一度見たら誰もが目を奪われてしまう異色のビジュアルと存在感。ステージ後「あの坊主のダンサーの子いいよね」と話題に上がる。そんな唯一無二のダンサーBETTY。型にはまらず、日本人離れしたアーティスティックかつジャンルレスなスタイルで、メジャーシーンや舞台で活躍する今最も注目すべきフィメールダンサーだ。本インタビューでは、奇抜な見た目からは意外なほど、謙虚に真摯に語る姿が印象的だった彼女から、今年の4月に同年代の女性ダンサー人で行った自主公演『SPY 4U』についてや、影響を受けたダンサー、今後の目標などを聞いた。
・BETTY
どんなステージであっても圧倒的存在感を放つ坊主ダンサー。
高校生からダンスを始め、様々なスタイルに触れる。独特な世界観且つ、ジャンルレスなダンスを得意とし、公演への出演•自身の作品出展や振付などのダンス活動、アパレルモデル等マルチに活動中。
Instagram:@ betty00326
■大学を辞めた事でダンスに向き合う意識が変わった
TDM:ダンスを始めたきっかけを教えてください。
BETTY:小さい頃からテレビにダンスが出てくると、真似して身体を動かすのが好きだったので、小学校4年生くらいのときから、学校の近くのダンス教室で、なんとなくジャズを習っていました。でも、当時はバドミントンをやっていて、そっちの方がメインだったので、その時は長く続かなかったんです。その後、高校2年生の冬にバドミントン部の引退が近づくに連れて、他の事もしたいなと思い始めて、学校の先輩がavex artist academyに通っていてたので、私も軽いノリでダンスコースに入りました。当時、倖田來未さんの大ファンで、今となっては皆さん知っているバックダンサーの方々も大好きだったのでavexに惹かれたというのもあります。そこがダンスをちゃんとやりたいと思い始めたきっかけですね。
TDM:そこから真剣にダンスを始めたんですか?
BETTY:実はその時もまだバドミントンをやっていた事もあって、大学に入ってからはバイトも始めたりして、ダンスに真っすぐではなかったんです。でも、大学3年の時に、avexからいただいたダンスの仕事が大学の試験と重なって出来なかった事があって、めちゃめちゃ悔しくて「大学辞めよう!」と思ったんです。このまま大学を卒業して就職する事に対してビジョンが何も浮かばなくて、自由に出来ないのはつまらないと思って「辞めたい」と母親に言ったら、母も私がつまらなそうにしてたのを分かってたみたいで理解してくれました。でも、もう大学3年だったので「早く言ってよ」って言われましたけど(笑)。そこからは、大学を辞めたという事は、ダンスにちゃんと向き合っていかなければいけないと思い、意識が変わりました。
TDM:意識が変わって何をしましたか?
BETTY:ダンスで生きていくために、教えをしたいなと思って、教えをさせてくれる所を探しました。avexだけに通っててダンス界にあまり知ってる人がいなかったので「自分から行かないと!」と思って、ネットでインストラクターを募集しているスタジオを探して面接に行きました。祐天寺のスタジオだったのですが、まずレッスンの代講をやらせてもらえる事になって、代講2回やったら、たまたまその先生が辞める事になってしまって、ラッキーな事にその枠をそのままいただけちゃったんです。そこから初めての教えがスタートしました。
でも、すぐには十分な収入がなかったので、アルバイトで渋谷のDANCE WORKSでスタジオのスタッフを1年間やってたんですけど、逆にダンスと近いだけに仕事中もレッスン受けたくなっちゃって、人数数える振りしてスタジオの窓にへばりついてレッスンを見たりしてましたね(笑)。
TDM:今はどんなダンスのお仕事をされていますか?
