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Asami Massder

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イビサで出会った日本人のパフォーマー、Asami Massder。ユーロッパの富豪のリゾート地として、そして巨大なエンタテインメントのクラブシーンが存在するイビサで活躍する日本人ダンサーがいるということで、思わずインタビューをしてしまった。身体一つで海外にチャレンジしていくこと。純粋に「あそこで踊りたい!」というダンス欲に身を任せ、度胸とパッションを原動力として、自分の描くスタンスに挑戦している生き様を、応援し続けていきたい。

 


 

  • Image_11b9af5Asami Massder
    ディズニーダンサーとGOGO DANCERに憧れる幼少期時代を過ごす。大学在学中にディズニーダンサーに合格、5年間務める。その間、旅行先となったイビサでのGOGO DANCERらの総合的なエンタテインメントに衝撃を受け、イビサでのGOGO DANCERを目指す。2014年シンガポール、2015年トルコでのダンサーを経て、2017年10月まで、イビサ島のクラブHeart Ibizaを始め、イビサでのダンサーとなる。そのほか、矢沢永吉、MINMI、石川さゆりなどのアーティストのバックアップダンサーとしても活躍。今後もイビサを拠点とし、日本に帰国した際は、イビサで体感した”GOGO DANCER革命”を起こすべく、様々なエンタテインメントの発信を目指している。

 

 


 

 

いつかイビサでGOGO DANCERやりたい!

 

TDM まず、ダンス始めたきっかけは?

 

 

 

Asami
子供の頃からディズニーダンサーになりたくて、小学2年生からジャズを地元・品川区で通い始めました。大学2年生でオーディションに受かり、大学を辞めて25歳までの5年間、ディズニーダンサーとして働きました。 

実は、ディズニーダンサーに受かる前までに、クラブで何回かGOGO DANCERをやった事があるんです。父親が初めて見せてくれた映画が「コヨーテ・アグリー」で、「本物のウェスタンブーツ買ってやるから、お前もカウンターの上で踊っていいぞ!」と言われて「私もあんな風に踊りたい!」とGOGO DANCERに憧れていました。ですが、いざ日本のクラブでやってみると、ただ露出をして、お客さんはダンスじゃなくてお尻しか見ていないし、家族に悪い事をしているような気分になった事があります。「こんな事をする為に踊ってるんじゃない!」と思い、GOGO DANCE自体は好きだったんですが、それからはディズニー一筋になりました。

 

 

TDM
それから、どうやってイビサでダンサーをやる事に?

 

 

 

Asami
Image_8768aeeイビサが知り合いのハネムーン先だったので、私も一緒について行った時に、クラブでGOGO DANCERを見ました。彼らは、露出をしてるのに、それがアートになっていたんです。そして、客はダンスではなく、DJ目当てで、その音楽が聴きたくて集まっていて、それを盛り上げる為のライティング、スモーク、GOGO DANCERになっていました。DJが神で、DJに観客もスタッフもみんなのベクトルが向けられていて、すべてのエナジーが集まっていく、その為のダンサーなんだなと感じました。それを目の当たりにして「私はいつかイビサでGOGO DANCERやりたい!」と思うようになりました。 

ただ、5年間ディズニーで笑顔を振りまいていた人が、いきなりイビサのGOGO DANCERにはなれないだろうから、海外でも近場から攻めようと思い、シンガポールでGOGO DANCERを募集していたので、応募し、移住しました。

 

ですが、その仕事が危険な内容だったので2日で辞めて、急いで他の仕事を探した結果、インド人が集まるボリウッド(Bollywood)クラブでソロ回しをする仕事が見つかり、そこがビザを出してくれて働く事が出来ました。インドから有名なアーティストが来た時のバックダンスや、ツアーでオーストラリアやマレーシアに行ったりしました。

 

