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eggmanイベントブッキングマネージャー Co1

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渋谷という地で1981年にオープンして以来、音楽シーンを支え続ける老舗ライブハウスeggman。2000年代前半からはクラブ営業もスタートし、渋谷を代表するHIP HOPカルチャーの発信地として、現在、様々なダンスイベントが行われている。そのeggmanのスタッフとして働きながらも現役のダンサー、MCとして活躍するCo1。‟パフォーマー“と、イベントブッキングマネージャーという‟裏方”の、両方の側面からダンスシーンを見てきた彼に、リアルなダンスシーンの今と、今後の目標などを語ってもらった!


 

・CO1 (All I Do.) / MCこいち

 

 

地元(沖縄)で15歳の頃、ストリートダンスに出会い、その後に上京(埼玉)して都内を中心に本格的に活動を始める。
同時にダンサーとしての活動以外にも、MC(司会)、イベントオーガナイズ、イベントコンサルタント、キャスティング、マネジメント、デザイナー、振付、飲食店経営をするなど様々なキャリアを積み現在に至る。

日本のhiphop.RnB楽曲を使用した演出が多い事にも特徴をあげられ、アーティスト公認で楽曲使用するなどの活動に精力的である。

ここ数年では、地方自治団体との共同企画による「親子hiphop教室」「ストリートから学ぶ」など誰も経験したことが無いような波瀾万丈の人生を活かした体感型の講演会を行なっている。

ダンスイベント(ショー/バトル/コンテスト)にて主に活動しており、単体でもラジオや地方フェス、企業のパーティなど、あらゆる催しやエンターテインメントの場で司会として多数出演。
司会業としては年間50本以上出演を果たしている。

 


 

■ ‟仕事”というものが好きで、裏方も魅力的に思えた

 

TDM:ダンスを始めたきっかけを教えてください。

Co1出身が沖縄なんですけど、エイサーという伝統舞踊をしていて、その他にもマジックやサーカスなど小さい時からエンターテインメントされる事が大好きでした。
中学校の時に、当時インターネットが普及しだした時期で、海外のダンス動画を観たり、洋楽を聴くようになって、学校内で友達とフザけて踊ったり、近くの公園でB-BOYが練習してるのを陰から見たりしていたんです。

16歳の時に上京(埼玉)したんですけど、最初のバイト先で出来た友達の先輩がたまたまダンスの専門学校に通っていたのがきっかけで、ダンスイベントに行くようになりました。
初めてニュースクールやR&Bなど、オールドスクール以外のダンスを見て衝撃を受けて、誘ってくれた先輩たちとチームを結成しました。
僕は中卒で、専門学校の授業には参加出できないからレッスンを窓際で見てて、終わったら合流して練習したり、学校の公演を手伝ったりして、発表会に外部なのに出してもらったりもしてたんですよ(笑)。

TDM:ダンスイベントをやり始めたきっかけは?

Co1その頃からダンスイベントに出始めていたんですけど、あるクラブイベントで埼玉のダンサーと知り合って、初めて「家の近くにもダンサーがいる!」というのを知り、21歳くらいの時にやっとコミュニティが作れたんです。
そこで「イベント運営を手伝ってほしい!」と誘われて、手伝い始めたのがきっかけです。

 

 

TDM:それはどんなイベントだったんですか?

Co1「MADE IN SAITAMA(XITAMA)」という、町おこし的な感覚のイベントでした。
当時は埼玉のダンスシーンは他所と比べて確立されてないように感じて、看板になるようなダンスイベントで埼玉を盛り上げよう!っていうコンセプトで催してました。
でも、徐々に各々の活動も忙しくなって、僕もプレイヤーとして都内での活動も増えて仲間のペースが落ちてきて自然消滅のような形になってしまったんです。

その頃、多くて週1本、最低でも月2本くらいはeggmanのイベントに出ていて、お客さんが5人とかでも呼ばれれば修行のために出ていましたね。
東京のシーンを見ていくうちに、僕も上京したからには東京のトップクラスのシーンに居たいという気持ちになっていました。
そして、20代前半でイベントを単独主催して会場を借りた時に「場所を借りたら掃除して返そう」とか「機材の近くに飲み物を置かないように」とか、僕にとって当たり前だと思っていた心遣いに、今の店長が目を付けてくて「その心遣いはダンスシーンを大きく変えられるし、一番そういうのがユルい世界だから、強みになる!こっち側に来い!」と誘われました。
業界的に、給料面や体制的にも大変なのは分かっていましたが、最初は躊躇しながらもクラブ店員になる事を決心をしました。

TDM:人柄が評価されんですね!eggmanに入る事を決心された理由は?

