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梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜
梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜
一度観たら忘れられない、とはダンスパフォーマンス集団・梅棒にぴったりの言葉。J-POP・一曲使い・明白な起承転結とストーリーで魅せきる独自のジャズダンススタイルを貫き、極め、ついにJAPAN DANCE DELIGHTで特別賞を獲得。全国区にその名を知らしめた彼らが、同じくJ-POPで表現力を試しているおしゃれ紳士とのコラボ公演を行う。メッセージ発信能力の高い彼らがこの公演で伝えたいこととは・・・?

梅棒
おしゃれ紳士

日本大学芸術学部のジャズダンスサークル「BAKUの会」出身。 2001年、当時大学一年生だった伊藤今人の声かけにより、同期6名により結成。レペゼンジャンルはJAZZでチーム歴9年。舞台俳優、映像俳優、ダンサー、写真家など、様々な芸術分野を生業とする、現在は5人のメンバーで構成[伊藤今人、ツル、TAKUYA a.k.a.TNK2、TATSUHIKO、 KAZUYA]。各々の感性とスキルを用いた独自の手法で、ストーリー性のある演劇的な世界観を、主にジャズダンスを用いて表現。使用楽曲は主にJ-POPであり、それにのせて展開される3分〜5分のドラマで、笑いと感動を客席に届ける。 TOKYO DANCE DELIGHTにて受賞を重ね、JAPAN DANCE DELIGHT Vol.16にて特別賞受賞。 ”ディズニーランド”、”スタジオジブリ”、そして”梅棒”。日本人に愛される3大エンターテイメントを目指す。今回は総合リーダーの今人氏・梅棒初の現役ストリートダンサーTAKUYA氏が参加してくれた。(KAZUYA氏は撮影時のみ登場。)
梅棒 オフィシャルサイト
http://umebou.daa.jp/


おしゃれ紳士
おしゃれ紳士

2002年、日本大学芸術学部演劇学科在学時、同期の男性メンバーで結成。「男衆」名義で大学関連の行事を中心に活動。演劇・ダンスの枠に収まらないパフォーマンススタイルで話題を集める。卒業後、個々の活動に入り、各自が己を磨く為に活動を一時休止。メンバーは、現在小劇場界にて注目を集める団体の看板俳優、主宰など様々な形で活躍している。そのメンバーが再び集結し、男衆Ver2.0『おしゃれ紳士』として、 2008年11月より再始動。その時期、そのシーンに合わせてメンバー構成を決め、パフォーマンスを繰り広げている。普段多岐に渡る活動を行っているメンバーにより、客層も多様性を持ち、新しいパフォーマンスとの出会いの場を作っている。今回は主宰の伊東氏・演出の西川氏が参加してくれた。
おしゃれ紳士 オフィシャルサイト
http://oh-charade.com/

●写真撮影:飯野高拓

ツールは違えど根源が同じ梅棒×おしゃれ紳士。 

TDM

そもそも皆さんが集まったきっかけから教えてください。

今人

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜日本大学芸術学部演劇学科演技コースの一学年先輩がこちらのお二方(西川、伊東)で、僕がその一個下になります。当時このお二人は演技を主にやっていて、おしゃれ紳士の前身に当たる“男衆”という団体を作って活動していました。

対する僕は、ずっとジャズダンスサークルでダンスをしていまして、9年前くらいに、ダンスと演技を織り交ぜたスタイルの梅棒というチームを作りました。

男衆の皆さんは主に演技に力を入れていたので、ダンスではなく、いわば音に合わせて演技寄りのパフォーマンスをするというスタイルでした。学年は違えど、お互いに同じフィールドで活動していたので、顔見知りでした。

僕の所属していたジャズダンスサークルは関東大学学生ダンス連盟Σに加盟しており、そのとき会長をやっていたのがTAKUYAくんでした。梅棒とTAKUYAくんは連盟を通じて仲良くなり、2年ほど前にTAKUYAくんが梅棒に入ることになりました。

そして現在、僕と西川さんは同じ劇団“ゲキバカ”に所属しているメンバーでもありまして、今回おしゃれ紳士が公演を打つにあたり、梅棒という団体に声をかけていただいて、コラボレーションをしようということになった・・・というのが今回の馴れ初めでございます。

TDM

おしゃれ紳士さんはどんな団体なのかご説明していただけますか?

