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第16回関東大学学生ダンス連盟Σ公演「re-ism」
第16回関東大学学生ダンス連盟Σ公演「re-ism」
1987年に発足し、今年で20歳を迎える「関東大学学生ダンス連盟Σ※ (以下、連盟) 」の公演が2007年3月17・18日に開催された。“学生ダンサー”の活動として、ここまでの規模と伝統とクォリティで成立している機関は貴重な存在だと改めて感じる今日この頃。年を追うごとにその規模を拡大しながら、作品のレベルも高まっている連盟公演へ行ってきた。今回はテーマ「re-ism」=「らしさ (ism) の再考・再認識・再構築」を軸に映像・照明・道具がよく思考されていた。

※関東大学学生ダンス連盟Σ (シグマ) …1987年に発足。関東地方の32大学41サークル約3600人以上の大学生が所属している団体。 (下記図参照。) 最近では関西の大学ダンス連盟「SYMBOL」との交流も深く、大学生ダンサーネットワークが全国化を見せている。

関東大学学生ダンス連盟Σ加盟サークル

*=「re-ism」参加サークル

青山学院大学 *A.D.L
*NACK
麻布大学 *TRIBE
跡見学園女子大学 POPINJAY
跡見学園女子短期大学 跡短ズ
宇都宮大学 doocle
学習院大学 Dance Applause
*NOX-it
神田外語大学 *STEP IN
慶応義塾大学 *es
*JADE
*W+I&S
国際基督教大学 *Smooth Steppers
埼玉大学 *After Beat Club
順天堂大学 *J.U.D
昭和女子大学 *AUBE
上智大学 *Beyond
*G-splash
Sophia Modern Dancers
白百合女子大学 S.D.C
成蹊大学 *JAM[z]
成城大学 ZENITH
創価大学 *D.I.CREW
VITAL
大東文化大学 STAR GATE
千葉大学 Dance Lovers' Crew
中央大学 *NAOKAN
東京国際大学 *U.G.G
東京女子大学 *Jaggy Dance Club
東京理科大学 *AQUARIUS
*GASSES
東洋大学 *Snow Dancer
*zap
東洋英和女子学院大学 *√DG
日本大学 *BAKUの会
一橋大学 *Cherish
明治大学 Cherry Goose
zup?
明星大学 DASH!
武蔵大学 STEPS
立教大学 *D-mc
早稲田大学 *W.U.B

※2007年4月現在
※50音順

M2 HIP HOP カルサイト「自信」

M2 HIP HOP カルサイト「自信」

M3 JAZZ SPECIALダイヤモンド「美」

M3 JAZZ SPECIAL ダイヤモンド「美」

M4 HOUSE ガーネット「生命力」

M4 HOUSE ガーネット「生命力」

M5 LADY’S SPECIAL ブラックパール「静かな力強さ」

M5 LADY’S SPECIAL ブラックパール「静かな力強さ」

STORY

就職活動中の一人の主人公がある日偶然入ってしまった、とあるトンネル。主人公はそこで出会った怪しげな老人からなにやら石のついたアクセサリーを手渡される。道行く人々もみな同じようなアクセサリーをつけているが、どうやら主人公のものだけ何かが違う。これは一体…?ここは一体…?
1部の前半では主人公を翻弄する謎の石が、様々の意味を持つ宝石として登場。各ジャンルのナンバーがそれぞれの意味合いを、工夫を凝らして表現していた。蘇ったゾンビたちが月光の中で動き出す「M4 HOUSE」ナンバー。キャラクターを一人置くことで、構成や作品の意味合いが引き締まっていた。最後の46名による“シャチウェーブ”はお見事。続いて、レイディーズ選抜陣がスラム街の日常を、ステージ上で再現した「M5 LADY’S SPECIAL」。クールで温かみのある世界を作り、ローリンの名曲を心地よいけだるさの中で踊り上げた。

