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おとみち2009 Dance It Uo Shizuoka! 〜 世界と踊ろう!!〜
おとみち2009 Dance It Uo Shizuoka! 〜 世界と踊ろう!!〜
「駅で踊っているダンサーにステージで踊らせてあげたい」という想いで開催されることになったイベント「おとみち」。その過程に心を打たれ、縁あって当日ステージに立つダンスチーム選出の審査を、静岡文化財団の藤井氏、宮田健男氏とともに担当させていただいた。こうした地元に根付くダンスイベントに、東京で活躍しているダンサーがダンスで貢献できる新たな方法の一つだと思う。今回は、静岡をレペゼンするBBOY・TSUYOSHI氏にも加わっていただいた対談を実施。彼らに支えられた「おとみち2009」はI LOVE SHIZUOKA 精神が沢山詰まった 2DAYSになることは間違いない!

おとみち2009●おとみちとは,,,

2004年に始まった静岡県コンベンションアーツセンター通称「グランシップ」で開催されているダンスイベント。今年は8月15〜16日に開催。来場者も参加して楽しめるステージ・会場一体の参加型のものとなっている。メインコンテンツである『ダンスショーケース』のオーディションは年々参加者が増え、本番ステージへの出場権は県内のみならず、県外からの参加者も増えている。その開催の経緯はインタビュー本文参照。 

http://rise-s.jp/otomichi.html



宮田健男宮田健男

ブレイクダンスの世界大会に日本人として初参加、初優勝と言う快挙を成し遂げた、The Spartanic Rockers のリーダー。1998年に初参加したイギリスのブレイクダンス世界大会「UK B-BOY CHAMPIONSHIPS」において、チームを優勝に導いたほか、同年ドイツの世界大会「Battle of the Year」においてもベストショーを獲得。当時一切コネクションが無かったヨーロッパと日本のストリートダンスシーンの架け橋となった人物である。現在は東京赤坂にてダンススタジオ「スタジオ・フェイス」を経営する他、「UK B-BOY CHAMPIONSHIPS」の日本予選大会のオーガナイズや、中京テレビ製作、日本テレビ系のストリートダンス番組『少年チャンプル』と『スーパーチャンプル』においてダンス監修、ダンサーブッキング、振付・演出などを手がけたり、アーティストの振付やダンサーの派遣を行うなど、ストリートダンス全般に関わる事業を行っている。


TSUYOSHITSUYOSHI

宮田氏と共にThe Spartanic Rockersメンバーとして世界大会初参加・初優勝を経験。現在は地元・静岡でのストリートダンスを通じた活動を精力的に行っている。

1998年大阪BB‐BOYソロコンテスト優勝
1998年UKチャンピオンシップ優勝
1998年バトルオブザイヤーベスト賞
1999年UKチャンピオンシップ準優勝
1999年バトルオブザイヤーベスト賞
2004年中国ハッピーキングダムダンスコンペティション準優勝
2006DoCoMoトリノオリンピックCM出演
2007年フリースタイルセッションジャパン優勝

東静岡駅で踊る若者たち・・・「ステージで踊ってもらいたい!」

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まずは、「おとみち」の中にストリートダンスのステージを作ったきっかけから教えてください。

藤井

  おとみち2009
 
財団法人静岡県文化財団
企画制作プロデューサー
藤井ゆずるさん
「おとみち」は2004年に始まりましたが、若い人にも参加できるような企画ができないかと思っていたところ、、グランシップの最寄駅である東静岡駅の構内でダンスの練習しているたくさんの子たちを見たんです。

財団が主催で、伝統芸能に特化したイベントというのは全国各地にあると思いますが、ストリートダンスに特化したイベントというのはなかなかないと思います。しかし、あれだけ「踊りたい!」という気持ちで練習している子たちの気持ちがあるのだから、プロの照明・音響・映像等で演出した“ショー”としてのストリートダンスを静岡の新しいエンターテイメント文化として育てたい、「グランシップのステージで踊ってもらいたい!」と思い立ったのがきっかけです。

