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DANCE DANCE ASIA東京公演2018特集 黄帝心仙人×MIKEY

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才能豊かな2人のアーティストによる対談が実現した。共に、“ストリートダンス×世界観”の面白さ、重要さをかっこよく提示してくれている黄帝心仙人と牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)。昔から交わる事はなくとも意識し合ってきたという。また、2人はストリートダンスでアジアをつなぐプロジェクト「DANCE DANCE ASIA -Crossing the Movements」(以下、DDA)に演出家として関わっており、黄帝心仙人はまもなく開催されるDDA東京公演2018において、鈴木おさむ氏による書下ろし脚本の作品「宇宙-Space-」をアジア各国のダンサーたちと創り上げる。今作は”未知“だと語る彼の革命的な挑戦をぜひその目で見届けてほしい。

 

★【2組4名様ご招待!】「DANCE DANCE ASIA–Crossing the Movements 東京公演 2018」

 


 

 

  • 黄帝心仙人

    ダンサー、振付家、クリエイター。ロボットの動きを取り入れた人間離れしたボディコントロールと、詩的なストーリーによって生み出される作品で、世界屈指の数々のダンスコンテストでの優勝、『ASIA GOT TALENT』でのゴールデンブザー、さらに自身が振付・出演したユニクロのCMが、世界三大広告賞を含めた23タイトル受賞という快挙を成し遂げ、世界で高い評価を得ている。また孫正義会長の依頼によりロボット『PEPPER』のコンテンツ開発にも関わる。DANCE DANCE ASIAでは、自らのプロデュースユニット「Time Machine」を率いて、2015年にクアラルンプール(マレーシア)とジャカルタ(インドネシア)で公演とワークショップを行い、アジアのファンから熱狂的に迎えられた。

     

  • 牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)

    1983年生まれ、東京都出身。東京ゲゲゲイリーダー。パフォーマー、振付師、演出家、音楽家。3歳から日本舞踊や和楽器を学び、19歳の時に音楽レーベルの10代限定オーディションに参加。3万人の中からグランプリを獲得する。メジャーデビューを目指すが、事務所の方針とセクシャルマイノリティである自身との乖離に悩み断念。ストリートダンサーとして独学で活動を始め、ゲイである事をカミングアウトすると共に、ゲイカルチャーにインスパイアされた作品世界を構築し、注目を集める。2015年には舞台『ASTERISK~女神の光~』で脚本・振付・演出・音楽を担当、また『残酷歌劇 ライチ☆光クラブ』でパフォーマンス演出とテーマソングの制作を担当。2016年には『ASTERISK~Goodbye, Snow White 新釈・白雪姫~』で振付・演出・音楽を担当し主演を務める。また『DANCE DANCE ASIA』でもBlack Lip Boyz』の 振付・演出を担当。同プロジェクトは12月に東京公演を行い、2017年にはハノイ(ベトナム)、マニラ(フィリピン)でも公演。同年には『ロッキー・ホラー・ショー』にて振付を担当。さらにDREAMS COME TRUEとMV『世界中からサヨウナラ』でコラボレ―ションを行った。

     


 

 

■エンタテイメントを大切にする共通のベクトル。

 

 

TDM:

最近、互いにコミュニケーションはとっていましたか?

 

 

MIKEY:

1年前くらいに飲んだ時に、いろんな話をしつつ、最終的には恋愛相談に乗ってもらって以来ですかね(笑)。

 

 

 

昔はダンスイベントなどの現場でかぶったりしてたけど、最近はお互いクラブに行かなくなったので、ほとんど会う機会はなくなりましたね。プライベートでご飯食べて、ダンスの話を少ししたら、やっぱり恋愛話になっちゃう(笑)。

 

 

黄帝心仙人:

そうそう。自分、こう見えて結構、いろんな人から恋愛相談受けるんですよ(笑)。

 

 

 

ここ1年くらいかな、MIKEYが音楽や動画を作ってSNSで配信してるのをチェックしてますよ。ダンスの舞台の演出家としてもMIKEYを超えるものを見た事がない。

 

 

 

幅広い舞台の演出としてはいろんな人がいますが、MIKEYはダンスを無理なく使っているし、脚本に沿って自然に入っていて、ミュージカルのような突然感もあえてやっている所もすごいと思う。

 

 

 