Co1eggmanはシーンの中で本気でやりたい人達の登竜門でもあったし、シンプルに「毎日ダンスが見れる!」と思ったんです。
それに、バーテンダーが首でリズムとりながらお酒を作っている姿も「かっこいい!」と思ってたし、僕は‟仕事”というものが好きで、集中して何かをするのが元々好きだったので裏方にも魅力的に思えたんです。

ちなみに、15歳から働いてたので色んな経験のバイト自慢はめっちゃ出来ますよ(笑)。
10代で働いていた工場では、約8時間永遠にレタスをキレイに剥く、という作業があって死ぬ程キツかったんですけど、どのセクション行けば自分の得意が活かされて融通が利くかなどを考えるのが当時から好きでした。

 

■裏方の存在の重要さを伝えるのは俺しかいない!

 

TDM:クラブスタッフはどんな仕事ですか?

Co1バーテンダー、エントランス、テクニカル(音響/照明)、あとはイベントの主催者に力添えするブッカー(ブッキングマネージャー)が一体で運営しています。
最初はバーテンダーから始めて全ての事が出来るようになりました。
実際に働いてみて、たくさん怒られたりしたけど楽しかったですね。
同年代のダンサーと知り合ったり、ゲスト級のダンサーをたくさん見れたり、HIP HOPスティール(盗む)出来る場所だったのでラッキーでしかなかったですね。
照明も「音ゲーじゃないか!」と思ったり、性分的にオモしろかったんですよね。

 

 

TDM:ダンサーとの両立は大変じゃないですか?

Co1正直に言うと、「本当はダンサーとしてステージに立って誰よりも目立ちたいんじゃないか?? 」とか「才能や年齢で諦めの気持ちもあって裏方に逃げてるんじゃないか??」 とか、自分に問いかけたりする時は未だにあります。

いろんな仕事をディグる(掘る)作業をして興味を持ち続けた結果、いろんな事が気になっちゃって、コンビニの流通の速さとか店員の愛想とかにも感動するようになちゃったし(笑)、逆にサボってる働く人や、今の政治とかにも憤りを感じたり、異常なまでに考え込む癖のせいで全然行動に移せてなかったです。

でも、表舞台に出るからには思ってる以上に動かなきゃダメだし、今意識してるのは初期衝動の気持ちを忘れない事。一番最初にストリートダンスを見た時の「世界で一番カッコいいものだ!」と思った瞬間をモチベーションにして、今“ある事”について動いているんです。

TDM:‟ある事“とは?

Co1 ‟裏方“って、いないと何も始まらない大切な仕事なのに、ダンスシーンでは‟裏方“という事で下に見られている事に、僕もやってみて気が付いたんです。
裏方の存在を理解して絶対に損はないのに、無知な人が多い。
ダンサーと裏方の間に隔たりがあって、お互い相乗効果で成立しなきゃいけないのに、ダンサー側も適当なお願いや失礼な事を言うし、裏方側も気持ちが入らなかったりする状況が生まれたりするんです。

ダンサーは“ダンスが出来る人の言う事しか聞かない”という傾向があって、他のジャンルのパフォーマーよりその傾向は強いから、そこを変えなきゃいけないと思いました。
ダンサーの中にも裏方をリスペクトしてる人はちゃんといて、その方はやっぱりカッコ良いんですよ!
裏方の人も心広くパフォーマーに気を配れる人がいて、その相乗効果で凄く素敵なステージが作られた瞬間を見て「これだ!これをやりたいんだ!」って思ったんです。

僕自身も、音楽の在るシーンにいて、誰よりもダンスしてるつもりだったのに、「ダンスで飯が食えないからeggmanにいるんだろう」と思われるのが大半で、その感覚も変えたかったので、そこに変に気持ちが入りました。
「裏方の存在がどれだけ重要かっていうのを教えなきゃ!それを誰がやるんだ?いや、俺でしょ!」という謎の使命感を持ってしまったんです(笑)。
パフォーマーと裏方との接点を作れるのは、どちらの感覚も理解した間にいる奴にしか出来ないですから。

TDM:具体的にはどういう手段で伝えていますか?