第一回目の2004年はリズムをテーマにして三日間行いまして、初日が「伝統のリズム」として、高校生たちによる和太鼓などの伝統芸能、二日目に「若者のリズム」として、ストリートダンスやミュージシャンのステージ、三日目が「世界のリズム」として、静岡県内在住の方を中心に、世界の踊りや音楽を披露していただきました。実際にやってみてストリートダンスは非常に面白かったんです。

もちろん、我々は静岡のダンス事情などに詳しくなかったので、精通している人が誰かいないかと探していたところ、静岡県に来て2年目のTSUYOSHIさんがいると聞いて、ぜひ相談にのっていただこうと思い、お願いしました。お会いしてお話したら、面白がってくださったので、実現しました。
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宮田さんもおとみちには初回からの参加ですよね。

宮田

2004年の初回でスパルタニックロッカーズをゲストで呼んでもらって、2006年にもPaniCrewと一緒に出演させてもらいました。

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なるほど。では、立場はそれぞれですが、皆さん初回からの関わりがある方々ということで、今までやってきての感想などはありますか?

藤井

やはり最初は「おとみち」という名前を付けた以上、イベント自体の認知を計らなければならないと思いましたので、オーディションを受けてくれるダンサーたち、一般のお客様への認知を広げなければいけません。そこで試行錯誤はありました。

そして、だんだんオーディションのエントリー人数も年々増えていきました。最初は20組弱から5〜6チーム選んでいましたが、今年は80チームエントリーまでになったので、そこまでの認知にはなってきたのかなと思うところが、大きな変化ですね。

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ゼロから作り上げて発信していくことは、大変だったと思いますが、今年の80チームエントリーにいたるまでを振り返ってみていかがでしたか?

藤井

ストリートダンスに対する認識を関係者からお客様にまで広めることに、試行錯誤をしました。ステージを提供する上でいろんな方に観ていただかなくてはいけないので、過去にはパパイヤ鈴木さんや、HOME MADE家族さんを呼んだり、丸一日名古屋のClub OZONを再現してもらったり、あの手この手を使っていろいろやりましたね。

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ストリートダンスの魅力に何かしら藤井さんの心が動かされるものがあって、動いてくださっているというエネルギーが感じられます。

藤井

そうですね。オーディションを毎年見ていて、結構な時間をかけて見ますが、飽きないんです。皆が頑張っている姿、グランシップを目標に来てくれることが嬉しいですね。

あと、僕自身も若いときにダンスではないですが、演劇をやっていたので、食べてはいけなくても“やらずにはいられない”という感覚が共感できます。彼らもきっと“踊らずにはいられない”から、暑くても外で練習するんだなと。その目標はクラブイベントだったりコンテストだったり、いろいろとあるとは思いますが、その“踊らずにはいられない”気持ちを受け止めてあげたいと思ったんです。えらそうなことを言って申し訳ないんですけれども・・・。

お金を払っても見たいと思われる必要性。


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そういう気持ちで動いてくださる方がいらっしゃるのは、とてもありがたいです。宮田さんもそういった意味で、今や全国・世界を股に駆けてイベント運営などをされていますが、ダンスを広く伝えることで意識していることはありますか?

宮田

おとみち"まずは、藤井さんもおっしゃってたように、見る機会を作らなくちゃいけないと思います。でも、日本のシーンで言えるのは、ダンスをやる人しか見に行かない。たとえば、野球はやらない人でもたくさん見に行きます。K-1にいたっては95%くらいの人がやらない人だけど、あんなに盛り上がってますよね。ストリートダンスもそうならないと、先が見えないと思いますね。

だから、UK B-BOY CHAMPIONSHIPSの予選は全部、クラブではなく、ショッピングモールなどの施設を借りて、一般の人にも無料で見てもらえる場所でやっています。実際、おじいさんが3時間くらいかぶりついて見ていたりするんです。たぶん、見たら認知するけど、見る機会がないだけなんだと思います。

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音響や照明などの設備は難しくないですか?