東京ゲゲゲイが、2016年の東京ゲゲゲイ歌劇団で、山口百恵とか中森明菜とか昭和歌謡を使って踊り切ってるのを見た時も、今まで邦楽であそこまでマッチさせて踊り上げてるものを見た事がなかったから、気持ち良かった。笑いを入れても突き抜けてるし、踊らせても完成度が高いし、同じ方向性になって比べられたくないなって思います。

 

 

昔DANCE@HEROで僕が審査員をしたときに、東京ゲゲゲイが現れて、「これはやられた!」と思いました。もちろん、自分にしか出来ない自分らしさはあるけれども、同じコンテストでは戦いたくないなって思いますね。
今度のDDA東京では、MIKEYの舞台作品を見てきたプロデューサーの方とご一緒するので、いい所を盗んでいけたらと思ってます。

 

 

MIKEY:

わ~、嬉しいです。そんな事言ってくれる同世代のダンサーは仙人(黄帝心仙人)しかいないから。

 

 

 

私と仙人は、やってる事は違うし、キャラもかぶっていないけれど、割と近い所にいると私は思っています。スタイルが違っても、求めている事のベクトルに、共感する事が多いです。

 

 

 

さっきのDANCE@HEROの話ですが、私はタイムマシーンが前のシーズンでDANCE@HEROに出てる動画を見てなかったら、自分たちも出てみようと思わなかったかもしれないです。ダンスはもちろん大切にしているんだけど、エンタテイメントという要素を、仙人もすごく大事にしているのが伝わってくるので、すごく共感出来ます。


 

■なんでも着こなすMIKEY、一着を愛し続ける黄帝心仙人。

 

 

黄帝心仙人:

p01r3MIKEYと最初に会ったのは、10年くらい前、茨城のダンスイベントの帰りの電車が一緒になった時。当時、MIKEYはMAIKOちゃんとShow‐heyくんとの東京☆キッズだった時で、正直その時はあまり印象になかったんだけど、その後、MAIKOちゃんと2人になってから、蜂になったり女王様になったり、より本格的な衣装や独特の世界観のショーをやり始めたでしょ?あの辺から、一気にイメージが突出してきた。

 

 

 

そうかと思えば、RIE HATAたちと、QUEEN OF SWAGでゴリゴリのヒップホップも踊るし、はたまた、「東京~」という名前を付けてキッズチームをプロデュースし始めたり。「このキッズ、ダンス上手いな。先生は誰?」「MIKEYさんです!」「え!?」ってなる事があった(笑)。そのいろんなイメージと繋がらないようで繋がってる事に一番驚きましたね。

 

 

 

あと、今の東京ゲゲゲイのメンバーがすごいのは、個々にダンスが大好きで技術を極めてるけど、世に出す時はエンタメ要素強め。その遊びとストイックな両軸を兼ね備えているMIKEYのやりかたに、よくついていってるなと。あれは奇跡に近いと思う。

 

 

 

自分の場合は、メンバーが自分の城の中である程度成長したら、それぞれが自分の城を作りたくなって、独立していくパターンです。MIKEYは今までいろんな経験をしながらも、自分の城の中でちゃんとメンバーたちのやりがいを感じさせながらやっているのかなと思っていて、それはすごい事だなと思います。

 

 

 

自分はいろんなやりたい事に目を向けてしまったけれど、MIKEYは純粋にアーティストとして、作品や映像づくりを追求していたから…あ~、なんか、羨ましくなってきちゃったな~!(笑)。

 

MIKEY :

私からするとまずそのサングラスがシンボリックな所が羨ましいよ(笑)。自分のブランディングの仕方として、一つの事をちゃんと大切にしている気がする。私みたいにいろんな事にブレていないのがいいなと思います。

 

 

黄帝心仙人:

例えて言えば、MIKEYはファッションを変えても、中身は変わってないから、何やっても似合う状況で、自分は、一つの服をずっと着ている状況だと思う。

 

 

MIKEY:

なるほど。そのいろんな服を着ている時の自分自身をふとカッコ悪いと思う時があるから、それをしないで、一つの服を着続けている仙人が羨ましいよ。


 

黄帝心仙人:

でも、MIKEYは楽しいから着替えてるように見えてるよ。自分は次に自分に似合う服が見つからないからずっと着ているだけ(笑)。結果、その服が自分に落ち着いてきて、風貌も変えないし、スタンスも変えない。もちろんそのバランスは自分で選んだ事だけど、見方を変えれば臆病者なのかもしれないね。

 

 

