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舞台「BLUE VOL.04」特集 辻本知彦×長谷川達也×飯塚浩一郎

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まもなく青森で開幕する新体操の舞台「BLUE VOL.04~綴~」。アスリートがアーティストへと変貌を遂げる舞台として青森県のみならず好評を博し、今回で4度目の開催となる。今回の演出・振付を担当する世界的に活躍するコンテンポラリーダンサー・辻本知彦氏、昨年の「BLUE VOL.03」の演出を担当し、今年結成20周年を迎えるDAZZLEの主宰・長谷川達也氏、同じくDAZZLEメンバーで、脚本を担当する飯塚浩一郎氏の3人がクロストークを行った。世代もキャリアも違う新体操選手たちをダンサーが演出して作り上げられる舞台「BLUE」が、今回はどんな姿を見せてくれるのか。演出や脚本づくりの方法論や、ダンスでの成功とは何かetc熱く語ってくれたクリエイター3人の談議をご覧あれ。

 

  • 辻本知彦
    コンテンポラリーからジャズ、ヒップホップまですべてがワールドクラスのダンサー。1998年、東京ディズニーランドパレードダンサーとして、オリエンタルランドに就職。その後、多ジャンルの舞台に出演。2007年シルクドソレイユ ガラ FIAT プレゼントにてイタリア・ローマ公演にて男性日本人ダンサー初めての出演を果たす。2011年-2014年シルクドソレイユ『Michael Jackson The Immortal World Tour』485公演140都市27カ国に出演。役者としても蜷川幸雄演出『青い種子は太陽の中にある』(Bunkamura)に出演。自身の振付・演出作品は東宝ミュージカル『RENT』 振付、きゅうかくうしおvol.0『素晴らしい偶然を求めて』 森山未來とデュオ作品、PV『Dance!Dance!Dance!』YUKI(元JUDY AND MARY) 振付など多数手がける。

 

  • 長谷川達也(DAZZLE)
    ダンスカンパニーDAZZLE主宰、ダンサー、演出家、振付家。DAZZLE代表作「花ト囮」は2010年韓国SAMJOKOジア演劇祭招聘、2011年シビウ国際演劇祭招聘、2012年ファジル国際演劇祭招聘(及び4部門ノミネート、2部門において受)など、海外のダンス・演劇界からの評価も高い。2013年には舞台「ASTERISK」にて総合演出・主演を務め、2014年再演。20153月、歌舞伎俳優の坂東玉三郎氏が総合演出を務め長谷川が振付を担当しDAZZLE主演舞台「バラーレ」で新たな境地へ。本年10にはDAZZLE 20周年記念公演(池袋あうるすぽっと)が上演決定

 

  • 飯塚浩一郎(DAZZLE)
    慶應義塾大学環境情報学部卒業後、博報堂勤務時代にDAZZLE加入。独立後、ダンサー、クリエイティブディレクター、コピーライターとして活動中。カンヌ広告祭など国内外で受賞多数。DAZZLEでの脚本・映像制作や、舞台「ASTERISK」の企画など新しいダンス表現に挑戦し続けている。

 

いかにおかしな世界にいるように思わせられるか。 

 

TDM 辻本さんは初めての演出ということですが、何か自分の演出のこだわりみたいなものは生まれていますか?

 

辻本 ダンス作品の舞台では演出と振付けは若い頃から行ってきましたが、自分が出演者を決めずに演出するというのは初めてです。今回は抽象的な自分のストーリーにはめ込んで、共感性を生みながらどう見せていけるかが、鍵だと思っています。あるキッカケから、いかに可笑しな世界にいるように思わせられるか。僕がいつも好きなのは、ゼロから編み出されているもの。何か他の人の作品を見てやってやろうじゃなくて、自分で持論を作り出して創作していく。だからそこにはオリジナルという自信があります。自分でゼロから発明しているから、一個の発明には時間がかかってしまう。一番いい環境は、作品に対して2ヶ月くらいほぼ毎日リハーサルがあることでしょう。でも、今回は出演者自体も時間がない中のリハーサルでした、僕自身は逆に考える時間があると思いたいけど、思えないんですけどね(笑)。でも、それをクリアした人が、この作り方を成功すると思うんです。 

ダンサーで言えばバイトしながらでも、ダンサーとしての充実したトレーニングとを上手くカリキュラムが組めた人が成功すると思います。その成功の連続がアーティストは必要なんだと思います。個人的には、今回のこれ(BLUE VOL.04)ができたら、また次のチャンスが来るんだろうなと思っています。自分なりに納得したり評価を得るのは、なかなか難しいだろうなと思っています。だから、前回の作品(BLUE VOL03)を見て、よく作ったなぁと思いました。達也君よくやったなと(笑)。すごいなと!!!やっぱり計算ができるんでしょうね。

