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舞台「WASABEATS」特集
植木豪×千葉涼平 〜相互刺激〜
舞台「WASABEATS」特集 植木豪×千葉涼平 〜相互刺激〜
ダンス100%の舞台「WASABEATS」がまもなく幕を開ける。PaniCrewの植木豪氏が初演出を務め、主役にはw-inds.の千葉涼平氏が出演。フィールドの違う表現者同士の相乗は珍しくないが、稽古場で汗を流していた彼らは熱いリスペクトを交し合い、作品に丁寧かつアグレッシブに向き合っていた。共演ダンサーたちの顔ぶれも、植木氏の心を刺激してきた個性豊な顔ぶれとあって、新しさを感じるこの舞台にぜひ注目してもらいたい。

植木・千葉 ●千葉涼平(w-inds.)写真右

w-inds.のリーダーとして2001年デビュー、卓越したダンススキルを誇る。今までに単独公演数は471公演を数え、総動員数は約150万人を突破。日本のみならず、アジア全域で人気と実力を不動のものとしている。

●植木豪(PaniCrew)写真左

世界大会UK BREAKDANCE CHAMPIONSHIP1998優勝、BOTY 世界大会1998 SHOW部門優勝、ALL JAPAN DANCE DELIGHT1998優勝、DANCE DELIGHT SOLO BATTLE CONTEST 優勝。

一番見せたいのは、「ダンス」。これだけです。

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これまで数々の舞台に立ってこられた植木さんですが、演出初トライということで、今回やってみようと思ったきっかけを教えてください。

植木

植木・千葉 ずっとPaniCrewの活動をやってきて、8年前、岸谷五朗さんに誘われて地球ゴージャスという舞台から、この世界に飛び込みました。

当時、僕は毎日事務所に泊まって1人で練習をしていたんですが、「毎日やってる奴は誰だ?そんな奴がいるのか?」と五朗さんが気にかけてくれたんです。あの個人練習がなかったら、誘ってもらえなかったかもしれないですね。努力していれば誰かが見てくれているんだなあと思いました。

初めてもらった役が桃太郎の猿の役でした。そして、五朗さんがストリートダンス用に曲も作ってくれて、「お前がここを振付しろ」と言ってくれました。他にも本当にいろいろとよくしてくださった舞台で、僕はすごくいいスタートを切れて、ここまで来れています。

それから8年経った今、ストリートダンサーが大きな舞台に役付きで出るのは難しいのが現状です。そういう意味で、僕が仲間とそういうものを作れるなら、それを見てストリートダンサーは勇気やモチベーションが出るんじゃないかなと。そういうものをひとつ作ってみたいと思ったのがきっかけです。

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今回の「WASABEATS」、何を一番大事にして作られていますか?

植木

一番見せたいのは、「ダンス」。これだけです。他には何もない。

それにいろんなエフェクトをかけるにしても、ひとネタに対してひとつ仕掛けをするということを全部考えて、それを並べて、ストーリーにしてみました。

今回、演出をやってみて、いろんな演出家さんをリスペクトします(笑)。

照明ひとつを入れるかどうかとか、板一枚を前に置くか後ろから立てるかとか、細かい打ち合わせもすべて参加しますし、チラシの文字も数パターンから選んでいたりとか、こんなことやっているんだ!って思いました。

こんなことやっていたのに、楽しそうにリハをやったり、遅刻したりする僕を怒らずにいてくれて、心の広い方なんだなぁと思いました。

ダンス以外にも学べることがあるんじゃないかなと思っています。


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今回、千葉さんと共演することになった経緯は?

植木

僕からの熱烈なラブコールです(笑)。

千葉

はい、熱い電話をいただきました(笑)。

植木

涼平くんとは練習場がずっと一緒だったんですが、本当にスキルが高い。一緒に練習しているのは世界に挑戦している奴らばかりなんですけど、彼らも「おお!」と一目置く存在であり、さらにアーティストでもある。華もあるしスキルもあって、今回の主役を考えた時に、もう絶対一緒にやりたいな!と思い、連絡させてもらいました。

ただ、事務所同士の判断なので、僕らだけでは答えは出せなかったんですけど、「こういう話だけいくと思います」ということだけ言うつもりが、ずっと喋ってしまいました(笑)。溢れる思いが溢れ出してしまいましたね(笑)。

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その連絡を受けて、千葉さんはどう感じましたか?