西川

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜そもそも、ダンスをしていて急にしゃべったら面白いなと思っていて、その逆で、ミュージカル以外の、普通に演技をするストレートプレイと呼ばれる演劇で、振付ではなくて演技中の自然な動きをダンスに応用できないかなと思ったんです。

たとえば、会話をしていてうなずく動作で、首を縦に動かしていたとして、それをだんだん音に乗せていって、「うん、そうだよね」の意味も超えて、立ち上がってそういう踊りになっていく、とか。

ストーリーや音の設定で言葉がいらなくなる表現と、動いていたんだけど、その振付が言葉に圧倒されて、言葉や意味だけになっていく表現とを行き来する面白さがあります。

・・・以上、マジメに答えるとこんな感じで、ぶっちゃけて言うと、単純に面白いこと、ワケのわからないことを見せたい、というところから始まっていますね(笑)。

普段、J-POPを聞いていて、「この曲でダンスしたい!動きたい!プロモーションビデオのようなものを作りたい!」と思うときがあるんです。それを実際に舞台上で、生で表現したいという欲求が昔からありました。

そもそも、ダンスで感動するのって理由がわからないですよね。技術による感動もあるかもしれないけれども、そこに身体が在って、人がただ動いているだけなのに、「この人たちは何でこんなに必死でグルグル回っているんだろう!?」ってくらい一生懸命やっている姿は、理屈抜きで面白いし、感動する。

僕はダンスがまったくできない人間ですが、そういう人間が違う方面から、心を動かせるものが在れば面白いなと思いました。

伊東

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜自分は、このメンバーとだったら面白いことができそうだとずっと思っていました。大学4年生のときに、男衆が一度休止をして、2008年にまた一緒にやろう!となったとき、昔に比べたらもう少し大人になったであろう自分たちと、今後も新しい形になっていくということを踏まえて、おしゃれ紳士に名前を変えました。

J-POPの歌詞が持ってる意味ってものすごく強いですよね。芝居を観なくても歌を聞くだけで、昔の思い出がよみがえったりします。たとえば、「愛してる」の意味を伝える時の手振りを、音に乗せて、自分と相手がいれば成立する関係性で、ダンスのスキルとは別の次元で、もっと素直にシンプルに伝えても面白いんじゃないかなと思いました。

TDM

なんだか表現のアプローチのしかたは梅棒と似ていますね。

今人

えぇ、すごく似ています。ただ、違うのはダンスと台詞の分量です。

梅棒はダンスをメインにしている人間が多いので、基本的に台詞は一切使いません。喜怒哀楽などの心理表現はダンスかアクションで表現するようになっています。また、我々は楽曲を丸々1曲使います。

対する、おしゃれ紳士さんは、台詞も使いますし、少し踊ったりもします。また、1曲にこだわらないで、複数の曲のオイシイ部分をつなげていったりもします。

ただ、根本的にやりたいことは一緒です。主にJ-POPを使っていますが、J-POPだと、ストレートに歌詞が伝わってきますし、起承転結がはっきりしているものが多いので、それをBGM的に捉えて、ドラマのトレーラーのように、何かが始まって、受継がれて、転換があって、終結するストーリーを説明して完結させられる。それを主にダンスを用いてやっているのが梅棒です。それがうちらの面白い表現だと思っているからやっています。

それをダンスが得意で、かつ演劇の経験者もいるから、それを上手く生かして面白いことをしようとしたら、こういうスタイルになった・・・以上が、梅棒であり、梅棒の伝えたいことなんじゃないかなと思います。

TAKUYA

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜僕は後から梅棒に加入しましたが、ずっと面白そうなことをやっているな〜と思っていました。梅棒が大好きで、観る度に「ココが面白かった!」と感想を言っていて、そのうち僕がジャズダンスをやるようになったときに、「代役をやってみないか?」という話から関わることになりました。

観ている人たちが、「コレは面白いな」と思ってもらえることが、一番やりがいがあることであって、エンターテイメントというものもそう在ってほしいと思うので、特に意味もなく、単純に、観て「面白かった」と思ってもらいたいし、自分が今それをできる場所が梅棒ですね。

今人

僕らは“わかりやすさ”を突き詰めているので、絶対に曖昧にしないんです。おしゃれ紳士さんはあえて抽象的にしたりする部分もありますが、僕らは絶対にお客さんに伝わるようにします。

敵なのか、恋人なのか、なぜけんかをしているのか・・・初見で観た人でもわかるように、とにかくシンプルにそぎ落としていきます。なので、ダンスイベントに行ってもダンスになじみのない人にでもわかってもらえる立ち位置を求められることがありますね。まったくダンス経験のない人が、まずきっかけとして好きになってくれるような存在で在りたいと思っています。

THE 演劇業界。


TDM

役者の皆さんが有名になっていく、成功していくシーン上のルートみたいなものはあるのでしょうか?