■自分がいいと思っているものを、そうは思わない人もいるかもしれない。

 

黄帝心仙人:

単純にMIKEYの周りは、MIKEYの才能に惹かれているんでしょうね。自分も少し共通している所はあるだろうけど、しばらくすると独立していく人間も多い。MIKEYの場合はその才能についていけなくなって、それでもついていこう、学ぼうと追求出来る人は、よほどのドМなんだと思います(笑)。

 

 

MIKEY:

20170724-006A0155なるほど、そこでSMの関係性が出来ていたのかなぁ(笑)。さっき、仙人が話してくれたのは私がキッズレッスンをやっていて、キッズコンテストにチームで出していたりしていた時代の事で、今はレッスンをやっていないから生徒と呼べる存在はいないんです。そして、最近では、ゲゲゲイのメンバーたちとのSMみたいな関係性も変わってきている感じがします。

 

 

 

少し前までは、自分の中に「これが正しい。」と思える価値観がものすごくあったから、そこにみんなをはめていく作業をしていたんですが、2~3年前から「自分が思ってる事は正しくないかも…」と思い始めちゃって。

 

 

 

これは恋愛とも関係してるかもしれないんですが、すごく自分がエゴイスティックにやった先に、幸せはなさそうだなと感じ始めてきました。

 

 

私がいいと思っているものをそうは思わない人もいるかもしれない。ゲゲゲイメンバーの意見も、私は好きじゃないけど、いいっていう人がいるかもな…と取り入れてみたり、そういうバランスがいろいろ変化してきたんです。だから、ゲゲゲイは今までのチームに比べて続けられているのかもしれないですね。

 

黄帝心仙人:

昔はMIKEYの決めた事を忠実に100%やりきる形だったのかもしれないけれど、東京ゲゲゲイ歌劇団を見たら、メンバーそれぞれを引き立たせてた。その方がMIKEYも周りも楽そうだね。

 

 

■鈴木おさむ氏の脚本で初対面の多国籍ダンサーたちと創る未知なる挑戦。

 

 

MIKEY: 

今回、鈴木おさむさんとの話し合いはどんな感じだったの?

 

 

 

黄帝心仙人:

最初にブレストで、どういうものをやりたいか話し合って、次の段階では、もういろんな肉付けをしてくれたストーリーにしてくれて、一冊の本として受け取って、「あとは、仙人さんの好きなように使ってください」という状態。だから、あとは、この本といかに向き合うか。自分次第なんだよね。

 

 

TDM:

今回のテーマの「宇宙-Space-」はどちらからのアイデアなんですか?

 

 

黄帝心仙人:

それは自分ですね。その時、他の人には出来ない自分だけのムーブとして、浮遊感、無重力感、宇宙のムーブにハマっていて、それを舞台で表現出来る人はいないと思ったんです。ただ、よくよく考えると自分は今回出演しないので、キャストに指導していく事になりますが(笑)。

 

 

MIKEY:

そっか。キャストの人は仙人の知ってる人?

 

 

黄帝心仙人:

知ってる人もいるけどほぼ知らない人。だから…正直、上手く出来るか分からないよね(笑)。 とにかくチャレンジしてみようという気持ちです。

 

 

 

あとは、自分以外の人の書いたストーリーで作っていく作業も初めてなので、そこも挑戦だね。

 

 

TDM :

そもそも今回鈴木おさむさんが脚本を書く事になったきっかけは?

 

黄帝心仙人 :

p03r何人か候補の方を提案していただいた中で、お名前を知っていたし、自分のやりたい作品をどんなアプローチで面白くしもらえるのか、単純に興味深かったんです。鈴木おさむさんも前々からダンスには興味があったとおっしゃっていましたね。

 

 

 

自分もですが、一人でいろいろ出来たりやってみたい人は、アウトソーシングをしたがらないと思います。でも、ちゃんとアウトソーシングが出来た時に、自分にしか出来ない事だけをやって、他はその道のプロに任せる事で、自分が脚本を書いたら6の仕上がりかもしれないけど、プロに任せる事で、結果10のものが出来るのであれば、やってみてもいいのかなという気持ちになってきました。

 

 

 

最終的なプロデュースは自分がしたいんだけど、一回、何も触れずに丸投げしたものから作ってみたらどうなるのかなというのを、今回試したいと思っています。

 

 

 

あとは、先ほど言ったように、メンバーも知ってはいても、一緒にモノづくりをするのは初めての人たちだし、ましてや国も違うから、英語で話さなきゃならないし、かつ自分は出演しない。1か月間、週6日一緒に過ごしてみていったいどんなものが出来るのか、正直、未知です。でも、テーマは宇宙だし、それでもいいかなと(笑)。

 

 

MIKEY :

なんでも宇宙につなげれば、収まるね(笑)。仙人の中で、今回のいろんな未知な事への挑戦に興味のあるタイミングだったの?