Co1いろいろ試した中で1周して今は、MCの場やSNSで発信したり、飲みの席だったり‟話して伝える“というシンプルな形をとっています。
最近はありがたい事に、反響が良くなってきて伝わっているという実感は出てきましたが、その人が持ってる説得力とか影響力、HIP HOPでいうプロップスってのはすぐに得れないんで、思いを届かせるためには自分自身がある程度の立ち位置にいく事も重要なので、常に技術を磨き続けるしかないなと思っています。

 

■時代の変化と共に変わってきたダンスシーンの価値観

 

TDM:今のクラブシーンやダンスシーンの流れの中で、昔との違いなどは感じますか?

Co1感じますね。僕は、ダンスに限らずエンターテインメントというものは、パフォーマーが良いものを見せ、お客さんは感動した対価としてお金を払い、その中で皆が良い感覚を得られるというものだと思ってたんです。

僕が若い時は、集客できない限りはイベント側も運営もできないし、ダンサーも日の目を浴びる事がない。自分が誰かに伝えたいものがあったら、より多くの人に見てもらい”伝える努力”をしなきゃいけない、と教えてもらってきたので集客ノルマも当たり前だと思っていました。今でもノルマ制度が残っている理由は昔と変わらない。
でも、それが時代と共に価値観が変わってきて、今はそれをしない人が増えています。

主催の時には、人を呼べなかった子からお金を頂くのですが、以前、”伝える努力”(集客)の話をした事がありました。
そしたら、その子から「私達は自分たちで環境を選んでお金払って出てるのに何で説教されないといけないんですか?」って言われたんです。

その時にハッとしました。僕はステージに立つ上で何かを伝えたいし、有名になりたいというのは全員共通だと思ってたから「どういう感覚なんだろう!?」と。
でも、理解しない限りは並行線だと思い、その子とも話したし、いろんな子にも意見を聞いてみたら、同じように思ってる子も多かったんです。

そこで僕が感じたのは、彼らは青春でやってるというか、もちろんダンスでプロになる気がない子もいるし、カラオケとかに近いのかなって思ったんです。
別に歌手になりたいわけじゃなくて、歌を歌ってストレス発散したり、アーティストの真似をして気分が良かったりとか。

アンダーグラウンドにいるからには何か意思と目的があると僕が勝手に勘違いしてたけど、それを理解してからは納得はしたんですよね。
今はSNSの発達で、ファンを1人から2人と刻むように作らなくても、気づいたら1万人が応援してくれるかもしれない時代だという事もあると思います。映えっすね(笑)。

 

TDM:その価値観を埋める事は可能なんでしょうか?

Co1良くも悪くもダンス人口が増えて、裾野が広がった事によって、僕らも寄り添っていかなきゃいけない。
僕が出した1つ結論は、その層をステージに立つ‟お客さん“と思う事にしたんです。
僕は1人1人をアーティストと勝手に思っていただけ。これは諦めとか冷めた感覚とは違って、濃度が薄くなるのは1個の繁栄の形だと考えています。

物議はあると思うんですけど、それだけダンスシーンが繁栄していて、そういう感覚を持った人も行けるくらいクラブというものも信用を得られたんだと思います。
怖くてドラッグがあって不良がたくさんいるイメージから逸脱できたと思えば、僕らがやってきた事は正しいし、少し後ろに引いて考えてみたらハッピーな事なんじゃないかなって。
それなら、“お客さん”なら更に好きになってもらいたいし、そういう人が増えた結果、そのお客さん達の中から、また少し心の変化があればプレイヤーとしてシーンに対してアプローチしてくれるかと。

 

TDM:そう考えれば共存出来そうですね。

Co1イケてる奴の割合は、10人にいたらその中にだいたい1人か2人。その割合は昔からそんな変わらないので、それが全体100人になったら、イケてる奴も10人に増えているという事。その10人には僕らと同じ感覚で言っても伝わるだろうけど、僕が気持ちを向けてたのは理解がなかったその他90人に対してだった。
それなら僕らが向く角度を変えて、理解してくれる人に届けるのが近道なのかなと思っています。
人数的には増えてるなら、もっと大きな事ができるし、もっと面白い事になるんじゃないかなと。

 

■理想のスタイルは‟サーカス“!

