少林寺×ダンス×舞台・・・8年前の発表以来、世界60都市で絶賛の大ヒット作となったsutra(スートラ)が遂に日本初上陸する。カンパニー総勢34名、 キャストは19名の中国少林寺の現役僧侶。彼らを束ねたのは、今最も注目を浴びる舞踊家シディ・ラルビ・シェルカウイ。初回に続き2度目の特集では、ラルビの演出助手を務め、海外公演時には終演も務めていたアリ・タベ。自身のダンス観をたっぷり語ってくれた。多くの魅力を秘めたスートラが、まもなく日本で初開幕する。
- アリ・タベ
スートラ海外公演の主演ダンサー。日本ツアーにはアンダースタディとして参加。42歳。母語はフランス語。森山未來出演の舞台「TeZukA」でも、ラルビの振付助手を務める。フランスの国立サーカス学校NCCA(National Center for Circus Arts)出身。アルベールビル冬季オリンピック開会式演出や、パリのクレイジーホース演出を手掛けたフィリップ・ドゥクフレ作品への出演多数。他にもジョセフ・ナジなど著名ダンサーの作品への参加で知られる。
■1アーティストとして一緒に作品を作る深い関わり
| TDM | : | ダンス歴はどれくらいですか? |
| アリ・タベ | : | ダンスをはじめたのが遅くて、27歳の時なので約13年です。それまでは、NCCAというフランスにある国立のサーカス学校に通っていました。そこはサーカスにとどまらず、ダンス、演技、音楽などを学ぶことができ、現代的なサーカス作品を教えてくれました。そこで振付師として有名なフィリップ・ドゥクフレに出会い、ダンスに移行しました。シディ・ラルビ・シェルカウイはそこで彼と働いていました。結果、サーカスよりもダンスを多く学びましたが、私の根底にはサーカスがあります。 |
| TDM | : | サーカスではどんな演目をやられていましたか? |
| アリ・タベ | : | チャイニーズポールです。30歳ごろまで続けていましたが、それ以降はダンス漬けの日々になりました。約15年前、ベルギーではピナ・バウシュが演技性の高いダンスで人気を博した流れから、ダンサーがよりパフォーマンスに関心を持つようになりました。いい振付師がいれば、役者であれダンサーであれ、誰もがステージ上で踊れるようになったわけです。その中で、振付師たちは、ダンサーをただ踊らせるだけのステレオタイプな動きではなく、踊れなくても高い身体能力を持つサーカスに惹かれていきました。私が学校を卒業した頃、多くの振付師たちが私たちと一緒に働きたがっていたのです。もちろん、今はサーカスもダンスもそれぞれ多様化したものになっていますが、当時はサーカスの人間も踊れました。 ラルビはダンスの学校に通っていたわけではなく、ディスコでゴーゴーダンサーをしていたり、ヒップホップやカンフーなど、いろんな動きを独自に学びました。その後クラッシックも学び、ひとつの動きに偏らず、柔軟に対応できる特別なダンサーとして、毎回違うバックグランドの方と作品を作っています。 |
| TDM | : |
今回アリさんは演出助手ということで、普段ご自身のプロジェクトでは主役を演じられるとお聞きしました。両者の違いや何か意識していることはありますか? |
| アリ・タベ | : |
すべてのプロジェクトでそれぞれの意味合いは変わります。スートラに関しては、演出助手だからといって、作品を作る責任から逃れられているわけではありません。責任が主演だから重い、助手だから軽いというわけではありません。小さな責任を担う役であっても大きなストレスを感じることもあります。 ラルビとは約10年仕事をしていますが、彼と居る時、アシスタントだからといって、撮影したり、メモを取ったりする関係性ではなく、1アーティストとして一緒に作品を作る深い関わりになれることが、非常にいい事だと感じます。 |
■身体と精神の共存。疑問を持たせない説得力やエネルギー
| TDM | : | スートラの魅力は何だと思いますか? |
| アリ・タベ | : |
![]() (C)Hugo Glendinning まず、スートラは私の人生に置いて大きな意味を持ちます。なぜなら、8年もの間携わっているものであり、少林寺の僧侶たちと関われていること、世界中を周っていること、すべてが特別な経験だからです。作品としては同じストーリー、スピリットであっても、常にそれは成長し、出演者が入れ替わることもありますし、披露する土地も変わるので変化に富む作品といえます。こんな作品に携われて本当に幸せです。身体が動く限りこれからも参加し続けたいです。 |
| TDM | : | スートラに含まれているスピリットとは? |
| アリ・タベ | : |
ヨーロッパでは身体と精神は切り離して考える文化があります。舞台上では「なぜ私は踊るのか」と常に問いかけが生まれるために、まず頭で「ダンスとは何か」を考え、それから動くというプロセスがあります。一方、少林寺と出会い、ラルビや私は、身体と精神の共存を学びました。彼らは思考が動きを司り、動きが瞑想を司っている、渾然一体の状態なのです。常に身体と心がフィットしている状態に見え、それはダンサーにとっても重要なことでしょう。私の言うスピリットとは、身体の内側にあるものであり、それと身体がフィットしている状態が見える時、エナジーを感じられるのです。ヨーロッパでは残念ながら内側から出るエネルギーが感じられないものも往々にしてあります。 |
