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King Charles ~後編~

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シカゴ・フットワークの牽引者King Charlesに行ったインタビューをお届けしよう。シカゴ・フットワークとは、ジューク/フットワークというハウスよりも早いBPMのダンスミュージックと共に進化してきたダンスであり、ビバップのような高速ステップにハウスのようなグルーヴが組み合わされた、新しいダンス(下記動画参照)。それを世界的なものにしたKing Charlesの200%の情熱と軌跡。後編は、新たなムーブメントを世界に広げていくための強いメンタル、指導者としての高い意識、さらにはフットワークのコツなどを語ってくれた。

 

  • King Charles(キング・チャールズ)
    King Charles 繧「繝シ蜀・Bulls)
    シカゴ(米)のサウスサイドに生まれ育ち14 歳の時にフットワークと出会いシカゴ・フットワーク の世界に目覚める。 翌年15 歳には仲間同士で ジュークシーンをフットワークで代表するためフットワーククルー「Creation」を設立。そんな中フットワーククルーの歴史的王者 FootworKINGz にてアーティスティックディレクターに任命されシカゴだけではなく、全米、後世界で名を広めるようになる。今となっては世界各国にメンバーを持つ「Creation Global」の統括としティーチングはもちろん、フットワークイベント企画、パフォーマンスなどにもフォーカスを起き活躍。世界一のシカゴ・フットワーカーとして名を広め続けながら、シカゴフットワークと言うジャンルの理解を世界で深めるべく日々世界を飛び回っている。その凄さはストリートだけでは無く芸能でも明らか。ミュージックビデオやコンサートの経歴にはマドンナの“Sticky & Sweet” ワールドツアー、ウィロー・スミスの“Fireball”のミュージックビデオ、2011 年Teen Choice 賞で Will.I.Am などとも共演。そしてC2C「HAPPY」のPV 振り付けなども担当。最近ではグラミー賞でKaty Perryとの共同振付けなどもこなしている。さらに世界大会のバトルへの参加やジャッジとしての経歴も華やかである。

 

  • CREATION GLOBAL (クリエーション・グローバル) 
    シカゴ・フットワークの伝道師キングチャールズ率いるシカゴフットワークのプロフェッショナルチーム。
    その始まりは2001年シカゴで結成されたクリエーションというクルーになる。その後キングチャールズがシカゴより外に活動を広げ、世界的にWSやショーをしたことから、CREATION GLOBALという指導やショーにより目を向け、国際的なシカゴフットワークの集団を作ることを決意し始動した。シカゴフットワークを世界に広めるべくバトルのみでなくティーチング、パフォーマンスにもフォーカスをし、現在キングチャールズをリー
    ダーとしてファミリーのそれぞれがカルチャー普及に尽力している。

 

[YouTube] KING CHARLES | CHICAGO FOOTWORK CLASS 1 | MFDC 2015 [Official HD]
ワークショップの様子。幅広いレベルでトライでき、湧きおこる声援にエンターテイメント性も兼ね備えたシカゴ・フットワークの魅力を感じる。

 

※前編はこちら

 

リーダーを育み、世界への踏み出し方を伝える。

 

TDM
あなたはクルーにどういう人柄を求めていますか?

 

