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IG – Part 2 –

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アメリカのアーティストビザを取得し、日本とアメリカで活躍するIG。インタビュー第2弾の今回は、Lady Gagaのオーディションに合格するまでの道のりを聞く事が出来た。〝チャンスはいつ自分に訪れるのか分からない。夢は諦めなければ叶う!〟という理想論ではなく、自分の経験や能力をとことん信じる姿勢がどこか現実的で実用的な気がした。今夢中になっている事がある方に是非読んで頂きたい1人のダンサーの甘酸っぱいオーディション生活の物語。


 

  • IGIG (アイジ) 本名:田中愛二郎 Aijiro Tanaka
    Lady Gagaの『Stupid Love』MV ダンサーとして出演。加藤ミリヤ、ゆず、ちゃんみなのツアーダンサー、椎名林檎×宇多田ヒカル『浪漫と算盤』MV出演、KIREIMO CM 2020 渡辺直美×千鳥ダンス振付、テレビ朝日 キッズダンスバラエティ ファンファンキティ!の『ダ・ダ・ダ・ダンス』振付等、他にも演出などを手掛け、幅広い範囲で精力的に活動。またポールダンス日本大会初代男性チャンピオンであり、現在はアメリカでアーティストビザを取得し、ロサンゼルスにあるClear Talent Groupに所属。日本と米国を拠点とし、アメリカでは、ポールダンススタジオ Choreography House インストラクター、X-POLE US オフィシャルダンサーとして、Rupaul Drag Con 2019 LA & NYに日本人初出演。
    instagram @ig.tokyo

    Twitter @ig_aijirotanaka
    YouTtube Ajiro Tanaka

 


 

■What should I do?

 

TDM:アメリカに戻ってからはどれくらいオーディションを受けられましたか?

 

IG:2019年の11月にLAに行ったのですが、、そもそも仕事をするのにソーシャル・セキュリティー・ナンバーが必要で、発行するまでに1ヶ月かかることを知りました。なので、初めの1ヶ月は、オーディションも受けずレッスンに通う日々からのスタートでした。

 

例えエージェントに所属していても全てのオーディションを受けられる訳ではなく、エージェントが「この子はこの仕事に向いているだろうな」って思ってもらえたら仕事を回してもらえるという状況です。“アメリカ=オーディションがいっぱいある”という考え方はちょっと違うのかなって思います。現実を目の当たりにしましたね。最初はなかなかオーディション情報さえもらえなかったです。

 

TDM:エージェントは仕事が向いてる向いてないの判断をどの様にするのでしょうか?

 

IG:今はSNSがすごく大事でinstagramを見られてますね。オーディション時にどんな踊りが踊れるか、というのは分かっているので、自分のスペシャリティの資料をエージェントに送る際、アー写(宣材写真)を、1つはバストアップのストリートスタイル。イメージはちょっとヘルシーで、ユニクロのCMに出てきそうな人をイメージしていただければと思います。海外の方のアー写を想像していただけると分かるんですけど、日光の下で爽やかに笑っているような感じです。

 

もう1つはアーティスティックな自分らしさを表現するスタイルのものを送ります。男性だと肌を見せる感じが2枚目の全身写真。ダーティーな、自分自身のキャラクターも活かして、200枚ぐらい撮影して、3〜4日ぐらいかけてエージェントが協議をしてくれて、何百枚もある中から選んでくれるんです。

 

LA Castingという、役者やモデルが登録をしているエージェントの総合サイトがあって、そこもアー写が命と言われました。それをダイレクトブッキングがあるかもしれないし、「オーディションがあるから来ませんか?」って言っていただけるかもしれないですからね。自分の所属はダンスのエージェント部門なので、ダンス動画をアップしてる人もいます。エージェントから商品として見い出してもらえれば、オーディションの情報をもらえるって感じです。

 

TDM:日本人の方もいらっしゃるんですか?