黄帝心仙人 :

うん、タイミング的にはずっと、自分をまずスキルアップしたいと思ってた。あとは、こんな風にいろいろ用意してもらって、脚本やダンサーと向き合ったときに、否が応にも、自分が追い込まれると思うんだよね。そこで新しい自分へのスイッチというか、可能性を知りたいと思った。

 

 

■人と関わりあうから、生み出せる。

 

TDM :

お2人とも2015年にDDA初年度のツアーに参加されていますが、今振り返ってみてどうでしたか?

 

黄帝心仙人 :

自分は、マレーシアとジャカルタにタイムマシーンで参加しましたが、日本から参加したほかの2チームの事を気にしていた記憶があります。作品性や世界観では負けないぞと(笑)。ただ、アジアの反応として「おぉ。」よりも「イェーイ!」という盛り上がりの方が多いと思いますが、自分の世界観は最終的に涙を誘う展開を狙っているので、他の2チームのような「イェーイ!」と歓声を沸かせられない自分を悔しく思ったりもしていました。

 

 

 

でも、それは結構昔からで、歓声よりも驚きや感動の声を出させたいタイプなので、どっちがいいか悪いかは比べる事ではないのかもしれないですけど、ないものねだりで、出来ない事があるとそっちも欲しくなってしまいますね。

 

 

 

ちなみに、今回のDDA東京公演に出演するPythos Harrisはジャカルタツアーの時に知り合ったんです。パイナップル頭をしていて、ワークショップも来てくれたし、目立ってましたね。アニマルポップというコンテンポラリーとアニメーションを混ぜたジャンルを追求してるクルーに所属していて、面白いなと。どんなダンスをしてくれるのか楽しみです。

 

 

 

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MIKEY :

私はマニラとバンコク公演に参加しましたが、バンコク公演の本番で、メンバーが大失敗を起こしたんです。それに私が超キレて、今までで一番叱って、4人をボロボロに泣かせた事があって。それで思いのほか、4人にショックを与えたし、彼女たちの本気の涙も初めて見て反省したんです。「あ、私、やりすぎてる・・・」と、冷や水を浴びたような、恥ずかしい事をしたと自覚しました。

 

 

 

あそこで初めて東京ゲゲゲイの危機になりました。そして、そこから変わった気がします。タイ公演があってよかったです(笑)。
黄帝心仙人 :

具体的にはどう変わったの?

 

 

MIKEY :

それまでは、感情的になって、暴力的な発言をしてしまう事があって、かゆい所に手が届かない、そのストレスをメンバーのせいにしてしまっていた事を、それ以来しなくなったと思う。

 

 

黄帝心仙人 :

よかったね。でも、その後、そのストレスはどこに向けられたの?MIKEYの場合、他の人より感情が強いから、自分に向けると絶対危険だから、はけ口として外に出した方がいいと思うんだけど。

 

 

MIKEY :

言われてみればその辺からしっかり恋愛し始めたかも(笑)。それまではエネルギーを、東京ゲゲゲイや創作活動に注いでいたのが、いい意味で、ある種の諦めというか、人と何かを作っていく以上、あまりにもワンマンだと自分も周りも苦しい事が分かった。だから、そこからエネルギーが恋愛に向きましたね。でも、そこでも感情が行きつく所まで行って爆発するんですけど(笑)。だから、今ちょうど自分はいいバランスにいます。

 

 

黄帝心仙人 :

アウトプットのバランスもいいのかもしれないね。

 

 

MIKEY :

アウトプットもそれに対するフィードバックもある程度もらえていて、充実感があるから、依存ぽくなってない。

 

 

 

じゃあさ、仙人の今のバランスはどうなの?

 

 

黄帝心仙人 :

自分も恋愛も創作も、まっすぐにのめりこむタイプなんだけど、それには環境がものすごく大事で、今はその環境づくりがちゃんと出来てないかもしれないな。意識が散漫だから、生み出せてない。

恋愛の場合ハマると困るから、ハマらないようにスイッチを隠してる(笑)。

 

 


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DANCE DANCE ASIA東京公演2018は3月23日から開催。

MIKEY :

でも、これ(DDA東京公演のチラシを指して)もうすぐ控えてるじゃん。大丈夫?