King Charles 謙虚で、学ぶことに対して柔軟性のある人間だね。英語では“optimistic(オプティミスティック)”という言葉があるんだけど、楽観的、前向き、という意味で、オレが求めているのはその要素のある人間だ。完璧な人間なんて存在しないし、何か光るモノや可能性を感じられれば、チャンスを与えたいと思うね。でも、そのチャンスを生かせずに成長の無い人間は、クビにすることも必要だよ。だって、グループ全体に影響するからね。あとは、忠誠心。これもオレが思う大切な信念の一つだな。ファミリーに対しては誠実であるべきだろ。Creationが未だに活動できているのは、お互いに対する忠誠心が強いからなんだ。Creationには人生において辛い経験をしているメンバーも多くて、彼らにとってCreationはセラピーみたいなものなんだ。シカゴ・フットワークの30年の歴史の中で、初めて海外に出た世代がオレたちだ。どの世代も、若いときにシカゴ・フットワークを経験することがカルチャーであり、高校卒業と同時にシカゴ・フットワークを辞めるのが普通だった。キャリアとして確立することが難しかったから、そこに未来はないだろ。オレはいつだって楽観的で、そんなオレの最大の強みは夢を見ることができることなんだ。たくさんの映画や漫画を見ては、素晴らしい人生を送ることを夢見ていたし、家族にも良い暮らしをさせたいと願っていた。長年、シカゴ・フットワークの練習の中で、常に「いつかあの国に行って、ビーチで楽しむんだ」みたいに、夢を語ってきたんだ。そうすることで、みんなも想像することができるし、それを信じることができて、一生懸命になれるだろ。でも、以前はその先がどこに続いているのかがわからなかった。その時、レディ・ソーに出会って、彼女が夢を実現するための鍵を与えてくれたんだよ。Creationはシカゴ・ブルズみたいなもので、このチームだからこそ勝つことができるんだ。でも、スーパースターたちの中にもレベルの違いは存在するよな。マイケル・ジョーダンのように象徴的なスターもいれば、その逆もしかり、だろ。オレはグループのリーダーだから、みんなよりも頑張る必要があると思ってるよ。

 

 

TDM
あなた以外にも海外で活躍するメンバーはいますか?

 

King Charles
p01それこそが目標なんだ。Creation Globalは去年発足したんだけど、Creationの中の新しいブランドなんだ。元々はストリートのチームだったから、地元だろ。オレはもっと世界規模で考えたいから、今では、アメリカだとシカゴ、LA、アトランタのほかに、ポーランド、日本にメンバーがいる。Creation Chicagoや、Creation LAといった具合に多くの都市に存在はするけど、それはストリートのグループであって、Creationのメンバーが全員、Creation Globalのメンバーというワケではないんだ。Creation Globalは、世界に視野を広げるオレのような人間を、Creationから選抜して作られたものなんだ。Creationには、地元に根付いて、単にバトルに参加して、パフォーマンスをするだけで満足な人間もいるけど、Creation Globalのメンバーは、常にもっと大きな視点で考える人間でいなきゃいけないからね。Creation Globalに所属する人間は、シカゴ・フットワークを教える指導者の役割も担うからな。リーダーには必然的にフォロワーがついてくるから、もっとリーダーを育てる必要があるんだ。これ、深いな~(笑)。名言だろ?でも、これがシカゴ・フットワークの根幹なんだ。人を引き合わせることがオレの使命だと思ってる。ひと昔前だったら、みんなの意識はシカゴのみに限定されていたから、世界中のメンバーを束ねるなんてことは不可能に近かかったんだ。3~4年前のシカゴ・フットワークは全員黒人で、一言で黒人と言っても、95%はダークスキンの黒人、5%がライトスキンの黒人で構成されていたんだ。オレの最初の目標は、それを崩すことだった。だから、30年の歴史の中で、初めて白人ダンサーに教えたんだよ。シカゴには、シカゴのみに留まることに疑問を持たない人間も本当に多くて、治安が悪くてもシカゴから出ようとしない人も未だに多数存在する。オレの知り合いにも、治安の悪さにウンザリしてシカゴから出たいと願うものの、どう踏み出して良いのかわからない人がたくさんいるよ。でも、オレの母親は、順応する方法を教えてくれたんだ。心から感謝だね。オレの人生は引越しの連続で、3年間で高校は4回も変わったんだ。だから、友達の作り方は自然と学んだし、環境に適応する能力は必須だったんだ。

 

生徒をハッピーにすること、頑張るように仕向けること、歴史や魅力を見せてあげること

 

TDM あなたにとって 教えることとは?