 

長谷川
 舞台をイメージしたときに、不透明な部分とか、不確定な箇所をなくすという作業は徹底してやるように心がけています。それが計算ということになるのかもしれないですけど、舞台演出はDAZZLEや「ASTERISK」などで何度か経験させてもらっているので、その方法論を当てはめることができれば新体操でも絶対いける!と思いました。あとはBLUE TOKYOに合った物語、新体操に合った音楽をセレクトできるようにという点をかなり意識しました。でも、本当はBLUE TOKYOのメンバーが自分たちで作れると一番いいと思います。だからこそ今回のBLUE VOL.04で、辻本君からいろいろ吸収して、いつかは彼ら自身で作品が作れたらいいんじゃないかなと思っています。

 

 

辻本
僕も今彼らに言っているのが、あと何日か経ったら、振付を任せたりしたいとずっと言ってるんです、それは当初から思っていたことでもあります。テーマ、コンセプトを伝えて、あとは動き自体はダンサーに作ってもらいたいと。

 

■「ダンスを知っている人は楽しくて、ダンス知らない人がつまらない」にならないために。

 

TDM 長谷川さんはDAZZLE結成20周年の作品を作ってるところだと思いますが、それはゼロから作っているんですか?

長谷川 そうですね。ただ、ゼロからと言っても皆で積み重ねてきた経験がありますから、それらを駆使した新作、ということですね。

 

 

辻本 DAZZLEはもう20年なんですね。カンパニーって成熟するのに10年はかかると思ってるので、それはすごいなぁ。自分自身カンパニーを作りたいと思っても、今から成熟に10年はかかるなと思うと、もう嫌なんですよね。今からカンパニー10年やると自分の活動できなくなるし。50歳くらいからだったら10年ならできるかもしれないけど・・・

 

 

 

TDM 作品を作る時に、長谷川さんと飯塚さんはどのようなバランスで作っていくのですか?

 

 

長谷川
 僕が舞台上に作りたいシーン、それが画であったり、音楽であったり、断片的なイメージを飯塚に呈示していくんです。それらを僕の中でエピソードにする時もあるし、長文で構成することもあります。そうした原案をまとめて飯塚に渡して、それを脚本として直してもらうというのが最初ですね。

 

飯塚 そのシーンをどういう順番に並べたらいいのかな、というのはぼんやりあるんですけど、基本的に僕が扱う脚本は、主人公の動機がすべてだと思っています。その人がどういう人か、どういう風に行動するか、何をしたいのかというのを考えて、キャラクターを動かしていく。それが基本的な作品のベースになります。あとは、登場するそれぞれのキャラクターのディテールをすごく考えていくと、自然と物語がつながっていきます。 

あとは、長谷川と長くやっていると、あの取り入れたいシーンを次の公演用にしようかとか、以前に言っていたシーンを今回のここに入れようかというやりとりができます。思いついたことを全部実現しようとすると必ず無理が出てきます。DAZZLEでずっと公演をやっていくというベースの中で、「今これをやるのがベストなのか」というのも見極めつつ、まとめていきます。

 

長谷川 僕は思いついたアイデアをとにかく盛り込もうとしちゃうんです。それを違和感なくつなげるためには、また別のアイデアが必要になって、どんどんと複雑化したり、結末に辿り着けなかったり…。それって実はいらないんじゃないの?みたいなものも出てくるんですが、そこを削ることが僕はなかなか決断できないんです。

 

飯塚
踊っているシーンではストーリーが止まりがちです。そこに物語上のダルさが生まれてしまうことがある。もっと全体の中でテンポ良くいくべきところでも、昔はダンスのシーンで5分も踊ってしまったりしていました。最近は作品全体でのバランスを重視するようになってきていて、ダンサーの体感的に5分踊りで見せたかったものを、2分くらいでどんどん次のシーンに移っていくようになりました。お客さんや物語目線になってきたからかもしれません。逆に、ダンスナンバーでありながらストーリーも進行していくこともDAZZLEは意識しています。ダンスシーンの中で何かが起きて出会うなり別れるなり、踊りだけど話も進められることができると一番、理想的だなと思います。でも、踊りを見せたいときとのバランスは非常に難しいですね。

 

長谷川
p02r僕らはダンサーですから、当然ダンスが中心となる舞台作品にはなりますが、それでも空間や音楽、衣装など、舞台上にある様々な表現要素の一つという捉え方をしています。ダンサーだから踊る、というのは時に踊り手のエゴであって、作品の善し悪しとは別だったりすることもあると思うんです。極端な話、踊らなくてもおもしろかったらそれでいい。そういった客観的な視点、ダンサーではない視点は意識していますね。 