宮田

こっちで仕込みます。そうして、たくさんの人に見てもらって、ちょっとずつ変えるしかない。といっても、もうやり始めて4年くらいになりますが、そんなに変わらないですけどね。

藤井

我々も今年の宣伝をかねて、去年の出演者などと近郊のショッピングモールや駐車場で踊りましたが、隣の建物から苦情が出るくらい人が集まっちゃいました。やれば見てくれるんですよね。

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でも、見てくれることと、宮田さんが感じる、変わらない現状というのは・・・?

宮田

無料だと見てはくれるけれど、有料でイベントをやると人は集まらないんです。お金を払ってでも来たいって思われないといけないと思います。

ダンスで生活できるかどうかは置いておいて、野球や格闘技は、やらない人でもお金を払って見に行きます。でも、ダンスに対してはそういう考えを持たれない。たとえば1000人見たなら、一人でも「面白いからまた見に行ってみようかな」という人が増えればいいですね。

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それは、ダンス界にカリスマというか、スターがいないからでしょうか。

藤井

やはり、テレビの影響は大きいので、テレビに出ている人が来ると、人も集まります。その人たち目的でもいいから、とにかく観に来てもらって、何か響くものがあればいいなと思います。

宮田

そういう呼び方でしか、今は人が集まらないかもしれない。純粋にものがいいから観に行くという判断にならない。

同じジャンル同士の刺激。違うジャンルとの化学反応。

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TSUYOSHIさんは、地元・静岡で直接キッズから大人までのダンス指導にあたることからの開拓をされていますよね。

TSUYOSHI

おとみち2009僕の場合は、子供やお年寄り、お母さんたちやハンディキャップのある人たちにレッスンをしていて、幅を広げて接するようにしています。それによって、ダンスの楽しさを伝えていけたらと。地道な作業ですけどね。

そこには、どうしてもBBOYのプライドも出てきてしまいがちですが、そうなるとどうしても接する環境が偏ってしまいます。それを捨てて、純粋なダンスという気持ちで、自分も勉強しながら接するようにしています。

去年に引き続き、今年もおとみちでも踊ってもらうLOVE DANCEという団体はダウン症の子たちなんですが、彼らを見ると、「自分たちもできるんじゃないか!」という気持ちになって、「出たい!」という話が来たりします。

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ダンスには一見矛盾しているような二面性がありますよね。エンターテイメント性や、クオリティ高くて、ファンがつくような魅力と、「自分もできる!やってみよう!」と思える身近な自己表現できる手段という存在価値。その二面性が必要なんですよね。

藤井

そうですね。市場を拡大させるのと、最高のものを創ることは両方考えなくてはいけないと思います。

最初に心に何かを感じて、やりたいジャンルが決まって、取り組み始めると思いますが、そのジャンルのトップの人たちを見れば、さらに刺激を受けられると思います。おとみちがそういう場所になれると嬉しいですね。

それから、もうひとつ先を言えば、いろんなジャンルのダンスを見て、そこでまた化学反応を起こせたら、また違った可能性になっていくんじゃないかなという希望も持っています。同じジャンル内での刺激も必要だし、違ったジャンルからも吸収できるものがあると思います。

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ダンスの品種改良ですね。

藤井

まさしく。夢は“静岡スタイル”のダンスを作れたらすごいよねと、TSUYOSHIさんとよく話しているんです。壮大な夢ですけど (笑) 。

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宮田さんは「スーパーチャンプル」に出演されているので、全国のダンサーを見ていらっしゃると思いますが、地域によってのダンサーの特性などはありますか?