千葉

植木・千葉電話頂いて、豪さんが舞台をやるということで、僕はすごく純粋に嬉しいなと思いました。やはりこのメンバーを見ても、本当にすごいメンバーばかりだと僕もわかりますし、その中に声をかけていただくだけでも、すごく嬉しいなと。

でも、僕で大丈夫かな?と逆に不安だったんですけど(苦笑)。

植木

本当?(笑)。

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w-inds.としての活動を13年やられていて、昨年は初舞台にも挑戦されていましたね

千葉

はい、そうです。逆に、あれがあったから今回のことを考えられたかもしれないと思います。だからすごく、タイミングや巡り合わせを感じます。

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今までの歌があった上でのダンスという表現から、今回はダンスがメインの舞台ということで、今どういう感覚ですか?

千葉

僕はすごく楽しいですね。しかも、今回は、今までたくさんの舞台に立たれている豪さんに学べることが、ダンス以外にもあるんじゃないかなと思っています。だから、踊り以外の部分でもいろんなアドバイスをもらうと嬉しいですね。

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どんなアドバイスをもらうんですか?

千葉

例えば、ストーリーの中で、周りは踊っている中で僕だけが踊っていないシーンがあって、そのアクティング、演技についてですね。

涼平くんに「これで大丈夫?」と聞くことが多いです(笑)。


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植木さんも千葉さんもダンサーとして、アーティストとして、互いにダンスに対してストイックであるからこそ、関係性ができていると思うのですが、自分の中で大事にしていることはありますか?

千葉

豪さんとはもともと知り合いですけど、今回初めて仕事として共演させていただいて、不安もある分、新しい自分を引き出してくれるんじゃないかなという期待もありつつ、だから、すごく楽しいです。なかなか、自分を見るってできないことなので。

植木

僕は練習場で見ていて、かっこいい男だなと思ったんです。汗を流している姿は、自分の刀を磨いている侍のようであり、いつ敵が来ても斬れるようにしている。だから、やはり、踊る時はベストなメンバーとして一緒に踊って欲しいと思っていましたね。

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2人で作っていく中で、どんな会話が多いんですか?

植木

植木・千葉僕が、涼平くんに「ねぇ、これで大丈夫?」と聞くことが多いですね(笑)。

過去の舞台経験からして、主役は演出家の意図を理解している方のほうがより良い舞台を作っていけると思うので、そういう意味で、涼平くんが大丈夫かどうかではなくて、俺は振付をこうやって作ったけど、もしひとつの振りでも嫌なところがあったら、僕はそれをどんどん変えていきたいんです。

僕は生活の中にあるものは全部自分の好きなものじゃないとだめなんです。服、帽子、音楽・・・なんでも自分で作るし、世界で一番好きなものは自分が作ったものなんです。

今回は、涼平くんが主役の舞台なので、もっと愛してもらえるように、僕が作ったビジョンを一緒に共有して、涼平くんのかっこいい部分と合わさってどんどん積み上げていけば、絶対かっこ良くなると思うんで、それを確認するためにも、「大丈夫?」と聞いています。

普段、別の現場では、「ここ作って」というだけで、「大丈夫?」とは言わないです。そこはやっぱり、一緒に作っていきたいと思うから。

自分を頼りないと思っているわけではなくて、そこはやはり涼平くんも全部スッキリして、解読してさらに涼平くんの良さをのせたいので。すでに作った振り以上のパワーを出してくれているので、ありがたいですね。

僕の心を刺してくれたメンバーたち。


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今の稽古はどういう段階ですか?

植木

植木・千葉振りを入れているところですね。

結構、僕は怖がりで、ギリギリになって慌てて作るのが嫌だったんです。特に涼平くんのシーンは、すごく前から作っていて、何人にも振りを渡して、ビデオで撮る作業をずっとしていました。他のシーンも全て僕がまずイメージして、ダンサーにパートの振付を分散したりします。

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今回のメンバーを選んだ理由はありますか?

