

激動のダンスシーンの中で、Hilty & Boschほど純粋でまっすぐな信念を貫き、世界に挑戦し続けているアーティストは少ない。結成20周年を迎えた今年、業界初のダンサー名義でのアルバムリリース。活動拠点をアメリカに移し、彼らの挑戦は止まらない。数々のタイミングに恵まれ、壁にぶつかりながらも、しっかりと掴んできた2人に今の心境を聞いた。20年以上、たった2人で歩み続けた道を、彼らは胸を高鳴らせながら、踊り続けていく。
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L:YOU, R : ZIN
Hilty & Bosch
世界を股にかけて活躍する日本のストリートダンスユニット。 そのパフォーマンスは世界各国で評価されており、YouTubeでの累計再生回数は2,500万回を超える。これまでに世界5大陸30カ国以上の土地で、ショーや舞台、ジャッジ、ワークショップ、TVや映画への出演を行った経歴を持つ。結成20周年を迎えた2017年、業界初のダンサー名義のアルバム「Step Out To The World」をリリース、同時に活動拠点をロサンゼルスに移し、ますます活動の幅を広げている。
■ずっと感じていた葛藤。「好きな音楽で踊りたい!」
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2014以来の登場ですね。舞台を経て、世界を飛び回り、2017年を迎えた今はどんな心持ちですか? |
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今年、僕らは結成20周年を迎えるので、この一年を節目として進化していこう!と思っています。ここ数年は、今年に向けていろいろと準備をしてきました。 |
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20年を振り返ってみて、いかがですか? |
YOU | :![]() |
いろいろありましたが、あっという間でしたね。 |
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今まで休止や解散の危機は? |
ZIN | : | それがないんですよね。言ったことも聞いたこともないです。 |
YOU | :![]() |
ダンスをやる前から一緒にいたからかもしれないですね。 |
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互いのポテンシャルや勢いのタイミングが狂わないのは素晴らしいですね。お二人のような熟年コンビになるコツはありますか? |
YOU | : | 何でしょうね・・・普段はあんまり喋らないですし、喋らなくても何も問題ないです。ただ、ショーを作るとなった時に多少切り替わりますね。どこをどっちが作るかは自然と決まるんですが、それも絶妙なバランスだと思います。 |
ZIN | :![]() |
はい、もう昔から自然に決まってますね。 |
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そんな阿吽の呼吸でショー作りができるのも、お二人の関係性が深い証拠だと思います。今回はなぜ楽曲制作をすることに? |
ZIN | :![]() |
音楽に関しては、舞台やライブ、ネット配信をやるようになってから、好きな音楽で踊りたくても、権利の問題で使えないこともあり、今までずっと葛藤を感じていました。また、単純に自分たちのためだけの音楽が作れることへの興味もありました。楽曲制作は、時代の流れとしても多くのダンサーが今興味を持っていることだと思います。 |
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具体的にはどんな作業から始まりましたか? |
ZIN | :![]() |
これも出会いなんですが、3年前に音楽関係の人たちと出会える機会があり、少しずつ今年に向けて話を進めてきました。ただ、いざ作ろうとなった段階で、僕らは楽曲制作に関しては譜面も読めないような素人なので、楽曲をプロデュースすることに戸惑うこともありました。最終的にはミュージシャンの方たちに僕らのフィーリングを感じてもらえることで進めることができました。
もし僕らだけで楽曲制作するとなったら、楽器は弾けないので、1から打ち込みを学んでやっていくと思うんですが、今回は、第一線で活動されているミュージシャンの方々によるバンド演奏が実現できたので、そこには絶大な信頼をおいて、一つのものを創り上げられた方がいいものができると思いました。
レコーディング現場に立ち会って、最初はなんと言えばいいかわからなかったので、僕らが踊りながら「ここでこんな動きにタタッとハマるような音が欲しいです」とダンスで伝えていきました。 |
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■“No borders.” ダンスには可能性がある。
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そんな中で、最初に出来上がった曲は? |
ZIN | :![]() |
“Step Out To The World”という曲です。アルバムを作る前から完成していまして、この曲を軸にいろいろと動き始めたので、アルバムでもメインとなる曲です。 アルバム全体のテーマは”No borders”。そこに共感してくれる人が集まってこのプロジェクトが動いていきました。
