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舞台「WASABEATS」第3弾特集 TAKASHI J/B

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気付けば舞台で活躍しているB-BOYとして気になる存在となっていたTAKASHI J/B。舞台「WASABEATS」に初演から出演している彼は、ダンサーが活躍する舞台の可能性をどう捉えているのだろうか。そして、3回目となる新作ではどんな彼を見せてくれるのだろう。唯一無二のオリジナルスタイルを追求し続け、ダンサーとして“何か”になろうとしている彼の生きざまに注目していただきたい。

 

  • IMG_1299_0304TAKASHI J/B

世界で唯一無二のダンススタイルHAND STAND ROCKlNを確立し様々なステージで活動中。ブレイクダンスの世界ではR16 2009(世界大会)SHOW部門・BATTLE部門ダブル優勝(世界初)、BATTLE OF THE YEAR 2009(世界大会 SHOW部門優勝、UBC 2010(世界大会)SHOW部門優勝という結果をのこしている。

 

 

 

 

最強に個が求められるブレイキン。

 

TDM B-BOYのダンサーとして、植木豪さんは初めてアミューズという大手の事務所に所属した方ですが、その次に、一番舞台で目に入ったのはTAKASHI J/Bさんでした。単に、アクロバットやブレイキンができるだけじゃなく、毎回オファーを頂くということは、毎回サプライズを与えられているのだろうと想像します。常に舞台に携わっていられるダンサー、しかもB-BOYとして代表格ではないかなと思います。実際の活動を教えて頂けますか。

 

 

TAKASHI J/B 普通、ツアーのリハーサルはナンバーごとに作って、後から順番に並べていくんですけど、マドンナの場合は、コンサートの順番で作っていくんですよ。オープニングから作っていって、そのオープニングが終わったら2曲目を作って3曲目…全部コンサートのセットリスト順にリハーサルをしていくんですよ。それはすごく新鮮でしたね。

 

 

 

TDM 確かに。B-BOY人口も多いし、B-BOYだけで世界大会が存在していて、成り立っていますね。 昔、B-BOY PARK()ができた時はブレイキンのシーンも見ていましたが、今はダンスシーンが大きくなって、さらに細分化してるから、なかなかブレイキンのシーンまでは追いかけられていないのが現状です。最近はオールジャンルのダンスが見れるイベントも少ないし、ブレイキンが見れるイベントは特に少ない。ブレイキンを教えているスタジオも少ないかもしれません。B-BOY PARK:1997年から続く、日本最大規模のヒップホップの祭典。ライヴやトークショー、MCバトル、B-BOYバトル、DJバトルなどが代々木公園で開催されている。

 

 

TAKASHI J/B いや、それがここ6、7年でブレイキンの人口が増えてきて、子どもも増えてきています。たぶんダンスがブームになってきてる流れからなんでしょうけど、ブレイキンもダンスジャンルとして広まって、レッスンが成り立っているというのも最近はあると思います。

 

 

 

TDM それは嬉しいですね!

 

 

TAKASHI J/B
ブレイキンはある意味フリースタイルなんですよ。最強に個が求められます。例えば、その子がたまたま他のジャンルのダンスをやっていた子で、その後ブレイキンをやり始めたら、ダンスの基礎を持つB-BOYになれると思います。一方で、ダンスの基礎がまっさらから入った子はリズムの取り方を知らない。みんな、それぞれのルーツを持って、それぞれのスタイルのブレイキンをやっています。ブレイキンでは「絶対バク宙をできなきゃいけない」とか「逆立ちを絶対しなければいけません」という決まりはありません。逆立ち系の技をやる人もいれば、逆立ちを1回もしないスタイルの人もいる。でも、それが同じところでバトルする状況になるわけです。

 

TDM
ブレイキンのバトルで勝つためには?

 

 

TAKASHI J/B
技の精度をあげることですかね。そして、ミスをしない。バトルに出るときのB-BOYはバトル用のスタイルを作るんです。僕はあまりソロバトルが好きじゃないので、ここ何年かはバトルに出ていませんが。チームバトルは自分の好きなスタイルができるからいいんですけど、ソロだとバトル用のスタイルが必要になるので…それが僕のやりたいスタイルと違うんです。

 

 

オリジナルを究極に突き詰めるという哲学。

 

TDM
どういうスタイルが好きなんですか?