西川

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜役者の場合は劇団が売れるか、個人が売れるかで、さらに事務所の力がものすごく強いです。

基本的に僕らがやっているのは、キャパ100〜200席ほどの小劇場で、大体5回以上公演するという、いわゆるアンダーグラウンドのフィールドで活動しています。今はいい作品作りが優先になっていて、それを約1000人くらいのお客様に見てもらう感じです。

“売れていく人”ということを考えると、さらに大きいステージのオーナーから引き抜かれたり、プロダクションに所属して、大きい舞台で演じて、そこでいいと思われれば力のある人間に声をかけられたりします。それをまた別の人間が見ていいなと思って、声をかけられて・・・という風にどんどん上の世界に引っ張られて行きます。

また、面白い海外の演出家を招くようなワークショップにもチャンスはあります。ワークショップで行う作品は、一見スポンサーがいるので商業的なものといえますが、演出家によっては商業向きではなく、小規模で面白い公演をやったりします。それを力のある人が観た時に、面白い人を見つけて引っ張ったりもします。

TDM

先輩たちが引っ張りあげる構図なんですね。

今人

そうですね。劇団で売れるということはほとんどなくて、個人レベルが多いです。日本の劇団で売れているのは、劇団四季と、宝塚歌劇団、演劇集団キャラメルボックス、劇団☆新幹線くらいでしょうか。

演劇集団キャラメルボックス:
1985年、早稲田大学の学生演劇サークル出身のメンバーを中心に結成された劇団。過去に上川隆也、津田匠子、近江谷太朗らが所属、定期的に作品上演をこなし、現在延べ200万人の観客動員を誇る演劇集団。

劇団☆新幹線:
「タラ・レバ」スタイルdeluxe川崎悦子×柴田健児インタビュー脚注参照。


西川

いずれの団体も、作品が素晴らしいことは前提で、あとは資金面での援助を受けて、年間何度も作品を発表し、どんどんファンを広げています。作品がダメで、役者がイイ、ということはまずありえないですからね。

今人

個人で事務所に入って活躍していくか、劇団でものすごく飛びぬける存在になって活躍していくかの2パターンに分かれますが、後者はほぼないです。

ただ、大人計画はそれを兼ね備えていると思います。実力も人気もある珍しいタイプの成功例と言えるかもしれません。でも、劇団として売れていくことはなかなか難しいと思います。

大人計画:
松尾スズキ主宰の劇団。宮藤官九郎の構成・演出作品に定評があり、阿部サダヲ、荒川良々、村杉蝉之介など個性豊かかつ実力ある役者を支持するファンも多い。個々が舞台だけでなく、テレビ、映画、書籍、音楽活動などさまざまな分野で活躍を見せる。

●編集部注:演劇業界に関する話はあくまで主観で話していますので、実際と異なる部分があります。正確な情報として捉えないようお願いします(笑)[おしゃれ紳士&梅棒談]

“分かりやすさ”が第一優先。


TDM

構成・演出などの作品を創り上げていく面で団体としてでも個人としてでも、何か大事にしていること、こだわりがあれば教えてください。

今人

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜梅棒は “分かりやすさ”に尽きます。

ダンスを用いているので、伝わりづらい部分も出てきますし、我々はあえて台詞を排除しているので、始まって一分で全部の設定が誰にでも分かるようにするのがものすごく大変です。ネタの前にナレーションで設定を言えたらどれだけ楽かなといつも思います (笑) 。

悪、味方、女、取り合ってる、負けた、悔しくて頑張る、リベンジ・・・みたいな分かりやすい山場を作っていって、簡単な出来事を数分間以内につなげていく作業です。

TDM

どうやってネタを作り始めますか?

今人

基本はいつも僕が「この曲をこういうテーマでやりたい」という発想を持っていきます。アクティングやこういうダンスにしようという話し合いをして、ダンスをメインに活動しているメンバーがいるので、振付はみんなで分けつつ、最終決定をするのは僕です。

その後、決定したものに対して、「もっとこうした方が伝わるんじゃないか」といった話し合いも重ねて精査していくという感じです。話が伝わらないで終わることだけを避けるため、伝わりやすさ重視しています。

TDM

アイデアはどこから生まれますか?