そこで出会ったイタリア人の女の子が「トルコにダンスの仕事でいくから一緒に行かない?」と言ってくれて行ったら、ホテルのキャバレーショーと、GOGO DANCERでした。ただ、働いている3か月間、ホテルから一歩も出られない状態にされました。私は自由の利かない時間に耐えられなくて、自分でチケットを取り、1か月で帰りました。

 

ただ、トルコでヨーロッパの空気に触れた事で、ヨーロッパでの仕事の感覚に慣れ、自信がつきました。「今ならイビサで勝負出来るかも!」と思い、2016年に片道のエアチケットと1週間だけの宿を手配して、イビサでのオーディションに来ました。

 

イビサでは毎年5月後半にすべてのクラブがオーディションをするんです。町中にポスターが貼られ、SNSでも拡散されて盛大な告知がされています。とりあえず“イビサ”名のつくオーディションをすべてチェックしていく中で、いろんな情報をアップしている人がいたので、「GOGO DANCERのオーディションを受けたいけど、どれを受けたらいいかがわからないので、何か知っていたら教えてくれませんか?」とDMを送りました。その方はイビサのプロモーターの方で、いろいろ紹介してもらえる事になり、3つのクラブのオーディションに受かって、1年間働ける事になりました。

 

 

 

TDM
イビサでは、ダンサーはイベントに掛け持ちで雇われるんですね。

 

 

Asami
 

Heart Club 2015 from HEART IBIZA on Vimeo.

 

そうです。現在(取材時)は半年間のアーティストビザを出してくれているHeart ibizaというクラブで週6働ける専属契約です。内容は希望しているGOGO DANCEではありませんが、今は出来るだけイビサに長くステイしていたいと思い、いろんな仕事に挑戦しています。Heart ibizaはシルク・ドゥ・ソレイユが監修とパートナーシップを組んでいるんです。

 

この島には、毎年いろんな人が世界中からやってきて、パフォーマーがバンバン入れ変わります。毎年一人も同じダンサーがいないクラブもあります。誰にも来年の保証がない中でオーディションを受けに来ています。

 

 

TDM
Asamiさんの感じるイビサのクラブエンタテインメントの特徴や好きなところはどんなところですか?

 

 

 

Asami
 

Heart Supper 2015 from HEART IBIZA on Vimeo.

 

みんな本気と本気のぶつかり合いであるという事です。DJを始め、来る人も、バーテンダーも、裏方スタッフも、デコレーション、そしてもちろんパフォーマーも本気のエナジーが集まってどうしようもなくなって爆発した感じが、日本にはない、私がイビサのクラブエンタテイメントに惚れ込んだ理由です。

 

 

■人よりも少しの度胸とパッションがあったから。

 

 

TDM ショーでのギャラの相場はどれくらいですか?

 

 

 

Asami
イベントだと一日200ユーロ、約26000円(2017年11月現在)くらいですね。去年は週1でしたが、一日400ユーロのイベントもあったので、その時期は余裕がありましたね。

 

 

 

TDM
ここでの生活費はどれくらいなんですか?

 

 

 

Asami
p03家賃がワンルームで月700ユーロくらい、とても高いです。あと、夏に世界中から人が来るので、相場が上がりますね。逆に田舎の方に行くと安い。4月は寒くて、都心部も人がいないしお店も空いてないです。イビサの人は冬にバケーションへ行って、夏だけ働きに帰ってくるんです。夏だけ働けば一年暮らせるくらい稼げる、でもその分、とてもハードです。 

でも、この島のいい所は、自然があるし、人も優しい。日本みたいに仕事詰めな1年ではなく、仕事をしながらもバケーションの為に6か月間ハードだけど頑張って働いているスタイル。最終的にはそういうイビサのフィーリングを日本に持って帰りたいと思っています。このエンタテインメントを日本の人たちにも分かってもらえたらなんて素敵なんだろうと思うから。

 

一度日本で大きな音楽パーティーのパフォーマーで参加した時に、みんな音楽を聴きに来てるのではなくて、コスプレを楽しんで、その写真をSNSにUPする事が目的で、だれも音楽を楽しみに来てるわけじゃないような感じでした。ハロウィンパーティーに近い感じ。もっと音楽を楽しむイビサの空気を伝えていきたいです。

 

 

 

TDM
今の契約が終わったら、次はどんな予定がありますか?

