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DAZZLE公演「Touch the Dark」特集 長谷川達也×上妻宏光

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いつも新しい仕掛けで我々の心を動かし続けてくれるDAZZLEが次に仕掛けてきたのはイマーシブシアター(体験型公演)というストリートダンス史上初のスタイル。当初、このスタイルに否定的だったという主宰・長谷川達也が踏み切った経緯とその意図とは。今回、アスタナ万博(カザフスタン)でのパフォーマンスをはじめ、過去の競演により必然の共鳴を感じている三味線奏者・上妻宏光との対談が実現。互いのシーンにおいて、異端の視線を浴びつつも、今ではなくてはならない存在価値を確立してきた2人のエネルギーがはじけるインタビューとなった。

 

  • 02長谷川達也
    ダンスカンパニーDAZZLE主宰、ダンサー、演出家、振付家。DAZZLE代表作「花ト囮」は2010年韓国SAMJOKOアジア演劇祭招聘、2011年シビウ国際演劇祭招聘、2012年ファジル国際演劇祭招聘(及び4部門ノミネート、2部門において受賞)など、海外のダンス・演劇界からの評価も高い。2013年には舞台「ASTERISK」にて総合演出・主演を務め、2014年再演。2015年3月、歌舞伎俳優の坂東玉三郎氏が総合演出を務め長谷川が振付を担当したDAZZLE主演舞台「バラーレ」で新たな境地へ。2016年10月14日〜DAZZLE 20周年記念公演「鱗人輪舞(リンドロンド)」(池袋あうるすぽっと)を上演。今年8月、ストリートダンス史上初となるイマーシブシアター(体験型公演)「Touch the Dark」を上演する。

 

 

  • 上妻宏光上妻宏光
    1973年茨城県生まれ。6歳より津軽三味線を始め、幼少の頃より数々の津軽三味線大会で優勝する。ジャズやロック等ジャンルや国境を超えたセッションで注目を集め、これまでEU、アフリカ等、世界30ヵ国以上で公演を行っている。アーティスト、舞台、映画、ドラマ等様々なシーンへの楽曲提供や日本国内外のアーティストのアルバム制作にも参加。2017年7月にはカザフスタンでの「2017年アスタナ万博」にて、日本を代表しプロデュース公演を行った。

 

 

 

 

 

 

 

■カザフスタンでのパフォーマンス。自然に交わった表現者たち。

 

TDM 先日、お2人はカザフスタンでのアスタナ万博にてパフォーマンスをされてきたとお聞きしました。いかがでしたか?

 

 

 

上妻
日本舞踊の花柳寿楽さんとDAZZLEの皆さんにコラボレーションして頂き、日本文化のいろんな形を現地の方々に楽しんで頂きました。あのコラボは本当に良かったです。観客はもちろん、出演者の皆が楽しんでいたのが良かったですね。

 

 

長谷川
作品は DAZZLEの代表作である「花ト囮」をベースにさせていただいたのですが、寿楽さんはすごく優しくて気さくな方で、作品の内容をすぐに受け入れてくださいました。その上、ご自身のアイデアも随所に入れてくださったので、僕たちにとっても新鮮で、すごく楽しかったです。また機会があれば是非ご一緒させて頂きたいと思います。

 

 

 

TDM これまでにお2人の共演はあるのでしょうか?

 

 

 

長谷川
2013年に伝統WA感動という舞台でご一緒させてもらったのが最初ですね。それからも何度か共演させて頂いています。もともと上妻さんの曲は、大学生の時に出合いました。ストリートダンスを始めてからある時、「自分は日本人なのに、なぜアメリカ発祥のストリートダンスをするのか?」と、表現者としての自分の存在意義に疑問を抱いた時期があったんです。その結果、日本の伝統文化や表現に興味を抱くようになり、和楽器で踊りたいという想いも同時にふくらんできて…。とはいえ踊りはストリートダンス。日本の楽器が融合しているビートも効いたかっこいい曲を探しましたが、なかなか出合えません。しかし、そこで出会ったのが上妻宏光というアーティストだったんです。あの時から巡り巡って、今では一緒に共演させて頂くことになり、とても嬉しいし感慨深いですね。

 

 

 

TDM
初めて共演された時の上妻さんから見たDAZZLEの印象はどうでしたか?