 

 

TAKASHI J/B 2119もともと自分のスタイルになったルーツが、「オリジナルを作る」というとこにフォーカスを当ててずっと僕はやってきました。だから、誰もやっていない、オリジナルを究極に突き詰めようと、そこに哲学持ってやっています。自分は逆立ちのスタイルで作っていて、そこに自分のルールがあるんですよ。僕のオリジナルの技の中には全部ラビットという技が入っていまして、ラビットは音が取れるんですよ。そこをルールにして全部派生してオリジナルの技を作り出します。そのルールに当てはめると、全部の技につなげることができます。それがルールで、ずっと技を作ってきているので、オリジナルの技からオリジナルの技を生んできていて、ずっとオリジナルを追求し続けています。

 

TDM 今、34歳ということで、この年齢までやっていると思っていましたか?

 

 

TAKASHI J/B 20代後半からアクロバットを続けているのは、昔から考えたらあり得ないですね。

 

 

TDM
まだまだできる感覚はありますか?

 

 

TAKASHI J/B
 あります。だけど、結局、すべて自分次第です。どれだけ意識してアスリート生活をするか。自分を制御できるか。食事に気をつけて、生活に気をつけて、常にアスリートの感覚でいないと、どこかでたぶん怪我しますね。そこはもう、わかってるんで慎重にしてます。それを考えられなくなったら、すぐ体の調子悪くなっちゃうんで。普通に生活してたら、すぐに「もう歳だから動けないな」ってなると思います。だから、年齢を重ねても続けるには、精神力の問題だと思うんですよ。明日アスリート生活をやめようと思ったらいつでもやめれちゃいますからね。正直やめようと思ったことはあります。だけど、その時は本当の本当ではそう思ってない。ただ、その時しんどいから、逃げたいだけで思ってしまうときが多いですかね。「ちょっと休みたいな」ってとき。だから、結局続ける方法を毎回探していますね。

 

■目標は「人に伝える」こと。

 

TDM ここ最近ずっとライブや舞台の本番が続いてますね。

 

TAKASHI J/B はい、ここ2、3年はずっと続いていますね。

 

 

TDM 初めての大きな仕事は何でしたか?

 

 

TAKASHI J/B
大学2年生くらいの時に、GACKTさんのツアーが、初ステージでした。そこで相当鍛えられましたね(笑)。それからほぼ毎年やらせていただいて、いわゆるプロダンサーという生活が始まりました。でも、その時はすごく楽しいことも苦しいこともありました。自分はB-BOYで、他のジャンルのダンサーと居て、自分の専門じゃないこともやらなきゃいけなくて…。自分のスペシャリティも必要とされているような無いような状況だったりして。でも、楽曲やステージに合わせて、そこで必要なものをやるというのが大事だと思うので、そこを理解して取り組んでいました。

 

TDM
その重要性を若いときから現場で感じられているのは貴重な経験ですね。今回第3弾を迎えるWASABEATSには第1弾から参加されていますが、第1弾、第2弾と参加してみて何か変化はありましたか?

 

 

TAKASHI J/B
2139第1弾はやっぱり初めてWASABEATSというのを(植木)豪さんや(大野)愛地とかみんなでやるってことで、どうなるのか全く分からない状況の中、オムニバスではなく、一つの作品としてやるとなった時に、作品の中で自分のオリジナルを形にできる場があったので、そこへの思いが強かったですね。形作りはほとんどを豪さんが考えてくれたんですけど、そこで自分のオリジナルを人に伝える部分を、ステージの上で作らせてもらいました。それまでは、やはりオリジナルと言っても、結局は自分の世界でしたし、自分だけがわかるものをずっとやってきていましたから。ステージで何を残せるかということに、集中していました。豪さんとはもう10年以上、一緒に練習したり遊んでいて、いろんなことを話す中で、自分たちの想いとかやりたいことが形にできたのが第1弾のWASABEATSなんです。第1弾が終わった時点で、第2弾の開催が決まっていました。自分の中では、第1弾が終わった時に、かなり集中して臨んで、一度自分の中で一旦答えが出たので、それからまた違う1年が始まった感覚でしたね。第1弾は「自分の想いをそこでぶちかます!」という感じだったので、第2弾は「エンターテイメントとしてお客さんを楽しませる」という視点が大きかったですね。そして第3弾の今回は、「人に伝える」という部分を強く考えてますね。WASABEATSはエンターテイメント性が強い人が集まっていると思います。いろんなダンスをうまく踊れる人はいっぱいいると思うんですけど、なかなか人を「わあっ!」と沸かせることができる人は少ない。なので、WASABEATSは毎回ダンスというより、パフォーマンス寄りのものですね。ダンサーが見て楽しいものと、一般の人が見て楽しいものは違いますよね。でも、その両方の人が見ても、おもしろくて、感動できて、すごいものをWASABEATSは目指しています。

 

 

 

■自分のまんま、必要とされる状態でステージに立てるか。

 

TDM 舞台を作ってる時とライブを作ってる時での、取り組み方の違いはありますか?