 

 

黄帝心仙人 :

だから、今から環境を整えますよ~(笑)。でも、脚本は鈴木おさむさんに書いてもらったモノがあるし、ある程度準備は出来始めてるけどね。

 

 

MIKEY :

でもさ、仙人は誰かと共作するのって、たぶん苦手…でしょ?

 

黄帝心仙人 :

いや、人がいないともう作れない。

 

 

MIKEY :

そうなんだ!クリエイティビティの面では、一人で部屋にこもって黙々とやってるイメージだった。

 

 

黄帝心仙人 :

昔はそういう感じだったんだけど、よくよく考えてみると、おしゃべりが好きだし、人から「お~!」って言われたいんだよね。話せば話すほどネタが出てくるタイプで、そういう環境がないと自分からは何もやらない事に気づいた。

 

 

 

一人でこもってもアイデアは浮かぶけど、近くに本や雑誌が周りにあると読んじゃうし、仕事のメールやLINEが来ると反応しちゃうし、いわゆる誘惑がすごく多い。だから、ミュージシャンは人とのコンタクトを断てる海外にわざわざ行ってレコーディングするんだなと思う。

 

 

 

自分も今はそういうものに邪魔をされるから、そういうものを排除するか、時間を決めるか、周りで話を聞いてくれて盛り上げてくれる人がいるような環境になればとにかくアイデアが出てくるし、作品が作れる。そういうバランスが最近分かってきた。つまり、自分を引き出してくれたりストッパーになってくれるパートナ―が必要なんだよね。

 

 

MIKEY :

分かる!私も一人で黙々と自分の世界を追求しているタイプだと思われがちなんだけど、「今こういう事をやろうと思っていて…」と誰かの意見を聞いて、さらに自分のアイデアが出てきているから、私も人と関わりあわないと作れてないんだなって、仙人の言葉で分かった。

 

 

黄帝心仙人 :

一人でゼロからは、なかなか産めないよね。ある種の加工や、あるものを応用したり、もっと面白くする能力は持っていると思っていて、MIKEYも同じタイプなのかな。

 

 

MIKEY :

うん、そうだと思う。

 

 

TDM :

お2人とも、演出、振付、出演、いろいろ経験されていると思いますが、今やりたいのはどれですか?

 

 

黄帝心仙人:

p02rあと5年くらいは出演していたいですね。自分にしか出来ない表現があるし、自分は出たがりなので。

 

 

今回のDDA東京公演での演出は、普段セルフプロデュースしてる時の自分に行う演出を、他人に置き換える作業で、それも初めての事。結果として「黄帝心仙人出ない方がいいんじゃないの?」という反応が出てきたら、新しい領域に行く事になるのかもしれません。

 

 

 

昔、MIKEYが出演せずに演出だけやった舞台「ASTERISK ~女神の光~」(2015年)が、すごくよくて、本当にMIKEYは演出に集中出来たんだなと感じた。あれは、自分の中でダンス舞台作品の過去1番の作品と呼べるくらい素晴らしかった。

 

 

 

キャストも二度と集まらないくらい最高だったね。MIKEYは、最高級の食材を並べられて、さぁ調理してくださいと言われた環境の中で、一つの食材も殺さずに調理しきってた。

 

 

 

正直、今の自分はあそこまでいける自信はないけど、でも、あそこまでいけたらいいなと思う。まだ、自分の演出の力よりも、舞台上で自分の動きを見た観客が沸いている印象の方が強い。

 

 

 

MIKEYはその辺のバランスはどうなの?演出に徹する時と出演もする時の感覚の違いはある?

 

 

MIKEY:

演出もして出演もすると、「演出もしていて、自分も出ちゃってる!」と恥ずかしさがある。自信をもって人に見てくださいと言いづらくなる。演出だけだと、自分が出演者たちの事をすごいって思ってるから、人に薦めやすいかな。

 

 

■窮屈さを感じる舞台の世界。“壊しちゃえばいいじゃん”

 

 

MIKEY:

あ、すごい事言ってもいいですか。最近、私は舞台が嫌いなんだなって気づいたんです。

 

 

黄帝心仙人:

どうして?