 

 

 

上妻
アスタナ万博 上妻宏光プロデュース公演(2017年、カザフスタン)

アスタナ万博 上妻宏光プロデュース公演(2017年、カザフスタン)

とても統制されているグループであり、傘や障子を緻密に使っていて、ストリートダンスだけではなく、日本がベースにあるんだなと感じました。ダンスだけではなく、ストーリーもあり、いろんな要素を取り入れていて、カッコいいグループだなと思いました。

 

 

 

長谷川
嬉しいです!上妻さんは伝統的な三味線から始められて、その後、洋楽や他のジャンルを取り入れながら独自の音楽表現に向かわれたと思いますが、逆に僕は、ストリートダンスという西洋文化から始めて、そこから日本的な表現との融合を試みるようになりました。始まりは異なるのかもしれませんが、互いになんとなく目指す場所が近づいてきたのかもしれないですね。また、上妻さんは伝統の大切さと、革新の面白さの両方を伝えていく姿勢をお持ちなので、そこが素晴らしいと思いますし、非常に共感しました。アスタナ万博のステージで上妻さんの元に様々なアーティストが集まってくるのも、その姿勢に共感する方々が多い結果ですし、上妻さんだからこそだと思います。

 

 

 

上妻
アスタナ万博に向けた日本でのリハーサル

アスタナ万博に向けた日本でのリハーサル

今回カザフスタンで共演したアーティストの皆さんは、己の目指す道はずっと作り上げてきていながらも、それを共感できる交差点がどこかにある方々でした。海外に行けば、彼らが日本のことをどう思うのかを考えますし、日本の芸能ではないジャンルだとしても、日本人がやることで、日本人としてのアイデンティティが身につきます。我々日本人が世界で勝負するときに、ただ海外の真似をするだけでは通用しないと思うんです。

 

僕の場合、たまたまベースが日本の伝統楽器である三味線であり、西洋音楽に対するコンプレックスもありました。それが、三味線で洋楽を演奏したり、海外に行くことで、改めて日本に昔からあるものの素晴らしさを感じたので、それをうまく今の時代の空気に合うような、昔の楽器だけれども今も生きるような音楽を作っていきたいと考えています。

 

きっと長谷川さんも日本人として、自分が好きなダンスで、自分がやるべきことは何なのか、たくさん考えていらっしゃるでしょうし、そのためにいろんなものをミックスさせているので、また僕とどこかで交わるのは必然だと思いますね。

 

 

TDM
上妻さんが影響を受けた西洋の音楽は何ですか?

 

 

 

上妻
10代の頃に、ハードロックバンドで三味線を弾くようになりましたので、その頃の音楽ですね。1970年代、ディープパープル、レッドツェッペリン、ジミヘンドリックス、ベーシストのジャコパストリアスとかその辺からエレクトリクスを聞くようになり、今度は海外のアコースティックな民族音楽に興味を持つようになりました。たとえは、フラメンコのパコデルシア、ブラジルのイヴァン・リンスのコード進行も面白いですし、エレクトリックなものから世界各地の面白い民族や民謡を聞くようになっていきました。

 

 

 

長谷川
日本流伝心祭 クサビ-楔- 其ノ五 (2017年元旦、東京国際フォーラム)

日本流伝心祭 クサビ-楔- 其ノ五 (2017年元旦、東京国際フォーラム)

上妻さんがリリースされている楽曲を、これまでにたくさん聞かせて頂きましたが、いろんな楽器や音楽とコラボレーションされていて、その中には伝統的なものから現代的なものまで、その振れ幅がすごいんです。また、とある現場でご一緒した際にはリハの合間にピアノを弾いてくださったことがあって、ものすごくお上手だったのですが、それも独学だと後から聞いて本当に驚きました。その時に改めて「この人は本当に音楽の人なんだ。音楽をするために生まれてきた人なんだ」と思いました。