僕らが今まで大都市から貧困地域まで、たくさんの国に行かせてもらって感じたのは、ダンスには可能性があるということです。僕らは英語や現地語がほとんど話せませんが、踊った後には必ずその場にいるみんなと距離が縮まって、ハッピーな空間になるんです。これからも音楽とダンスを通していろんなボーダーを超えていきたいと強く感じました。
壮大なテーマなんですけど、経済的にも年齢的にも、性別や人種が違う国にたくさん行ってみて、そこは強く感じました。
そんな話を周囲にしていくうちに、そこに共感してくれる人が集まってくれて「じゃ、そんな曲を作ろうか!」とたくさんの人が動いてくれたのが始まりです。
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“Step Out To The World”の映像を見ても、ワールドワイドな感じが伝わってきますね!周囲の反響はいかがですか? |
ZIN | :![]() |
僕らが楽曲を作ると聞いて、多くの人はピンと来ないと思うんですか、この曲がまずそのイメージを作るものなので、気合を入れてムービーも作りました。世界各地で撮影したんですが、立地条件が様々だったので、体力的にかなり大変でした(笑)。僕らが現地でどんな風に受け入れられているのかを、飾らずそのまま生の反応を収めたかったので、基本一発撮りでした。このムービーの最後の部分は、本当に僕らもカメラマンも命がけで撮影した時のもので、あの空気、緊張感を伝えたいと思って入れました。
ダンサーがダンサー名義で単体の楽曲ではなく、アルバムを出すのは業界初の試みだと思います。強みとしては「あ、このダンスかっこいいな。使ってるこの曲も気になる!」と、ダンスから入ってもらえる点です。また、世界にも発信できます。アルバム全体の基準としては、まず僕らのテンションが上がって踊りやすい曲であることですね。 |
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では、ダンスのネタを作ってから音楽を決めていったんですか? |
YOU | :![]() |
いや、音楽が先です。普段聞いている好きな曲のここのフレーズが好き!というのをたくさん伝えて、アレンジして頂き、何度もやりとりしながら作ってもらいました。 |
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ダンス好きの人が聞いた時にも「お!ここのフレーズ好き!」と共感できる人が多いアルバムになっているということですね。 |
ZIN | :![]() |
少なくとも僕らのくすぐられてるポイントはたくさん詰まってます!ムービーを見て少しでもいいなと思ってもらえたらアルバムに入りやすいと思うので是非チェックして欲しいです。 |
■ミュージシャンとダンサーの対等な関係
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いちアーティスト同士の創作活動で、ぶつかったりすることもありましたか? |
YOU | :![]() |
気を使うことはありますけど、お互い我慢をせず、言いたいことを言い合えたと思います。 |
ZIN | :![]() |
僕ら名義のアルバムを作るということで、僕らが悪気はなくても製作過程でミュージシャンの方に失礼なことを言ったこともあったかもしれませんが、僕らをプロデューサーとして尊重しながら、リスペクトしてくださったんです。とてもありがたい環境でした。ずっと、ミュージシャンの方とダンサーが対等になる関係性を目指していた部分もあったので、嬉しかったです。 |
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仕上がったアルバムを聞いた時に、どんな印象でしたか? |
YOU | :![]() |
ダンサー目線では、コンテストやショー、 |
ZIN | :![]() |
今回、構想を入れたら制作期間は2年くらいでした。次回作は今年中にリリースを目指してすでに動き出していますのでぜひ楽しみにしていて頂きたいです。第1弾の今回は、僕ら目線で作りましたが、今後の第2弾以降はもっといろんなジャンルにも挑戦したいと思っています。 |
■活動拠点をアメリカ・ロサンゼルスに。
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まだまだワクワクすることがたくさんありますね! |
ZIN | :![]() |
はい、常にワクワクしていたいと思っています!今年はこのアルバムを引っさげてのライブが決まっていまして、日本、中国、台湾など、アジア数ヶ国に行く予定です。 |
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また、アーティストビザが取れたので、今年から拠点をロスに移すことになりまして、それも挑戦であり、ワクワクしてます。アメリカにいながらも日本にも還元していきたいと思っています。 |
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ロスを拠点にする一番の目的は何ですか? |
ZIN | :![]() |
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いいバランスとはどんな感覚でしょうか? |
ZIN | :![]() |