 

IG:Clear Talent Groupには日本人は2人くらいしかいないと思います。

 

TDM:まずは仕事をするための準備に結構時間がかかりそうですね。

 

IG:2ヶ月はソーシャル・セキュリティー・ナンバーの登録と、エージェントに仕事をいただくための準備に追われていたので「何のために来たんだろう?」って思い始めて、自分でダイレクトに案件も探すようになりました。何個かオーディションも受けに行きました。ダンススタジオとかに張り紙のオーディション情報などがあったのでオーディションを受けていました。

 

アーティストのバックダンサーがしたいけど、何にもない状況であれば、自分で探すしかないので、オーディションを一通り探して受けに行きました。ミュージカルのオーディションも受けましたね。

 

TDM:ダンススタジオ以外にダンサーの仕事を募集している広告媒体などはありますか?

 

IG:やっぱりエージェントを通すのが1番多いですね。振付師が直々にオーディションを募集していたり、エージェント所属の子から、オーディション内容を教えてもらったりしていました。

 

 

■An Audition

 

TDM:ミュージカルのオーディションの時のエピソードを聞かせてください。

IG: 「Wicked」のオーディションを受けに行きました。ダンサーの先輩に聞いて紹介してもらって、ロスからサンタモニカ付近のスタジオまで行きました。到着した時は「来る場所間違えちゃったかな〜?」みたいな感じでしたね。

 

TDM:人数はどれくらいいましたか?

 

IG:100〜200人くらいでしょうか。ロサンゼルス公演のアンサンブルは、ダンスもするし、歌も歌わなくてはいけないので、「楽譜を持ってきて下さい。」って言われました(笑)。楽譜もプリントアウトしなきゃいけないけどセブイレブンでも出来ないし、ネットで楽譜を調べたけど全然歌えない。日本語の歌を歌ってもしょうがないし、自分は何が歌えるんだろう?「あっ!Lady GagaのPaparazziだったら歌える!」と思って、無料の楽譜を何とか見つけて、友達にプリントアウト出来る場所を教えてもらいました。

 

TDM:オーディションはどういったジャンルを踊ったんですか?

 

IG:その時はコンテンポラリーみたいな感じでしたね。

 

TDM:振付はありましたか?

 

IG:8×8ぐらいの振付はありました。すごく素敵な振付でした。まず立って、上品に手でアーチに描いたと思ったら、壊れたお人形が奇妙に踊り出すみたいに、そこからテクニックも入ってきて必死でした。

 

TDM:ダンス審査の段階でどれくらいの人数が落とされましたか?

 

IG:私が受けた時は、1グループ30人くらいで踊って、その後5人ずつぐらいで踊らされて1人だけ受かってましたね。その後はどう進んでいったかは分からないですけど、これが第1回目のオーディションでした。その後、3ヶ月の間に、自分自身で探したオーディションは3つと、エージェントから紹介していただいたのが3つでした。その内の1つがLady Gagaさんとのお仕事でした。

 

TDM:印象に残っているオーディションはありますか?

 

IG:その6つのオーディション全て鮮明に覚えてます。

 

TDM:言語や、振付を覚える事、求めている事を理解したり等、苦労した事はありますか?

 

IG

言語に関しては、大学で国際コミュニケーション学科に行ったんですけど、英語の読み書きはある程度理解できるのですが、スピーキングとヒアリングがまだまだで。

 

以前、学生ビザを取って、アメリカに行った事もあって、ポールスタジオのグループワークとか、そういうネイティブだけの中に入る機会があったんです。インストラクターの体験をさせてもらえる機会もあって、ある程度は分かるんですけど、そこに住んで、時を共にしていないと分からない事っていっぱいあるじゃないですか。私達が沖縄に行っても沖縄の人達の言ってる事の全てを理解出来ないのと同じで、私は途中で諦めました。ここまで自分なりにベストを尽くしてきたけど無防備の時に英語がやってくる経験を沢山する事で、ある時諦めたんです。そこを気にしすぎると時間が経っちゃうんですよ。とりあえず100パーセント意思疎通するのは難しいんです。そこからは語学に関しては引目を感じないで、卑下しない事にしました。「だから何?」って感じでいましたね。だから「この人何話してるんだろうな〜?」って第6感で透視してました。

 

■Hello, Lady Gaga

 

 

 

