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ダンス・ダンス・アジア東京公演2016特集 松田尚子×Vince Mendoza

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牧宗孝(日本)、Vince Mendoza(フィリピン)、LION T(ベトナム)の演出家による3作品が多国籍なダンサー達によって一堂に会するDANCE DANCE ASIA(以下DDA)東京公演がまもなく開催される。今回、その中で、「Team Vince」として出演する松田尚子とその演出家Vince Mendozaに話を聞いた。稽古場でも2人の感性は共鳴し合い、その他のメンバーとも絆が深まっているようだ。国や世代を超えて交わることの無かった彼らの感性がDDAを通じて混じり合い、どんな化学反応を見せてくれるのか楽しみにしていよう。

 

  • 松田尚子
    あらゆるジャンルを経験した振付家、舞踊家。2007年スペイン カナリア諸島国際ダンスコンテストで「21MASDANZA」にて杏奈振付「NOISE ACT」でグランプリを獲得。2009年ソロパフォーマンス「カリソメ」上演。近年は、原田薫、YOSHIE、Oguriとのユニット「BIG4」での活動のほか、鈴木裕美演出「スコット&ゼルダ」、小林香演出「DNA-SHARAKU」などミュージカルの振付も手がけている。

 

  • Vince Mendoza “Crazybeans”  from Philippine Allstars
    フィリピン出身。ダンサー、振付家。「UK B-Boy Championship」ポップ部門のフィリピン代表。
    2016年は、ブダペスト「Get Down」 ポップ部門、ベトナム 「Together Time」オールスタイルで優勝。同年、香港で開催された「SDK ASIA 2016」でTEAM Xとして優勝。ユニットPrince & Vinceでフランス、シンガポールにて開催された「Juste Debout」に参加(2010年、2012年、2016年)。LACOSTE、DIESELなどのショーの振付や、MV、CMなど多数手がける。2015年、Philippine AllstarsのメンバーとしてDANCE DANCE ASIA東京公演に出演。

 

 

■フィリピンと次世代の為に必要な投資。

 

TDM まず、お2人の、普段の活動を教えてください。

 

 

Vince 普段はフィリピンのシーンを盛り上げるため、また、みんなに楽しい時間を過ごしてもらうために、国内外のバトルに出たり、ダンサーとしてだけでなくMCとしてもダンスイベントのサポートをしていいます。特に、フィリピンのカヴィテ州 (Province of Cavite)にはたくさんイベントがあります。ほかにも、テレビCMの振付をしたり、インストラクターもしています。ただ、今は振付やインストラクターなどでお金を貯めて、それを自分自身が学び、トレーニングをする時間に投資しています。それは、私のクルーであるPhilippine Allstarsのメンバーたちも同じです。私だけではなく彼らもまたいろんなスタイルを持っていて、振付やインストラクターの仕事をしています。Philippine Allstarsでダンスイベントをオーガナイズもしますが、スポンサーはいないので、当然お金がかかります。しかし、私たちはそれをやることが好きですし、その時間が何にも換えられません。それによってフィリピンの文化が盛り上がりますから。子供たちがバトルに参加したり、DJやグラフィティアーティストたちとクラブタイムを楽しんたりすることは必要なこと。また、国外から注目されて、ジャッジやゲストに招かれることもあるので、イベントを開催することは重要な投資だと思っています。私たちPhilippine Allstarsには、次世代のフィリピンのダンスシーンを担う子供たちの成長の為に、という共通認識があります。

 

 

 

TDM 次世代に伝えていく時に大切にしていることはありますか?

 

 

Vince p19自分を良くするためにどういう心持ちでいればいいかを伝えようと思っています。神のご加護を感じ、彼らが大きくなった時にさらに次世代にそれを伝えてあげられますし、私より優れた教育者になれるはずです。また、教わっている人に刃向かうようなことをしてはいけない、必ずリスペクトを持って接して欲しいということです。

 

 

TDM フィリピンのダンスシーンは今どんな状況ですか?

 

 

 

Vince
たくさんダンサーがいますよ。アンダーグラウンドからメジャーまで、フィリピンのシーンのために貢献しています。名前を挙げるなら、SAS Crew、Original Flavour、LSDC、UP STREET、Xtatic Crew、Reppin’ Down Marikina、Baguio、Alab Amplified、Monster Crew、Mula etivac、Dance Community in Davao、他にもたくさんオリジナルスタイルのクルーがいます。ダンスだけで稼げている人は少ないですが、みんな他で得た収入をダンスに投じています。

 

 

 

TDM では、松田さんの普段の活動は?