 

TAKASHI J/B
舞台、特にWASABEATSは自分らが主役になります。そこが、ライブと全然違うと思いますね。ライブはどこまで行ってもアーティストのサポートなんですが、ダンサーも前に出ていいし、出るべきだし、前に出なきゃいけないと思います。僕が見えてる範囲で言うと、舞台畑の人たちのところにダンサーが行くと、別物になるんですよ・・・。あとセリフがあるか無いによってもまた違いますね。WASABEATSはセリフがないので、ダンスエンターテイメントと呼べますが、セリフがあるとまた違ってくると思うんですよ。そこがダンサーにとっての1つのハードルなんじゃないかな。

 

 

TDM
TAKASHI J/Bさんは舞台上でしゃべることに抵抗ありますか?

 

 

TAKASHI J/B 僕は、ダンスの舞台だったら大丈夫です。でも、本当に演技のみの舞台になると、まだきついなとは思いますね。発声や演技の指導をしてもらえれば大丈夫かなという感じはしますけど。気持ち的には大丈夫です。
ただ、セリフもダンスと同じくらいのクオリティに持っていかないと、その差が気になっちゃう人ってたくさんいるのでそこが怖いですね。そうなりたくないから喋らないという選択肢を選んじゃうと思います。「まあ、あの人ダンスの人だから喋れなくてもいいね」って許してもらうのは一番嫌です。でも、セリフも作品の中で使えたら面白いだろうし、伝わることもたくさんあると思います。だから、そうなるとやっぱり発声練習したりとか、いろいろスキルを学ばなきゃいけないと思います。舞台ってそういうあら探しをされる厳しい側面もあると思います。だから、舞台の上では、常に強いもの見せていかないといけない。

 

TDM ここ何年か舞台作品に携わる上で、自分のダンスの表現で難しいなと感じたことはありましたか?

 

 

TAKASHI J/B 自分との戦いですかね。自分が自分のまんま、そこに必要とされる状態でステージに立てるかというところですね。自分の中では、自分のスタイルをもっと表現できるんじゃないかと、その方法を悩みながら毎回そこでのベストを出していますし、それをずっとやっている感覚です。

 

 

TDM
いろいろチャレンジが続くと思うけど、そういう市場も成り立って、どんどん活躍できる若い世代が増えていってもらえたらいいですね。

 

 

TAKASHI J/B
そうですね。でも、なかなか難しいんですよね。B-BOYとしての進化形で僕はいるつもりでいるんですけど、後ろからそこを目指してくれる人たちはまだいなくて…。でも、今は、本当にダンサーは舞台に向かってると思いますけどね。だって、ストリートダンサー畑の人達がよく舞台をしているのを観に行きますし、レッスンの延長線上に発表会の舞台がありますよね。みなさんの拘りが詰まっていて、それが演出ありきの舞台作品のひとつだと思います。だから、みんな興味があるのだと思っています。ダンスで夢を与えられるようになればいいと思うんですけど、なかなか難しいんですよね。単純にダンスに感動するから、その人の活力になるだけでは難しいことなのかもしれません。

 

それは「まだ自分が達してないからだ」と理解していく。

 

TDM TAKASHI J/Bさんの存在は「あ、舞台にB-BOYが出てるんだ!」という夢を与えている実演にはなっていと思いますよ。

 

