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「Step Language = House Dance」特集 DJ KANGO×PInO×WaDoo

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2008年にHARLEM RECORDINGSよりリリースされたダンスDVD「VISUAUDIO Series : Step Language = House Dance」(以下、「Step Language」)。ROOTS、ALMA、Zero dbを中心に、当時東京ダンスシーンを彩っていたHOUSEダンサーが集結している映像作品が、12年経った今、HARLEMの公式YouTubeにて無料で全編公開されている。今回、本作品に出演しているKANGO、PInO、WaDooから、見所やHOUSEへの想いなど、ソーシャルディスタンスに十分配慮しながら語ってもらった。なお、本公開に合わせて、ダンスパフォーマンス映像中に使用されている楽曲がデジタル配信にてINSENSE MUSIC WORKS INC.よりリリースされているので、音源も合わせてご注目!


 

  • DJ KANGO20歳の時にダンスを通じて NY に行き本場の HIP HOP シーンに衝撃を受け活動をスタートした東京を拠点とする DJ である。HIP HOP を中心にダンスフロアから発信する彼独自のジャンルレスなスタイルが人気で,数々のパーティーでレジデント DJ をつとめる傍らゲスト DJ として招かれ多方面から高い支持を得る。現在クラブ DJ としての地位を確立し,その存在感を不動のものとしながら日本のCLUB シーンに多大な影響を与え続けている。CLUB の現場にとどまらずファッションブランドのパーティーや雑誌,企業のインターナル,ロンチ,レセプション等にも参加し活躍中。AbemaTV AbemaMix Hip Hop Channel (毎週土曜日)のレギュラーDJ。また日本のハウスダンスのオリジネーターROOTSのメンバーでもある。
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  • PInO [ ALMA / PINOCCHIO]80年代後半からブラックカルチャーに惹かれ、ニュージャックスイングを通じてストリートダンスに目覚める。1992年頃から「PINOCCHIO」を結成し、国内のあらゆるコンテストにて優勝をはじめ数々の入賞を果たす。現在は日本を代表するハウスダンスチーム「 ALMA」のメンバーとして日本国内だけでなく海外も含めゲストショーやワークショップ等で呼ばれ活躍している。2008年にフランスで開催されているストリートダンスバトルの世界大会「JUST DEBOUT」にて優勝を果たし、事実上世界タイトルを獲得。その同じ年に、世界的に有名なストリートダンス最高峰のコンテスト「JAPAN DANCE DELIGHT」でも優勝を果たす。2012年にはフランスで開催されているCIRCLE UNDER GROUNDというダンスバトルにおいて優勝。続いて同じく2016年に開催されたCIRCLE UNDER GROUND、そして2017年の台湾でのOCEAN BATTLE SESSIONで優勝と世界的なバトルやコンテストでも強さを見せている。HOUSEというジャンルでありながらも、そのスタイルの枠にとらわれない常にオリジナルであり続けるフリースタイルでの表現は現在も世界中のダンサーのみならず、様々なジャンルのアーティスト達にも絶大な支持を得ている。 現在もメジャーシーンなどではアーティストの振り付けや演出、またサポートダンサー等もしており、アーティスト達からの信頼も高い。アンダーグランドシーンでは、世界各地で様々なショーを展開しており、年間100本以上の作品をクリエイトしている日本で一番稼働しているダンサーとしても定評がある。instagram
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  • WaDoo1991年〜2014年、ダンサーとして活動。ダンスと音楽を軸に様々なプロジェクトに携わりその活動は多岐にわたる。2008年にHARLEM RECORDINGSよりリリースされたダンスDVD「Step Language = House Dance」ではディレクターも務めた

 

■HOUSEを選んだ理由。

 