M6 AFRICANSTYLE オパール「創造」

M6 AFRICANSTYLE オパール「創造」

M8 LOCK トパーズ「友愛」

M8 LOCK トパーズ「友愛」

M10 BERAK 「個性という名の群集」

M10 BERAK 「個性という名の群集」

昨今、連盟ではアフリカンナンバーが定着している。まだジャンルとして確立していないダンスシーン全体から考えると、完成度の高かった「M6 AFRICANSTYLE」ナンバーは連盟ならではの特徴といえるだろう。罪のない市民に暴力を加える警官のシーンから始まった「M7 HIPHOP SPECIAL」。圧力への抵抗、闘争心が図太いヒップホップビートと重なったこのナンバーを振付けたのはCLOCK EYED CANVASのTERU。2006年、日本一と呼ばれる栄光を手にした彼もまたこの春卒業の学生であり、社会に羽ばたいていく人物だ。「M8 LOCK」は暴走族のヘッド (?) 3人の友情を描く約5分間のドラマが完成。会場は笑ったり感動したりの大熱狂の渦に。色分けされた衣装と照明を駆使して、見せ場とメッセージが伝わりやすい演出になっていた。ブレイキンの魅力はパワームーブだけではなくエントリーやフットワークにも十分に在りうる。そう改めて思わせてくれた「M10 BERAK」ナンバー。舞台上に考え抜いたものを表出している作品のように感じられて、とても爽快な印象だった。クラブシーンでもこういった姿勢のチームがもっと増えると面白くなるだろう。

ここから主人公の心情を表すストーリーへと展開していく。

M16 JAZZ 自信がいつしか過信へと変わる。

M16 JAZZ 自信がいつしか過信へと変わる。

M18 HIP HOP ここが僕の居場所。

M18 HIP HOP ここが僕の居場所。

M20 RELEASE JAZZ 僕に差す光、僕の放つ光。

M20 RELEASE JAZZ 僕に差す光、僕の放つ光。

Finale

Finale

連盟OBやシーンで活躍しているダンサーをゲスト振付師として招く“スペシャル”ナンバーは、オーディションを通過した少人数で構成される。今年は「M17 HOUSE SPECIAL」に昨年に引き続きALMAのHIRO氏が招致され、試練に立ち向かう主人公の心理状態が巧みに表現された。ターンとステップを絶妙に組み合わせた疾走感のある流れ、舞台上で複雑かつ巧みに変わる構成。第一線で活躍する彼の頭の中を全身で感じられただろう。学生に交じって踊るHIRO氏の姿も新鮮だった。
ダンスを愛する人が、ダンサーとしてだけではなく、様々な分野でその感覚を大切にしながら生きていく…アンダーグラウンドにいるとついシーンのコアな部分に対する隆盛だけに目を奪われがちだが、広義でのシーンの発展とはそういうことも含まれはしないだろうか。そういう意味でも「関東大学学生ダンス連盟Σ」の存在は大きいと思いつつ、348人が作り上げた世界は幕を閉じた。
公演本番数週間前、編集部はオープニングナンバーのオーディションにお邪魔した。その時見たのは、円になってのソロ回し。ダンスを始めて間もない女の子が堂々と振付師にアピールしていたのには驚いた。クラブさながらの精神面や技術面の鍛錬が、昼下がりの体育館で行われているという状況には、時の流れを感じた。

 ダンスを通じて“いいものとは何か?”を思案し、アンテナを張り、反応し、吸収しては消化を繰り返す。そんな彼らの持つエネルギーが、ダンスという表現ツールを用いて凝縮された舞台だった。中でも今年は、学生らしい勢いや豊富な知識が投影されたものとして、ロックとブレイキンがその色を強めていたように思う。とりわけロックに限っては、ここ数年で“学生ロック”と呼ばれるほどの独自の面白さがあり、観ていて爽快なキレと、コミカルでアクロバティックな動きが特徴。将来、シーンを刺激するような学生“らしい”スタイルが誕生するかもしれないと、可能性を感じさせてくれた。学生ダンスシーンのますますの発展に期待したい。

関東大学学生ダンス連盟Σ公式ホームページ
'07/05/11 UPDATE
text by imu (TDM Staff)
Photo by HIDE
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