植木

涼平くんは、アーティストとしてもダンサーとしても感動した部分があって、一緒にやりたいなとその気持ちのところで惚れ込みました。

植木・千葉他のみんなも1人づつ、一度僕の心を刺してもらったシーンが全員にあります。だから、そのシーンを舞台のワンシーンごとに込めていけば、それは観ている方にも刺さるんじゃないかなと思っています。

僕と涼平くんで猛獣使いのように、あの個性的なダンサーたちが檻から飛び出すようにしたいですね。

正直、ダンスを合わせることが上手い人はあまりいません。あえて、僕はそういう人にお願いしたし、自分のスタイルだけを磨いている人たちと一緒に作品を作りたかったんです。涼平くんもそうだと思っているので、それを出してもらいたいし、確実に出ているので、それを観てもらえたらなと思います。

スタッフに関しても、映像は僕が作りたい“和”や“ヒップホップ”に合っていて、ちょっとデジタル色も欲しかったので、そのバランスがすごく噛み合った方にお願いしました。

音楽はPaniCrewがずっとお世話になっている方なんですけど、いろんな方に曲を作ってもらっている中で、ビートマニアというサントラで世界中を周ったり、ダブステップで海外に呼ばれて8000人規模を盛り上げている方で、最新の音を作れて、さらに僕のこともわかってくれていて、僕にとって音楽に関する一番の師匠の方です。ダメ元でお願いしたら「全然やるよ」と言っていただきました。音は1番大事な心臓部分なので、そこはもう一番やって欲しい方にお願いしました。

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先ほど稽古も拝見しましたが、植木さんをはじめ、みなさん熱心で、真面目ですね。素晴らしい。

植木

そうですね。今回、僕は真面目な人を選びました。

千葉

本当に。ダンサーとして考えた時に、真面目だなとすごく感じますね。

植木

(吉浜)愛梨が初めて舞台に出た時に、みんなロンダードバック転で四方に広がる場面があって、60何回目かの公演だったんですけど、パッと見たら、愛梨だけものすごくひねってたんです。しなくていいのに。「ねぇねぇ、ひねってなかった?」と言ったら「あ!見ている人いたんだー!やったー!」と言っていました(笑)。

毎日すごい本番をやってきて、60回以上の終えた本番で自分の得意なことをぶち込んでくるのは、相当好きじゃないとできないはず。と思って彼女を誘いました。

(大野) 愛地も、他で舞台をやっていたんですけど、歌ったことないのに、コーラスパートを一生懸命歌っている姿を見て、「こういう奴、いいな」と思いました。あと、一緒にヘッドスピンの練習をしていて、愛地の技を見て涙が出そうになったことがあります。あれは心に刺さりましたね。

自分の引き出しにあるものだけではなく、新しい表現を。


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今回の舞台を通じてみんなに伝えたいメッセージはありますか?

植木

和製のヒップホップ、ストリートダンスの可能性とか素敵な部分を見てもらいたいです。

涼平くんが出てくれることで、いろんな人が見に来てくれると思うので、「ダンスってこんなに楽しいんだ!」と思ってもらえたらいいなと思います。

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千葉さんは、どういう舞台にしたいですか?

千葉

植木・千葉僕はたぶん、すごく表現することが好きなんです。なおかつ、今回は豪さんが手がける舞台で、豪さんがイメージするものを表現するという、自分にないものを新しく表現するわけだから、それはすごく楽しいし、この先も楽しみです。今までの現場とも違いますし、本当に純粋に楽しんでいます。

これは個人的な考えですけど、歌って踊る表現ってその人によって自由だと思うんです。「俺はこの曲をこういう風に伝えたい」でいいと思うし、僕はそういう風にやっていますが、演出家のいる舞台だと、今回は豪さんなので、豪さんのイメージを表現したいんです。自分の引き出しにあるものだけではなくて、それが混ざって新しい表現ができるかなと思うので、それが今、楽しいですね(笑)。

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植木さんのイメージを表現したい千葉さんに「大丈夫?」と聞く植木さんが相乗しながら創り上げていく舞台になるんですね。

千葉

はい。だから、僕は「大丈夫です、大丈夫です!」って感じですね(笑)。

植木

だって、どう思ってるんだろうって心配じゃないですか(笑)。

TDM

それくらい大事に作られているということですね。心の刺激をし合う仲間たちで作られた素敵な舞台、いろんな方々に見てもらいたいですね。今日はありがとうございました!

interview by AKIKO & imu
'14/03/11 UPDATE
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