今人

曲を聴いたときに、自然と浮かぶものが多いんですけど、ドラマだったらどういうシーンでこの曲が流れてくるかなという発想をしてしまうので、例えばロックだったら暴走族、失恋の歌なら当然失恋の話になったり、結婚式定番ソングで結婚の話など、曲調に合ったストーリーが、BGM的にパッと浮かぶんです。

それを梅棒はダンスを使って、おしゃれ紳士はいろんな要素を使ってどう表現しようか、となるので、そこで分岐するだけで、根源は一緒です。

TAKUYA

たまにですが、曲先行のパターンの逆で、設定を先行して決めるときもあります。

一度、”侍が時代を超える話をしたい”となって、現代の野球部と一緒に何かをするところまで考えたんですが、“侍が時代を超える”説明が複雑すぎて、結局“侍”を排除して、ただの野球部の話になったこともあります。

今人

やりたかったなぁ(笑)。でも、その根本を覆して作った野球部ネタで、JAPAN DANCE DELIGHT特別賞を取れたので、たぶんそこを侍にしていたら取れなかったと思います。

“侍”はやりたかったけれども、伝わらないんじゃない?となったら、排除してでも伝わりやすさを優先して作るのが、僕らのやり方です。

TAKUYA

もちろんなるべくそのやり方はしたくないので、できる限り考えに考えますが、それでもダメな場合に優先するのは伝わりやすさですね。

TDM

おしゃれ紳士さんの作品の作り方はどうですか?

西川

うちらは、ストーリーだけにこだわっていなくて、例えば一曲すべてではなく、イントロからサビまでしか使わないときは、ストーリーではなくただガチャガチャ動くときがあります。

その作り方は、僕が“きっとこのシーンでこの曲がかかったら何かができる!”と思う曲を、稽古場にいくつか持っていってかけるんです。そして、みんなに「何かやって。」と言って無理やり動いてもらって、組み合わせていきます (笑) 。

ある程度浮かぶ部分は設定して、「最初は全員真ん中に集まってきて・・・ハイ!そこで変わって!」と言うと、みんな突然変な動きをします。そうやって生まれた面白い動きを全員でやってみたり、場面に応じて組み合わせていきます。

なので、梅棒と違って、分かりやすいものというよりは、お客様にびっくりしてもらう作品と言えるかもしれません。

「ここで人が飛びたいね、でも、実際は無理だね」となっても、みんなで持ち上げたり、放り投げたりして何とか再現します。ミサイルを出したいときも、みんながミサイルになって、人を人に投げつけてみたり。卓球のシーンでは、一回転してから打ち返したいから、みんなで持ち上げてスローモーションのように回転させてから打ったり、分身魔球だと、舞台上に人が出てきてみんなで打ったり…

TAKUYA

・・・マンガですね(笑)。

西川

そうですね。漫画のような演出手法は惑星ピスタチオという劇団が“パワーマイム”と名づけてやっていました。

人が怪獣の役をやらなくちゃいけないときに、そういう格好をするのではなく、例えば「俺は怪獣!鋭い牙・牙・牙!ズシーンズシーン!」とすべて口で説明するんです。それに似ている部分はあるかもしれません。

惑星ピスタチオ:
「パワーマイム」と呼ばれるパントマイムと過剰なまでの説明をおりまぜた表現手法や、「スイッチプレイ」という一人で多人数役をこなす手法などが受け、多くの支持を集めた日本の劇団。在籍していたメンバーには平和堂ミラノ、佐々木蔵之介、いちいりえらがいる。


今人

今回の公演の稽古でも両者の違いは出ていて、おしゃれ紳士は、曲を持ってきて、発想しながらそこにいる人たちを動かしながら悩みながら作っていくので結構時間を割きますが、梅棒は考えてきたものを落とす時間だけでいいので、わりと練習時間は短いです。

うちらは基本ダンス、それに付随するアクティングで表現をしようとしている団体ではありますが、今回おしゃれ紳士プロデュースのナンバーに出る場合には、そのやり方を受け入れて、苦戦しながらもやっています。

逆に、梅棒プロデュースナンバーにもおしゃれ紳士の皆さんに出てもらう場合には、ガチで踊ってもらうので大変なようです。

何かを理解しようと思って観ないほうがいいと思います(笑)。


TDM

今回の公演を観に行く人たちが知っておくと、より楽しめるようなことってありますか?

