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Tovaris Wilson 〜Never Stop Dreaming.〜
Tovaris Wilson 〜Never Stop Dreaming.〜
Janet Jackson“All For You”の振付で一気にダンサー界にその名を広めた世界を代表するコレオグラファー、Tovaris Wilson(トバリスウィルソン)。正にダンスをする為に生れてきたダンサー。彼のしなやかでパワフルなその踊りこなしは、現在の日本のダンスシーンのスタイルにも影響を与えている。日本でのワークショップも好評で、来日回数が一番多いダンサーと言っても過言ではない。揺らぐことのない不動の人気はトバリス自身からにじみ出るその人間性にあるのだろう。まだ受講したことのないプロを目指すダンサーなら、まず今回のワークショップでそれを感じてみてほしい。

TovarisTovaris Wilson

トバリス・ウィルソンはマイアミ・フロリダ州出身。3歳から母の影響を受けてダンスを習いはじめ、高校の頃にはすでにプロダンサーへの道を選び、ロサンゼルスへ移住。この時点で“振付師”としての自分の才能に気づいたが、ダンサーとしてのキャリアの重要性を学び、まずはTV、ビデオ、ライブステージ、映画等の仕事にダンサーとして出演。彼の出演歴は、主に音楽/映画界最高の受賞賞”アカデミー・アワード賞”やインターナショナルコマーシャルの“Pepsi”,“Nike”,“Puma”,“Addidas”等。さらにトップアーティスト、ジャネット・ジャクソン、シェアー、プリンス、ブリトニー・スピアーズ、メイシー・グレイ、ウィル・スミス等のミュージックビデオにダンサー出演。また、ナショナル映画でもある“オースティン・パワーズ”にも出演。2000年、彼は振付師としてのキャリアを積むために、独自のスタイルを探し出しはじめた。

2001年、そのユニークな彼の振付けが認められ、初めての仕事として、なんとジャネット・ジャクソンからの仕事依頼であった。彼女のワールドツアーのオープニングナンバーとしての重役振付を勤めた。その後、すぐにブリトニー・スピアーズからの依頼も殺到。その後、毎年いろいろなアーティストに囲まれ、ミュージックビデオ、ライブステージ、コマーシャル等を手がけている。最近ではロサンゼルスで有名な“EDGE Performing Arts”でプロダンサーを目指す若手ダンサー達が日々トバリスのクラスを受けに地方からも受講しにくるくらいの人気。現在、アーティスト“シェアー”のスペシャル・ラスベガス・ツアーにもダンサー出演中。多忙な生活の中、未来のダンサー達に夢をあきらめないで欲しいと伝えつづけている。

曲が僕に「こういう振付をして欲しい!」って言ってくるんです。

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まず、ダンスを始めたキッカケから教えてください。

Tovaris

Tovaris僕がダンスを始めたきっかけは母でした。

とても小さな頃から音楽が流れると自然に体が動き、両親からはいつも「あなたはダンスをするために産まれてきたのね!」と言われ続けていました。

3歳になった頃、初めてダンスレッスンを受け、その時からダンスの魅力に釘付けになってしまいました。3歳から高校生になるまで、レッスンを続け、高校2年の夏に母がロサンゼルスのプロフェッショナル・ダンス・スクールに連れて行ってくれました。 そこで初めて今まで趣味だったダンスを、将来の仕事として意識し、決定するほどの衝撃を受けました。そして、高校卒業後ロサンゼルスへ移住。すぐにプロを目指し、ダンス一筋の生活を始めました。

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作品を創るときに大切にしていることはなんですか?

Tovaris

作品を創る上で、僕が一番大切にしていることは、その作品に対しての“感情”です。

たくさんの振付師がいる中、それぞれに自己の作品の創り方や流れがあると思いますが、僕にとって作品作りは、曲を聴いたその時に身体の中に流れた感情から自然に身体が動くんです。

一度曲を聴くと、その曲が僕に「こういう振付をして欲しい!」って言ってくるんです。言葉で表現するのはとても難しいですが、お客さんが僕の作品を見て、曲の内容が伝わるような、そんな作品を作るよう心がけています。

若い頃からタップ、バレエ、ジャズ、アフリカンダンス、ヒップホップ、そしてサルサをすべて基礎からしっかりと学んだので、そのお陰で今の僕のユニークな作品が産まれてくるんだと思います。ダンサー達の中にも、人それぞれ得意、不得意のジャンルはあると思いますが、僕の作品やクラスでは、どのジャンルのダンサーでも、気持ち良く音を感じて、踊れる振付になっていると思います。

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今までで印象に残っている仕事は何ですか?

Tovaris

Tovaris一番印象深い仕事は、やっぱりジャネット・ジャクソンの仕事でしょうか。これは僕が振付師として初の仕事であり、一番大きな仕事でした。

この依頼を受けた時に記憶が飛ぶくらい驚きました。振付師として活動し始めて、最初は小さな仕事からだんだん知名度をつけて、大きな仕事を任されるのが普通だと思ってましたから…

でも実際には、僕が希望していた通りの作品が出来上がり、まるで夢の世界に行ったみたいでした。仕事中、リハーサルと撮影のためにジャネット自ら、僕たちダンサーをカリブ海に浮かぶ南の島まで連れて行ってくれて、素晴らしい別荘と透き通る海を楽しみながら仕事ができました。このような仕事がその時点では、僕の最終的なゴールだったんですが、一気に夢が叶ってとても嬉しかったです。

今日までいろんな仕事に携わってきましたが、どんな依頼でも常に初心を忘れず、感謝する心を持ち、一つ一つ感情を込めて作品づくりを手がけています。

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過去の仕事や出会いの中で転機になったことはありますか?

