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公演「Felinas」特集 西林素子×絹靴下のPiPPi ~前編~

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お笑いとお色気の詰まった公演「Felinas~Cabret in a Crazy Box~」の最新作が間もなく開催される。仕掛け人・西林素子さんと、Felinasシリーズ第1作から出演しており、ショーの構成を共に考えている絹靴下のPiPPiさんにインタビューを行った。前編はFelinasの持つ魅力“お笑い”と“お色気”、そして、“王道”について語ってもらった。

 

→ インタビュー後編はこちら


 

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    photo by Manabu Kittaka

    絹靴下のPiPPi
    クラシックバレエを学び、現在ポールダンサー、バーレスクダンサーとして日本およびアジア諸国のクラブを中心に活動。LOUIS VUITTON、 Mercedes-Benz S-Class、Don Perignon等のラグジュアリーブランドパーティーに出演。CASIO OCEANUS 10th ANNITARSARY PARTYでは出演とともにエントランスパフォーマンス演出も手掛けた。VAMPS 、Chara、大橋トリオ、 LOWBROWS等のPV出演。モデル、ポージングアドバイザー、インストラクターとしても活躍。
    http://profile.ameba.jp/pippiodoriko/

 

 

 

 

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    photo by Manabu Kittaka

    西林素子

    『ライオンキング』『キャバレー』などミュージカルを中心に舞台出演を重ねる。2010年に松田尚子・嶌村緒里江と共にダンスパフォーマンスプロジェクト“YakaYaka-Woka”を立ち上げ、『Ladybug』『イートラング』『CAT WALK』『MAGIC HOUR SIDE SHOW』を公演。2012年より自身のプロデュース公演を開始、『Nocturno』『Felinas ~Cabaret in a Crazy Box』(episode1、2、0、spin-off vol.1)、『CiudaDédalo』『Marionnette』『クロスハイム102』を発表。今回が9作品目となる。BUMP OF CHICKEN『ゼロ』のPVでは主演ダンサーを務める。インストラクターとしても活動中。
    motokonishibayashi.com

 


 

Felinas ~Cabaret in a Crazy Box~ spin-off vol.2について

 

TDM まず、今回の出演者について教えてください。

 

西林素子
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photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA Felinas spin-off vol.1 より

まず、Felinasシリーズの第1作、episode 1からずっとご出演頂いているおオうちれいこさんをご紹介します。Felinasでは、“キャバレー ・フェリーナス”という、架空のキャバレーで繰り広げられる物語、そして、そのお店で行われているショータイムという、いわば劇中劇のショーを上演しているのですが、そのお店のマダムの役どころです。

 

 

絹靴下のPiPPi
れいれい(おオうちれいこ)さんは、もちろん素晴らしい踊り手なんですが、それ以上に「女優」なんです。あれだけ演技にすんなり入りこめる人も珍しいですね。彼女の演技を観ているうちにじわじわと引き込まれ、気づいたら虜になっていたお客様が多いんですよ。

 

 

TDM
私も、「ファンです。」って言ったことがあります!

 

絹靴下のPiPPi そう!ファンが多いんですよ。ファンって言いたくなる感じがありますよね。私も初めてれいれいさんのステージを観たときにファンになりました。

 

西林素子
photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA Felinas spin-off vol.1 より

photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA
Felinas spin-off vol.1 より

そして、女性がもう一人。3作品目のepisode 0からご出演頂いている小嶋亜衣さんです。亜衣さんとPiPPiさん、私の3人が”キャバレー・フェリーナス”の踊り子、という立場なんです。

 

 

絹靴下のPiPPi 亜衣ちゃんは、抜け感が素敵なんですよね。そこに色気が漂っていて。かと思えばクールで。“抜けの小嶋”!

 

 

西林素子
photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA Felinas spin-off vol.1 より

photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA
Felinas spin-off vol.1 より

そして、前回(spin-off vol.2)からジャグラーのおこたんぺさんに出演して頂いてます。キャバレーのショーって、女性のダンスだけでなくて、ジャグリングやマジックやいろいろな男性のパフォーマンスもあるので、そういうものも取り入れていきたいと思っていたのですが、PiPPiさんが素晴らしいジャグラーがいる、と推薦して下さって。

 

絹靴下のPiPPi
初めて観た時に好きって思ったんです。恵比寿でバーレスクダンスとベリーダンスのイベントがあって、そこに彼が出てたのでナンパしました (笑)。

 

 

西林素子
photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA Felinas spin-off vol.1 より

photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA
Felinas spin-off vol.1 より

そしてPiPPiさんと私。この5人でショーをします。

 

 

TDM
episode 1、2、0、spin-off vol.1、そして今回のspin-off vol.2と続いてきたFelinasシリーズですが、最初の頃と何か違いはありますか?