TDM :まず、皆さんがHOUSEダンスを選んだ理由から教えてください。

KANGO:もともとHIP HOPを踊っていて、1980年代後半のHIP HOPはランニングマンやニュージャックスウィングとかステップ系が多かったんだけど、1991年にSLAM-Gの宮地君とTAKE-GがKOJI君とN.Y.から帰ってきたら、見た事のないステップを踏んでいて「これは俺も見に行かないとダメだ」と思い、翌年にN.Y.に行った。すると、N.Y.のHip Hopダンスのスタイルが、ステップ中心のスタイルって感じじゃなくなってきていて「あれ?俺が好きだったステップ中心じゃないな」と思ったんだよね。でもそこで、後に師匠となるカリーフやブードゥーレイ、イージョー、セイクーなどのステップを見て、「うわ!これだ!」って完全にくらっちゃったんだよね。気づいたら俺はHOUSEをやってたから、始まりはHOUSEの音楽より先に、HOUSEのスタイルにハマった感じです。

 

SLAM-Gテレビ番組の人気コーナー「ダンス甲子園」で活躍し全国的に注目されたダンスチーム

 

PInO:俺もニュージャックスウィングから始めて、HIP HOPを踊っていて1992年くらいのMAIN STREETでKOJIさんとHyROSSIさんがHOUSEを踊ってるのを見て、「何だこのダンスは!?」と衝撃を受けました。それから地元・名古屋に帰ったら、ちょうどN.Y.から帰ってきた先輩にも同じようなダンスを踊っていて、「これなんですか?」「最近流行ってるHOUSEっていうダンスだよ」と聞いてHOUSEという名前を知りました。それからすぐにハマったわけではなく、HIP HOPもやりながら、探っている感じでした。

 

しばらくすると、日本でもHIP HOPもHOUSEもどっちもやるチームが出始めてきて、俺のPINOCCHIOってチームも両方やってたんだけど、その内にHOUSEの方が自分たちにハマってきた事に気づいてHOUSEをガッツリやるようになりました。だから僕もKANGOさんと同じで、音楽からというわけではなくダンスのスタイルがハマった感じです。

 

WaDoo:僕はNADA先輩の弟子なので、僕がHOUSEを始めた理由はROOTSの先輩たちみたいになりたかったからです。ずっとROOTSの皆さんを見てきましたが、それまでHIP HOPを踊っていた皆さんがN.Y.に行かれて、帰ってきたらHOUSEにスタイルチェンジしていて、当時は「え?」って肩透かし感みたいなものを感じて、僕の中にはちょっと反発心がありました(笑)。

 

KANGO:あはは、反発あったのなんか覚えてるよ(笑)。いいね、いいね(笑)。

 

 

WaDoo:本当はやってみたかったのに、その気持ちを抑えて、「いや、俺はHIP HOPをやるぞ!」と思っていました(笑)。でも、それが覆る日が来ました。おそらく日本のHOUSEダンスシーンの元旦は1993年のTwinStarでやったNewYorkNightだと思っていて、カリーフとピーターポールのショーと、ROOTSが8人で初めてHOUSEでショーをやったあの日から日本のHOUSEダンスシーンは始まったと僕は思っています。俺はTwinStarに行く前までダウンを刻んでいたのに、帰りはステップを踏んでいたわけです(笑)。分かりやすい奴でしたね~。あの日を境にガラッと変わりました。

 

PInO:ROOTSが結成されてからHOUSEダンスシーンが一気に広まったもんね。

 

WaDoo:そうだね。あの日に一つのシーンが確立する、その始まりを見たね。

 

TDM : 改めてHOUSEダンスの魅力とは?

 

KANGO:単純に、音を聞いた時に、踊りたくなるんだよね。自然とリズムが体に入ってきて自身の感情が音を通じて開放される感じ。

 

PInO:踊りたくなる…僕も、それに尽きますね。HOUSEは踊りから始めたけど、今では音楽の魅力にもハマってます。

 

WaDoo:HOUSEミュージックは音楽的には他のジャンルに比べると、流行り廃りの振り幅がなくて割と普遍的だと思います。そういう性質も長く続けてこられた理由の一つかもしれません。

 

PInO:過去の名曲は、今でもずっと名曲だもんね。

 

あと、HOUSEの魅力は、HOUSEの〝ダンスイベント〟じゃなくて〝パーティー〟に行くと、すっごく雰囲気があったかい事。オラついてる奴もいないし(笑)。

 

WaDoo:うんうん、そうだね。

 