Tovaris

僕のダンス人生の中で一番の転機は、アメリカ最大の映画祭典「アカデミー賞」に参加できたことです。

それまではオーディションを受けて、小さな仕事ばかりでしたが、このアカデミー賞が一番始めにダンサーとして受けた大きな仕事でした。さすがにアカデミー賞のステージはとてつもなく大きく、ステージから見渡せる豪華な有名俳優、女優、監督ら、すべての観客がトップスター。あの感覚は今でも決して忘れません!これがきっかけで更に自分のダンスに磨きが入りました。

いつでも頭を“空白”にしておく。


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長い期間来日を繰り返していると思いますが、日本のシーンの変化をどう感じていますか?

Tovaris

Tovaris僕は日本に教えに行くのが本当に大好きです!日本の文化もとても尊敬しています。

これは初めて日本に行った時に感じたのですが、日本人の方は人と人とのつながりを、とても大事にする文化を持ち 、他の国の人にもとても優しいという印象ですね。仕事上、海外に行く機会がありますが、他の国にはない、日本の古来の伝統が残っている所がとても素敵だと思います。

日本の生徒のみんなも、クラスの最中、全員が常に向上心を持ち、一生懸命学ぼうとする気持ちが全身から伝わってきます。毎年、僕が戻ってくるたびに生徒さんのスキルが上達しているように感じます。みんな真剣に頑張っている姿を、毎回見れるのも日本のワークショップでの大好きな一面です。

アメリカのダンサーは、遊び感覚で(いい意味でですが)楽しみながら少しづつ上達していくに比べ、真剣に短期間で上達しようと努力する姿勢の日本のダンサーを見ると、そこにもアメリカと日本の文化の違いを感じます。

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ダンサーという仕事をしていく上で、大事にしていることはなんですか?

Tovaris

ダンサーとして一番大事にしていることは、いつでも頭を“空白”にしておくこと。

いつ、どんなオーディションが飛び込んでくるか分からないこの世界で、固い頭では乗り越えていけません。ある日はヒップホップ、次の日はキャラクター重視のコマーシャルオーデョションなど、さまざまな挑戦が待ち構えてる中、どれだけ自分が求められているものを発揮できるか。そこで一度、振付師に「自分は、いろんな事ができる!」と認めてもらえれば、次から仕事を回してもらえる鍵にもなります。

とはいえ、何よりもどんな仕事を頂いても、常に感謝の気持ちを忘れないことが僕のモットーです。

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最近のダンス事情についてトバリスはどう感じていますか?

Tovaris

僕は、今のダンス事情は好きです。以前よりも“ダンス”というものが世の中に伝わりはじめ、いろんなチャンス、仕事が増えつつあると思います。これはとても嬉しいことですね!

今の時代、テレビをつけると、たくさんのダンス番組が流れるようになりました。これを機会に僕たちダンサーに対しての考え方や、エンターテイナーとして立場がもっと認めてのもらえるようになれば最高です。もちろん世間に認めてもらえるようになるにも、僕たち自身がそれぞれ協力し、お互いに尊敬し、向上し合う仲間を作る環境を整えていくことも、僕らの仕事の一部でもあると思います。

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トバリスの好きなアーティストはどんな方ですか?

Tovaris

Tovaris僕の大好きなアーティストはErykah Badu(エリカ・バドゥ)です!なぜなら彼女の声だけでなく、彼女の曲の中には、常に強いメッセージが入っているから。 僕にとってアーティストというのは、ただ単純に歌が上手いだけではなく、曲の中でどれだけ人に対してメッセージを送れるかが一番大事なことだと思います。

つい先日、彼女のコンサートに行く機会がありましたが、彼女のパフォーマンスには目を惹き付けられました。彼女は常に新しいパフォーマンスを見せてくれます。エンターテイナーとして誰かのコンサートを見ることはとても勉強になります。作品を作る上での、刺激というか・・・もしかしたら、この夏、日本の大きなイベントで作品を創る機会があるかもしれません。 そのときに、日本のみんなと一緒に、伝えたいものをすべて詰め込んで、作品を創れたら素敵ですね!

今までにない僕なりの監督作品を創りたい。


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今後の展望などはありますか?

Tovaris

僕のこれからの展望は、“振付師”から“作品プロデューサー・監督”になることです。そのために、ちゃんと学校にも行き、監督になるために必要な勉強をしっかりして、素晴らしいダンサーたちを集めて、今までになかった僕なりの監督作品を創りたい!エンターテイメント界にはこれからも関わっていたいですからね。

今は“振付師”として振付に集中し、素晴らしい作品が創れるように努力していますが、更に欲を言えるのであれば自分のダンススタジオを開校することも展望のひとつです。これから学ぼうとする若いダンサーたちを僕らの世代がサポートし、彼らにたくさんのチャンスを与えられる場を作りたいです。

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では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

Tovaris

Tovaris僕が一番言いたいのは「夢みることをあきらめるな!」です!!

今、みんなの好きなことは、すべて自分の夢から来ているものだと思います。世の中、良いことばかりではなく、壁にぶつかる出来事もたくさんあるでしょう。でも、自分を信じてあげて欲しい。自分自身に自信を与えられるのも、励ますのも、自分以外の誰でもないのだから・・・。

また日本のみんなに会えるのが、今からすごく楽しみです!!!今回も、僕からエンターテイナーとして技術をどんどん盗んでください(笑)。では、レッスンで会いましょう!!
'10/03/23 UPDATE
interview by AKIKO
Supported by Sakura & Nagisa(Asian Talent Network)
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('10/03/23 UPDATE)


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