 

 

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MIKEY:

まず、約1時間半~2時間もの間、知らない人と密着した空間でずっと座ってみるというあのスタイルがイヤ。

 

 

 

あと、携帯を見ちゃダメとか、遅れちゃダメとか、咳払いはダメとか、帽子はとるとか、一つのお作法みたいなルールがあって、つまらない。

 

 

 

批評や評論を聞いても、「舞台はこうあるべき」みたいな、照明の使い方や暗転は短い方がいいとか、いいとされている舞台のノウハウに、意外と多様性がなくて、窮屈な感じがする。

 

 

 

それで、こないだの東京ゲゲゲイ歌劇団 Vol.2では舞台っぽい要素はやりたくなくて、自分的にはライブと舞台の間のようなものにしたくて、携帯撮影をOKにして拡散してもらったり、いろいろやってみたんだよね。あんまりやりすぎると、怒る人もいそうだけどね。

 

 

 

黄帝心仙人:

壊しちゃえばいいんじゃないの?日本だからこそ変えられる気がするけどな。トイレのウォシュレットって日本から普及したし、日本人は昔から応用したり、変革を起こすのは得意な民族だと思う。だから、舞台の在り方もどんどん変えていっていいと思う。

 

 

 

あとは、年を重ねるにつれて自分も含めて感度はどんどん鈍っていくと思う。実際、自分も20代の子たちと戯れてると、心に余裕がない時は「新しいだけで、中身ないだろ」って思っちゃう行動も、落ち着いて向き合ってみると、自分たちにはない感性や聞こえない音で物事をキャッチしていて、面白いんだよね。だから、自分たちより上の世代の人は、たぶんもっと鈍ってるだろうし、逆に、いい刺激になるだろうから、どんどんやっちゃっていいと思う。

 

 

 

MIKEY:

感度の問題ね。たしかに。自分も昔に比べたら鈍ってきてるのかもしれないけど、私の場合、今も10代の子が周りに多いから、彼らの発言やダンスの見方で刺激をもらってる。

 

 

 

例えば、彼らはもうスマホの画面の中でいろんな感動が出来てしまっていて、実際に舞台や現場に足を運んで受ける感動が、私たちの世代よりは減っているのかもしれない。でも、その事実に対して「今の若い子たちは現場に足を運ばないから駄目だ」って言いたくはない。そういう風に世界は変わっていってるし、そこで生まれている新しい感度がきっとあるからそれは認めたい。

 

 

 

黄帝心仙人:

たしかに。小さい画面で感動なんて出来るわけないと思ったけど、十分スマホでドラマを見て感動してるしね。

 

 

MIKEY:

若いダンサーの踊る場としても舞台でもなく、クラブでもなく、今のステータスはスタジオのピックアップ動画に映る事だったりする。少し前までは「そんな所で目立っても…」って思ってたけど、そこにある感動や興奮が彼らにはきっとあって、それを間違ってるって否定したくない。

 

 

 

黄帝心仙人:

うん、経験値はこちらの方が高くても、今はアプリでたくさん面白い事が表現出来るし、若い子の感性はその中で刺激されてどんどん育っていってるし、自分たちには想像出来ないものが作れたりするのかもしれないね。

 

 

 

TDM:

最後にお2人の展望をお聞かせください。

 

 

 

MIKEY:

私は明確なビジョンがあるわけではないんですが、最近は歌ったり音楽を作ったりする方がやってみたくて、自分をそこで出したい欲求があります。

 

 

 

黄帝心仙人:

自分は舞台づくりを今まであまりやってきていないので、今回のDDA東京公演でやってみて、そこで自分の可能性を探りたいと思っています。ゆくゆくはブロードウェイに出してみたいですね。ただ、最終的には映画を作ってアカデミー賞を取るのが自分の目標です。それが2~3年後くらいに出来たらいいですね。

 

 

 

自分の中では舞台も映画も離れていなくて、フォーカスの仕方は違えど、どちらも出来るだけ編集や加工をしたくないので、自分のアニメーションというスタイルならリアルに表現出来ると思っています。

 

 

 

TDM:

お2人の飽くなきクリエイティビティをこれからも楽しみにしています!本日はありがとうございました!

 

 

→[PICK UP]アジアのストリート発、新たな表現を拓くダンス 「DANCE DANCE ASIA–Crossing the Movements 東京公演 2018」☆ご招待アリ

 

interview by AKIKO

’18/02/26 UPDATE

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