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舞台ASTERISK 「Goodbye, Snow White」 特集 MIKEY×長谷川達也

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プロとのコラボレーションで広がる価値観。

 

TDM
お2人が今後、出会いたいプロのクリエイターはいますか?

 

 

MIKEY
私の感性と合う照明家さんに出会いたいですね。音にジャストではめられるテクノロジックな世界観と、ドラマティックな情景を感じさせる世界観を持ち合わせた照明家さん。

 

 

 

長谷川達也
MIKEYも言っていた通り、僕も映画、漫画、ゲームが好きで、最近増えている原作の舞台化にも興味がありますダンサーだから表現できる舞台の作り方を提案してみたいですね。

 

 

MIKEY お互い大事にしているのが世界観なのかもしれないですね。私の場合は、マニアックな身体表現、それだけじゃなくて、それを形成する全体的な世界観そのものが好きです。

 

長谷川達也 舞台上にはダンス以外にも、物語や音楽、照明、衣装といった世界感を形作るための様々な要素がありますから、それぞれの分野で活躍されているクリエイターの方と一緒に作品を作れたら、また違った表現が生まれるかもしれないですね。また、そうしたコラボレーションをすることによって、ダンスとは別の世界と接点を持てるし、広がっていける。もしそこでダンスの可能性を多くの方が感じてくれたら、それは社会的にも経済的にもダンスの価値を高めることに繋がっていきます。

 

 

MIKEY IMG_2197私も昨年末に『ライチ☆光クラブ』という古屋兎丸さん原作の2.5次元舞台を初めて関わらせてもらいました。演出家には河原さんという方がいて、私はパフォーマンス部分の演出をしたんですけど、最初に舞台セットを決める時に、「平らな場所を作りたくない」とおっしゃったんです。「でも、それはダンスの作品を作るのに不向きだと思います」と言ったら、河原さんが「でも、平らなところで踊るのは見飽きる」とおっしゃったんです。そんなことはないと思っていましたが、実際に坂道の舞台を作り、そこでダンサーを踊らせてみると、平台の中で踊っているよりも、確かに違った景色があった。河原さんが頑固に「ここは坂道する」と言ってくれなかったら見られなかった景色だったので、コラボして得るものをすごくありました。

 

 

長谷川達也
なるほど。確かに自分の感覚だけが必ずしも正解ではないということはありますね。僕たちは海外で公演を行なった際に、その土地の風土や異文化に触れたことが、自分たちの表現を見つめ直すきっかけになりました。国によっては表現に規制があり、日本で自由に表現できることは恵まれている環境なんだと実感しました。でも、逆に恵まれていることが必ずしもいい表現になるわけじゃないということもわかって。異文化に触れることは、価値観を広げることにもなりますね。

 

 

TDM
MIKEYは今回演出と主演を兼務しますが、同じくASTERISKで演出と主演を経験した達也さんから何かアドバイスはありますか?

 

長谷川達也 現実的に、製作時間の問題はあると思います。演出家として作品を見ると同時に、出演者として練習も必要ですからね。当然、他の出演者よりも作業量は多いので、自分の時間を確保できる様に進行は意識しました。

 

MIKEY それも建築的な考えですね。やっぱりその能力が必要なんだわ…。

 

 

長谷川達也 でも、MIKEYなら、そこも勘でいけると思いますよ。ただ、第1回ASTERISKは当初、主役は僕ではなく、別の方にお願いしようと思っていたんです。ですが、色々なことが重なって結局、僕がやることになりました。大変な作業ではありましたが ”いつかは大舞台で主役を務めたい” ということをひとつの目標にダンスをやってきた自分にとって、夢が叶った瞬間でもあり、大変光栄なことでした。

 

 

MIKEY
実は、私も本当は魔女役をやるつもりでなく、本当は別の方にお願いするつもりでした。でも、うさぎさんの原本を見たら「どう考えてもこれは私よ!」と思って、自ら名乗り出ました。自分が演出しながら主演もするのは不安でしたけど、でも、友人のKUMIさんに言わせると、「でも、普段からそういうことをやってるじゃないですか。だから別に大丈夫じゃない?」と言われて、それもそうだなと思いました。

 

TDM
DAZZLEは7人の小人なら7人の大人役ということで、どんなふうに登場するのか楽しみです。

 

 

MIKEY
白雪姫において、魔女、白雪姫、王子、7人の小人は欠かせません。7人のキャストを考えたときに、バラバラのジャンルでいいかなと最初は持ったんですけど、いや、同じジャンルの群舞がいいと思いました。でも、7人以上の男性のチームってすごく限られてくる…っていうか、DAZZLEしかいない!と思ってお願いしたので、OKしてもらって本当に良かったです!

 

ある種の武器にもなっているひとつの挫折。

 

長谷川達也 ひとつ僕からも質問をいいですか?音楽を作曲家にお願いしたりするのはどういうプロセスでやってるの?

 

MIKEY だいたいは、まず私がリズム帯もメロディも作ります。でも、それだとクオリティが低いので、それを「ここからブラッシュアップしてください」という形で音楽家に渡してやってもらいます。
長谷川達也 なるほど。演出家が自分で音が作れるのは、すごくいいですね。

 

 

TDM ダンスの動きをイメージして音を作ることはありますか?

 

 

MIKEY
もちろん。あとは、ストーリーとか世界観重視で音を作る時もあります。

 

 

長谷川達也
ちなみに、今回はMIKEYが歌う楽曲もある?

