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舞台「バラーレ」・「BLUE VOL.03」合同特集 坂東玉三郎×長谷川達也

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■新体操でドラマを見せる。

 

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TDM
今までストリートダンサーをご覧になる機会はありましたか?

 

玉三郎
DAZZLEさん以外ではあまり縁がないですね。ストリートダンスがこんな風に発表される場が機会としてあまりないじゃないですか。僕たちが観に行こうと思っても2~3日の公演で終わっちゃいますし。

 

TDM
今回の「バラーレ」によって、坂東玉三郎さんの作品を観るのが初めてというストリートダンサーは多いと思います。何を感じて欲しいと思いますか?

 

玉三郎
やっぱり楽しんでもらいたいし、18歳からグループを組んできたDAZZLEという人たちが、どういうことができるのかを観てもらえたらいいですね。 あとは、ストリートダンスがクラシックと融合したときにどういうニュアンスが出るかを発見することで、新たな自分を発見できるでしょう。でもね、発見のための舞台なんてつまらないじゃないですか。単純に楽しんでもらうのが一番良いです(笑)。

 

TDM 達也さんは「バラーレ」の稽古をしながら、今月末の「BLUE VOL.03」の稽古真っ最中ですが、演出としての初参加、いかがですか?

 

達也 先ほど玉三郎さんがおっしゃった、体操は思考と行動の速度がともなってしまう話を聞いて、競技として存在していた新体操を、いかに舞台作品、エンターテイメントとして見せていけるかというところは僕もテーマとして描いています。BLUE TOKYOの恭平と話した時に、新体操の演技をしている時はすごく冷静なんだと言っていました。競技としていい得点を出すためには、冷静でなくてはいけない。メンバーとの位置関係や、ミスをしてはいけないと考えながら冷静にこなし、それがいい得点になると信じてやってきた人たちです。

それを今回「BLUE」では舞台を物語として表現していくために、冷静であるということもいいけれども、もっと感情的に作品中の役として演じることも必要なんじゃないかと伝えてるんです。

だから、ただ手を出すとしても、その先に何があるかをイメージできるかどうかが、動きの質やエネルギー、伝わるか伝わらないかに影響してくると思っています。僕もお芝居の経験がすごくあるわけではないけど、観客に対して見せるという点で競技として綺麗にやる方法だけではないことを、僕がいかに崩して、演出作品として、ドラマにできるか。彼らも僕も挑戦です。そして、彼らもそこを経て表現者としてステップアップしてくれたらいいですね。

 

玉三郎
今、どのくらいできてるの?

 

達也
ほとんどできました。物語とエキシビションのふたつのパートに分かれています。

 

玉三郎
エキシビジョンというと?

 

達也
新体操の競技大会で優勝した演目を見せるところです。

 

玉三郎
時間はどれくらいなの?

 

達也
物語は70~80分くらいです。

 

玉三郎
あ~それは、大変だね。80分というと40分作品にただ40分足すのではなく、エネルギーが4倍必要。でも、おもしろいことに、45分作品は意外にできちゃうんだよね。だから、80分とか90分作品はものすごく大変だと思います。 分数で決めるのはおかしいと思うかもしれないけど、人間の生理的に90分を飽きさせないで盛り上げるのはものすごく大変と言われています。映画や芝居の世界では、人間の生理的に40分でも60分でもなく、50分あたりで「えっ!?」という展開がなければ、人間は飽きちゃうそうです。「そんなことないだろう」と思ってたけど、名画はだいたい50分過ぎから展開してくるようになっています。おそらく、創っている人はそれを計算していないと思いますけどね。偶然、自然とそうなるんだと思います。

 

TDM
おもしろいですね。では玉三郎さんの演出でもそういうことを考えてらっしゃってるんですか?

 

玉三郎
全然考えてません(笑)。でも、感覚でそうなってるかもしれませんね。

 

TDM
達也さんは時間の感覚をどんな風に把握していますか?

 

達也
僕の場合は、60秒とか90秒ごとに物語やシーン、音楽などが展開するようにしています。いや、それもそこまで数字で狙っているわけではないのですが、感覚的にこれ以上は気持ちが離れる、とか、次の展開に行きたいと思うと比較的短い間隔で区切られます。

 

一般的にストリートダンス作品は1ナンバー約3~5分程度ですが、その3~5分を飽きずに見続けることができる作品って意外と少ないと思います。正直1分くらいユニゾンまで見たら、もうお腹いっぱいと感じてしまうこともあるんです。特にストリートダンスの特徴である高揚感は持続性はないので、展開はすべきだと思っています。

とはいえ、ただ目まぐるしく展開すればいいというわけでもありませんから、時にはコンテンポラリーダンスの様に、たっぷり時間を使っても見せるシーンを挟むなど、バランス良くシーンや感情を配置できるかを考えます。

玉三郎さんも、よくおっしゃってくれますが、“いかに我慢できるか。見せたいものは最後まで見せないようにできるか。”というのは今「BLUE」の演出をしていても、なるべく意識するようにしています。

新体操のようにアクロバティックな動きはそれこそ70分もできないし、観ている側も耐えられない。そこを抑えて、新体操を良く見せるためにもいかに新体操をしない時間を作れるかを意識しています。

 

■ダンサーとしてはトップになれなかった名振付師たち。

 

TDM
演出にトライしてみたいと思っているダンサーも増えてきつつあるのですが、どういう意識を持てば、具現化したり伝えやすくなったりできるでしょうか?