 

 

西林素子 そうですね、昨年11月に公演した spin-off vol.1 から、会場がTHE GUINGUETTE by MOJAというレストランになりました。
絹靴下のPiPPi すごくかわいいお店なんです。フレンチビアホール風の内装で。元SECOバーのところにあります。

 

 

西林素子 そして、前回と今回はスピンオフということで、内容も少し変わっています。episode1、2、0では、第一幕が『キャバレー・フェリーナス』のマダムや踊り子たちの巻き起こす悲喜こもごもの物語。物語といっても、台詞はなくダンスでストーリーを進めていきます。第二幕が、“キャバレー・フェリーナス”のショータイム。第一幕の登場人物たちが、夜な夜なお店で上演しているショーという形です。前回の公演では、「もうちょっとショーの部分を膨らませてみたいね」と話しまして、spin-offと銘打ってショーをたっぷりご用意しました。

 

 

絹靴下のPiPPi
お客様に、「”キャバレー・フェリーナス”に遊びに来ている」という感覚で楽しんで頂こうというのがspin-offシリーズなんです。

 

 

西林素子
 今回はそのspin-offの第二弾。前回とは全く違う内容のショーをお楽しみ頂きます。

 

 ■2人の出会いから今まで

 

TDM 前回のインタビューで素子さんとPiPPiさんは映画の『モテキ』の現場で出会って、素子さんが生徒としてPiPPiさんの発表会ナンバーに出てから公演に誘ったという話をお聞きしましたが、その時PiPPiさんの印象はどうでしたか?

 

絹靴下のPiPPi 初めて素子さんがレッスンに来た時のことは覚えてます。素子さんってすごく性格がきっちりしてるんですよね。普通レッスンに来ても、自分の名前ってわざわざ名乗らないのに、最初にクラスが始まる前に「西林素子と申します」と言われたので、こっちも「あ、よろしくお願いします」みたいな感じでした(笑)。

 

 

TDM 発表会に出るまでには、どのくらいの時間がかかりましたか?

 

 

西林素子
半年くらいです。その頃、自分が主催する初めての公演だった『Nocturno』の準備で動き始めていて、PiPPiさんには是非出演して頂きたいと思ってずっと勧誘のチャンスを窺ってたんです(笑)。

 

TDM
素子さんが考えた演出プランの中で、PiPPiさんにはまる役があったということですか?

 

 

西林素子
2391そうですね。そのときの公演は、とにかく濃厚に色っぽいのがやりたいなって思ってました。Felinasでやっているキャバレー的な色気とはまた違う方向性の色気ですが。どこかの街のそこここで、一晩のうちに起こっていくことを、連作小説のように登場人物が少しずつ交錯しつつ、夜の始まりから夜の終わりまでつなげていけたらなと。その街のイメージは行ったこともないのにブエノスアイレス。アルゼンチンタンゴが流れる夜の街で、男と女が濃密な時間を重ねるというようなイメージです。その公演ではポールは使わなかったのですが、PiPPiさんは、夜のブエノスアイレスにそれはもうぴったりだと思ったのです。

 

 

絹靴下のPiPPi 私はそれまでショーには出ていたけど、“公演”というのは、ほぼ初めてに近い状態でした。あるとしたら私がバレエを習っていた時の発表会くらいですね。なので、私は作品の作り方に関しても、進め方に関しても、経験がゼロの状態なわけです。さらに、初めて会った人と、何かをするというのも初めてだったんで「え、こういう風にやるんだすごーい」と思っていました。

 

西林素子 あのときは私も初めての作品作りだったのでいろいろ手探りで。辛抱強くお付き合い頂けて助かりました。実は、その公演をする前から、キャバレー風のショーをやりたいな、と思ってたんです。ミュージカルの『キャバレー』や『シカゴ』みたいな、でも歌やお芝居はなく、ダンスがメインで。これまた、これはもうPiPPiさんにぴったりだと(笑)。「これは機を逃してはいけない」と思い、『Nocturno』のあとすぐにPiPPiさんに企画を持ちかけました。それがFelinasシリーズのepisode 1です。そのときはこんなに続くと思わなかったので、episode 1という名称はなくて、ただの“Felinas ~Cabaret in a Crazy Box~”だったのですが。

 

 

TDM PiPPiさんは“公演”というものに出るようになって、何か変化はありましたか?

