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DANCERS COLLECTION 10周年特集 DJ MAR SKI

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B-BOYやダンサーから絶大な支持を受ける原宿のアパレルショップ「DANCERS COLLECTION」が、この11月に10周年を迎える。原宿というファッション激戦区で10年間変わらずに愛されるこのお店のオーナーであり、現在、国内外問わず数々のビッグイベントのDJとしても活躍するDJ 、ワークショップ講師など、多才な顔を持つDJ MAR SKIに、お店を始めた経緯やHIP HOPカルチャーへの想いなどを聞いた。

 


 

  • DJ MAR SKI

ダンスバトルイベントの DJとして国内、国外問わず活動中。ブレイクダンスのイベントでは数々の世界大会に招待され、サウンドコントロールの DJ を務めている。多岐にわたる活動が世界から認められ、HIP HOPというカルチャーを作り出した世界最大の組織「UNIVERSAL ZULU NATION」のオフィシャルメンバーの1人である。UNIVERSAL ZULU NATIONのメンバーとしてHIP HOPカルチャーの歴史などのワークショップも数多く行なっており、東京バンタンデザイン研究所高等部ブレイキン専攻の非常勤講師も勤めている。

 


■ チームの衣装が即日持って帰れるお店を作りたかった

 

TDM:まずはダンサーズコレクション10周年おめでとうございます!

MARありがとうございます。おかげさまで、大阪が5目年、東京はこの11月で10年になります。僕というより、スタッフが頑張ってくれたおかげですね。

TDM:そもそも、なぜダンサーズコレクションを始めようと思ったんですか?

MAR世界を見ても、HIP HOPのお店はあってもダンサーのお店は少ないという事と、ずっとストリートに特化したアパレルショップをやりたいと思ったんです。ストリートダンサーは、出るイベントを決めて、音楽を決めて、振りを決めて、ショーが出来上がった後、最後に「じゃあ衣装どうする?」と、衣装は一番短いスパンで決める事が多いんです。
自分もダンサーとして活動してた頃、かっこいいデザインの衣装で揃えようと思った時、俺のサイズだけないとか、人数分揃わないとか、もどかしい事が結構あって、皆で揃えられる衣装が、即日持って帰れるお店があればいいなと思ったのがきっかけです。
うちは、アパレルでもあるんですけど、プリントや刺繍、ロックミシンなど、物作りをメインにしていて、チーム単位や個人単位でも、好きなデザイン・色・サイズで、「今日これからショーなので、3人分作ってください」と、手ぶらで来ても即日衣装を持って帰れます。小ロットでも出来るのが強みですが、それにはプリントのシステムを持ってないといけないので、システムを最初に入れて、勉強と手探りで始めました。

TDM:最初から原宿にショップを出店するって凄い事ですよね。

MAR通販などで小さくやっても全然よかったんですけど、僕がリスペクトしている起業家達に、「お前はマクドナルドやスターバックスに今から対抗しようと思う?」と言われたんです。もちろん個人で一からそこに対抗していくのは大変なので、答えはNOですよね。結局それはどういう事かというと、小さくやればすぐ真似されちゃうけど、見せかけでもいいから、この場所にドンと出して、〝こんなの真似出来ない!〟と思わせる事でライバルを削ってオンリーワンでいけという事。
もちろん実店舗を持つと、家賃や人件費などのリスクもあるし、赤字だった事もいっぱいありますが、そのおかげか、なんとかやりくりして独占市場でやってこれた気がします。

 

 

TDM:元々は、ダンスだけをやってらしたんですか?