BETTY:教えの仕事がとても好きなので、以前はレッスンを週に11本やっていたんですけど、さすがにキャパオーバーになってしまっていた時にコロナで状況が変わって、今は週9本教えています。他には、avexに通ってた頃から、ダンスの仕事を紹介してくれるavexプロワークスに入っていたので、メディアのお仕事やアーティストのバックダンサーなどは多少していましたが、教えをはじめて3年程経った23歳頃から、バックダンサーや舞台などダンスのお仕事をちょっとずついただけるようになって今に至ります。
TDM:教えの仕事が好きなんですね。
BETTY:好きです!毎週いろいろな出会いがあるのも楽しいのですが、ずっと受けてくれている生徒がどんどん進化するのでその成長を見れたり、人がどうなっていくのか見てるのは、自分も変われるし楽しいですね。生徒に注意した事は、注意したそばから先生が守らないわけにはいかないので守るし、毎週確実に自分も進化していると思います。周りを見ても、教えを大事にしてるダンサーは素敵な方が多いと思うんです。もちろん表に出て踊るのも大好きなんですけど、教えも大好きなので、いくら表に出る仕事が増えても教えは辞めません!
■影響を受けた3人のダンサー
TDM:影響を受けたダンサーはいますか?
BETTY:私が長くレッスンに通った3人の先生、KANAさん、MITTANさん、JuNGLEさんですね。avexでKANAさんのレッスンを毎週受けてたんですけど、KANAさんは存在やオーラにカリスマ性があってシンプルにカッコいいんですよね。人を引っ張っていく能力があって、生徒への愛も深くて、人間的にも本当に尊敬していています。私は、人の目を惹き付ける能力というのがダンサーに一番大事だと思っているので、そういうオーラや魅力を大事にしようと思わせてくれたのはKANAさんだと思います。実はBETTYという名前もKANAさんがBETTYちゃんのキャラクターが好きだった事に由来してるんです(笑)。
MITTANさんは、とにかく作品の作り方がすごくて、ナンバーはいつも50人とか人数が多いのに指示が的確で天才的。私もいつか大人数の作品を作る機会があった時は、MITTANさんみたいに指示出来たらいいなと憧れるし、「何を踊ってもカッコつけなきゃいけない」という精神はMITTANさんから教わりましたね。MITTANさんは、あんなにダンスがカッコいいのにとても温かい人なので、フレンドリーだけどやり過ぎないバランスで、生徒からすごく慕われていてお父さんみたい(笑)。そんなところも魅力的です。
JuNGLEさんは、本当には愛のある方。でも、レッスンは生徒と先生の関係性をハッキリさせていて、スタジオに入ってきた瞬間に「先生だ」っていうのが伝わるオーラを放っていてピリッとした空気感になるので、こちらもピリッとするんです。それが怖いという人もいるかもしれないですけど、私にはその凛とした空気がすごく気持ちいいんです。私も教えとしてしっかりやりたいのに遊びみたいになってしまうのは嫌なので、JuNGLEさんからは空気感を分けるという事を学びました。それに、ダンサーとして舞台に立ってる時も「JuNGLEさん」として舞台に立っている。そういう気持ちの強さがカッコよくて、私もそうでありたいと憧れますね。
3人ともダンサーとしてもカッコいいし、作る作品も素晴らしい。私はこの3人から作られたと勝手に思っています(笑)。
■ 自主公演『SPY 4U』について
TDM:今年の4月にCOTTON CLUBで行って好評を博した、女性ダンサー4人の公演『SPY 4U』について教えてください。
BETTY:始まりは、自主公演をやらないかというお話がまずAnriにきて、RikakoとNanaCoと私を誘ってくれました。私たち4人はsuzuyakaさん主催の公演でずっと一緒に踊ってきて、同世代という事もあって、前から「一緒に何かやりたいね」と言っていたんです。
だから内容も、『チャーリーズ・エンジェル』をオマージュしつつ、本当にいつもの立ち位置が反映されていて、私たちが4姉妹のスパイになってストーリー展開していくのですが、私は末っ子で〝ちょっとお調子者でまだスパイ見習いだけど、実は何万人に1人の逸材〟という裏設定がつけられていました(笑)。
2021年4月にCOTTON CLUBにて行われた『SPY 4 U』ビジュアル
TDM:終わってみて感想はどうですか?