 

 

Asami
日本に帰って、教えとショーに出るつもりです。日本に帰ると、家族がいて大切な人たちがたくさんいて居心地がいいから、何もしたくなくなっちゃうんですけどね(笑)。これが私の問題で、これからの自分の人生をどうしていくのかが私の課題です。ただ、周囲も結婚や子供を産んでいく中で、私も女として生まれた以上、出産経験は絶対しにしておきたい!と思うし、最近生みたいと思っているので、夢を追い続けるのかどうかはタイミングで人生の中に起きていくんだと思います。

 

 

TDM
イビサに住んでみて、何か日本に対する意識は変わりましたか?

 

 

 

Asami
日本人のダンサーは世界的に見てもみんな上手だし、いろんなジャンルが踊れる。私は器用に踊れないですが、なぜイビサで2年間踊れたかというと、人よりも少しの度胸とパッションがあったからだと思っています。このパッションをどこに持っていくか。日本のダンサーはスキルがあるだけじゃなくて、優しい心と強さもあるし、ものすごくプロフェッショナル。エンタテインメント業界の仕事の効率面ではどの国も日本人には勝てないと思います。そこに注ぎ込む情熱もいいものを持ってるので、日本にいる多くのダンサーが英語も喋れてパッションがあれば、世界中で有名になれると思います。

 

 

■目指すはGOGO DANCER革命!

 

TDM イビサではどんなダンサーが評価されていますか?

 

 

 

Asami
踊れなくても、ブロンドヘアでスタイルが良くてビジュアルがいいだけで重宝されている人もいますが、クラブによっては、すごくいいダンサーが揃っている所もあります。私が踊っているクラブもバレエや体操出身者で、ものすごく踊りに芯があり、どんなに高いヒールでもコンテンポラリーのような面白い動きをしながらも、音楽と合っています。そのエナジーがすべてDJに向かっていて私の好きなクラブの空間になっています。私はブロンドでもないし足も長くないけど、ダンスによってたくさんの人が受け入れてくれたし、言葉を超えて認め合ってくれて、ダンスのいいエネルギーを感じましたね。あのクラブで踊れて幸せですね。 

▲イビサのクラブ「Amnesia」

 

▲イビサのクラブ 「Cova Santa」

 

 

 

 

TDM
今シーズン、イビサでの唯一の日本人GOGO DANCERですね。

 

 

 

Asami
p04言われてみればそういう事になりますね!でも、私がイビサで働いてた事を知らせたくても、日本でイビサが知られていない、興味が持たれていない、悪いイメージを持っている人もいると感じます。今回こうしてインタビューしていただけてありがたいです。イビサの人も私たちと同じで単純に音楽をお酒と共に楽しんでると思えば、そんなに悪いイメージではないと思うので、ぜひ機会があれば足を運んでみてほしいですし、日本のエンタテインメントでもあれくらいエネルギッシュなものがあってもいいのかなと思います。 

なので、これからは、GOGO DANCER革命をしたいと思っています!

 

いわゆる日本で言われる“GOGO DANCER”のイメージは、露出度の高い衣装をまとい、愛嬌を振りまいているダンスかなと思うんですが、イビサで体感した、空間演出として一緒にDJを盛り上げられる、エネルギッシュかつダンスの基礎を兼ね備えた、美しくカッコいい”GOGO DANCE”を新しいダンスのジャンルとして、職種として、ダンス業界に広めたいと思っています!

 

 

 

TDM
日本でもAsamiさんのショーをぜひ見に行きたいです。今日はありがとうございました!

 

interview by AKIKO
’17/11/29 UPDATE

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tokyodancemagazine

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