01.interview, People

佐藤ゴウ(Gaura Govinda Dasa)

Off 27825

ストリートダンサーの変貌は計り知れない可能性がある! 1990年代前半〜2000年初頭に20代を走り切ったHIPHOPダンスチームSPEED STAとしてシーンの中心で華々しく活躍してきた佐藤ゴウは、今やスピリチュアルネームを持つ100%ヨギーだ。13年前ヨガに出会って人生が変わり、現在はヨガを普及する立場としても活動している彼に、今までの道のりや現在のライフスタイルなどを聞いた。ヨガの世界はストリートダンスシーンとかけ離れてると思われているが、怪我等をきっかけにヨガに興味を持つダンサーは意外に多い。彼が語る言葉を通して、身体を壊す前により多くのダンサーがヨガに目を向けるきっかけになる事を願って。

 


 

・佐藤ゴウ(Gaura Govinda Dasa)

ヨガインストラクター講師/radhika yoga代表

日本各地で行われるヨガイベント、農林水産省や有名企業でのヨガレッスンなど登壇実績多数。また、ヨガ専門誌にて連載ページを担当するなどメディアへの掲載や出演実績も多数。ヨガ指導者養成カリキュラム作成・監修、ヨガ講座哲学部門作成・監修、ヨガインストラクターの養成は10年以上のキャリアを持ち、1500名以上のヨガインストラクターを育成。2019年、インドに5000年以上伝わるという師弟継承に属する、正式なラーガヌーガ・バクティヨーガの師ジャヤーナンダ・ダーサ氏の門下に入り、スピリチュアルネーム「ゴウラ・ゴーヴィンダ ・ダーサ」を授かる。現在では、東京を中心に日本各地で、ヴェーダクラス、ヨガ哲学クラス、ハタヨーガ・ナチュロパシー、ハタヨーガ、瞑想クラスを担当し「本当に大切な事を思い出す」「ボディとマインドのリリース」をテーマに指導を展開している。

IHTA国際ホリスティックセラピー協会顧問

IHTA国際ホリスティックセラピー協会認定ヨガインストラクター講師

lululemonレガシーアンバサダー

Basil House アンバサダー

Instagram:@radhika_yoga_hayama radhika_yoga_hayama

Facebook:@ Radhika yoga


 

MCハマーに憧れてはじめたストリートダンス

 

TDM:そもそもストリートダンスを始めたきっかけは?

ゴウ:中学校2年生の時MCハマーが流行っていて「凄くカッコいい!」とひたすら真似をしていたんです。茨城の田舎で、ハマーっぽい格好をして2ブロックに刈り上げて日焼けして、小さいラジカセを持ち歩いて学校で友達を巻き込んでひたすら踊っていました。そこから『ダンス甲子園』にハマって、ZOOが出ていたテレビ番組『CLUB DADA』を見て「絶対出たい!」と思っていたら、番組が終わっちゃったので(笑)とりあえず高校に進学しました。

そこでダンスをやってる先輩やその仲間とかダンス友達が増えていって、その中にTAKEO君がいました。TAKEO君は一人だけ雰囲気が違ってカッコよくて、自分の師匠という人の所に連れて行ってくれて、一緒に夜な夜なクラブに行ったり、茨城の水戸の駅前で皆でパフォーマンスをしたりしていました。僕はそこから一度大阪に越したんですが、18才で上京した時にTAKEO君と再会して、また一緒にクラブなどで遊ぶようになりました。

 

20代の頃。

 

TDM:そこからずっとダンスは続けていたのですか?

ゴウ:20代はSTEZOさんやISHIKORO(現SHINYA)君と出会って、一緒に「SHAPE UPBOYS」というチームを組んで日本全国で活動するようになり、一気にダンスの仕事も増えました。当時何人かのレッスンに行っている中でCHITOと出会ったんです。最初は「なんだこのチビ、威勢のいいチビだな」と思ってましたが(笑)いつの間にか仲良くなりました。それから、友人のDJのスクラッチに合わせて踊るパフォーマンスをやったり、CHITO達と「NATIVE YELLOW」というチームを組んで活動していたんですが、実は24歳頃一度ダンスを辞めています。

 

■人にどう見られてるかを気にし過ぎて心の病気に

 

TDM:活動は順調だったのになぜ辞めてしまったんでしょうか?