 

TDM:現在はどういうイベントをやっているんですか?

Co1 : 僕が今現在も開催している「MADE 1N TOKYO.」は、昔の仲間への当てつけの意味もあるネーミングですが、誰よりもダンスが好きで、誰よりもダンサーを把握してる自負がある僕がやるからには、濃度強目でコンセプティブにしています。

色濃いダンサーで全体を構成して、今は必ずラッパーやシンガーなど、ライブアーティストを入れています。
しかもシーントップクラスの面子を呼んでいたり、グラフィティなどのアートを入れたり、皆が知り得ない才能を混ぜて「外部からの刺激や視野を広げる事は大事だよ」っていう事も伝えたいというのが一番の目標。本気でやってる人ってめっちゃカッコいいというのを、どうやったら伝えられるかをめちゃくちゃ考えていますね。

次回は9月2日で、その次は10月上旬の開催ですが、スタートしてから5年間できる事は全力でやったので、このイベント名義では10月で一旦終了させようと思っています。

次に何をするのかは正直考え中ですが、今はダンス‟パーティー(社交の場)“が多く足跡が残り辛いので、ダンス‟パーティー“がお客さんを持て成したその場だけで盛り上がるものだとしたら、‟イベント”はコンセプティブで歴史を作るものと考えているので、イベントでありながらもパーティーの感覚が味わえる空間を今後も作りたいと思っています。
より多くのコンテンツを混ぜたいけど、何でも足し算になるわけではないから、もう一回自分の中で構築して、進化したイベントにする予定です。

 

 

TDM:今後のイベンターとしての目標を教えて下さい!

Co1 1つの目標としては、皆が輝ける場所、今の環境、今の時代で生まれる才能を見たり育てる役割を担っていきたい。
それには、今だけじゃない“時代”を意識する力が必要で最も大切なので、どうやったら世代を繋げて文化を継承していけるかを考えなければいけません。
昔の時代と、これからの時代と両方見ている僕らの世代がやっていかないといけないし、出来ると思っています。

あとは、1つ僕の中であるテーマが、道化、猛獣使い、新体操、マジシャンなど、普通に考えたら一見交わり辛いスペシャリストが同じステージで成立している‟サーカス“なんです。
別のモノが、お互いの努力や才能の掛け合いで生み出すグルーヴが好きなので、サーカスは僕の理想のスタイルです。
原点は、勝手に村で面白い事をやるといって、ビックリ人間を集めて、「皆んなでオモしろい事やろーぜ!」って集まった結果、観に来た人が「イエーイ!」って盛り上がって、口コミで広がる、そういうのを作りたいです。

そして自分が”「これオモしろい!」というものを披露する機会はイベントで、僕の集めた好きな人の才能が爆発して、何が起きるかっていう実験でもあります。
幾度の失敗も経験して、実験が成功してきてる実感はあります。
実験の結果、自分がどれだけ考えても賛同してくれる人がいないと絶対良いモノはできないという事は確定しているのでダンサーも含めた人の生態を理解する事は今後も大切にしたいです。

あとは、男として人として、カウンターカルチャーやダンスシーンで何かを成し得たという1ページにはなりたいとは思っていますが、個人としての目標は、年末に子どもが産まれるので良いパパになりたいですね(笑)。

TDM:「MADE 1N TOKYO.」も今後のイベントも期待大ですね!本日はありがとうございました!

 

Interview by Yuri Aoyagi
photo by AKIKO
’19/8/25 UPDATE

 

★『MADE 1N TOKYO.』の詳細はコチラ!

 

Instagram: @coichinsta #メイドイン

 

 

 

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tokyodancemagazine

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