MARダンスももちろんやっていましたが、実はアパレル経験も長いんですよ。20歳くらいの時に九州から上京してきて、ダンスをやりながらあるハイブランドのオフィスで6年間働いていて、TOP NATIONというお店が渋谷が出来る時にヘッドハントされて、そこで6年間店長を務めてから独立し

たんです。結局12年間アパレルをやって、その後2年間個人事業でやって、35歳の時に始めたので、実はずっと洋服屋さんをやってるんです(笑)。
商品管理から接客までいろいろ経験して、その中で仲良くなった人達は、今はいろんなハイブランドで働いていたりして、洋服屋のコネクションも自然に出来ています。

TDM:しばらくはダンスとアパレルの二足のわらじだったんですね。

MAR務めていたハイブランドの方は、社員になっちゃうと融通が利かなくなってダンスが出来なくなるので、バイトという形でやらせてもらっていて、ほぼフルで働きながら、途中で早く上がらせてもらって遅い時間にレッスンをやったりしてました。
結局、ダンスでご飯は食べれるくらいの時期はあったんですけど、当時のダンス界は、良くも悪くもそういう時代じゃなかったから、ダンスだけで生きていこうと思ってなかったんです。僕は、2001年から「三度の飯よりBREAKIN’」というイベントもオーガナイズしていたので、自分が得意な所は〝洋服とイベント〟だと思って、アパレルをやりながらイベントのオーガナイズなど、シーンのために貢献していけるような立ち位置になりたいなと思っていました。

 

■HIP HOPの4エレメンツのような経営スタイル

 

TDM:この10年間で一番大変だった事はなんですか?

MARやっぱり立ち上げの時が一番大変でしたね。立地的に、家賃×保障金10カ月を最初に払わないといけなかったし、それに内装も仕入れもしなきゃいけない。でも、商品がないとオープン出来ないのに、営業実態がないと納品出来ないという独特なルールがあって、それは双方の信頼関係の問題なので当然だと思うですが(笑)、しょうがないので、商品が何もないのに無理やりレセプションという感じでオープンして、そこから商品をどんどん入れてやっと形を作ったんです。
それに、最初は信頼がないので、キャッシュ・オン・デリバリーで入金しないと商品を送ってくれないから、Tシャツ100枚入れたくても、その分のお金をまず用意しないといけないし、全てにいちいち送金手数料等もかかる。
売り上げが滞ってキャッシュフローが間に合わない時もあったから、スタッフには給料をあげてましたけど、僕は無給の時期が長くて、ヒーヒー言ってましたね(笑)。最初の2年間はトータルで10日も休んでないと思います。会社にも泊まってたし、凄く大変だったけど、そこからずっとついてきてくれているスタッフもいて、皆が頑張ってくれた。
でも、気持ちだけでは絶対ついてこれないから、売上が上がったら人件費も上げていくようにしたり、そういう面でバランスをとるのも大変でしたね。

TDM:その状況が落ち着いてきたのはいつ頃ですか?

MAR4、5年目くらいの時かな。借金の返済もしつつ、なんとなく赤字じゃなくなってきて、知名度もちょっとずつついてきた。でも、そうこうしてると今度は、機械を新しく買わなきゃいけなくなったり、売上が上がると在庫が抱えられなくなるから、倉庫や事務所を借りないと回らないとか、別の問題が出てきた(笑)。そこで、ちょっとでも快適になるようにスタッフのために近くに事務所を借りました。

TDM:スタッフは現在何人ですか?

MAR東京・大阪合わせてアルバイトを入れると20人くらいですね。ダンサーの子も多くて、空いてる時間にお小遣い稼ぎをしてもらうというスタンス。僕はそういう子には、働いてもらいながらも、「ダンスの現場に出なさい」「ダンス頑張りなさい」って言ってるんです。だから、有名なダンサーの子も多いんですよ。そういう子達が看板になって、お客さんが来てくれたりしてる。だから、けして僕1人の力でやってきたわけではないんです。

TDM:ダンスの技術と接客の技術は違うと思いますが、ダンサーの先輩であり経営者として、どんな事を伝えていますか?