TDM:Lady Gagaさんのオーディションに受かるまでのお話を是非聞かせてください。

IG:様々なオーディションで落とされます。

腰痛めます。

年末は針灸に行きます。

鬱になって観光に行きます。

母親に電話します。

Richyのビデオプロジェクトがあります。

もちろん参加したいから行きます。

200人ぐらいいます。

5人ずつ踊らされます。

1次オーディションに受かります。

2次通ります。

1週間待っても連絡が来ない。

落ちたと思います。

電話かかって来て「明日現場に来れますか?」って言われて、行ったらLady Gagaのビデオプロジェクトでした。

ピンクグループだって言われます。

振り入れされます。

本人が次の日来ます。

気付いたらLady Gagaさんとリハーサルしてます。

2日後、砂漠行くって言われます。

気付いたらLady Gagaさんと一緒に走ってる。

帰って来たら皆におめでとうって言ってもらえる。

 

この景色伝わりますか?

 

TDM:伝わってますよ!(笑)

 

IG:箇条書きの様に伝えてしまったんですけど、これは本当に箇条書のようなペースで進んでいったので、自分でも処理しきれなかったですね。

 

 

 

 

■Don’t be afraid

 

TDM:夢を諦めている人、夢の途中で挫折してしまった人たちに何かメッセージを送るとしたら?

 

 

IG:その件に関しては私に起きた事しか話せないんですけど、今出て来た話って2パターンあるんですよね。1回自分でその夢に向かってアクションを起こして諦めた人、アクションを起こさないまま諦めている人。私の場合はアクションを起こして、運よくLady Gagaさんのオーディションに受かる事が出来て、世の中の人がおめでとうって言ってくれたけど、その前は全部落ちました。

 

ただその経験が出来た事が私にとっては幸せだったんです。もちろん凹んだんですけど、出来る事はなんでもやりたいと思っていて。新しい景色が見たいと思ったから、オーディション結果が駄目でも、番号をつけて、自分のダンスを知らない人に見てもらいたかったから、行った訳で。そこで駄目ならただ諦めれば良いと思うんですよ。

 

私は本当に諦めかけました。諦めかけて3ヶ月たってしまって、腰を痛めながらベットで安静にしなきゃいけない時期もあって、でも、腰を痛めながら行ったLady Gagaさんのオーディションは受かったんです。

 

何が起こるかわからないですよね。超気合い入れて行ったオーディションは落ちて、「もう駄目じゃん!」って思ったオーディションは受かったり、諦めたその先に、諦めなかったその先に何か起こったりするなって思います。まだまだ挑戦したいんで、悟ったような事は決して言いたくないんですけど、一回やって駄目だと思って諦めた人に関してそれが駄目とか思わないし、むしろ優勝のトロフィーをお渡ししたいです。七転び八起きというか、2000転び、2000起きくらいで良いと思うんです。

 

ただ、一回もトライしてないのに諦めている人に関しては違うと思います。もちろん、その気持ちはよく分かるんですよ。私もそうだったし、やっぱり不安だし。新しい所に行くのももちろんいまだに怖いです。

 

 

■You have your own story

 

TDM:本当におめでといございます。アメリカで仕事をされて感じた事はありますか?

 

IG:外国の方々のエナジーがとにかく凄くて、ここで事件が起きてるし、ここでクリエイトされていると感じました。お互いを称え合っていて、英語がわからない私に「そんな人いっぱいいるよ」と伝えてくれて、英語も教えてくれました。

 

まずは馬鹿にされても、駄目でもやってみる。魂で動いた方がハッピーかなって思います。

 

TDM:最後に、これから何かに挑戦される人にエールを送ってください!

IG:これは私に起きた出来事です。あなたにはあなたの経験があるので、それを楽しんでください。色んな利害関係に影響されずに進んでいって欲しいなって思います。ちゃんと志があれば、共同体の仲間がいるので。最初は孤独でもアクションしてみたら、仲間っているもんなんですよね。最初は馬鹿にされちゃうかもしれないんですけど、自分を信じて、一歩踏み出してみてください。私もまだまだ挑戦していきます!

 

TDM:ありがとうございました!またお話聞かせてください!

interview by AKIKO
edit by Sayuri Sekiguchi
’20/06/15  UPDATE

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tokyodancemagazine

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