ゴウ:ダンスが重荷になってきちゃったんです。今思えば鬱病と言っていいような状態で心の病気だったと思います。「なんの為に生まれてきたんだろう」と考えたり凄く悩みました。人に会うのが怖くなってしまって、何を喋っていいか分からないからドキドキしてきてパニックになって、友達から遊びの誘いがあっても断って誰とも連絡を取らなくなりました。そこから約1年半くらい引き篭りました。

TDM:ダンスを辞めただけではなく心の病気になってしまったのですね。仕事などはどうされてたんですか?

ゴウ:電車に乗るのもしんどかったので、近くのコンビニでアルバイトをして、ただただ生き伸びてるという感じでした。以前のように人前に出て華やかにパフォーマンスするような世界には怖くていけなかった。今思うと〝人にどう見られてるか〟という事を気にし過ぎていたんだと思います。〝カッコ悪い自分を見せちゃいけない〟と過剰に意識して、カッコ悪さをカバーする為に一生懸命ダンスを練習したりする事に疲れちゃったんだと思います。「今日のゴウ、イケてないね」と思われるのが怖くて、ボロを出したくないから人に会いたくなくて…簡単にいうとプライドが捨てられなかった。

TDM:その状況から抜け出たきっかけは何だったのでしょうか?

ゴウ:コンビニで働きながら、いつの日か「あ、これでいいんだ」と思ったんです。僕が身を置いていたダンスやアパレルの世界は、どちらかというと華やかで皆が憧れる世界ですが、それがスタンダードになり過ぎていて、パフォーマンスして「今日もよかったよ!」と周りから言われてこそ生き甲斐で、それがないと幸せを感じられない様になってしまって、たわいも無い事はつまらない事と思い込んでいたんです。

コンビニや運送屋で働きながらさまざまな人を見ていく中で、朝起きて、働いて、テレビ見て、夜寝てといういわゆる普通の暮らしをしている人達と触れるようになって考え方が変わっていきました。皆、カッコいいとかカッコ悪いとか関係なく、日常の小さな幸せを感じながら、ただ目の前の人を大切にする為に生きている。それが普通なんだと思えたら楽になってきて「カッコよくなくていいじゃん。背伸びしなくていいんだ。」とようやく思えたんです。1年程かかりましたけどね。

TDM:そこで気づきがあってダンスシーンへ復帰出来たんですね。

ゴウ:その時、恥ずかしかったけど思い切ってCHOTOに電話してみたんです。そしたら凄く喜んでくれて、すぐ会う事になり「ダンスまたやりたいなら今度SPEED STAっていう新しいチームをやるから一緒にやろうよ!」と誘ってくれたんです。それからSPPED STAとして活動して、29 歳頃にはNAOと群青と「土」というユニットをやったり、バイトをしながらダンスメインの生活をしていました。

31歳か32歳の誕生日にCHITOと池袋のクラブBEDにて。

 

■「これをやる為に今までいたんだ!」

 

TDM:そこからどのようにしてヨガに出会うのですか?

ゴウ:ヨガを始めたのは31歳の時です。前の奥さんがヨガのスタジオに通っていて、そこのスタジオが無料で受けれるキャンペーンをやっていたのでたまたま行ってみたらハマったんです。簡単に言うと「これをやるべきなんだな」と感じました。

僕は人前で見せる踊りより、1人で黙々と入り込んで踊っているのが一番好きで、その入り込んだ感覚が出せたパフォーマンスが評価されてたし、勝手に身体が動いて音になりきるような感覚が凄く気持ちが良かった。だからずっとそれを求めて踊ってきたのに、なんとヨガをやったら一瞬でその状態になっちゃったんです。

自分が居いるんだけど居ない様な、それでいてスッキリしていてキャパが一気に広がる感覚。最初に行った時に既にそういう状態になって「うわー!気持ちいい!」と思ったんです。それから自然とヨガをやる方が増えていって、結局ダンスは辞めてしまいました。

 

 

TDM:並行してダンスもやっていこうとは思わなかったんですか?