MAR僕が死んでもやっていける会社を作る事が大事だと思っています。今僕は店頭に立ってないけど、僕がいるから来るというお客さんもいっぱいて、先輩方が来ると接客に呼ばれたりする(笑)。そういうお客さんもなるべく今お店に入ってる若い子とシェアして仲良くやってもらえるようにしたいですね。
スタッフ教育としては、接客術は自分なりのメソッドで「こういう風にやるといいと思うよ」というのを伝えて、5W1Hの手法で、マーケットの拡大の仕方、意識や立ち回り方をシェアしてます。うちは毎日朝礼をやって、製作チームとお店チームが今の状況をシェアして、円滑に回るようにもしています。
一応うちは、HIP HOPの4エレメンツ(DJ ・PAP・GRAFFITY・BREAK DANCE)と一緒で、B-BOYや、HIP HOPダンサー、ポッパーなどいろんなスタッフがいて、それぞれが自分の立場でやれる事をやっていく360°マーケティングというスタイルなので、それぞれで顧客を持っているんです。だから、お客さんにはダンサーだけでなく、グラフィティライターもラッパーもいるし、店舗以外でもアーティストのライブの衣装とか、僕もDJとして自分のアプローチの場所を持っている。だから10年間やって来れたんだと思います。

 

 

TDM:細かい戦略があっての10年なんですね!

MAR僕は、自分が一番上のピラミッドを作るのではなく、皆で二人三脚というような感じで、逆に誰がオーナーだか分からないようにボヤかすやり方をしてるんです。
だから、Tシャツを作るお客様に対しても、ボディにうちのロゴを一切入れないんですよ。こちらのエゴでタグやロゴが付いていて、「それダンコレで作ったんだね」って見えちゃう事は、ダンサーにとって結局衣装が被っちゃってる事に近い。どこでどうやって作ったのか分からないほうがいいと思うんです。でも、実は、ある大きいバトルの大会に出てるほどんどのダンサーがうちで作った衣装だったりする。表に出さず、影(シャドー)で顧客を作るシャード―ロックというスタイルなんです。
そして、うちは一切キッズをやってないんです。キッズのお店になったら大人の足が遠のくでしょ?でも、先輩方や先生が買い物してるお店ならキッズは憧れる。ボディで作る分にはいくらでも選べるんですけど、キッズに対しては「大人になったらここに来いよ」的な感じで、店頭には大人サイズしか置いていません。
あと、売れる売れないに関係なく、カルチャーとしてスプレー缶を置いていたり、HIP HOPのアイコンでもあるCAZALのサングラスがあったり、分かってる奴が仕入れをしている事を示して、誰が来ても対応出来るようにしています。

 

■カルチャーを伝えていく事が大事

 

TDM:現在、オーナー業とDJの他に、何か活動はしてますか?

MARHIP HOPのカルチャーワークショップをやったりしていますね。社会人のスキルを活かして、パソコンでスライドショーを使って歴史を見せるんですよ。「N.Y.はこの辺で、ブロンクスはこの辺だよ」とか全部画面で見せて解説をしていく。ターンテーブルも持ち込んで、スクラッチがどうやって生まれたのかとか、当時の曲など全部スライドで見せて、目と耳と五感で体感してもらうんです。
俺1人の知識を教えるんじゃなくて、その時代を作ってきたレジェンド達から聞いた情報をシェアしている感覚というか、「B-BOYってクール・ハークって奴が名付けたんだよ」などを、ぼんやり言うんじゃなく、確かな情報だけドロップしています。
今HIP HOPのクラスを持っている先生達でも、HIPHOPの骨組みや仕組みを知らない人が増えてきている。そういう風潮を改革していこうとしているakihic☆彡にお願いされて、今年コラボワークショップをしたんですが、70人くらい来てくれて大盛況だった。キッズよりも先生クラスの子達がいっぱい来てましたね。

TDM:MARさんくらいの年代の方で、パワーポイントで資料をまとめて…って出来るダンサーは少ないんじゃないでしょうか?

