の音を聴いて「その動かし方を練習の時もしているのか?」と思うような動きをします。俺もやってしまうけど、周りを見て「この踊り方が正しいかな?」と気にしてします。僕はやっぱり、そこに疑問符があるんです。最終的には、周りを見て刃向かう人と、周りを見て同調する人だと思います。結局は、対比の対象が周りだから。
だけど、僕は人と違う。マイノリティ。真似するとか、狙いがそこだったらいいけど。根本にはまず、この曲を何も情報なく聴いた時、どこで身体が動くのかを知りたい時に、あまりにも皆が同じすぎるということにちょっと違和感を覚えます。俺はそうはなりたくないなと。でも、そのクラブの特質性を選んだのは、やっぱり自分にストリートダンスの要素が必要だったから。 |
TDM | : |
クラブに行くのは練習会に近いイメージなんでしょうか? |
辻本 | : |
お酒が入って一発目の音を聞いて踊ったり、仲間で行くとコミュニティができるので、今は一人でも行くようにしています。音楽の好き嫌いありますけど、音楽批判はちょっと難しいですね。 |
TDM | : |
では、自分の中で、一番魅かれる音楽ジャンルは? |
辻本 | : | 素敵な曲ですかね。踊らなくても成立してしまうような、聴いただけで「いいな~、素敵な曲だなぁ~」と感じられる曲調。神秘的でキレイな、尊い曲、と言えばいいかもしれない。だから、ビートがズンジャガズンジャガしてんのは、それに比べたら全然好きじゃないかも。バイオリンや琴の音が好きですね。 |
■それを見た瞬間に「(この作品は)イケる」と思った。
TDM | : |
舞台「CONNECTION」に対しては、どういう所を気にかけて取り組んでいますか? |
辻本 | : |
シルク・ドゥ・ソレイユの3年間を終え、日本に帰ってきて最初の依頼が今回の「CONNECTION」でした。大体、こんなにいろんなジャンルのダンサーがいると、合わせられるのかどうかな?とか心配していましたけど、いろんなジャンルの架け橋、ブリッジ的なことを僕はよくやっている方だと思います。
この前プロモーションで、僕とTATSUOさんとTAKAYUKIさんと踊ったんですよ。それ見た瞬間に「(この作品は)イケる」と思っちゃったんですね。いいダンサーを3人並べたというよりも、僕の目で見た時の3人ポッと並んだ時が好みだったんです。俺がお客さんだったら「この3人の踊りを見たい!」と思っちゃう。僕の中でお洒落だったんですよね。テクニックもありながら、あ~好きだなと思いました。そう思えたのは、やっぱりTATSUOさんとTAKAYUKIさんがいいと思ったから。
お2人が心配していたのは、この舞台がジャズであること。でも、リハーサルをやっていて思うのは、大澄さんが言っていることをやると、振付に対してできるかということは全然問題にならない。それ以上に個人個人がまとめあげる力が強いと思うんです。だから全然心配してないですね。 |
TDM | : |
TAKAYUKIさんとは交流がありましたか? |
辻本 | : |
ありますね。いいダンサーにはどういう考え持っているのか知りたくなって、話かけちゃうんです。それで、前からTAKAYUKIさんとも知り合いでした。あと、好きだなぁと思った若いダンサーの成長を見ると、時代を反映しながら若者がどうなっていくかが見えて、どうなっていくかを勉強すると自分の為にもなる。
ストリートダンサーの彼らが、心が折れて嫌にならない限り必ず生き残っていく。どういう上手さを手に入れたのか、どういう活動をしていくのか、を追っているだけですごくおもしろい。しかも、それが少しでも話せる関係であるならば、ちょっと聞いてみたいなと思います。SANTA君とかいいですよね!! |
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