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舞台「ASTERISK~女神の光~」特集 牧 宗孝×YOSHIE

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■舞台も自分との戦い

 

TDM バトルやコンテストで勝つために踊ることと、舞台となるとまた違ってくると思いますが、作り方とか、取り組み方の違いというのはありますか?

 

 

YOSHIE
p03舞台は演出家や、そういう人の流れや自分が必要とされるものを、汲み取って、そこに自分の個性は出しつつ作ります。ショータイムだったら自分の好きなようにするんだけど、コンテストとなると、その緩さでは優勝は無理だなとか、完全に自分の押し出すものだったり、優勝するために何ができるかを考えなきゃいけないから、そこがちょっと窮屈なことだったりはしますね。 

でも、そこと自分のやりたいことのバランスを取りつつ、やっぱり最終的に自分のやりたいことや、「この作品で優勝したい」と思える物にしかしない。年齢が若かったらもっとコンテスト用にしちゃうかもしれないんだけど、今の年齢だったら若い子たちにはできない勝ち方ができると思う。そういう提示をするのが今の自分ですね。

 

バトルも、ずっとトップギアのエネルギーだけで踊っていた時から、「ダンスってそうじゃないよな」と思う様になって、今では自分の音楽に対するダンスのアプローチがだんだん変わっている所を出せるというか、自分の中で楽しく波に乗るように戦えるようになったかなと思います。それに伴って、コンテストのジャッジをした時の審査ポイントも変わってきましたね。私だから見れるポイントとかがあるのかなと思います。

 

コンテストのジャッジをした時に、自分たちの個性はあるか、スキルはあるか、いろんなものを見た上で、音の取り方はどうかな、リズムの複雑さなどコアな所も見たりすると、「こっちの子の方がダンスはしてるな!」と一歩踏み込んだ所で見れると思います。要は全部見ちゃうから結局迷うんだけど(笑)。

 

 

 

TDM
その視点を持って審査してくださる方がいるのは、ダンサーにとってすごくいいと思います。

 

YOSHIE 舞台は1~2時間という中の全体像みたいなものを先ず見ます。あと、バトルもコンテストも戦いだけど、じゃあ舞台は戦いじゃないかというと、私の中では戦いでもないし、戦いでもあります。「誰よりも自分が突き抜けてやろう!」という想いがない訳じゃないし、それを舞台に出る皆が持てばモチベーションも上がる。歯車の一つでもギッシリしていないと壊れちゃうから。そういう意味で、舞台も自分との戦いだったりしますね。

 

 

 ■だんだん自分の脳の中にあったものが具現化されていく時の気持ち良さたるや!

 

TDM 今回の舞台に対する純粋なモチベーションやチャレンジはいかがですか?

 

YOSHIE 今まで一緒にやったことのない人たちと共演できてるから、どのシーンも見ていて楽しいし、MIKEYの演出の面白さとか、すごく刺激になるし、とっても新鮮です!


まだ、パズルのパーツは落ちてるのに、まだ一つに繋がってないから、早く完成が観たいと思いますよね。私も観たいです(笑)。

YOSHIE
そういう意味ではすごくワクワクする。

 

TDM MIKEYの中での舞台の楽しさとかチャレンジとかあると思うんですが、やってみての現段階での遣り甲斐は何ですか?

 


p09頭の中では千秋楽まで見えてるんですが、でも、それが言語化できてないという感じです。今回、脚本も自分で書くということになって、頭の中にイメージの断片でしかないものを、一度最初に言葉に落とす作業が、最初のチャレンジでしたし、すごく辛かったですね。言葉にできないから、踊りで何かで表現をしているというものを、もう一度言葉にというのが…言葉にしたら嘘な感じがして。 

台本も、最初に書いたんですけど、「絶対変わるし、絶対これじゃない」と思いました。でも、こうしてちょっとずつ創り上げてきて、だんだん自分の脳の中にあったものが具現化されていく時の気持ち良さたるや!目指してた所に行く快感さみたいなものがありますね。なおつ、私の頭の中にしかなかったものを、演者が共有して繋がった時は、孤独じゃない感じがして、すごく嬉しいんです。そういうのが、今やっていて楽しいなとか充実してるなって思います。