 

最初に共演した際は、DAZZLEのオリジナル楽曲に合わせて上妻さんが三味線を弾いてくださって、それが本当にかっこよかったんです。昔からのDAZZLEのスタッフにも「アレは本当に最強だったね」と言われるくらい贅沢な作品でした。

 

 

 

上妻
あれは、作品自体、楽曲自体が良くできていたので僕はそれに乗っかっただけですよ。長谷川さんや作曲家の方など、スタッフの方の力がすごかった。チームなんだなと感じましたね。

 

 

■今までの演出のやり方があてはまらないんです。

 

TDM
長谷川さんは新作公演前ですが、今回挑戦していることは?

 

 

 

長谷川
今回、演出及び会場との契約上、会場が非公開となっていますが、とある建物丸々1棟がパフォーマンス会場となる、観客参加型の舞台作品を製作しています。今までやってきたような劇場の板の上で行う作品ではありませんので、今までの演出のやり方があてはまらないんです。どの部屋で、どのタイミングで、どんな音で、どんなパフォーマンスをして、お客さんをどういうルートで案内したら良いのか、キャストがどう動いたらうまく進行するのか、どこまでストーリーを見せるのか、はたまた見せないのか、どうしたらドキドキさせられるのか、心を動かすことができるのか…なんだかアドベンチャーゲームを製作するような感覚に近いのかもしれません。 

もともと、僕はゲームが好きだし、学生の頃はゲームクリエイターになりたいと思っていたこともあったので、それを今できている感覚があって、とても満たされています。お客さんが歩く速度を予測しながら、どこの部屋で何が起きるかを分単位で緻密に計算する作業は、その構成一つ一つを組み上げていく時間がすごく膨大で悩ましいのですが、そこがまたチャレンジでもありますし、イメージ通りにいけば、誰も今までやったことのない面白いものになると確信しています。本番に向けてスケジュールが迫ってきており、かなり制作に追い詰められてはいますが、すごく楽しいです。

 

 

 

上妻
そういう状況を楽しめているのが、やはり人とは違うところでしょうね。

 

長谷川
自分がイメージしていることが絶対面白いという自信はあるので、作業は大変ですが、そこへのワクワクが上回りますね。

 

 

 

TDM
上妻さんのストリートダンスのイメージはどんなものでしたか?

 

 

 

上妻
ダンス甲子園(テレビ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」内のコーナー)のイメージが強いですね。あとは、姉の影響で、小林克也さんのベストヒットUSAという番組で踊るMVも見ていましたし、18歳でNYに行った時に路上で踊るダンサーを見て、僕とは明らかにちがう身体性に衝撃を受けました。実は23歳くらいの時に、何ヶ月間かヒップホップのダンスレッスンに通ったことがあるんです(笑)。当時組んでいたバンドのステージで踊ることになりまして、そのために。

 

 

 

TDM
そもそも、三味線を始めたきっかけは?

 

 

 

上妻
6歳の時、父親が三味線を弾いていたので、その生音がカッコいいと思って弾き始めました。好きで始めたのでものすごく練習しまして、始めて1ヶ月で舞台に立ったんですが、周りの大人たちから子供で三味線を弾いていることが珍しいとたくさん言われたので、その状況や三味線のイメージそのものを変えたいなと思いました。当時聞いていた国内外のポップスや流行りの音楽にも、三味線が入ればイイな、そういう曲を作りたいな、海外で演奏したいなという想いが今の活動につながっています。

 

 

 

 

TDM 今まで何か大変だったこと、三味線を辞めたくなったことなどはありましたか?

 

 

 

上妻
基本的には三味線を辞めたくなったことはないです。ピアノなど他の楽器の練習をすることで、三味線との練習時間の配分が変わったことはありますけどね。

 

 

長谷川
僕らはストリートダンスシーンで異端児的な目線で見られることも少なからずあったのですが、上妻さんも日本の伝統ある三味線で洋楽を演奏するなどの活動をされてきていて、そういった経験はおありなんですか?