 

玉三郎 過去の流れから考えると、この意見は厳しいかもしれないけれど、演出に向いているのは、ものすごく感覚が良くて、ものすごくダンスに情熱があるのに、踊れなかった人達だと思います。すごくダンスに情熱を持っていながら、ダンスを踊る道へ進めなかった子の方が演出に目を向けた方がいいかもしれない。 過去の名振付家、名演出家ってみんな十分に踊れなかった人たちなんです。ベジャールさんも、ものすごく体型にコンプレックスがあった人だったそうです。だから、体型のいい子に「素敵なものを創ろう!」という自分に対する情熱を外に向けた。ピナ・バウシュさんも踊ることを愛しながらもダンサーにはならなかった人です。だから、素晴らしい夢のようなダンサーだったアンナ・パヴロワとか、ニジンスキーとかは振付も演出もしなかった。自分は踊れちゃうから、他人がどうして踊れないのか、どう伝えていいのかわからないんでしょうね。舞台にとてつもない情熱があって、美意識があって、感覚が良くて、聡明で、踊らなかった子としか言いようがないです。また、踊りを愛してきたことで踊りを理解している。演出だけ理解していても、ダンサーや、演じ手をどうやってコントロールして行ったらいいかわからなかったら、できないでしょう。もちろん、こればかりを定義したいわけではないんですけどね。

 

TDM
今のストリートダンスシーンは実際に踊れる人が演出としても牽引していますが、演出家として大きくなるなら、そうした流れも出てくるのかもしれませんね。

 

達也
そうですね。ただ、先ほども言いましたがダンスを踊ることと演出をすることはやはり違います。その点において演出家がダンスにばかり目を向けていては作品としてはどうかな?という疑問はあります。1980年代に日本にストリートダンスが入ってきてから約30年くらい経過していて、今や日本のダンスレベルは世界でもトップクラスといえるほど成長を遂げました。でも、ダンスとしての技術や表現を追求してきたところから、今度は90分という演出作品となってくると、これはもう圧倒的に経験不足だと思います。それに比べてバレエや演劇、それこそ歌舞伎だったり、舞台の歴史というはもっとずっと長いわけで、我々ダンサーは様々な舞台作品を観て勉強する必要があるんじゃないかと思います。

 

玉三郎
僕も23歳くらいで「演出家になろう」と思ってからは、いろんな作品をたくさん見まくりました。70~80年代ってアメリカもヨーロッパも名作だらけでしたよ!ニューヨークではオフブロードウェイでも、オフオフブロードウェイでも素晴らしい作品がたくさんあったし、何週間いても観切れないくらいでした。

 

 

■ドラマ性と作品性のバランス。

 

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TDM
舞台業界はこれからどうなっていくと思いますか?

 

玉三郎
どうなるんだろうね・・・。最近は、色々な意味でセンテンスが短いでしょ。それは彼らが悪いんじゃなくて、世の中が、文学じゃなくて、メールとか短い文章で成り立っているから。そうすると、2時間をかけてひとつの文章を表すというものはなくなって行くのです。30秒とか1分のおもしろいものが羅列されているだけ。あとは、センテンスではなくボキャブラリーだけの人もいる。どこに修飾語がかかっているのか、句読点もピリオドさえも、説明しないとわからない若者が増えています。

 

達也
読解力の低下でしょうか。

 

玉三郎
彼らに足りないのではなく、時代がそうだから仕方ないね。ストリートダンスも創ってきた作品が短いでしょ。一晩の作品の中でうねりが短い。批判でもなんでもなくて、時代がそうなんです。 文章が長かった頃から短くなるまでの途中に出てきたのが、「タンゴ・アルゼンチーノ」。とか「ブラスト」とか、「リバーダンス」とか、文章としてはそんなに長くないけれども名人を集めましたから、個人芸がひしめき合ってるのを、文章が長かった時代の人たちが構成したことによって、成功した。だから、10年以上のロングランになったんだと思う。そして、当時出てきたのが、シルク・ドゥ・ソレイユ。彼らに長い文章はない。一番困ってるのは、ドラマにしようとすると作品になり難いことなんでしょう。作品にしようとするとドラマにならないところ。そこにトライしながら、長続きしている「オー」は、水がドラマだからですね。「ミスティア」はドラマではなくショーとして完結してるから長続きするんだと思います。そのバランスを知った上で、次に何が出てくるだろうね。これからそういうものが出てくることを望みたいですね。

 

TDM
では、「BLUE」と「バラーレ」に向けての意気込みとメッセージをお願いします。

 

玉三郎
BLUEについては、あいにく私も公演中で観にいけませんが、長谷川達也さんという素晴らしい振付家が、 新体操の新しい一面を切り開いて新しいエンターテイメントの世界を創り出してくれることでしょう。 みなさまも、今までの新体操という観念を取り払って楽しんでください。

 

達也
まず、BLUEについて、新体操をご覧になったことがある方は、その魅力は十分に存じていると思いますが、今回は特に競技から舞台へと表現方法を変化させることに挑戦しているので、物語と共に展開していく演技、舞台構成はまた違った面白さを提示できると思っています。また新体操をご覧になったことのない方は、生で彼らの迫力ある演技、美しい演技を体感したら、絶対に虜になると断言しますから、この機会にぜひ観に来ていただきたいです。 

バラーレについては、ストリートダンスから派生した僕たちDAZZLEが、歌舞伎俳優であり、そして人間国宝でもあらせられる坂東玉三郎さんによって演出をいただくというのは、ダンスの世界、そして舞台の世界においても歴史的な機会になるのだと思います。そのことによってDAZZLEがどういった表現、作品へと変化していくのか、その可能性をぜひとも感じていただきたいです。素晴らしい音楽と、美しいパフォーマンスによって、ご覧になる皆さんにとっての理想の夢の時間となるよう精一杯踊りますので、この歴史的瞬間にどうぞお立ち会いいただきたいと思います!

 

TDM
貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました!

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interview by Imura

’15/01/13 UPDATE

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