| TDM | : |
スートラにおいて、アリさんの内側から発信するものはどんなものですか?? |
| アリ・タベ | : |
![]() (C)Hugo Glendinning スートラではダンサーというよりは、キャラクターであり、ストーリーをつなぐ役割なので、内側からのエネルギーを答えることは難しいですね。ただ、スートラではなく自分のプロジェクトで踊る時に、心がけているのは観客に「彼はなぜあんな風に踊るのか」という問いかけを持たせないくらいの説得力やエネルギーを発することです。普段多くの人がスポーツをやっている動きに意味や説明は不要なことであり、そこを目指しています。しかし、それは簡単なことではないので、出来る時と出来ない時がありますが、常に心に留めています。 |
■常に好奇心を持ち、新しいゲートを開くこと
| TDM | : | アリさんの今後の展望は? |
| アリ・タベ | : |
私には片足を失った弟がいます。私たちの父はチュニジア人で母はベルギー人、つまり、半分はアラブ、半分はヨーロッパの血が流れています。弟と舞台作品を作ろうと思い、最初は私たちのストーリーを、あからさまな表現では無く、哲学的なメタファーで描きました。ダンサーは私と弟と友達の3人、ミュージシャンはアラブの伝統的な音楽を演奏する民族の5人でやりました。作品は弟の片足であることを強調するものではなく、ある人は足が長く、ある人は腕が短い、弟は片足が無い、ただその身体性のひとつとして何が出来るかという視点で作ったものでした。2作目は愛や結婚制度をテーマに、3作目では難民をテーマに制作しました。3作目は、イタリアにランペドゥーザ島という美しい島があるのですが、たくさんアフリカからの移民がたどり着く場所で、そこでも上演しました。現在、行っているプロジェクトは、オペラで、半分は健常者のダンサーで、半分は何かしらの障害を持った人たちです。それも、彼らがありのままでダンスを創作するとどうなるかという視点で作っています。健常者のダンサーと下半身が無く手だけで踊るダンサーのデュエットを作りましたが大変素晴らしいものになりました。
太っていても痩せていても障害があっても無くても、ありのままの身体で何が表現でき、どういうストーリーが語れるのか。これからも私は、身体が何を表現できるのかに重きを置きたいと思います。 |
| TDM | : |
とても意義がある事をなされていますね。 |
| アリ・タベ | : | ラルビと私は、アラブの血とヨーロッパの血の両方が流れている点で共通していて、芸術的にも哲学的にも最前線に置かれることが多い立場です。私は自分の中にあるアラブもヨーロッパもどちらの視点も愛しています。私がチュニジアに行った時、そこで観たダンサーにはエネルギーを感じました。彼らは自国にとどまっているからこそ、そのエネルギーを発することができます。一方、ベルギーではいろいろな国境と接しており、いろんな文化的背景を持ったダンサーがいるので、エネルギーがまじりあった状態でした。ラルビと私が心がけているのは、常に好奇心を持ち、新しいゲートを開くことです。それが無いと、アーティストは自分の殻に閉じこもってしまうので、常に自分に挑戦しなければいけません。スートラから学んだこともまた、一度不可能だと思ったことも実現できるということでした。その精神はどの作品を作る時にでも私の中に残っています。 |
| TDM | : | どんな精神がスートラから感じられるのか楽しみです。本日はありがとうございました! |
→[PICK UP]ダンス&現代アート界 世界最高のスターたちが結集!スーパー僧侶×大迫力のダンス・アクロバット待望の初来日!「sutra」
interview & photo by AKIKO & imu
’16/09/21 UPDATE
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ラルビと私は、アラブの血とヨーロッパの血の両方が流れている点で共通していて、芸術的にも哲学的にも最前線に置かれることが多い立場です。私は自分の中にあるアラブもヨーロッパもどちらの視点も愛しています。私がチュニジアに行った時、そこで観たダンサーにはエネルギーを感じました。彼らは自国にとどまっているからこそ、そのエネルギーを発することができます。一方、ベルギーではいろいろな国境と接しており、いろんな文化的背景を持ったダンサーがいるので、エネルギーがまじりあった状態でした。ラルビと私が心がけているのは、常に好奇心を持ち、新しいゲートを開くことです。それが無いと、アーティストは自分の殻に閉じこもってしまうので、常に自分に挑戦しなければいけません。スートラから学んだこともまた、一度不可能だと思ったことも実現できるということでした。その精神はどの作品を作る時にでも私の中に残っています。