KANGO:確かにね。それこそ俺が90年代のN.Y.のクラブに行った時、HIP HOPのパーティーは尖ってる人多かったし、気を引き締めていかないと危ないと言われていたけど、HOUSEのパーティーはそういう雰囲気が全くないもんね。純粋にダンスしに来てる感じで、ピースな感じ。

 

WaDoo:N.Y.の人たちもHIP HOPのパーティーがバイオレンスな感じになってきたから、それを避けるようにパラダイスガレージとかに流れて行ったという話をしていたのを聞いた事があります。

 

パラダイスガレージ(Paradise Garage):1977~1987年、HOUSEミュージック発祥と呼ばれる伝説のクラブ。DJラリー・レヴァンがレジデントを務め、多くのDJやクラブに影響を与えた。

 

■オンラインの可能性

 

TDM:2020年自粛期間を経て変わった事はありましたか?

 

 

KANGO:オンラインが新しい表現になっていくように感じたね。海外の大御所DJ達がインスタライブでガンガン配信してたし、D-NICEっていうラッパー兼DJが、アメリカがロックダウンしたばかりの時に、皆に元気を与えるために24時間ライブ配信してすごく話題になった。何万人という人が見て賞賛されたね。オンライン上のフェス状態になって、その行動が素晴らしいなって思って、俺もやろうってなって、家からライブ配信してみたんだよね。コメントが来るからコメントに反応したりしてそこでコミュニケーションが取れるし、他の人もそのコメントにリアクションして、「ここが一つの場所になってるんだな。これは新しいぞ」と思った。

 

配信時はTwitchっていうアプリを使ってるんだけど、クラブとは違う新しいコミュニケーションの場として、現場では出来ない発信の形として、今後もいろいろ出来そうな気がする。感覚的には自宅に人を呼んで遊んでる感じかな。具体的なビジョンは見えないんだけれど可能性は感じたので、これからもオンラインはやっていこうかなと思ってる。

 

もちろん、現場が好きだから日常が戻ったら現場中心で生きてはいくけど、違う形で新しい発信があってもいいと思った。オンラインだと現場とは違う音楽の表現が出来るんだよね。現場だと、場所によっては、例えば80%の観客に合わせてプレイをしたり、なるべく全体の雰囲気を壊さないように意識するからあまり個性だして色々な事は出来ないんだけど、自宅からの配信だと、そのバランスを気にせずに自分の音楽性を自由に表現出来るから「この人ってこういう音楽も好きなんだ」「こういう事もやるんだね」って思ってもらえる。口で説明するよりももっと自然に個性が出せる。

 

TDM:KANGOさんのライブ配信を拝見して、マイクでたまにしゃべってるのを聞けるのもいいなと思いました。

 

KANGO:そうそう、クラブでのDJ中はしゃべらないからね。「酒、取ってくるわ」とかね(笑)。

 

PInO:ダンスの面でも、今回の件でオンラインという新しい場所が生まれました。今までいろんな人が考えついてた事だと思うけど、ダンスこそ現場に行って人に会うのが大事って言われてたから、オンラインでのレッスンではダンスがちゃんと伝わらないんじゃないかと自分は避けてました。でも、今回やむを得ない状況になり、自分もやってみた結果、「意外といいかも」っていう感覚になりました。

 

オンラインでのDJ配信は、一方的にプレイして、それを見てる人のコメントにたまに反応する感じで成り立つので向いてると思うんですが、オンラインでのダンス配信は、レッスンの場合相手やアプリにもよりますが一方的に踊ってるだけだと、相手が出来てるかどうかのチェックは出来ないんです。でも、「もう一回お願いします!」「カウントでお願いします!」とかコメントは普通に入ってきます。それに全部反応してると1時間でヘトヘトになりました(笑)。ZOOMで相手が見える状態でやったとしても、音はズレるし、映像は乱れるので、こっちが先生として見てあげるという意味では良くないと感じました。

 