 

YOSHIE しかも、MIKEYは歌詞を書いて、歌って、音楽作って、振り作って、演出して、衣装もやって…ちょっと意味わかんなくない?(笑)どこまで脳みそ使ってんの!?みたいな。本当にスゴイと思う。

 

TDM
MIKEYの作る楽曲の構成とかタイミングもすごい。歌も上手いし、普通にMIKEYの声は耳に残りますよね。

 

最近すごく悩むのが、例えば音を作っていて、逆に懲りすぎてうるさいかなとか、作ったんだけど壊していく作業は少なからず起きます。それが人を交えてやった時に、一度やって頂いたんだけれども、結果全くなくなることもあります。なくなったんだけど、私の中では、一度無くなった経緯があったからこそ見えることがあるので、最初からない状態とは違います。それをYOSHIEさんはすごくわかって下さるんです。 

人によっては「一回やったじゃん」とやったことに価値を感じる人もいるかもしれないですけど、そこを説得する時にだんだん自分も、自分の正当化で言ってるような気もしちゃってきて・・・でもYOSHIEさんと作ってると、そんなことない、遠回りしたから見えた道なんだと思えます。

 

YOSHIE
一回それをやってみたから、いらないことだとわかることもあると思います。

 

■ダンスを無(む)で踊った時に、人が涙するような人でいたい。

 

TDM
例えば「俳優」くらいの「ダンサー」という存在、それくらい影響力の強いものをお二人に感じるのですが、お2人にとって、どんな影響力を持っていたいと思いますか?

 

私は人に影響を与えるよりも、影響を受けたいという気持ちの方が強いかもしれません。これからも影響を受け易い人でいたいですね。もっと、吸収していきたいです。

 

TDM
今までのストリートダンサーが活躍するフィルターではない所で、何か変化はありますか?

 

YOSHIE
舞台の振付やアーティスト関連のお仕事とか、いろんな分野から話が来るときの受け入れ態勢が、前に比べてちょっと変わったかも。前は、時期によって今はコンテストやバトルに集中したいとかあったけど、最近は、舞台の振付を全て任せられたこともあったんです。

 

今まで出演だけや1~2曲振付は多かったけど、演出家さんと音楽を作る方と私の3人で「やりましょう!」と打ち合わせをしたのが初めてでした。その時、初めて裏方さんとか舞台スタッフとかの人の動きも見えたりして、今までは踊ることばっかりしてたから、一つ人間的に成長できました。

 

TDM
いろんな方面のプロフェッショナルの方たちがダンサーの言葉を信じてくれて、そのアイデアをリスペクトしてくれて具現化するために動き出した瞬間だったんですね。

 

YOSHIE
そう、それがあって何か嬉しいなって。例えば、“表現者”と“ダンサー”という言葉があって、イコールだけど私は最終的にダンサーにこだわりたい。というのは、いろんなシーンを経てダンスを無(む)で踊った時に、人が涙するような人でいたい。ダンス人生が滲んじゃってて、溢れちゃってすいません!みたいな(笑)。そこから音楽にもらうエネルギーと、エネルギーが目に見えない何かになって、テーマがなくても、人が感動する様な次元にいきたいと思っています。

 

まさに、ドラッグクイーンのLILさんがYOSHIEさんのソロのリハ映像を見て泣いたんですよ。ダンスシーンとかは全然知らない彼から電話がかかってきて、「YOSHIEさんの踊りを見て泣いちゃったんだけど」って。「なんで?」って聞いたら、「あの人、ダンスに捧げすぎ」って言ってました(笑)。

p05

全員 (笑)。

 

それをする以外に生きていく意味もない程のエネルギー。ダンスに拘りたいというのと、ダンスに捧げてる、その生き様が、こんな小さな動画でも彼に伝わったかと思うと、凄いですよね。正に、こういうのを天才と言うんだなと思います。

 

 

YOSHIE 嬉しい!そういう所を目指していきたいんです。それが、たまたま誰かに影響を与えてダンスを始めたり、幸せに感じてもらえるなら結果は嬉しいかな。MIKEYと一緒で、影響を与えるためというのをすごく意識してる訳じゃないかな。

 

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