若い時は、勢いはあるんですけど、心は成熟していませんでした。でも、今なら行って、ただ「楽しかった」だけではなくて、自分たちの意思をしっかりと持ちつつ楽しめると感じています。ヨーロッパには結構呼ばれたんですが、アメリカに呼ばれるのは一つ壁を感じていました。それを超えて、ストリートダンス発祥の地に、日本から逆輸入されてきた僕らのフレーバーが入るのはとてもおもしろいですよね。日本とアメリカの架け橋になれたら嬉しいです。 |
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今のロスのダンスシーンはどんな感じですか? |
ZIN | :![]() |
エンターテイメントとしては盛り上がっていますがロックダンスに限るとまだまだ盛り上がっていないのが現状です。でも、日本ほどジャンルで考えている人がいないので、いろんな人がレッスンに受けに来てくれるのもロスならではだと思います。むしろロッカーじゃない人が多いですね。オールドスクールとしては定着していなくても、みんな要素として求めてると感じます。そして、アメリカは個性が人と違えば違うほど、リスペクトされる場所です。替えがいないということをすごく評価してくれるので、いちバックダンサーでは終わらないです。 |
YOU | :![]() |
レッスンを受ける衣装からすでにいろんな個性が出てますからね。自分らも何でもアリなんやな!と思えます(笑)。 |
■常にひとつのマインドを持って。
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お2人のようにたくさんのスタッフ、アーティストの方と出会って素敵なクリエイションを実現するために、意識したらいいことはありますか? |
ZIN | :![]() |
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YOU | :![]() |
ただ、常に一つのマインドを保つためには、自分に厳しくいないといけない。楽しいことだけでは続かないです。 |
ZIN | :![]() |
そう、新しいことをやるのは大変だし、世に出ていないだけで、きっと皆うまくいかないことの方がむちゃくちゃ多いと思います。僕らもそうです。それを経ても、諦めないことが大事だと思いますね。成功も失敗も、そういう経験が少しずつ自分らを成長させてくれます。 |
■僕らの行動を見ていてください。
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お2人の展望は? |
ZIN | :![]() |
ダンスのレベルを上げていくことはもちろん、アーティストの方と対等もしくはそれ以上の関係性が作れるようなりたいです。また、今年アジアツアーをやりますが、他の国々にもいって、世界中でライブして踊っていきたいです。僕らは2人なので、コストパフォーマンスはいいと思うので(笑)。 |
YOU | :![]() |
もちろん僕ら2人だけじゃなくていろんな人の力をもらっていますが、ステージでは基本的には2人で成立するものを目指してます。まだまだできることはあると思ってますのでよろしくお願いします! |
ZIN | :![]() |
はい、生きてる間にどこまでいけるのかが、目標ですね。まだまだやれるだろうと、変な自信だけはあります!(笑)。 |
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30代半ばを過ぎると、ダンサーの多くが終わり方や向き合い方を振り返る時期だと思うんですが、お2人の勢いはまだまだ止まりませんね! |
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おそらくそれは日本特有なもので、海外に行ってると、年齢は気にならないですね。 |
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何歳からダンスを始めたとしても何も気にされないし、みんなが対等になれます。 |
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確かに、まさに“No borders”ですね!では最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。 |
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10〜20代でダンスを始めた若い子たちからは、どうしたらいいのか迷っている声をよく聞きます。僕が思うのは、若い頃はとにかくまっすぐ頑張って、挑戦し続けて欲しいですし、僕らがその見本になりたいと思っています。挑戦して、やりきって、それでも壁にぶつかったら、その次は再びどんどん広げて欲しいです。今自分が好きだと思ってることは、意外にどんどん変わりながらも形になっていくと思います。僕も昔は「コレだ!」と思ったものをいろいろやってみました。すると、「あ、これもイケてるやん!」と気づくことが増え、自分を広げていきました。逆に、何かに迷うというとは、それだけでは限界がきているということ。その時は自分を狭めずに、いろんなことをやって欲しいです。 |
ZIN | :![]() |
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place at Red Bull Studios Tokyo Hall
’17/05/15 UPDATE
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