ゴウ:ヨガを始めて、夜に活動するのが辛くなってきたというのと、ヨガをやると感覚が冴えてきて、全てに感謝の気持ちを持てるというか、凄くシンプルなところに戻れる。「なんなんだろうこのヨガの力は!」と思って、ダンスの快感を超えたものがヨガにあると思ってきちゃったんです。

ダンスはやってる以上評価があるし、どう見られてるかという事を捨てきれないけど、ヨガは自分の範囲でやっていればその人が輝くんです。内面から輝くのがヨガで、外見も気にしなきゃいけないのがダンスという風に見えてきた時に、僕の中でシーンに出てパフォーマンスするのは終わったなと思いました。ダンスを追求してる仲間はとてもカッコいいけど、自分は違うなと。ヨガに出会って「これをやる為に今までいたんだ!」と思えたんです。

TDM:〝出会ってしまった〟という感覚なんですね。

ゴウ:『バカヴァット・ギーター』というヨガの有名な聖典があって、その6章に〝ヨガに出会う人というのは前世で準備が出来てる人だ〟と書いてあるんです。そこまで来た人は、今生で肉体を得て何かを探してる人だから、ヨガに出会った瞬間に「あ、これだ!」となるんだそうです。大体の人が「ヨガに出会ったきっかけは何ですか?」と聞くと、身体を壊したからとか、鬱病がきっかけでとか、やらざるを得ない状況に追い込まれて始めている。これは5000年前くらいから言われてる事だそうで、まさに僕もそんな感じでした。

 

TDM:ヨガの習得は大変だったと思うのですが…。

ゴウ:最初は専門誌を買って〝ヨガとは?〟という事を勉強して「やっぱりブッダと繋がってるんだ、へぇ~。」みたいなところから始まりました。そして、「〝覚り〟とはどんな感覚なんだろう?自分の軸になってる部分がすごくクリアになるようなスッキリ感がずっと続く感じなのかな?ブッダは全部が見えていて、何の不安も悩みもない感じだったとして、そこに至るプロセスがヨガだったとしたら…これは価値があるな!」と思うようになってきて、どんどんハマっていきました。

身体がぐちゃぐちゃってなってると、心が整わず、ヨガの聖典に書いてあるような知識が読み切れないんです。「意味わかんない!」ってなっちゃう。だからヨガに出会って最初の段階がまずはポーズと呼吸。ポーズをして身を清めていくと勝手に健康になって、身体も柔らかくなって整う。身体が整ったら心が整って、心が整ったら知識が見えてきて知性が身につくんです。その段階になると聖典の意味がわかってくる。わかった人は、今度は覚りの道に行くんです。

 

■ゴールは一言で言えば「愛」。

 

TDM:ヨガを始めて自分の中で変わった事はありますか?

ゴウ:考え方がシンプルになって迷いがなくなりました。ダンスをやっていた時は、僕の中で勝ち負けがあって、なんかいつも闘っていた。カッコよく輝くダンサー達を心のどこかで妬むというか羨ましがっていたけど、今はもうそういう感情はありません。人はそれぞれ生まれ持った役割が違うだけで、役割が違うから持っている道具が違って当然だし、センスが違うのも当然と思える。

ヨガを始めた当時は、DIESELという洋服ブランドで働いていたんですが、接客一つとっても何の迷いもなくなって、無理して買わせるとかではなく、シンプルにその人が必要で欲しいか欲しくないか、欲しかったら買えるか買えないか、何が欲しいか分かってないけど欲しい人は探してあげるだけ、というスタイルになったんです。そしたら自然と売上が上がるようになって、入って2年目で副店長に抜擢され、売上管理や後輩を育成する役割を任されていたんですが、その裏側にはヨガがあったという感じですね。

 

 

TDM:現在のライフスタイルを教えてください。

ゴウ:朝は4時半ぐらいに起きて、僕たちは〝沐浴〟と表現するシャワーを浴びて、ある程度身の周りをきれいにしてから、座って1時間くらい瞑想します。その後今は6時からZoomで師匠のクラスを30分聴いて、その後7時までインスタライブで朗読をして、火曜と隔週日曜は自分のスタジオradhika yogaの企画で瞑想を30分やり、その後クラスがある時は8時からクラスをやり、10時からの座学のクラスをします。

座学のクラスがない日は師匠のお手伝いをしていて、師匠の本の在庫管理や印刷の発注をかけたり、師匠の特別講座の会場アレンジをしたり、いわゆる弟子のやる事をしています。それがない日は寝てますね(笑)。だいたい昼前には眠くなっちゃうんですよ。そして午後からまた仕事して、夜も師匠のクラスを聴いてから9時くらいに寝ます。大体そんなルーティンですね。

 

2018年に行った曹洞宗大本山總持寺での特別クラスの様子。約100人が参加。

 

TDM:そんなライフスタイルの中で、大切にしてる事はどんな事ですか?