 

 

 

上妻 やはり、歴史や伝統のある世界だと、そういう目線はどうしてもありますね。10代の頃、バンドで演奏することを批判してくる人もいましたが、今はあまりいなくなりましたね。いろいろ伝統的な音楽を調べていると、モーツァルトもその当時の最新の音楽として扱われていたわけです。それが100年経てば、広まり、研究され、クラシックと言われている。今、クラシックを創作している人もいますが、いろんな人がやり尽くしてるから、抜け道が見つけられにくいし、なかなかあの偉人たちを越えられない。僕も作曲していて、このフレーズいいな!と思っても、それはどこかで聞いたことのあるものだったりします。伝統音楽で自分独自のカラーを入れていくのは、現代だとなかなか難しいですね。

 

 

 

長谷川
ダンスもそうですね。これは新しい!と思っても、誰かが既にやっていたりします。

 

 

上妻
少し前までは、新しいことを批判する師匠世代の方もいましたが、今は一般の認知度も高まり、若いお弟子さんも増えていく中で、新しいことに寛容な姿勢を示す人たちも増えてきました。
今の若い人たちは、新しいことに関心を示して当たり前というか、僕ら世代が古典の仕事が無くなってもいいという覚悟で行ってきた様々な新しい音楽を、既に資料として聞けますし、その上で自分は何がやりたいか、そのチョイスができる時代になっています。リズム感もいいですし、僕らが10年かけてやってきたことを数年で体得できる人が出てきています。

 

 

 

長谷川 カザフスタンでご一緒した東儀秀樹さんも、同じようなことを仰っていました。多くの方が雅楽に馴染みがなかったように思うのですが、東儀さんが現れてから認知度が格段に上がった。東儀さんも批判されていたこともあったそうですが、ご本人は自分の活動が雅楽を広めることに繋がると、信念を持って活動されていたそうです。今回、上妻さんの元にはそういった人たちが集まってあんなに面白いものができたんだなと思いましたね。

 

 

 

上妻
そうかもしれないですね。みんなゼロから1を産み出すというとても大変な作業をやられてきている人たち。でも、何故それを続けてこられたかというと、僕の場合は三味線が好きだからなんです。三味線という音楽を広げるためにはどうすればいいのか、どうすれば興味を持ってもらえるのかを考えていくと、必然的に、三味線の良さを知らない人に聞かせに行きたいと思い、活動が広がっていきます。長谷川さんも、決して女子にワーキャー言われたいだけでダンスをやっているわけではないと思うんです。

 

 

長谷川
はい、そうですね。

 

上妻
そりゃ、僕も長谷川さんも女子にワーキャー言われるに越したことはないですけどね(笑)。

 

 

 

長谷川
・・・はい、そうですね(笑)。

 

 

■「同じ環境を与えてくれたらDAZZLEの方がもっと面白くできる!」

 

長谷川
僕はダンスを始めて2年目から振付をやるようになりまして今年で21年経ちます。よく「振付が好きなんですね」と言われるんですけど、答えるのに一回悩みますね。苦しいから。むしろ嫌いになることもある。だけど、自分がその振付を見たいという欲求がある以上、形になった時に「そう!コレコレ!コレが見たかった!」と感じる喜びが生まれる、だからまた苦しみながらも振付をする。その繰り返しですね。

 

 

 

TDM
その創作欲、表現欲がなくならないこと自体、すごいことだと思います。

 

 

長谷川
ただ、忙しくなってきて新たなインスピレーションを生み出すためのインプットができなくなってくると、それに伴ってアウトプットすることが苦しくなることもあります。そういう時は、今までやってきた引き出しからアイデアを引っ張り出してくることになったりします。今までの経験からその引き出しも次第に増えてきて、それは表現者としては喜ばしいと思う反面、その分いろんな正解がありすぎて悩むこともありますが…。本来は、新しいことを産み出す作業を進めたいんですけどね。

 

 

 

TDM
今回のイマーシブシアターをやろうというインスピレーションはいつ思いついたんですか? 