宮田

最近は、薄くなってきてますね。自分たちがダンスを始めた頃は、東京はブレイキン、大阪はポッピン、九州がロッキンっていう構図がありました。いわゆる鎖国されてるからこそ育まれる地域性がありましたが、今は動画でいろんなダンスが見れるようになって、ダンスの地方色は薄くなっています。まあ、そういう状況になるのは仕方ないと思いますけどね。

でも、ブレイキン以外のジャンルで有名なダンサーは東京か大阪に集中していて、地方にいる全国区のダンサーとなると、ハウスのKENJIくらいですよね。でも、ブレイキンは全国各地に有名な奴らがいます。金沢にSASUKE、高知にSPINとか。BBOYは、地元に根ざしながらも、全国区の強いチームがいます。同じ状況が他のジャンルのダンサーにも広まれば変わってくるんじゃないですかね。

TDM

TSUYOSHIさんは、静岡にいながらにして、東京にバトルやコンテストのジャッジで呼ばれていますよね。その存在をキープしているのは稀なケースでなかなか難しいことだと思います。
宮田

それに下の世代の人間が出てきたらいいと思う。

TSUYOSHI

その目的も兼ねて、東京に行くときは、車に乗れるだけの子供を乗せて行って、ジャッジをやって帰ってくるんです。そうすると、小学生たちはなかなか静岡から出られないので、いろいろ見て、考えていると思います。そんなかなり地道な作業を繰り返していますけど(笑) 。

ストリートダンスのイメージアップ。  


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藤井さん、宮田さん、TSUYOSHIさん、それぞれの立場のそれぞれのやり方で、本当に地道な作業だと思いますが、少しずつでもダンスの魅力が広がっていると思いたいですね。

宮田

でも、大分変わってきていると思う。昔は子供にダンスを教えるなんて思わなかった。彼らがあのまま、ダンスを好きなままで歳をとってくれたらいいなとは思いますけど。10年後にはもっと変わっているんでしょうね。

藤井

おとみち20092011年からダンスが義務教育化されることに関して、学生たちからはヒップホップを教えてほしいという声があがっている学校もあるようです。今日の予選で参加してくれる高校生たちはダンス部出身だったりします。

それで、去年「Dance it UP Shizuoka!」というオリジナル曲+ダンスを制作しまして、グランシップの新しい風物詩となれるように親しみやすく、踊りやすいストリートテイストなものになっているので、それを教材や運動会とかで使ってもらえたらなぁと働きかけ始めたところなんです。

TSUYOSHI

ストリートダンスのイメージがクリーンになってきましたね。宮田さんたちの世代を第一世代としていて、なんとなく怖いイメージがありましたが、もうそういうものじゃないということを、僕ら第二世代が伝えているところですね。取り付きやすくなりましたよね。

「おとみち」を開催する会場も、県立複合文化施設のグランシップという場所なので、お客様はお年寄りが多いんですが、おじいちゃん・おばあちゃんも入りやすいし、ディスコタイムを用意していますが、意外に皆さん踊ってくれますしね。

藤井

そうそう!皆踊りたいんだよね!って思います。お孫さんからおじいちゃん・おばあちゃんまで楽しめるイベントでありたいですね。

でも、いろいろ詰め込みすぎという声も聞こえるんです (笑) 。だんだんやりたいことが増えてきたもので・・・

去年はバトルもあって、ジャッジはTSUYOSHIさんにお願いしていました。最近、全国でも夏祭りなどで、ダンスのステージというのは増えましたが、バトルって見る機会がなかなかないですから。ダンスはそういう楽しみ方もあるんだよと伝わればと思ってやっていました。ですが、今年はバトルの時間が取れなくなってしまったんです。楽しみにしていた方、すみません。

ダンスシーンの未来予想図。


TDM

皆さんそれぞれがダンスに関わる何かしらのプロとして生活を送られていますが、その目指すところ・大事にしていることはありますか?