TAKASHI J/B 一般の人に伝わりやすい所って、そこですもんね。でも、まだまだダンサーと俳優や歌手との立場には差があります。それはもう根本を変えないと変わらない。組織として大きくなればなるほど、変えられない仕組みがあります。そうなるとちょっと自分じゃ介入できない部分になってくる。そうなると、やるかやらないかの究極の選択を迫られてしまいます。そこで感情的になったら終わっちゃう話なので、そうならないように、自分なりに楽しくできるように、気持ちの調整をしていますね。それが、できない時はやっぱすごくしんどいです。それも仕事の一環ではあると思っています。現場では、いかに自分を理解してもらって、B-BOYの立場やダンサーの立場をあげてられるかと考えているので、毎回「難しいなあ。でも、諦めない。」という想いで続けています。結局、いろんなところで文句言い始めたらきりがないし、それは「まだ自分が達してないからだ」と理解していかないと、次には繋がらないし、「じゃ、自分らでやればいいじゃん」という風になっていきます。それが出来たのが、WASABEATSの第1弾でした。僕の中ではそこを全部クリアできたんですよ。もちろん、舞台はいろんな人の力を借りて、成り立つ物ですし、「本当に人を感動させられますか?」って問われた時に、人の後ろでやる時よりも、より自分たちへの責任が増すので、より厳しくなりますけどね。

 

でも、WASABEATSは、ある程度自分で引き付けなきゃいけないので、自分という存在が本当に問われます。そこで自分が納得できなかったら、自分はそれまでということだけなので。そして、「結局、文句言ってるだけじゃん。」ってなる。でも、いちアーティストとして、ダンサーが人に何かを与えたいなら、それくらいしないと無理だと思います。

 

 

TDM 先日、ダンサーと話していた時に、芝居の人は稽古場に来たらずっと練習してるし、必死でその稽古という時間を集中してる人が多いけど、ダンサーはそこからまず意識違いますよねって話したことがあります。 ダンサーが踊りや自分自身を表現する面で凄ければ良いのかもしれないけど、もうちょっと、いい意味で真面目に取り組むというのが、常識的な習慣レベルですごく低いなと思いました。 

カルチャーとして、遊びの延長でやってるカッコ良さもあるし、遊びがあるからおもしろい物もどんどん出てくるんだけど、でも真剣にやってるとか、命かけてやってる、取り組む現場が、もしかしたら現場としてまだ少ないのかなと感じましたね。

 

 

TAKASHI J/B
結局、みんな器が先になっちゃうんですよ。そこにハマろうとするのが普通。無いものを求めたり、自分たちで器を作り出すと考えることは難しいのかなと思います。新しいものを作り出すというのは半分妄想的に思われているのかもしれません。でも、絶対誰かが取り組み続けないといけない。僕がオリジナルを作る作業はそういうことなんです。常に、新しいものを追い続けて、一瞬何かできる瞬間が楽しくてずっとやっていますね。

 

TDM
オリジナルを作り続けてきたとなかなか言える人はいないですよ。だから、続いてるんだし、認めてもらえているんだと思います。

 

 

すでにある器にハマることを否定し、新たに作り続ける姿勢。

 

TAKASHI J/B
2207この年齢になるといろんな現実が見えてきます。その中で、どうやっていくのかを考えた時に、あるものから選ぶ人が多い中で、自分はそこじゃなくて、見つけてやろうとか、創り出してやろうと思っちゃうから大変なんですけど(苦笑)。既にある器にハマろうとすれば、ある程度自分の身の程を知って、ハマっていくのはいつでも出来たかもしれません。でも、自分はそれを否定し続けて、これからもやっていくと思います。自分も毎回、自分の素でやっぱ感動させようと思うから相当しんどいのがあるのかもしれません。オリジナルを極めた先を自分で作り出さなきゃいけないという意味で、「何かにならないとダメだ」みたいな強迫観念もありますし。地位をあげていくというか、リスペクトされるために、一番わかりやすいのは集客力でしょうね。「チケットは1000枚売れますよ。」だったら、扱いは一気にグリーン車になるかもしれません。集客力に関しては、商業の世界なので、そこもやっぱり重要ですよね。そう考えるとやっぱ、そこを2極化しちゃいそうだなぁ。今は、その両方に行きたい人がいっぱいいると思いますし、そこを今考える時期なんだと思います。

 

 

TDM でも、昔からダンスの舞台作品を追っている我々としては「舞台を目指してくれてる子たちが多くなっている」という意見だけで、嬉しくなりました!3回目のWASABEATSを楽しみにしてます。

 

TAKASHI J/B
はい、かまします!

 

TDM
ありがとうございました!

 

[PICK UP]革新的なダンスステージ。『WASABEATS』第3弾

 interview by AKIKO

’16/05/04 UPDATE

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tokyodancemagazine

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