 

 

 

長谷川
 

前からメンバーとも体験型公演についてちょくちょく話題にしていました。ただ、僕は最初、否定的でした。なぜなら、実現することはとても難しく、採算が合わないと思ったから。美術館のように出入りを自由にできるわけではなく、かといって劇場のように大人数を一度に座らせることもできない。とても現実的ではないと考えていました。

 

でも、ニューヨークに行った際に、イマーシブシアターを実際に体験してみて、初めて「こんな風に進行できるんだな」「同じ環境を与えてくれたらDAZZLEの方がもっと面白くできる!」と思えたんです。だから、やろうと思いました。

 

いろんな方から「どんな公演なの?」と聞かれますが、こればかりは、実際に体験していただかないとなんとも言えないですね(苦笑)。僕も体験するまではその面白さがわかりませんでした。どんな言葉を並べても、三味線もダンスも、その本質は生で体感しないとわからないわけで、そのために実際に舞台に足を運んでもらうのが本当に難しいところです。その一歩を踏み出してもらうためのアイデアや仕掛けをいつも生み出さなきゃいけないなと思いながらやっています。

 

100年後も再現できる作品を作りたい。

 

TDM
上妻さんの表現欲につながるインプットのために、どんなことをしていますか?

 

 

 

上妻
僕は、最近は子供と過ごすことですね。今の時期だと、海や川に行って一緒に遊んで、子供の純粋で素直な感性に触れています。大人の僕らは、計算したり、やる前に結果を見極めて諦めたりしてしまうと思いますが、子供はまず何も考えず、まっすぐにやりたいことをやるんですよね。その姿から勇気やアイデアをもらうことがあります。先ほど長谷川さんがおっしゃったように、モノを作り続けていると、停滞する時は必ずあります。僕らの場合は、アルバムを引っさげてのツアーをやってる最中に、次のアルバムのテーマを決めなくてはいけない。ツアー中でインプットできないし、アウトプットしてる最中でアイデアなんて出ないよ!と思うんだけども、スケジュールの都合で考えなくてはいけない。常に1〜2年後先のことを考えながらずっと動き続けていなくてはいけないんです。本当は「休みたい!ハワイに行きたい!」と思う時もあります(笑)、が、それを続けなくてはいけないんですよね。その中で、僕の精神的な切り替えや自分の素に戻れる時間は、家族と過ごす時間ですね。

 

 

 

長谷川
いろんなアーティストの方が、子供が生まれると音楽性に変化が出ると仰いますが、上妻さんも何か変化を感じることはありますか?

 

 

 

上妻
もともと僕の三味線の音色は柔らかい方だったと思うんですが、自分で言うのも変かもしれませんが、さらに温もりを感じるようになりましたね。人や音楽に対する想いが深くなったと言うか、強くなった感じがします。あとは、人を育てること、教えることへの意識も変わりました。指導者としてどう伝えればいいのか、相手にわかってもらわなくてはいけない、わかりやすく言わなくてはいけない、伝わらなくてはいけない。そのための言葉や気持ちを考えるようにやり、少し人として、進歩したのかなと思います。

 

 

 

TDM 今後やってみたいことはありますか?

 

 

 

上妻
津軽三味線は大体即興での演奏が主流なんですが、楽譜にちゃんと記すことのできる、100年後も再現できるような作品を作りたいと強く思っています。具体的には、古典特有のフレーズや間を入れたり、かつ、僕が今までやって来た洋楽テイストも随所に入れていきたいですね。先日、大阪のフェスティバルホールで、市川海老蔵さんの舞台でご一緒しまして、古典作品の作曲と演奏をやらせてもらいました。その曲に関しては100年後も再現可能な曲と言えます。昨今、同世代の方々と、歌舞伎やお能などの垣根を取っ払って伝統の作品を徐々に作ることができているので、これからもやりたい作業であり、今の自分にとっての喜びですね。あとは、世界中どこにいっても三味線が知られているくらいの認知度にしたいですね。