 

 

 

松田 13私は、仕事の割合としてはインストラクターが多いです。プレイヤーだけで生活するのは難しいですし、それが自分のやりたいこととも少し違うので。 ほかにもミュージカルの振付などをやりながら、自分の作品を発表しています。最近のダンススタジオにはレベルが高いダンサーが結構いるので、私が教えてはいますが、そこから私自身が影響を受けるし、自分のスタイルを確立したり、レベルアップさせてもらっています。なので、教えを仕事としで割り切っているわけではなくて、自分の好きな音で好きな踊りができる、作品を作る上でのインプットの場になっています。

 

 

■なにか人と違う光るものを感じたメンバーが集結。

 

 

TDM
今回の「Team Vince」のメンバーが集まった経緯は?

 

 

 

Vince
p05みんなジャンルもスタイルも違いますが、出会った時に、なにか人と違う光るものを感じたので、声をかけました。みんな謙虚なので、問題なくまとまれています。マレーシアのKhenobuとは、2回仕事を一緒にしたことがありました。シンガポールのBirdとはクラブタイムで意気投合したんです。インドネシアに行った時にSaltに出会い、貪欲に学ぶ人だなと感じました。フィリピンのBboy Allenは15歳ですが、彼が4歳からの付き合いです。Sam (Rhosam V. Prudenciado Jr. “Sickledsam” )は、外国でのイベントで見かけたのですが、世界中を飛び回っていて、素晴らしいと感じました。そして、尚子さんは、昨年DDA東京公演でのBIG4の作品で知りました。見終わったあと、鳥肌が立ち、涙が出ました。インターネットでも動画を見ましたし、とても感銘を受けたんです。

 

 

■創るプロセスが同じでも素材が違っておもしろい!

 

 

TDM 今回の作品の仕上がりはいかがですか?
 

 

 

Vince とても素晴らしいですが、さらに毎日、わずかながらも変わっています。今はさらなるレベルアップを目指している段階です。

 

 

TDM 今回のメンバーとのリハーサルはいかがですか?

 

 

 

松田
まず、出会ったことのなかった人たち、しかも年代も国も違う人ですし、なんならAllenは産めますしね(笑)。でも、演出家がやりたいことに向かってひとつのものを完成させていくプロセスはこれまで経験してきたことと一緒。ただ、そのための材料、ダンサーという素材が普段のエリアとは違いすぎていて、それがおもしろいです。

 

 

 

TDM 振付は松田さんもされているんですか?

 

 

 

松田 いや、ソロはやっていますが、その他は他の方の振付なので…大変です(笑)。普段とは違う私をお観せできるのではないかと思いますよ。Vinceの演出は、振り付けだけでなく、それぞれのキャラクター設定もしっかりしているのがおもしろいところだと思いますし、それも見所です。

 

■ダンサーとしてだけではない視点を持った演出のできるダンサー。

 

TDM Vinceさんの演出はいかがですか?

 

 

 

松田
Vinceの中にシーンのイメージがしっかりあって、それを私たちに伝えてくれるので、みんなでそこに近づこうと毎日努力しています。また、踊るととてもかっこいいダンサーでもあるんだけど、ダンサーではない視点を持っています。この間、通しの前に、ダンサーの感情を出しやすくするためにアクティングのワークショップをやりました。急に笑ったり怒ったり、感情をコロコロ変えるようなインプロ。それをやることで変わったし、普通のダンサーにはない知恵だなと思いました。

 

Vince
p22今回の作品はダンサーひとりひとりの感情を観客にダイレクトに届けたいものなので、あの時はアクティングを重要視したワークショップをやりました。それによってダンサー同士のコネクションも、強くなります。これは学校だけでなく、先生として仰ぐべき多くの方々から学んだものの一つです。高校の時に受けた演劇のワークショップや演劇をやっている友人たちから学びました。大学ではダンスを専攻していたので、パフォーマンスのためのあらゆる肉体的要素を覚え、Philippine Allstarsのメンバーと出会い、彼らの人生に触れることで、感情や思想を伝えるための精神的なものも教えてもらいました。ただ、たくさん学んできたものをそのまま教えることはせずに、自分のやり方として消化していきます。そのために自分に向き合い、問いかけながら何度も実験します。それは孤独な作業です。

 

 

 

松田 なんか、わかる気がします。自分のスタイルを作るため、最初は真似から入る。自分がかっこいいと思うものをたくさん見つけて真似して、合わさったらそれが自分のオリジナルになると思います。
 
 

Vinceの筋トレがかなりキツくて身体が変わりました。

 

 

TDM 松田さんは高い身体性をお持ちですが、何か肉体的なトレーニングで意識していることはありますか?
 