宮田

やっぱり、アンダーグラウンドのものはいい。ダンスを仕事にしている現場でのダンサーの扱いが良くないんです。アーティストのバックで踊るスタイルは決まってて、お金がほしいからそのスタイルをやる。そうではなくて、一銭にもならなくてもBBOYが必死で技を練習している方が僕は好きです。

日本には世界に名立たるダンサーがいっぱいいます。でも、彼らは全然お金が稼げない。世界中に認められてるダンサーが貧乏していて、アーティストの後ろで踊るダンサーがお金を稼いでいて、それが良いとされている現状が残念に感じます。

たまに、ダンスって何なんだろうって思うことがあります。そこを変えるにはどうしたらいいか・・・。やっぱりダンスそのものの良さを伝えなくてはいけないと思います。だから、BBOYバトルを外でやったりしているんですが、かなり険しい道のりだと思っています。

これらの原因は、ダンスが文化としてちゃんと認められていないからだと思っていて、茶道や華道、能や歌舞伎なら表現者は文化として認められて、ストリートダンスは認められないんです。本当に頑張っているのはアンダーグラウンドで金が稼げないダンサー。その状況がすごく残念ですね。

TDM

・・・難しいですね。

宮田

ストリートダンスの価値をわかってもらうしかないと思います。だから、藤井さんたちがおとみちでやってもらっている活動の様に、テレビに出ている人じゃなくても、かっこよくて上手い人がいるんだ、お金を払っても観にいきたい!って思ってもらえるように普及させるしかないですね。

TDM

それでもやっぱり、テレビで知名度のあるダンサーをイベンターも呼びたがります。

宮田

そのほうが、集客できますからね。であれば、その知名度を利用するぐらいの気持ちならいいのかもしれない。そのおかげで他のいいものを見てもらって、「あれ?こっちのほうがいい!」って思ってもらえれば。

藤井

とにかく見てもらうことが僕らの仕事です。そこで何がよかったのかを感じるのはお客様です。去年のゲストYANAGIさんやGOGO BROTHERSさんをまた呼んでほしいという声も多いです。

TDM

ある程度の安定したものとして見せないと、子供たちの将来も不安になりますからね。

藤井

全員をプロにしたいわけではないですからね。うちも娘に少しヒップホップやらせていますけどね・・・。

宮田

少なくとも今の状況だとプロとしてダンサーを選ぶことを自分の子供には進められないですね (笑) 。うちは、やらせていません。やれとは言わず、むしろ、辞めてほしいくらい (笑) 。やはり同じ苦労を味あわせたくないから。

TSUYOSHI

楽しいものなんですけどね。

宮田

だから、ダンスは趣味ならいいと思うんです。プロとして大事にされない社会の中であえて踊らせ続けることも無いかなと。

TDM

もっとアーティストに近い価値のあるダンサーの登場や、アーティストのダンサーの扱いが変わるような存在になれるライブなど、私自身はそういう形のチャレンジしかできないんですけれども。

藤井

これは夢だと思って聞いていただきたいんですが、たとえば、TSUYOSHIさんなど、振付のできる方にお願いをして、オーディションで受かった静岡のダンサーで、ストーリー性のある、誰でもその世界に入りやすいショーをお願いしたいんです。

ただ、正直、企画としてコンテンポラリーなどアートよりじゃないと、なかなか賛同を得られないのが現状なんです。ストリートやヒップホップなどのイメージに対して、まだアーティスティックな認識では捉えられないんでしょうね。

でも、昔はエレキギターやジャズだって不良だと言われてる時代がありましたからね。ストリートダンスへの理解も、社会的な流れによって、変化していくと思いたいですね。

県民の税金を使って県立の施設であるグランシップが「おとみち」というイベントでストリートダンスをやる意味は何なのかを、我々は県民に伝えていかなくてはいけない、という意識があります。

TSUYOSHI

・・・大変そうっすね。

TDM

ダンスのエネルギーはプラスのエネルギーですよね。観終わったあとに楽しくなったり、やる気になれる良さって、形になりにくくてわかりにくいし、その良さを伝えるのは難しいんだけれども、一番ストリートダンスの存在価値になってると思うんです。だから、私は、いろんなカルチャーとつながっていくべきなのかなと思っています。