ゴウ:僕は、今は特に伝統に従う事が一番重要かなと思っています。自分に寄り添い過ぎて伝統を忘れるとエゴになってしまうので。でも、伝統に従い過ぎると無理が生じて、身体を壊したり心が壊れたりするので、伝統の教えには従いつつ、自分の歩幅も守るというスタンスが大事だと思います。
ヨガで最も重要なのは、最終的なゴールをいつでも見ている事なんです。ゴールとは一言で言えば「愛」。人を許す、人を受け入れる、人を信じる事。もしくは、自分を許す、自分を受け入れる、自分を信じる事。他にも、人を喜ばせたい気持ちや、人を幸せな気持ちにさせたいという気持ちも愛からくるもの。その「愛」を持っている場所にずっと立ち続ける事が覚り。これが人間の中で一番価値のある生き方だと解いてるのがヨガなんです。

こうじゃないといけない、ああじゃないといけないという物質的な考え方を洗っていく。お金があろうがなかろうが、偉かろうが偉くなかろうが、知識があろうがなかろうが、誰かを許せるほうがいい。だから自分を見つめて自分を許して、それでいいんだよと言える自分になった時が完成。その為に毎日ヨガをするんです。

2018年に行ったハワイ・アラモアナでのヨガフェスタの様子。

 

■〝何の為に踊ってるのか〟という事を大事にするべき

 

TDM:ダンサーにもヨガはおススメですか?

ゴウ:もちろんです。ダンスをやってて、もっと柔軟性を高めたり可動域を広げたい人はまずヨガをやってみてください。今はコロナで行けませんが、僕はインドに行くと、お寺で皆で演奏したり歌う集会のような所で「踊れ!踊れ!」と言われてHIP HOPを踊らされるのですが(笑)今はダンスの練習なんて一切やってないけど、普通に昔やってたように動けています。

ヨガをやってるから身体の流れが出来てるいるんだと思うんです。自然に動きが繋がっていくので、音楽に溶け込む感覚で何にも考えずに10分とか途切れず踊ってしまう。それもヨガをやっているから〝考えずにやる〟という事が得意になっているおかげだと思います。だから、そういう意味でもダンサーにはヨガは凄くいいと思いますね。僕がこうやって発信する事で、HIP HOPやブラックミュージックが好きな人達がヨガという文化にちょっとでも触れて「あ、なんかいいかも。」と思ってくれたら嬉しいですね。

 

 

TDM:では最後に、読者のダンサーたちにメッセージをお願いします!

ゴウ:〝何の為に踊ってるのか〟という事を大事にするべきだと思います。結局はこれもヨガの教えになっちゃうんですが、パフォーマンスで言えば、やっぱり自己満足で終わるようなパフォーマンスはパフォーマンスではないと思うんです。厳しい事を言うようですが、人を喜ばせる為に僕らは生まれてきてるので、誰かの前でパフォーマンスをするのであれば、目の前の人に愛を配るつもりでパフォーマンス出来るといいかなと思います。

あとは、いつでも自分を大事にするべき。難しいけれど、自分を卑下せず出来るだけ認めながら、結果にこだわり過ぎずに、やれる事はしっかりやる。結果というのは与えられるものだから自分で作ろうとせずに、失敗しても、次のステップの為の〝成功〟だと思って続けていって欲しいですね。

TDM:これからの活躍も期待しています!本日はありがとうございました!

 

 

interview & photo by AKIKO

edit by Yuri Aoyagi

’21/1/20 UPDATE

 

 

★ゴウ主催のスタジオradhika yogaの情報はコチラ!

About the author / 

tokyodancemagazine

Related Posts


Post Tab

最新イベント