 

 

絹靴下のPiPPi
そうですね。ガツッと公演のリハが入る期間があり、そのときは普段のショーとは頭の使いどころも違うし、いろんなモチベーションもそれまでやってきたショーのときとは違いましたね。でも、いつもの自分のリズムでショーに出演する時期と、公演の準備をする時期とのサイクルが自分の中でうまくバランスがとれている感じです。

 

 

TDM
素子さんの作品のどんなところが好きですか?

 

絹靴下のPiPPi いろんなことがすっごく本当にきちっとしているんですよ。もちろん振付も真面目。これは悪い意味ではなくて、本当にきっちり真面目にやってきた人なんだなあと感心していると、突然予想外のことをポンと入れ込んでくるんですよ。そういうバランスもおもしろいですね。あとは、作品を作る過程で、人の意見をちゃんと聞いて考えて話し合いをしてくれる。それで、素子さんがこちらの考えに納得すればそれを取り入れてくれるし、逆に素子さんの考えに私が納得できることもあります。割と私はわがまま育ちだったんで、「そっか。こういう心の広さが必要なんだな」と感じました。

 

西林素子 motoko_01いや、違うんですよ。それは、心が広いわけでなくて、利己的な理由なんです。私は演出でも振付でも、いつも考え込みつつ迷いつつ、どうにかこうにか絞り出してるんです。演出家、振付師としてなんとも頼りない状態で。だから、PiPPiさんや他の出演者のみんなに意見をもらえるとすごく助かるんです。自分も出演しているので、どうしても作品を俯瞰して客観的に見づらいですし。だから、自分が思いつかないアイディアをいろいろもらえるのって有難いんです。この前、何度言い寄ってもなびかない男性の気を引くために、あえて一度身を引くふりをする、というシーンを作っていたのですが、そこに出てないメンバーも全員総出で、「私だったらこういう場合はこうするな」「あのとき私はこうしたよ!」「いや、それじゃあ無理じゃない?逆にさ…」「こうされるとぐっとくるなあ」などなど、実体験を元にした座談会みたいになって。 

 

 

絹靴下のPiPPi みんなそれなりに大人なので、いろんな引き出しがあれやこれや(笑)。そういうのって楽しいですよね。

 

 

西林素子
もうみんなできゃーきゃー喜んでましたよね。そして、とてもいいシーンができました。

 

■“お笑いお色気への挑戦

 

TDM
作品はどのように作っていくのですか?

 

 

西林素子
大まかな進め方としては、PiPPiさんと私でミーティングを重ねて、まず構成の骨組みを作り、その後で曲を決めます。そこから振付に入ります。

 

 

絹靴下のPiPPi まず、「こういう笑いが欲しいね」「今回どこで笑ってもらう?」「これだとちょっと笑いが少な過ぎない?」「とはいえこれだとちょっと笑いが多過ぎでは?」からですね。
西林素子 お笑いのバランスについてはたくさん話しますね。ダンスの公演なのに(笑)。

 

 

絹靴下のPiPPi
でも、笑いは重要ですよ!だってエンターテイメントだから。楽しんでもらわないと。私たちは別に奇抜なことをしているわけではなくて、王道を目指したいんです。エンターテイメントの王道。例えば『男はつらいよ』だったり、『水戸黄門』とかのイメージです。「この時間に印籠出るよね!」という安心感がある。でも毎回面白い。だから、作品を作る上でも王道のエンターテイメントというのが根本にあります。episodeものでやっている物語も、すごくわかりやすいように考えて作っています。

 

 

TDM
 他の公演の演出などを観て、たまに理解できないことがありますよね。私がFelinasを観た時はわかりやすくてお洒落なのが印象的でした。あと、笑える!