全員

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜ないです(笑)。

今人

最終的に何かを理解しようと思って観ないほうがいいと思います(笑)。

西川

何か言いたかったこととかもないので。いろんな曲があるんだなーっていうくらいですね(笑)。

伊東

家でテレビつけてボーっとお笑い番組でも見てるような感覚がいいですね。

今人

またはMTVでプロモーションビデオをだーっと見てる感じですね。

TDM

確かにプロモーションビデオを作ってる感覚に近いのかなと思いました。

今人

そうですね。特にうちらはそれが強いかもしれません。

西川

勝手な制作だけどね (笑) 。

TDM

お金と時間を費やした本気の遊びですね。

西川

本気になって動くことって、なかなかスーツを着て仕事をしている人がしないと思うんです。せいぜい遅刻しそうになって猛ダッシュするくらいで、そのとき間に合ったにしろ、間に合わなかったにしろ、身体の中に非日常の何かが残ると思うんです。

全員で走り回ったり、音一つ一つ全部にやたら振りが入ってたり、やけにこっち向く振りだし、ついでに皆イイ顔だし何だコレ、みたいのが好きです。エネルギーがそのままどんっと舞台に乗って、お客さんに渡されて、元気になってもらいたいですね。

個々の魅力が出せる場所。


TDM

描いている展望があればお聞かせください。

今人

メンバーは全員梅棒と別にメインストリームを持っていて、そこでのし上がっていきたいと思っているので、活動したくなったときに作っていくという形になっていくんじゃないかなと思います。それはこの先も変わらずやっていきたいですね。

梅棒の目的は“JAPAN DANCE DELIGHTで何かする”だったんですけど、それを成し遂げてしまったので、これ以上梅棒で何をやろうか路頭に迷っている状態です。でも、来年くらいに梅棒として何か形に残したいと僕は思っています。

「梅棒で食ってくぜ!」ってヤツは今のところ現れていないですが、環境が人を変えるかもしれません。国、ジブリ、ディズニー、ピクサーあたりがスポンサーにつけばそういう可能性もあると思います(笑) 。


TAKUYA

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜途中から梅棒に入った人間としては、どれだけ梅棒という神輿に乗っかったら面白いかな、という感覚です。

梅棒をやることで、ダンス以外のものからダンスに使えることがあるし、今回のおしゃれ紳士さんとやっている時間によっても、自分の貯金が増えています。

たぶん、これからもやりたくなったときにやっていくという形は変わらないと思いますし、僕もそれでいいと思います。そういう場所で在る方がいいかなと思います。

西川

自分も役者なので、いい芝居をしてレベルアップしていきたいと思いますけど、劇団は集団なので、そこでの方針があり、劇団のための作家、演出家、役者がいて動いていくので、自分の意見は基本的にはないです。あくまで、意見を求められたら発言しますけれども、劇団でやることが自分のやりたいことすべてではなくて、芝居の中でやりたいことのうちやれることと、やれていないことがあるので、僕のやりたいことだけを純粋にやれるのがおしゃれ紳士ですね。

おしゃれ紳士の表現はとても狭いものだと捉えています。悪く言えばどっちつかずだし、台詞だけにこだわっているわけでもないし、ダンスとして見せているわけでもない。

ただ、芝居のクライマックスなどのすごいところだけを抽出したものを作りたくて、そういった俺のやりたいことに皆に付き合ってもらっているもので、俺一人だとできることも限られてくるので、周囲の意見には助けてもらって成り立っています。

僕も役者の生活がある一方でおしゃれ紳士があると、「あ、俺はあの時、こういうことを思って芝居をしてたんだな。」と思ったりして、すごく整理される部分があります。

伊東

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜おしゃれ紳士がメンバーにとってのライフワークになればいいなと思います。

大学をきっかけに集まって、平時は劇団というある部分で、キャラクターをコントロールされた枠組みの中で役者をやっていることが多いメンバーですが、もっと個々人として見た時に、役どころで見せる側面以上に、『こいつら、もっと面白いんだぜ!』っていう、例えば『西川康太郎という人間はもっと面白いことができる奴なんだよ』といった気持ちを皆に見せたいと思いました。

今人も役者としての顔とダンサーとしての顔とで違った良さを持っている。だから梅棒が在るし、おしゃれ紳士も自分たちにとってそういった個々の魅力が出せる場所で在ればいいなと。