BETTY:大変でしたけど「楽しかった!」という思いが一番です。自主公演を経験された方たちからは、何かしら揉めたりトラブルがあると聞いていたんですけど、私たちはケンカなどは一切なかったんです。少しピリつくくらいは何度かありましたけど(笑)4人がバランス良くやれていました。普段から仲がいいので、4人でやろうとなった時も不安はなかったし、一応役割分担は決めましたが、最終的には「私今空いてるからコレやるね」みたいな感じでチームワークよく進める事が出来ました。
1回のリハでM1つ終わらせようと決めて、本番の3カ月くらい前から週1でリハをしていたんですけど、私たち本当に喋っちゃうんですよ(笑)。時間通りに始められる事がほぼなくて、最後の方は「本当に今日は喋るのやめよう!今日は絶対時間通りにやろう!」と言い合うくらいで、リハ中もずっと笑っていて平和でしたね(笑)。
TDM:何か大変だった事はありましたか?
BETTY:本番直前に出来ない事が分かった演目があった事です。ダンスではなくマイクで話す内容で作っていた演目が、コロナのために舞台上では喋っちゃいけなくなったんです。でも、それが手違いで会場側に内容が伝わってなくて、出来ないと分かったのが本番3日前くらいで…。そこが6~7分あったので、空気感を変えずに埋めるために、夜中までzoomして皆ですんごい頭を振りしぼって考えて、急遽音源を直して新しいナンバー作りました。でも、そんなギリギリの状態でも、4人で踊るナンバーなら増えてもなんとかなると思えるくらい信頼し合えていましたね。
■ 音や質感を身体から出せるようなダンサーになっていきたい
TDM:今後の目標はありますか?
BETTY:作品を作る事が好きなので、理想は、今教えてる子たちが、もっと素敵になって、私が一番やりたい作品を作る事ですね。私はヒールをメインに教えているんですけど、ヒールを履くと表現方法がセクシーな感じに偏るというか…それはそれで好きなんですが、ずっとやりたいのは、足元が変わっても曲が変わっても、自分のスタイルを変えない作品を作りたいと思っています。例えば、「ヒールだからヒップホップっぽいものが出来ない」とか、縛りを感じながら振付けするのが好きじゃなくて、曲を聴いて純粋に感じた振りを作りたいんです。
私はヒップホップもやってきたし、ヒールも好きだし、裸足で踊るもの好きだし、「ジャンルは何?」と言われてもわからない。フリースタイルって何だろう?と思ってしまうので、それも言えなくて、自分が何か分からない。だからこそ、それを作品にしたいと思っているんです。曲の質感や世界観を表現する事が好きなので、すごく好きな曲に出会った時に、何にも縛られずに作品を作りたいって思ってます。
TDM:理想の作品のイメージは?
BETTY:いつも〝生まれたて〟〝誕生〟みたいなテーマでいつか作品を作りたいなと思っています。素敵な衣装の作品も好きなんですけど、究極は裸に近い格好で踊りたくて、足元はヒール、裸足、シューズが入り乱れている状態で振りを作りたい。裸に近いというと、エッチな感じと思われるかもしれませんが、そうではなくて、芸術的なものを感じるアートな作品を作れればいいなと思っています。
TDM:今後どんなダンサーになっていきたいですか?
BETTY:一番の理想はなんでもこなせる人だと思うので、軸はダンスではあるけど、ダンスだけじゃなくお芝居をしたり、表現の幅を広げていきたいと思っています。
私は振付をする時に、まず曲を聴いて「こういう感じの人」とイメージした人物の気持ちになりきって作る事が多いので、ステージで踊る時も、「この人物として踊ったらこういう質感のムーブになる」という感じで、同じムーブでも質感を変えれたらいいなと思っているんです。それって演じてる事だから、演技力をつけていかないと薄っぺらいなと思っちゃって…。今まではお芝居には興味なかったけど、『SPY 4 U』でアクティングもやったからかもしれませんが、そういう思いが少しずつ芽生えてきたので、演技を習ったりしたいですね。
いろいろなものに触れないと〝ジャンルレス〟って完璧には言えないと思うし、今はかなり未完成だと自覚しているので、さまざまな表現方法を学んで、型にはまらず、縛られず、その時その時で自分が反応したものや、音や質感を身体から出せるようなダンサーになっていきたいと思っています。
TDM:今後のBETTYさんならではの表現、楽しみにしています!今日はありがとうございました。
photo by AKIKO
interview & edit by Yuri Aoyagi
’21/6/27 UPDATE
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