 

 

絹靴下のPiPPi ありがとうございます。子どもも大人も、日本人も外国人も、誰が見ようが、「あ、そういう話ね」とわかって、そしてその上で大笑いして楽しんでもらえるものをやりたい。「これは何を表現しようとしているのだろう?」と思い悩むようなものではなく。「どういう風に受け取ってもらってもいいですよ」と曖昧にしているところはなく、「完全に楽しんでもらおう!」というショーなので、ダンスやったこともなく、あまり観たこともないというお客様が毎回リピートして下さって、お知り合いを誘って下さったりすることが多いので、それはすごく嬉しいですね。

 

 

西林素子
最初は1人で観に来てくださった方が、次は2人で来て下さったり、なんと10名の団体でいらして下さったり。お客様の口コミで少しずつ動員が増えてきているのが本当にありがたいです。

 

絹靴下のPiPPi
だから、「斬新なことをやろう!」というチャレンジ精神はあまりないですね。“お決まり”がいい。

 

 

西林素子 そうですね。だから、“お決まり”の中で飽きられないようにする為にどうしようかと毎回悩みます。「どうせまた同じなんでしょ」って思われてしまうのが一番怖いので。

 

絹靴下のPiPPi 「どうせこんな感じなんでしょ」じゃなくて、「待ってましたコレコレコレ!」と思ってもらいたい。そんな中に「そんな展開?!」というものも散りばめていきたい。
西林素子 そのバランスが難しいですね。

 

絹靴下のPiPPi 2295私はFelinas以外でも、結局、王道が好きなんだと思います。例えば、金粉塗ったり、ボディペインティングしたり、これはずっと前から脈々と受け継がれてきた伝統芸能みたいなものなんですね。古典なんです。ポージングも特に奇妙奇天烈なことをしているわけではなく、メイクや髪型もクラシックスタイルなんです。実際はすごく王道なんですよ。身体を露わにしているのでインパクトがあるのと、王道なことをやろうとしている人が少なくてあまり見かけないから、一見奇抜に見えるのかもしれないですけれど。

 

 

西林素子
photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA Felinas spin-off vol.1 より

photo by Kazuyuki THE GUINGUETTE by MOJA
Felinas spin-off vol.1 より

PiPPiさんはどんなに肌を露わにしても、なんというか、上品で気高いんです。美しい。それでいてしっかりエロティックで。PiPPiさんのポールダンスやバーレスクのショーを観て、衝撃を受けたんです。こういう世界があるのか、と。それで初めて“ショーガール”というカテゴリーがあることも知りました。でも、私はずっとジャズダンス畑で育ってきて、ジャズダンスって、いくら“セクシー系”だってそこまで露出しないじゃないですか。だから、ジャズダンスの公演は観たことがあるけれどショーガールのショーは観たことがないというお客様がどう思うか心配でした。「なんとまあ、ハレンチな!」と怒られるんじゃないかと。

 

 

絹靴下のPiPPi
そこの感覚の差異はすごく大きいよね。私の中では、いつもより隠してるんですけど、「これで露出してるって思われるんだ」と。あれはすごく衝撃的だった(笑)。

 

 

西林素子
でも、ありがたいことに、episode 1にいらして下さったお客様方、特に女性のお客様にお褒めの言葉をたくさん頂けて、「あ、大丈夫なんだ」と安心しまして、回を重ねるごとにだんだん大胆になってきてます(笑)。女性から見ても、「美しい」「かっこいい」「可愛い」と共感してもらえるような。「卑猥」ではなく「エロティック」。そんなお色気を目指したいですね。だから、構成を話し合うときには、さっきお話した笑いのバランスと並んで、どういう風に肌を出すか、露出のバランスも重要議題になります。「これだと脚の見えるナンバーが少ない」とか(笑)。

 

TDM 最初はNao(SO DEEP)が出演したのをきっかけにFelinasを知りましたが、エロさに品があるというか、こういう奇麗なものを、日本のダンスシーンでも作れたらいいなと思いました。

 

西林素子
ありがとうございます!

→ インタビュー後編はこちら

 

→[PICK UP]お笑いお色気盛り沢山の良質エンターテイメント!「Felinas ~Cabaret in a Crazy Box~ spin-off vol.2 THE SHOWTIME!!」

 interview by AKIKO
photo by imu

’16/03/27 UPDATE

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