 

MIKEY 歌はないですね。セリフとかはレコーディングした音声なんですけど、今回、私の声は私ではなくて、KUMIさんの声になります。それにリップシンクをするんですけど、リップシンクっておかまの文化だとドラァグクイーンの人たちがよくディーバの曲で歌ってるんですけど、私はすごく好きで、あれは究極の音はめだと思ってます(笑)。口のダンスです。それを今回いっぱいできたらなと思ってます。私的にはリップシンクもダンスなんですよ。周りからすると「どこがダンスだ」とつっこまれるんだけど、身体表現が音に体をはめるという意味では、その音に対して口が動いているのもダンスかなと思ってます。

 

長谷川達也 さっき、僕が作曲について聞いたのは、ASTERISKで演出をした時に、ダンサーの求める音と、作曲チームの作りたい音との間に僕が入っていた “橋渡し” の部分が難しかったんです。作曲家の作った曲で振りを作るスタンスでやってくれる方もいれば、踊りや振付に対して音楽を作りたい方もいる。そのあたりの兼ね合いに結構気を遣いました。MIKEYの場合、どういうふうに解消しているのか気になったので。

 

 

 

MIKEY
ASTERISKでは去年も今年も音を完全に、まかせてもらっています。もともと、すでにいい音楽として成立してある楽曲をモチーフにすると、どうしてもそこを越えられない。坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』みたいな名曲が欲しいと言われても、絶対原曲を越えられないから、そういうオーダーはもう最初からしない様にしています。

 

TDM
これまでに発表されているMIKEYの楽曲は、よくそんな素敵なリズムやメロディがいろいろと出てくるなと感じながら聞かせてもらっています。

 

MIKEY
それはもしかしたら、私がもともとダンサーになりたくてなったわけではないからかもしれません。もともと音楽をやりたかった人間で、いつの間にかダンスの世界にいたというのが率直な感覚です。本当は歌手や音楽のプロになりたかったんだけれども、今はダンサーになっています。それはある意味、私にとってはひとつの挫折なんだけども、ある種の武器にもなっているとも感じます。

長谷川達也 それはなぜ挫折になったんでしょうか?

 

 

MIKEY
自分のパーソナリティやセクシャリティと音楽性が合わなくなったんです。昔、私が音楽を作りたくて作ったり、音楽が生活の中にあって、すごく影響を受けていた時は、ゲイをカミングアウトしていない時で、今とは違う音楽が好きでした。いざ、今みたいに、自分がゲイだとカミングアウトして、女装して着たい格好をして、好きなことを自由に表現していると、昔好きだった音楽がはまってないという感覚があるんです。だから、今のパーソナリティには、ダンスの方がはまりやすくなっています。歌となると自分の“男性性”みたいなものの方が強いので、今どういうパーソナリティで、どういう風に歌ったらいいのかわかんない。もしかするといずれ美輪さんみたいに、そこも合体するみたいなふうになるのかもしれないけど、そこのプロセスがまだつながってない感じがあります。

 

 

 

長谷川達也
そうだったんですね。僕は本当にMIKEYの歌が好きで、すごく特別な声を持っていると思ってるんです。できればまた聞きたいんですよね。

 

 

MIKEY ああ!嬉しい!ありがとうございます。ただ、今はパフォーマンスをしている私と、声だけの私がはまりづらいんです。前回のASTERISKのテーマ曲にもなった『女神の光』という曲は、加藤ミリヤさんとコラボさせてもらったんですけど、そこで歌っている私は、パフォーマンスをしている私ではないわけです。「いやいや、どれもお前だよ」という感じなのかもしれないけど、私は何かその違和感が気持ち悪くて不快なんですよ。だから、自分の声には、ビジュアルがない感じなんです。隠れて歌いたい。歌うのは好きだからその不快があっても歌っているんだけど、その自分を結局好きになれない。歌は好きだからトライするんだけど、やり切れない、突き詰められない感覚がいつもあるんですよ。いつかそこがフィックスしたらいいなと思うんですけど。

 

TDM では、最後にASTERISKを楽しみにしているお客様へのメッセージをお願いします!

 

 

MIKEY 今回は、白雪姫や魔女と言っても、もっと普遍的な女性の生き方がコンセプトになっています。結婚して家庭を持って幸せになる人生もあれば、独身で、仕事や自分のやりたいことを貫く、作品中では美魔女と呼ばれる女たちの生き方もある。どっちが悪くてどっちが勝ち組で負け組かとかではなくて、そういった女性の選択するいろんな人生の多様性がダンスを通して描かれていますので、男性にも響く部分があると思うんですけど、特に、女性の方にはぜひ見てほしいと思います。

 

 

長谷川達也
ASTERISKは今回で4回目ですが、これからもダンスの舞台としてどんどん練り上げられていくと思います。ただ、ダンスの舞台だけでの最高峰じゃなくて、すべての舞台での最高峰を目指したいですね。そういう位置にダンスの舞台も行かなきゃいけない。「ダンスの舞台としては面白いよね」という注釈があるようでは、まだまだかなと。ASTERISKならそこに行けると思いますし、今回も今までに観たことのない舞台になると思いますので、ぜひ観に来て欲しいです!

 

 

 

MIKEY でも・・・絶対、来年はやらない!

 

 

長谷川達也 それ去年も言ってた!(笑)

 

 

MIKEY
はい!来年こそはやらない!(笑)

[PICK UP]原作・中村うさぎ、演出・牧宗孝。*ASTERISK 「Goodbye,Snow White」 新釈・白雪姫

 

 interview by AKIKO & imu

photo by AKIKO

’16/05/27 UPDATE

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