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TDM Special interview「SLAVE 2006」YAS. TAN 1/3
TDM Special interview「SLAVE 2006」YAS TAN
SLAVE 2005

※SLAVE 2005
2002年からはじまったムーブメント「SLAVE」。YAS.、GANKO、AKIKO、TANを中心に構成されるダンスエンタテインメントは、当時、見たいもの、刺激になるものをゼロから作り上げようと実現しようと考えたメンバーによって始動した。2006年11月9日(木)・10日(金)に行われる今回の「SLAVE」では、ダンスによって抽象的な一面を、一枚の画のように心に刻むことができるのか、観客の心に残るための具体的な表現方法は何か、を追求しているというYAS.とTAN。彼らの言葉によって、すごく繊細に組み合わさっている内面と外面のバランスと、その中で「素」であることを大切にして生きているような時間に触れることができた。

SLAVEの始まり


YAS.(以下Y)
2000年に「SLAVE」の中心メンバーであるGANKOと出会ったんです。その時期に上からチェーンで降りて来たりするようなステージ演出の、いわゆる今の「SLAVE」みたいな作品を作っていて、それをGANKOが観てくれたんです。それからGANKOと会う度に、他にはない演出の公演をやっていこうと話をするようになって、実際に行動を開始したのが2001年の夏。それで2002年の2月初演をやったのがはじまりですね。その後、仕事が忙しくなって、仕事じゃない部分で面白いショーを作りたいという思いが強くなっていきました。発表会のようにリノ(=リノリウム)のひかれたステージの上で、お客さんがお酒も飲まずに座って観るのではなくて、セットではない本当のクラブの空間でやりたいと思ったんです。その頃竹井(=AKIKO)ともよく遊んでいて、皆たまたま違うポジションにいたんだけど、でも何かに飽きていて、何か一緒に新しいことをやろうって思って集まった感じですね。

TAN(以下T)
僕は「SLAVE」をやろうって話している場で一緒に飲んでいて、「ぁ、絶対何かできそう♪」って感じで巻込まれました(笑)。

「ダンスの公演じゃなくて、"ダンスエンタテインメント"だよね」


T
毎回具体的な何かを形にしようとしているというよりも、自分たちから生み出された、オリジナルの現実にない世界というか、むしろ観たことがないものをしたいという気持ちで進めています。

Y
なんなんだろうな…。お客さんとの距離間やセットの違いはありますが、アーティストのコンサートやプロモーションビデオや劇場やホールでの舞台等、いろんなものから影響を受けますね。既に「SLAVE」の1回目から牢屋や、シャワー、風、火、煙っていうアイデアは沸いていましたし、初演から360度いろんな所にステージをおいていました。そうしたものが回を重ねるごとに雛形になってきた感じです。

T
「自分たちはダンスの公演じゃなくて、“ダンスエンタテインメント”だよね」というのは最初からよく話していましたね。

Y
そうそう。それで、まず、世の中に人の興味があるものを書き出してみたんです。お金、恋愛、ギャンブル、セックス、人間関係、ファッション、ゲーム、勝負などの要素に人は興味を寄せます。だからファッション誌の紙面をにぎわせたり、ダンスのバトルの映像などが出てきたりするのだと思うし、人は世の中のそういったものに縛られているなと感じます。

根底にあるコンセプト… "縛り"


Y
そもそも「SLAVE」=“奴隷”には、“何かに縛られる”というコンセプトがあります。自分の決めている枠やルール、それは安心して落着いた人生を送るということではなくて、何かを生み出したり、前進したりする時に、壊されたり、それでまた新たなものに更新されるもの。自分の中で経験として積み上げられたルールのことです。壊されたり更新されたりして、わかることがすごくいっぱいあります。

同じ服を着て、同じ時間を過ごしたり、なんとなく同じ雰囲気にいたりすることがいいことのように感じる“日本人”という枠もある種の縛りのように感じます。大胆で斬新な考えが当たり前で、いいことだと感じることはあまりないです。オレの中でもきっと皆がそうだからそうって当たり前にやっている部分もあって、きっと勝手にできたルールもたくさんあると思います。

「SLAVE」ではこうした縛られている部分に対して“break the rules”、自分のルールを壊さないと!、という刺激になるようにしたい思いもあります。何を選んで楽しんで誰に対してどう接するか…何かを決める基準は皆ではなく自分だといえるマイノリティを肯定していきたい気持ちがあります。人は自分が経験したことがないとわからないし、先入観を持つ、そして自分ももちろん人に対して持ちます。そういうものも壊したいですね。

DIAMOND


Y
全体通して軸である「SLAVE」というテーマは変わらないです。最近LAにいたので、その後というタイミングもあるのですが、日本に帰ってきてからすごく気になえることがあって、それは、人が感動したり、落ち込んだり、悔しくなったり、感情がピンッといく時は一瞬だな、っていうことです。何かの場面を思い出しただけで涙が出たり、言葉を思い出して嬉しくなったり悲しくなったりする、そういう心が動くのってものすごく瞬間的だっていうことが次回でうまく表現できたらいいなと思ったんです。今回、いつも重要人物でもあるGANKOも参加できないし、時間的に可能なのかをすごく話し合いましたが、自分の意思を伝えて、今年もやることにしました。

“シンプルイズベスト“、そして一瞬、一瞬の画が出てくるようなイメージで「DIAMOND」をキーワードにやってみないかと提案してみました。もともとは石なんですが、磨かれて、形になった、透明で、キラキラ輝いていて、シンプルなんだけど、でも皆が欲しがるもので、どことなくセクシーなもの。装飾をしていないシンプルな透明の石なんだけど、そこにはいろんな“面”があります。人が欲しがる何かがそこにはあるんです。ダンサーとして、人として、石だったものがダイアモンドになるのか、石で終わるのか…ま、行き詰まった挙句にこうなりました(笑)。
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DANCE TRIBE HOTTEST SELECTION
2006.11.09(Thu)&11.10(Fri)
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