「おしゃれ紳士で食っていこう!」というテンションよりは、公演をやって、またそれぞれのフィールドでステップアップして、またここに集まったときにはさらに違ったお客さんが観にきたり、ここからお客さんが自分たちのそれぞれのフィールドを観に行ったり・・・そういった派生をしていくきっかけを作る場所にこの団体をしたいと思います。

芝居だと主役は決まっていますが、そういった形態であれば、一時間の間でもたくさんシーンがあるので、それぞれの人間の良さが出せる。それを伝えることで、この人の良さ・面白さは他にもあると伝わる場所で在ればいいなと。

お客様含め大切な人たちに、馬鹿なことだけど、伝えたい気持ちが伝わる集団として続いていけばいいですね。

好きであることが当たり前にならない距離。 


TDM

最後に皆さんのようにいろんなフィールドにいながらダンスを楽しんでいるトウキョウダンスマガジン読者へのメッセージをお願いします。

西川

誰にでも自分の中に“面白いこと”があることに、気付けるといいなと思います。真剣になるといいことがあるんです。実際、稽古をしていて辛いときもあるし、もう辞めたいと思うこともあります。ですが、自分がひとつ面白い・得意だ・好きだと思えるものがあって、それを疲れるまでやってみることは、すごくいいことだと思うんです。

今人

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜結局うちらは“わかりやすく”ということを目的にしているけれど、それは何故かと考えていたんですが、たぶん、はっきりしたリアクションが欲しいからなんです。

お客さんにはしっかり沸いて欲しいし、お客さんにしっかり良かったよ!って言ってほしい。俺たちが“面白いよね!”って思うものをうちらだけで楽しんでしまうと、リアクションはもらえない。

僕は人から求められたいし、人に素晴らしいって言われたいから、そのために、はっきりしたりアクションを得たい。そのためには、分かりやすく伝えたい・・・というところにモチベーションが繋がっていると思いました。

自分たちが面白いと思うものに真剣に向き合って考えて練習することが俺たちにとってのわかりやすくしていく作業。そのために、自分たちのダンスのスキルや演劇を活かすことに繋がっていきます。

しっかりしたものを得たかったら、自分たちがしっかりしなきゃなと。欲しいものがあったらそれ相応のことをすれば手に入る。きっと一生懸命にやれば得られるものも、その分増えていくということですね。

TAKUYA

“楽しい”の一歩向こう側、だよね・・・

今人

そう、それ!!


西川

いい言葉だね!そう、ただの楽になっちゃいけない。

TAKUYA

あ、これはイチローさんの言葉です (笑) 。試合を楽しんで来いって言われても、その感覚が分からないらしいです。充実したっていう楽しさならすごくわかるけれども純粋には試合を楽しめない。

今人

ヤワラちゃんも「負けて得られるものもあるけど、勝って得られるものの方が大きい」と言ってました。あの人は勝利も敗北も知ってるから言えたんだと思うんですが、ダンスは勝ち負けではないので、より大きなものを得るためには、より大きな努力をしなくちゃいけない、ということなんでしょうね。お金が欲しかったらそれ相応の努力をするだろうし、うちらはお客さんのリアクションが欲しいから、そのための努力をします。

俺は、「すげぇ!」って言われたいだけ。「感動した!」って言われたい。

西川

うん、「上手い!」よりも「すげぇ!」って言われたい。人をびっくりさせたいですね。

伊東

梅棒×おしゃれ紳士 〜 人から「すげぇ!」って言われたい。 〜変な話、仕事だけをしてれば生活できますし、どちらかと言えば、お金も使うし睡眠時間も削っています。が、それでもやってしまうのは、やっぱり好きだからやってるんだと思います。

表現していくことで生計を立てたい。認められたい。かっこよく見せたい。だから頑張るし、頑張らなかったら認められない。でも、好きだったらきついけれども苦じゃないと思うんです。

ただ練習してれば認められるわけではなくて、人前に出なくちゃいけない・・・好きだからこそ考えて、好きだからこそ頑張る、それでいいと思います。好きであることが当たり前にならない距離、っていうのがすごくいいのかもしれないですね。

TDM

いろいろ楽しいインタビューをありがとうございました。何も考えずに観に行って、笑って帰りたいと思います。

interview & photo by AKIKO&imu
'10/04/09 UPDATE
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