藤井

世界中の芸能に共通しているのは、舞踊と太鼓だと思うんです。ダンスとリズムは世界中どこに行ってもあるし、人間の根源的な部分にあると思います。

その中で“こっちのダンスは良くて、あっちのダンスは悪い”という判断ではなくて、“いいものはいい、楽しいものは楽しい”という気持ちを、僕らは企画側として、先ほど話したような、ストリートダンスだけでは終わらないショウを目標としつつも、それを受け入れやすくするために、他のものとコラボレートすることもありだな、それから先に何ができるかな、何に挑戦しようかなと若い子たちに感じてもらえたら嬉しいですね。たとえば、ストリートダンスと和太鼓とか、ストリートダンスとクラシックで300人のオーケストラとダンサーが競演とか。

もし、実現できれば、静岡のダンスシーンも次のステップに進めるかなと思います。

TDM

財団の関係者の方の中で、ストリートダンスにここまでの理解と期待を示してくださる藤井さんの方のような存在があるのは、我々としては嬉しいです。

宮田

我々だけでは力不足な部分もあるので、藤井さんのような公的な立場の人にわかっていただけるのはありがたいですね。

藤井

おとみちも今年で6年目を迎えられるのは皆さんのおかげなのですが、まだまだやりたいことがあって試行錯誤しながらも、次のステップへと進めている段階ですので、頑張ります。

もっと“地元愛”を。 


TDM

では、TDM読者やおとみちに参加してくれているダンサーたちにメッセージがあればお願いします。

藤井

そうですね・・・逆説的に聞こえるかもしれませんが、おとみちは最終目的ではないということ、たとえば、ここで1000人の前で踊ったという自信を持って、次のステップに進んでほしいです。静岡県全体のダンスのレベルアップにつながっていけば我々の本望ですね。あとは、それを多くの方々に見ていただきたいですね。

宮田

地域の人たちが自分育った地域に自信を持って、世界一になっても地元でやっていくっていう気持ちでいれば変わってくるのかなと思います。今日の予選でも、世界に見せても十分通用するレベルの子たちがいました。地元愛を持ってやっていってほしいですね。

TSUYOSHI

おとみち2009正直、僕はダンスしかやってこなかった人間で、ダンスシーンや静岡が盛り上がればいいとか、そこまで大きく考えることができないんですが、ダンスの指導をしているときや、自分に子供が生まれたことで、教育するときにダンスで学んだことがすごく役に立ちます。

人がダンスを選んでくれて、ダンスをやることで身に付けられる表現を自分の表現として、ライフスタイルとして受け入れて、 “自分はここに自信がある!”ということを見つけてもらえたら嬉しいですね。その先の道はダンスに進んでも進まなくてもいい。その瞬間は一緒に過ごして、また離れてもまた巡り合うときが楽しみです。

特にブレイキンのダンスバトルで学んだことは多くて、子供を叱るときに一方的ではなく、自分もやらないと相手は納得しない。結局、言うことに対して自分が子供とバトルをする。それが自分は大切だなと思って、それができると、バトルと同じで怒る必要がなくなるんです。バトルをやっていればお互いがわかるから。そこを通過点として、人生を進んでいってくれたらいいですね。

宮田

そういう通過点を通って「昔ダンスをやってたから、応援するよ」っていう人が増えたら、現状はきっと変わるだろうね。

藤井

おとみち2009グランシップではおとみち以外にもイベントやコンサート、芝居や伝統芸能をやっていますが、共通しているのはすべてライブで見てほしいんです。ダンスなんて特にライブで観てほしい。熱気や興奮をぜひ生で観ていただきたいですね。

TDM

今回のインタビューによって、ダンスの現状をリアルに感じた部分と、「でも、やっぱりダンスはいい」と思えた部分を、改めて心に刻みたいと思います。今日はありがとうございました!
'09/08/05 UPDATE
interview & photo by AKIKO & imu
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2009.08.15 (Sat) 〜16 (Sun) 「おとみち2009」

静岡・グランシップでダンスの夏祭り。世界と踊ろう!!


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