振付は、シーンや感情を伝えるために作られるものと、造形美や流れの面白さをみせるものなど、いくつかの方法があります。ただ、その中で一つ一つの動き自体に直接的な意味を持つものは少ないと思うんです。例えば、一昨年前にDAZZLEが上演した作品「二重ノ裁ク者」の中に強制労働をさせられるシーンがあったんですが、、「あの労働者たち大変そう、辛そう」と思わせなければいけないのに、「かっこ良かった」と思われるのは何か違うなと。僕自身、これまで振付を視覚的に捉えてきた部分が多かったのですが、「何を伝えたいか」をより明確にしていかないと、物語というよりも、ダンス作品としての色合いが強くなってしまう。そうなると、ダンスを知っている人は楽しいけれど、ダンス知らない人が見た時にどうなのか。良い振付っていうのは、踊り手が気持ちいいということではないんですよね。

 

■まだこの世に生まれてないとんでもないアイデアを探す旅は、常にしていた方がいい。

 

長谷川
僕は数あるダンスチームやダンサーの中でいかにして抜きん出るかを考えたときに、独自性こそ最も大事なことだと思ったんです。ただ、その独自性はどうやって手に入れるのか…なんですが、最初は足りない技術を埋めるためのアイデアだったんです。目を引く衣装であるとか、選曲であるとか、踊りではない部分で違いを作るような…。でも、そこから振付に関わる色んな要素に目を向けるようになり、その選択に自分たちらしさを見いだしていったんです。もちろんダンス自体にも「ジャズダンスを取り入れてみよう。コンテンポラリーダンスを取り入れてみよう。」とか、ジャンルにこだわらなくなっていきました。また、もともと映画や漫画、ゲームが好きだったので、それらの物語性や展開などを取り入れるようになったのも自然なことでした。映画やゲームの要素をダンスと掛け合わせてみようと。そしてそれを舞台化したいと思ったからこそ、今のDAZZLEがあります。  

そうして舞台づくりを9年やってきましたけど、今はストリートダンサーも舞台を作るようになってきたし、僕らはさらにそこから次のステップにいかなくてはいけないと思っています。そういった意味でもDAZZLE20周年の作品が、次の目標への足がかりとなればと思っています。僕はいままでかなり感覚的に作品を作ってきました。だけど、飯塚もいるのでその脚本のノウハウなども真剣に学んだ上で演出をしてみようと思っています。(飯塚とは)長く付き合ってきていますが、僕としては初めての作業を今やっていて、前に自分が書いた脚本を読んで「ダメだな」と思ったりすることもあります(笑)。

 

飯塚 p06rいまは長谷川と映画脚本のやり方を研究しています。ベースとなるルールを共有しながら作ることで、より緻密なものが作れると思っています。舞台は、なんでもできます。僕は仕事で広告をずっとやってきているのですが、広告では、映像があって音楽があって言葉がある。イベントでもWEBの企画でもいいかもしれない。映像に限ってもカメラワークが使えるし編集できるし、いろんな手法がありますが、そういう舞台以外での手法を、舞台に対して使ってもいいのではないかとフラットに考えています。まだこの世に生まれていないとんでもないアイデアを探す旅は、常にしていた方がいいなと思っています。 

現在は、いろんなエンターテイメントがあって、子どもの時から 世界中の情報が見られて、LINEとかチャットの速さでコミュニケーションをとっている。僕たちの世代とは人間同士の関係性自体が違うんですよね。その世代の人たちから生まれてくる新しい発想もあるでしょうし、それを「理解できない」と除外するよりは、いつも可能性を持って捉えるようにしています。考えもしなかったようなことが出てくるのは、やっぱり若い人たちからだと思うので。

 

 

今求められているものは、単純に1時間以上の作品を作ること。

 

TDM 今、世界で活躍している若いストリートダンサーの中には、20代半ばくらいで引退、そのあとは違う人生を歩んでみたいと考えている子が結構いるように感じます。将来、ダンスで生きていこうという考えはあまりないのかもしれません。若い子たちがストリートダンスの将来に身近に希望が持てるためにはどんな環境が良いと思いますか?