 

King Charles ダンスをすることと、ダンスを教えることは全く異なることだ。オレはLady Solにダンスの教え方を教わったんだ。オレはダンスをすることに関しては、高い評判を得ていたけど、ダンスを教えることに関しては練習する必要があったから。リズム毎に違うカウントの取り方、説明の仕方とか、いろいろと学ぶ必要があったよ。この世の中には二人として同じ人間はいなくて、理解して欲しいと思うなら、教える相手によって臨機応変にならなきゃいけない。誰にでも同じ説明じゃ伝わらないことだってあるからね。生徒がどうやったらハッピーになれるか、また戻って来たいと思わせるためにはどうしたら良いのか、そういう視点で考えないとダメだよ。生徒のことを知ること、生徒の生活の一片でも良いから知ることで、どうやったら助けられるのか、どうやったら理解してもらえるのかがわかるだろ。オレはいつもそれを心に留めて教えているよ。生徒をハッピーにすること、そして、生徒が一生懸命頑張るように仕向けること、このカルチャーの歴史や魅力を見せてあげないと。先生だと自負するなら、歴史を知っているのは当たり前だし、それ以前に訓練を積んでいないとその資格はないよな。ストリートではみんなが先生になれるけど、大きなスタジオでお金をもらって教えるのなら、経験と知識がないとダメだ。

 

TDM 日本には生徒は何人くらいいますか?

 

 

King Charles
日本のLINEグループでは総勢35, 36人いるよ。多くの生徒はすごく真剣で、このカルチャーが成長することを願っているんだ。YAMATOと小森 隼(GENERATIONS from EXILE TRIBE)が日本支部の責任者みたいなものだな。Creationを帝国に例えて、オレが王様(キング)だとすると、隼は王子様(プリンス)で、YAMATOは騎士(ナイト)だな。要は、隼は息子みたいなものだからプリンスで、YAMATOはオレを守ってくれる役割を担っているからナイトなんだ。

 

Footwork is Body language.

 

TDM
日本で出会った面白い人はいますか?

 

King Charles Creation GlobalのYAMATOかな。YAMATOのお陰で日本の印象はすごく良いものになったよ。あとは、バトルのジャッジをする度に、たくさんのダンサーと知り合う機会がある。特に今回は多くのヒップホップのダンサーと知り合ったよ。来日は三回目なんだけど、最初はハウス、二回目はハウスとヒップホップ、今回はほぼヒップホップがメインで触れ合ったよ。WDCでは、2on2のヒップホップチャンピオンになれたしね。

 

TDM
フットワーカーでヒップホップチャンピオンになったってことですよね?すごいですね!

 

King Charles
YAMATOとも話していたんだけど、今のシカゴ・フットワークはストリートダンスの未来を担うと思うんだ。シカゴ・フットワークはハウスミュージックから生まれたものだけど、でもライフスタイルはヒップホップなんだ。シカゴとNYのハウスダンスにはスタイルに違いがあるんだけど、一般的なのはNYハウスだろ。興味深いのが、NYのハウスダンス創生期は、ヒップホップダンサーがハウスダンスを生み出すようになり、シカゴでは、ヒップホップダンサーではなくて、ヒップホップのライフスタイルがその役目を担ったんだ。だからオレたちのダンスに対するモチベーションは、ブレイキン、ポッピン、ブーティーシェイキンのようなフリークダンス、あとはジェームス・ブラウン的な要素も少しあって、それらがシカゴ・フットワークの精神構造と言えるんだ。ヒップホップのメンタリティである“ストリート”だよ。

 

TDM
つまり、シカゴのストリートで見かけるのはハウスダンサーが多かったということですか?

 

King Charles 昔はね。どちらかと言うと、“これがオレたちのハウスダンスだ!”的な感じだったよ。180度違うというワケではないんだけど、今は昔よりも更に違いが生まれていると思うね。長年に渡りNYはハウスミュージックにのみ焦点を当てていて、音楽的な進化が無いんだ。シカゴは、ハウス、ゲットーハウス、ジュークと、三世代に渡って音楽的進化を遂げていて、新しい世代は逆にハウスを知らないんだ。オレはその三世代目にあたるんだけど、BPM160~170のジュークミュージックが基本だね。ハウスはBPM130~140だから、比較すると、いかにジュークミュージックのBPMが速いかわかるだろ。だから、オレはハウスミュージックについて勉強する必要があったんだ。

TDM
あなたにとってフットワークは、カルチャーとして根付いてきたものだと思うのですが、その最大の魅力をあげるとしたら何ですか?