もし、先生が踊ってるのを見てるだけでいいならどんどんいろんな人が配信してもいいと思うし、逆にいろんな可能性が見えてくると思います。例えば、「23時から23時5分まで、チームでショー配信します」「今夜5分だけソロショーやります」とか、その5分を見たいって思う人たちが見に来るんだろうし、その5分を短いと思う人もいるかもしれないけど、コメントにも答えるし、そこに価値を見出してくれる人もいたら、投げ銭システムを受け付けてもいいかもしれません。

 

あとは、単純にオンラインは北海道の人が九州の人のレッスンを受けられるのもオンラインのいい所だと思います。

 

オンラインによっていろんな人のタレント性が出てきてると思うので、上手くやれば誰でもタレントになれる時代。ダンサーでもしゃべれる人はしゃべるし、いろんな事が出来る人たちが自分を活かし始めてますね。でも、昔のWaDooみたいに「俺にはオンラインは合わない。やらねぇ。」って反発してる人たちもいると思うけど(笑)。

 

WaDoo:最初はそっちが多いんだろうなって思ったんだけど、結構皆やってて驚いてる。

 

PInO:そう、俺も思ってた。「1人でしゃべり続けるの、きつくない?」って思ったし。で実際にやってみたら新しい可能性を感じられたんだよね。

 

ただ、「じゃ、お疲れ様でした!」って配信を終わった瞬間の虚しさ(笑)。「あ、1人だったんだ」って孤独感は否めないけど(笑)。

全員:(笑)。

 

WaDoo:でも、ダンスは、サークルを作る空間で発展してきたものだと思っているので、それが無くなってしまうのは寂しいな。もちろん、オンラインの良さもわかる。いつかは以前のような生活に戻る日が絶対来るわけで、そうなると当然、たくさんの人がライブをやり始めると思うんだけど、オンラインの良さもいい形で残るといいよね。現場とリモートが両立して、盛り上がっていけるといいですよね。

 

TDM : 今回のコロナ禍で、ライフスタイルの変化はありましたか?

 

KANGO:より自分のこれからを考える時間が増えたし、ひたすら音楽と向き合ってたので、毎日DJ配信を聞いて、沢山のDJ Playが聞けた事は、本当に楽しく色々と学ぶ事ができて、感謝です。変化というと、生きる事生き方への意識が、今まで以上に自分らしく自分のペースを大切にしていこうって思うようになりました。

 

PInO:俺は、自分でMIX CDを作って、それを聞きながら散歩するのがめちゃくちゃ気持ち良かったです。そういうゆとりのある時間が増えました。コロナ前までは深夜練、深夜練、本番、本番、深夜練、本番…みたいな毎日で、それを見直す機会になりましたね。毎日現場にいるのも楽しいんだけど、無理してたなって思ったから、もう以前のような詰まったスケジュールには戻れなくなってしまいました。今後は何でもかんでもOKではなく、少しずつ見極めてお引き受けしようかなと思います(笑)。

 

WaDoo:俺も自粛期間中は暇してました。そんなステイホーム中にDJ ICHIRO君から電話がかかってきて「昔、HARLEMで一緒に作ったDVD覚えてる?それの配信を始めようかという話があるから、出演ダンサーの方々に確認してもらえない?」という連絡が来まして…ってこの流れで本題に入るの、よくない?(笑)

 

全員:(笑)。

 

WaDoo:それで、お1人ずつ電話させてもらって、普段なら電話に出ないくらい忙しい人たちだけど、ステイホーム中はすぐに電話が繋がりまして(笑)、その日は久しぶりに皆さんと話せて楽しかったですね。

 

■純粋に憧れの先輩と仲間と仕事がしたかった

PInO:今回の話を聞いて、久しぶりに「Step=Language」を見返したら、すごくいい事やってましたね。自粛期間が無ければ振り返らなかったかもしれないし、これからもどんどん新作ばかりが注目されて、古くて良いものは流されていったかもしれないけど、探せばもっと出てきそうだなと思いました。

 

「Step=Language」を作った時も結構大変だったし、今またこうしてこの作品を発信出来て、掘り起こしてもらえて、すごく嬉しいです。この12年で、このDVDを全く知らない世代もいるわけだから、是非いろんな世代に見てもらいたいですね。

 