 

 

長谷川
何を持ってして成功といえるかは人それぞれではありますが、ストリートダンサーとしての成功者のモデルはかなり少ないと思うんですよね。だから目指すものがわからなかったり、明確なビジョンを描けないというのはあるかなと思います。例えば、僕たちは舞台や作品で人生が成り立つことを目指していますけど、少なくともストリートダンスで成功している団体はないんじゃないでしょうか…。

 

辻本
さっき話を聞いていて、「いいな」と思ったのは、次の世代に、こうやってできてるというのを伝えなくちゃいけないなというところ。それは僕らの役目なような気がするな。細かく言ってもしょうがないけれども。

長谷川
そうですね。DAZZLEだったらそれが舞台なのかなと思いますが、社会的にも、経済的にも、ダンスの価値が高まっていかなければとても生活していけない。ダンスがもっと世の中と接点を持たなくてはいけないし、舞台ももっともっと増えていかなきゃいけないと思います。そこでしっかり集客ができて、舞台を成功させられる団体がもっと増えてきたら、それを目指そうという人たちも増えてくると思っています。

 

辻本
でも、それは狭き門ですからね。昔、SAMさんとラッキィ池田さんの対談があったんですけど、なぜ成功できたのかというのは、「諦めなかったからだ」とありました。キャラの違う二人がそう言っていたのがとても印象に残っています。やっぱり、諦めなかったら可能性はずっと続きますからね。

 

長谷川
先程、今の子たちが20代でダンスを辞めちゃうみたいな話がありましたけど、僕はダンスのレベルとか技術で言ったらまだまだ向上しなきゃいけないところがあると思っています。僕が大学生でダンスをはじめた時に、先輩でも後輩でも、うまい人が山のようにいたわけです。でも、皆辞めていっちゃったんですよね、ダンスは職業にならない、と。でも、気付けば僕にとってダンスが一番誇れるものになって、それを辞めるのは違うと思ったんです。つまり・・・うまい人が辞めていってしまったから今僕がここにいるとも言えます(笑)。辞めない限りはもっと良い作品を作れると思うんです。でも、途中でやめてしまったらそこで終わり。

 

飯塚
僕は最近、大学の後輩たちのつながりで、大学のダンスサークルのOB公演の振付をしました。社会人ダンサーは今ものすごく増えているしレベルも上がっています。振付とか演出とか、自分が舞台上には立たなくても、ダンスに関わっていくといくことを、他の仕事をやりながらできる人がもっと増えてきてもいいんじゃないかなとは個人的に思っています。僕は広告業界の人とダンスの話をしていると、「ダンスって参入障壁が高いんだよね」と言われました。つまり、外からすごく入りにくい環境になっているということです。それはすごくもったいないなと思います。ものすごくいいカメラマンとか、アートディレクターとか、ダンスを全然わからないけどダンスの演出をするとかいうことが、もっとあっても良いと思います。 

ダンサーも、もっと積極的に他の業界の方々とコラボレーションできるようになると、ダンス自体がもっと外の世界の人に知られやすくなります。あとは、音楽業界もビジネス的に難しくなってきている印象がありますが、体感的にも働きながら音楽をやっている人は最近すごく多いなと感じています。自宅で録音できる環境も良くなってきてますし。ダンサーも動画サイトだけで生きていける人が、もしかしたらもういるかもしれないし、そういう新しいスタイルのダンサーの生き方というのは、これからもっと生まれてくると思いますね。

 

踊りもできてアクロバットもできるということは、それ以上いい身体はないんだから。

 

TDM 今回舞台「BLUE VOL.04」の演出を進めてみて、いかがですか?

辻本 p03rもともとシルク・ドゥ・ソレイユの現場で、新体操のパフォーマーを見た時に「僕だったらこうするな」「こうやってやりたいな」と感じていることがありました。今回のBLUEでは、僕がシンプルに思うことを、彼らの身体で表現したいですね。「あなたたちはスペシャルな身体でしょ。踊りもできてアクロバットもできるということは、それ以上いい身体はないんだから」と。縦でも横でも身体に指示ができるので、「じゃあこういう風にしてよ」とこちらが子供のように言っているので、それが楽しみです。その中に僕のエッセンスを足して、新体操がよりキレイに見えるように、または違うようにアレンジはしたいなと思っています。

 

 

TDM
長谷川さんは前回の「BLUE VOL.03」の演出をされましたが、いかがでしたか?

 

長谷川
すごく楽しかったですし、すごく刺激を受けました。新体操の選手たちの美しい演技をすぐそばで体感できて、その迫力や同調性の素晴らしさにひたすら感動しました。僕はアスリートである皆さんに、舞台表現のいくつかの方法を伝えられればと思って演出させてもらいましたが、僕の振付は型にはめていく振付の仕方なので、新体操の身体を持っている彼らには、少し窮屈に感じるところもあったのではないかなと思います。その点、辻本君はもっと人として…、たとえばもっと内面から生まれるものだったり、表現者としての在り方を引き出してくれる人ですから、それは彼らにとってすごくいい経験になると思いますし、彼らが最高に輝く公演になると思います。

TDM
今回の辻本さんの演出を楽しみにしています。今日はありがとうございました!

 

interview by Akiko
photo by imu

’16/01/13 UPDATE

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