 

 

■大事なことは目に見えないところにある。

 

長谷川
もちろん劇場舞台の制作は好きなので、これからもずっと続けていくと思いますし、まだまだ舞台やダンスの良さが伝わっていない部分も感じるので、これからもダンス表現の良さ、可能性を常に発信していきたいです。ダンスの認知度は上がっていますが、実際にダンスの舞台に来る人も増えたかというと…まだまだできることがあると感じます。それをどう変えていけるかの挑戦もあります。また、最近はアメリカでの舞台公演も考えるようになりました。それはNYで実際にたくさんの舞台公演を観てきたということもあるのですが、NYはショウビジネスのメッカとしてのイメージも強いので、ならばそこに挑戦するのも、表現者として生きていく上で必要なことなのかもしれないと思いました。また、東京オリンピックの開会式も世界中の人が注目する夢の舞台なので、そこで自分たちも何か関わることができたらなと思っています。

 

 

 

TDM これまでの表現者としての変化、変わらず大切にしていることはありますか?

 

 

 

上妻
僕は10〜20代の頃、自分の我を通すような、スキルを誇示していました。それが、どんどんステージで共演しているメンバーの音をきちんと聞いて反応するとか、お客様の反応がこんな感じだったら、自分のパワーを30%くらいに押さえてみようかなとか、冷静に調和を保つようになってきました。

 

 

 

長谷川
僕も若い時はどれだけうまく踊れるかを目指していましたが、ダンスは目で見るものとはいえ、だんだん、大事なことは目に見えないところにあるんじゃないかと思うようになりました。もちろんスキルも大切なんですが、それを表現する人の心がどれだけ見えるかどうか。その表現の本質、その想いや感情がいかに可視化されるか。それが見えた時に、人は感動するんだと気づき、それを伝えられる表現者になりたいと思うようになりました。

 

 

 

上妻
日本流伝心祭 クサビ-楔- 其ノ五(2017年元旦、東京国際フォーラム)

日本流伝心祭 クサビ-楔- 其ノ五(2017年元旦、東京国際フォーラム)

それは、お能や狂言の世界のようですね。あれらの舞台でも何もないわけで、そこで何かがあるように表現するいわば精神性の世界。長谷川さんと共通することは多いでしょうね。

 

 

 

長谷川
自分が何を見せたいかにもよると思いますが、DAZZLEの場合、ダンスは表現の中心であり、その周りに音楽、衣装、照明、空間などたくさんの要素があります。主に舞台作品を見せる場合は、物語があるので、それを通じてどうすれば心が動いてもらえるのか、見ている人が何をもって感動するのかを1番に考えますね。

 

 

 

TDM
では、最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします!

 

 

上妻
三味線は弦楽器でありながら打楽器の要素もあり、かっこいいビートが奏でられる楽器です。ぜひ、ターンテーブルやシンセサイザーなどだけではなく、生の楽器を取り入れた音楽とダンスを融合した作品を世界に発信してもらえたらなと思います!

 

 

 

長谷川
イマーシブシアター(体験型公演)「Touch the Dark」

イマーシブシアター(体験型公演)「Touch the Dark」

8月25日から観客の皆さんが参加する体験型のパフォーマンスを行います。会場は非公開ですが、渋谷区の、新宿にほど近い某建物丸ごと一棟を使います。

 

観客の皆さんが物語の一員になったような感覚になれる作品です。ネットやテレビを見るのではなく、先ほど話したような、五感に訴えかける楽しさ、体感することの面白さを味わってもらえる作品になっています。肌で感じることで、記憶に残るし、人生の印象に残ってもらえるような作品をお届けしますので、ぜひ体験しに来ていただきたいと思います。

 

 

 

TDM
楽しみにしております!ありがとうございました!

 

→[PICK UP]ダンス史初。DAZZLEが仕掛けるイマーシブシアター(体験型公演)「Touch the Dark」

interview by AKIKO & imu
’17/08/16 UPDATE

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tokyodancemagazine

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