 

松田 p20自分が踊る時に、その踊り方を幅広く選択できるように、柔軟かつ強靭な体でいたいと思っています。シンプルな筋トレを全体的にしますね。でも、今年9月にマニラで2週間リハーサルをしたんですが、Vinceの筋トレがかなりキツくて、身体が変わったんです。痛いところが減って、筋肉が守ってくれるのを感じました。シンプルなんですけど、あまりダンサーが好まない脚力へのアプローチなど、まんべんなくやりました。マニラから帰ってきた時に、私の筋トレもキツくなったので、クラスを受けている方たちがビックリしてましたね(笑)。

 

 

 

TDM
Vinceさんがダンスをするための肉体を作るために意識していることは?

 

 

 

 

Vince 読むこと、祈ること、学ぶことです。身体は魂と精神が作ります。きつければきつい時ほど、祈り、ポジティブに感じるようにします。何かへの祈りではなく、感謝の気持ちです。なぜなら痛みを感じることでそれは自らのパワーになるので、それへの感謝です。

 

 

 

TDM
一番影響を受けたダンサーはいますか?

 

 

 

 

Vince すべてのダンサーです。ただ、具体的に挙げるとすれば…バレエダンサーのミハイル・バリシニコフやGOGO BROTHERSです。そして、Team Vinceのメンバーみんなです。

 

 

 

松田
私も1人は選べない!特徴を言うと、セクシーなダンサーが好きです。なかなかうまく説明できないんですが、色気の漏れる人ですね。外見のセクシーではなく、内面から出る色気のある人。そういう意味でVinceは本当に色気があるんです。

 

 

 

Vince
Woo, yeah!

 

 

 

全員
(笑)。

 

 

■それぞれが抱えたストーリーを受け取って欲しい。

 

TDM 今回、DDAに関わってみていかがですか?

 

 

 

 

Vince p02私は昨年の東京公演に続いて2回目の参加になりますが、DDAは自分を含めてアジアのダンサーにとってとてもいい刺激になっているプロジェクトです。お金に換えられない時間になっていて、関係者の皆さんは私にとって天使です。毎朝、起きてここに居るという事実、尊敬する仲間たちとクリエイションできることが信じられず、毎日感謝しています。ダンスができることは神からの贈り物です。ダンサーたちとストーリーをシェアできることも喜びです。Allenの母親は病気で、その事実を心に抱えて踊っていますし、みんなそれぞれに何かしらのストーリーを持ってステージに立ちます。今回の作品では一人一人のその想いが観客の皆さんに語られていくことでしょう。それを想像するだけで心臓が高鳴ります。DDAには感謝しかありません。

 

 

 

松田 10私も、昨年に続いて2度目のDDAですが、今回40歳というタイミングでこの人たちと出会えたことに、感謝しかないし、それにはきっと意味があると思っています。私が持っていないものをみんなが持っているから、刺激的です。みんなダンスに対して真面目なので、ぶつかったりすることもありません。精神的なものが遠くないと思っていて、それがアジア同士ならではなのかわからないんですが。
今のVinceの話を聞いても感じましたが、贅沢なことが幸せではないし、何が幸せかをすごく考えさせられます。なので、DDAにはこれからも続けて頂きたいです。マニラで3週間、日本でもこんなにみんなとまたリハーサルができる環境はそうそうないですよ。これが続いていくことで、DDAに出たいと思ういいダンサーが集まるだろうし、いろんな面で向上していくプロジェクトになって欲しいと思います。

 

TDM 最後にお二人の今後の展望をお聞かせください。

 

松田
もう少しプレイヤーでいたいんですが、40歳を迎えて、あと5年踊れると考えた時に、踊れる間にいろんなものづくりをしたいので、そのための環境づくりをあと5年かけてやりたいと思っています。ダンサーだけでなく、舞台を作る上でいろんな人たちと出会って、私のことも知ってもらって輪を広げていきたいです。

 

 

 

Vince まず、フィリピンを代表するダンサーの1人として、トレーニングを積んで、バトルシーンを盛り上げたいですね。30分以上のダンス作品も作っていきたいですし、映画も作ってみたいですね。5年、10年かかるかもしれませんが。でも、もちろんずっと踊り続けていきます。
TDM
今日はありがとうございました!作品を楽しみにしています!

 

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 interview and photo by AKIKO & imu

’16/12/05 UPDATE

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tokyodancemagazine

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