TDM:当時は当たり前に見ていた顔ぶれでしたが、今はなかなか会う事が難しいメンバーもいたりするので、シーンの移り変わりや、あの時らしい熱量やステップの傾向から時代を感じましたね。でも、変わらない良さがちゃんとありましたね。

 

WaDoo:僕も見返したんですが、中学校の卒業アルバムを見返した時のような懐かしさと恥ずかしさを感じましたね(笑)。プレイベートな事で言うと、「Step=Language」を出した年に娘が生まれて、今12歳なんです。だから、そのくらい時が経ったものなんだなぁと感慨深いです。

 

PInO:確かに俺も昔のダンスは気恥ずかしい。

 

WaDoo: 当時、俺は勢いだけで出来ない事でも何でもやる癖があったので、DVDなんて作った事ないのに「やっちゃえやっちゃえ!」とINSENSEとHARLEMの大人の皆さんにそそのかされまして…(笑)。でも、今思えば、勢いも大事だったし、あれはやってよかったなと思います。あの時は純粋に憧れの先輩や仲間たちと仕事がしたかった。ただそれだけだったような気がしています。

 

PInO:俺にとっても嬉しい企画だった。ROOTSに憧れてる俺たち同世代がROOTSと一緒にコラボ出来たからね。

 

(L→R)WaDoo / NADA / YAN-C / KOJI / HyROSSI / KANGO / HIRO / PInO

 

■ダンスから離れて気づいたダンスの魅力

 

 

TDM:KANGOさんは現在DJとしてご活躍ですが、撮影当時はダンサーとDJ両方でバランスよく活動していましたよね。そこからDJへの移行にはどんな経緯があったんでしょうか。

 

 

 

KANGO:今思うとバランスは取れてなくて、ダンスレッスンはせず、毎週レギュラーイベントでDJをしていたので、どっちかというとDJの方に集中してたかもしれない。ただ、両立するスタンスになって良かったと思うのは、それまでただのダンス馬鹿で、踊ってる自分を「どうだ!」って見せてたし、そこに周りからのリスペクトを求めてたし、その位置を常に保っていなきゃという葛藤があったから、正直ダンスを楽しめていない瞬間もあったと思う。そこはダンスから離れてみて初めて気づいた。

 

ダンスから離れたおかげで、自分が何でダンスを始めたのか、何故ダンスが好きなのかを冷静に客観的に知る事が出来て、肩の力が少し抜けて、ちょうどいいと思う時期があったんだよね。ダンスだけをやってた時は、師匠であるカリーフとか、彼らの影響をすべて受けてたのが、離れた事によって自分のスタイルがもっと自由に解放された感じ。

 

少し脱線すると、俺らの世代ってYoutubeやInstaglamなどなく、Yo MTV Rapなどアメリカの音楽番組のビデオを入手してPVなどを見て数少ない情報からカリーフみたいなすごい存在を見つけていく作業をしている人が多くて、俺とNADAでN.Y.のクラブに見に行った時、1度や2度見てるだけだとわからないから、クラブで見た動きを頭で覚えて朝ホテルに戻って確認し合いながら気になった「つま先でタッチして、かかとを前にして…」ってステップを紙に書いてたんだよね。あとで、それを見ながらNADAと「あれ?これであってる?もう少し腰がこうなってたっけ?」とか言いながらひたすら練習してた時代。まず、何からやっていいかわからないから、オリジナルをコピーするしかなくて、そのやり方で10年以上ダンスを追い続けてきたから、気づいた時にはそこから抜けられない自分がいたんだよね。「これはあの人たちはやってないからナシだな」みたいな勝手なルールを自分に植え付けちゃって、ダンスが少し楽しくなくなった時期があった。

 

だから、話を戻すと、ダンスだけの世界から離れてDJと両立した時に、そういう細かい事がどうでもよくなった。基本を忘れず大切にして、後は、自分らしく感じたままに動いて、自分が動きたいと思う動きやアートを意識してと音楽のタイミングやリズムを自分なりに合わせて表現していく、その原点の気持ちに戻れたんだよね。

 

でも、両立して良くなかった事もあって、これは駄目な例ですが、練習量が減るから、体力が減って思い描いた動きが出来なくなった事。なのに「ダンスの練習もしたくないし、頑張りたくない!でもダンスは好き!」っていう変なプライドもあったね (笑)。

 

TDM:師匠と仰ぐカリーフの魅力は?