MAR先輩方がどういう事やってきたかっていうのを繋いでいかないといけないと思うんです。自分がZULU NATIONをやっているというのもあるし、カルチャーを伝えていく事を、お金どうこうではなく、時間が合えばやっています。
正しいHIP HOPの良さを伝えて、少しでもいい形で広がっていってくれればいいなと思ってます。
知ったかぶりの適当な事を言ってる奴に、授業料払ってネットに載ってる情報を教えられてる子達もかわいそうだから、そういう奴らを正していきたいという気持ちもあります(笑)。
でも、「俺がこう言ってるからこれは絶対こうだ!」という事ではなくて、海外に行って恥をかかないように、これぐらいは理解しておこうという事をシェアしています。
例えば、アップロックはB-BOYのダンスじゃないんですよ。ビックリするでしょ?皆が知ってるアップロックは、ロックンロールの方のROCK DANCEというブルックリンで生まれたギャングのダンスのジャークって部分を、ブロンクスのB-BOYが取り入れたものをアレンジしたもの。
今は〝アップロック〟で成立してるんだけど、元々は違うジャンル。だから、アップロックとトップロックは全然違うから、例えばアップロックバトルでB-BOYがトップロックやってたらマジで笑われちゃうんです。

※(ZULU NATION):アフリカ・バンバータが創設した、世界最大のHIP HOP団体

 

 

TDM:ブレイクダンスがオリンピックの種目になる事についてはどう思いますか?

MARブレイクダンスが市民権を得たのはいい事だけど、ルールの精査や、HIP HOPの事件性の側面もクリアされなきゃいけないし、カルチャーがスポーツになる瞬間の問題が多々あるよね。ブロンクスのオリジネーター達は、ヨーロッパにハンドルを握られる事に抵抗もある。一番怖いのは、「HIP HOP興味ないっす。僕ブレイクダンサーなんで。」みたいな、HIP HOPを聞いてないけど技は凄いみたいな子が出て来ちゃう時代が来るんじゃないかって事。カルチャーを大事にして初めてB-BOYだし、日本代表も、そういうのを背負って出て欲しい。だから、そんなトンチンカンな事にならないためにも、俺みたいな奴がワークショップをやってるんだけどね。

TDM:経営者からカルチャーワークショップまで活動が多彩ですよね。

MARHIP HOPやストリートのカルチャーで起きてる事や流行ってる事は、ファッションと結構イコールだったりするので、カルチャーを知ってないといい商品も作れないし、商品の目利きも出来ないから、そんなにかけ離れてはいないと思います。
例えば、マネキンにN.Y.ヤンキースのキャップを被らせてるなら、足元はL.AブランドのVANSやコンバースより、プロケッズがいいとか分かってないとカッコ悪いじゃないですか。見てくれだけで薄っぺらくないように、そういう所はスタッフ達にもシェアしていますね。

 

TDM:今後の展望を教えてください!

MAR今年の10周年に向けて新しい企画を立てようかなと思っています。今一番売れてるのが、MIZUNOとコラボしたダンサー用の膝サポーターなんですけど、昔はバレーボール選手の膝サポーターをダンサーがつけてたから、そのカウンターパンチをやろうと思って、ダンサー向けに作ってバレーボール選手に広めようと作ったんです。それがバッチリハマって、バレーボール選手に相当評判がいい。そういう面白い商品も大手メーカーと作れるようになったので、今後もいろんなブランドとコラボして面白い別注を出したいですね。
HIP HOPって、カウンターカルチャーの中で一番成長したものだと思うので、僕らがやっているアングラでマイナーなカッコよさがビジネスに繋がる事も多いから、アイディアを出していっています。
他にも、会社の業務的にも視野を広げて、店舗を増やすとか、何か新しい事をやったり、10周年の1年はそういう年にしたいなと思っています。

 

 

TDM:今後の仕掛け、楽しみにしています!本日はありがとうございました!

 

interview &edit by Yuri Aoyagi
photo by AKIKO
’19/10/20 UPDATE

 

 

★今年10周年を迎えるDANCERS COLLECTIONの詳細はコチラ!

DANCERS COLLECTION」原宿本店

 

DJ MAR SKI×akihic☆彡のカルチャーワークショップは次回SSDWで開催!

■日時 2019.11.16(SAT)19:30 ~ 21:30(受付開始:19:00)

■会場 studio mission 702

公式サイト   ※エントリーフォームより受付しています。https://www.streetdanceweek.jp/event/ssdw-free-ws
締切:11/9(SAT)

 

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tokyodancemagazine

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