King Charles フットワークというのは、ボディランゲージだと思う。つまり、身体を使った音楽の表現方法。例えば、どの文化においても独自のボディランゲージが存在すると思うんだけど、でも世界共通のボディランゲージもあるよな。例えば、同じチキンを料理するにしても、シーズニング次第で味が変わってくるだろ。それと同じで、ダンスもジャンルや国によって違ったものになるんだ。シカゴ・フットワークもその一つの形であって、その取り組む姿勢は特異だと言えるね。わかりやすく説明すると、B-BOYのアティテュードに類似するものかな。おそらくシカゴは全米屈指の危険な都市で、このカルチャーは常に怒りや痛みと表裏一体なんだ。

 

 

TDM 細かくステップを踏めるコツは何ですか?ジュークミュージックのBPMで足を速く動かすときは、身体を重く感じないように、引き上げてる感じでしょうか?

 

 

King Charles
脚、足首を含む下半身を強くしないといけないね。シカゴの冬はものすごく寒くて、ウィンディシティと呼ばれているんだ。だから冬はみんな室内にこもるんだけど、シカゴ・フットワークは通年を通して活動していて、メンバーはみんな家の中でフットワークスをするんだ。もちろん室内だから、靴は脱いで靴下になるだろ。でも、音を立てすぎると親に怒られたり、友達の家にいたら追い出されてしまうんだ。だから、音を立てないためにも軽く踏まなきゃいけなくて、だから、つま先を駆使するようになったんだよ。つまり、脳内では激しく、フットワークは軽く、ということだね。バトルの精神を持ちつつ、静かにステップを踏むって感じかな。

 

TDM
日本の若い世代にメッセージをお願いします!

 

King Charles ダンスが上手くなる最善の方法は、そのライフスタイルを生きることだ。そのライフスタイルに順応することができたら、スタイル自体を本当の意味で理解することができる。ダンススタジオは、既存のムーブを学んだり、練習したり、足掛りを作るには良いと思うけど、スタジオを飛び出してそのスタイルを様々な場所で試してみるんだ。そうすることで、自分にとってそのスタイルがもっと心地良いものになるから。あとは先生を持つこと。先生がいることは光栄なことだよ。後輩は先輩から学び、逆も然り。そうすることで、一緒にコネクションを積み上げることができるだろ。

 

TDM
では、世界のダンサーたちに向けてのメッセージを!

 

King Charles
p03ニュースクールの一員ならば、オールドスクールを学び、オールドクスールのやり方で何かを練習することだ。昔のやり方の多くは、現代でも通用する素晴らしいものだからな。オールドスクールの人間であるなら、もっとニュースクールのスタイルに柔軟でいて欲しいと思う。オレの父親が良い例で、彼はオールドスクールの人間だけど、今流行りの音楽を勉強して、習得して、自分のバンドでパフォームしてるんだ。日々、若いアーティストたちのことを学んでいるんだよ。それってお互いにとって良いことだろ。特にニュースクールの人間たちは、オンラインにばかり集中するんじゃなくて、外に出て求めているライフスタイルを生きるんだ。お互いにダンスすることを楽しむことも大切だよな。家の前、公園、お店の前、学校、パーティーとか、これこそがライフスタイルだよ。そして、同じく先生を持つことはとても重要で、お互いに学び合うんだ。ダンスを職業にしたいなら、自分のダンススタイルのレベルを高めるために訓練を積むことがまず第一歩だ。日々200%の努力を重ねてこそ、ダンスがキャリアになるんだよ。プロモートやネットワーキング、つまり知り合いを増やすことで、キャリアだけでなく自分の人生そのものが素晴らしいものになるからね。

TDM
ありがとうございました!
Creation Global出演イベント「GALLERY vol.10」

interview & photo by Akiko
translation by sassyism

’16/02/23 UPDATE

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tokyodancemagazine

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