 

KANGO:自分の気持ち、パッションが音楽を通して動いた時に凄く出るんですよね。感情とダンスの融合が素晴らしく、どんな気持ちで踊ってるのか見てすぐにわかる。とにかく情熱とエネルギーが素晴らしい。あとは、ピュアな人間性、子供な心を持ってる所ですね。

 

■世代関係なく見て、何かを感じ取って欲しい

 

TDM:このDVDを知らない世代へ、ここを見て欲しいというポイントはありますか?

 

WaDoo:俺が面白かったのはラストのサークルのシーン。HARLEMのまさにここのフロアで30~40人で撮影したんだけど、本編の最後にプラスαで付けたシーンが今になると一番面白かった。当時、毎週TUGっていうHOUSEのパーティーをやってて、そこに集まってた若手ダンサーにも出てもらったんだけど、今では全然会わなくなったダンサーもたくさん出てて、みんな元気にしてるかなとか思ったりね。特にHyROSSI、KANGO両先輩へのくだりは観てて熱くなりましたね。やっぱカッコいいなと。

 

あと、そのシーンは撮影時の現場の音や掛け声もあえて収録したので、そのライブ感も楽しめます。音源はすべてcommon ground recordingsというHOUSEのレーベルの音源で現在デジタル配信されています。とてもかっこいいので、是非たくさんの人に見て聴いて楽しんで頂きたいです!

 

 

PInO:若い子は、俺たちとはダンスをやってる感覚が違う感じがするから、アレを見て好き嫌いも含めてそのまま感じ取ってもらえたらいいかなと思います。

 

TDM:どういう点で感覚の違いを感じますか?

 

 

PInO:もともと俺たちはアンダーグラウンドのカッコ良さ、不良や野蛮な方向にあるダンスの魅力から入ったけど、今の子達がダンスに求めてるのはメジャーになるため、ダンスを通して有名になるため、世界に行くためのツールにしている人が多い。マニアックなコミュニティで知る人ぞ知るカッコよさを求めてる人はほとんどいない。ダンスをスタートした時の感覚が違うと思います。そこまで感覚の違う人たちが作ったDVDなので、どう捉えられるのか、逆に聞いてみたいです。

 

あと、感覚の違いとしては、先輩との関係性で感じる事があります。自分達は憧れの先輩に追いつきたくて、ダンスが上手くなりたくて、いろいろ学びたくて、先輩と時間を共有してきたし、実際、そのおかげでたくさん成長出来ました。今の若い子たちの中には、そういう事が出来る後輩と、一緒に過ごさなくてもいいやっていう後輩がいると思うんですが、一緒に過ごさないのはもったいないなと思います。

 

いろんなマインドや発想を共有出来ると、もっとカルチャーを知れるし、自分のダンスにもプラスになるはず。先人たちから学ぶ事はめちゃくちゃ大事だから、それによってもっとダンスを深めてもらえたら、よりダンスが楽しくなると思います。俺は、先輩に誘われたくて必死だったし、誘われてないのにしれっと付いて行ってましたから(笑)。

 

もちろん今の若い子たちが目指している事も、ダンスが一般的になっている証拠だし、ダンス界としてはすごく良い事で必要な事だと思う。だから、バランス的にはどっちかにならずに両方あっていいと思う。

 

「Step Language」に関しては、ただそういう歴史があったし、それを見て俺たちはテンション上がるので、若い子にも響いてくれたら嬉しいな。

 

WaDoo:あ、でも全部で1時間越えなので、お暇な時に見て頂ければ嬉しいです(笑)。HOUSEシーンの歴史の1ページを切り取った作品になっていますので、是非ご覧ください!

 

TDM:今日はありがとうございました!

 

interview by AKIKO
edit by imu
location at HARLEM
’20/07/25  UPDATE

 

 

  • 【全編公開!VISUAUDIO Series: Step Language = House Dance】

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