TDM - トウキョウダンスマガジン

Meg 〜 Start from $8. 〜
Meg 〜 Start from $8. 〜
2005年、第一線を駆け抜けていたダンサー・Megが、突如ニューヨークへ飛び立った。人気絶頂のままの渡米に周囲は驚きと期待を持って見送った。そして、2009年夏、ビッグネーム・ショーン・ポールのPVで踊る彼女の姿が全世界に流れた。夢に挑むこと、それゆえの逆境に立ち向かい、勝ち得たのは自分を信じる気持ち。「また明日からも頑張っちゃおう!」あっけらかんとMegは笑った。一時帰国を果たした彼女が聞かせてくれたすがすがしいインタビュー。

Meg 〜 Start from $8. 〜Meg

1997年にMIHO BROWNと共にガールズヒップホップグループBrown Sugarを結成。 ダンス・ファッション、全てにおいて、当時の日本に新しいブラック独特のノリを全面に出した、日本人離れしたヒップホップスタイルで、絶大な人気を得た伝説のガールズヒップホップグチームになる。

2000年を最後に活動休止。その後、ヒップホップを中心としたアーティストなどのPVやバックダンサー、また来日海外アーティスト(JAY-Z、 Britney Spearz、UNK、NICE&SMOOTH、N.O.R.E、NIVEA)などのオープニングアクトや共演、NeptunesのPharrell、Louis Vuittonなどのセレブなパーティにも出演。またLUIREなどの雑誌モデル、ファッションショー、CM、ファッション広告でも精力的に活躍する。

2005年、単身N.Yへ移住。50CENT feat. Mobb Deep“Outta Control”のPV、Def Jam 期待のアーティストSterling SimmesのPV“Nasty Girl”のメインダンサーとして出演。最近ではコレオグラファーのTanisha Sccot 依頼でSean Paulの新曲“Press It Up”PVにダンサーとして出演のほか、アルバムリリースパーティーでもダンサーとして出演する。また、2009年ソウルトレインアワードにもダンサーとして出演。さらに、モデルとして“Black Men's Magazine”にアジア人初出演するなど現在もN.Yにて活動中。

渡米のきっかけはぶっちゃけ… 

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渡米してからどれくらい経つっけ?

Meg

2005年の5月なので、4年前になるかな。

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どんなきっかけだったの?

Meg

Start from $8.ぶっちゃけると、当時付き合っていた彼がニューヨークに住んでいる日本人だったんだよね。当時は遠距離恋愛をしていて、どちらかが相手の場所に行こうという話になり、「じゃあ、私が行くよ。」ってことで行ったのがそもそものきっかけかな。

もちろん、向こうでいろいろチャレンジしたい気持ちもあったよ。それまで日本で10数年間ダンス業界で踊ってきて、ある程度やりたいことはできたと思っていて、次のステップが見えなかった。いつものクラブ、いつものメンバー・・・いいんだけど、それが続くと、人間は無いものねだりで、刺激を求めて、もっと自分で何か違うことをしたかったんだよね。環境や自分を変えることが好きだから、そういう想いがあって、行っちゃおう!と思ったの。

自分が女だからっていうのも理由にあるかもね。男性はだんだん家庭や社会のことを考えるようになるけど、女性の方がそういう夢に向かう勢いを持ちやすい気がする。

“残高8ドル”からの本当のスタート。


Meg

そんな彼とも結局別れちゃいました。でも、彼のおかげで、ニューヨーク行ってすぐにいろいろ仕事をやらせてもらえたので感謝してます。

たぶん周りは私の力ではなく、彼の力でいろいろやってるように映ってたと思う。実際そうだったし。だから、彼と別れてから、ある意味、初めてニューヨークでの自分の生活が始まった。

ニューヨークに来てすぐは、彼の家に住んで、バイトもしまくってたわけじゃなかったけど、別れてから、家も出て、バイトもして、残高8ドルまでいったからね (笑) 。あの「やばい!どうしよう!」ってところから自分が始まった気がする。

とりあえず、過去の自分の名前がクレジットされている経歴をかき集めて、自分が掲載されたインタビューを英語に訳して、ラッキーなことに弁護士に頼んでアーティストビザを取れたから、今はあと3年間は向こうで活動できるようになってる。活動期間は人によるみたいで、2年間の人もいるみたいだよ。

アーティストビザの手続きを終えてすぐ、ニューヨークに帰らず日本でのんびり過ごしちゃって、MIHO BROWNとのショウで日本全国回って「ヤッホーぅ!!」ってなってた (笑) 。それで、「そろそろ帰らないとまずいかな」ってことで、結局ビザを取ってから半年以上経ってからニューヨークに戻ったんだけど、1年以上エージェントとかも入ってなかったから、全然オーディションや仕事の情報がわからなかった。だから、当時ニューヨークでの生活は、レッスン受けたり、週末にクラブみたいなカジノのゴーゴーダンサーでお給料もらう感じ。

そして、ついに今年の夏に嬉しい仕事ができた。ショーン・ポールの“Press it up”のビデオクリップ!

自分の力で取れた仕事の嬉しさ。


Meg

Start from $8.その振付師のタニーシャ・スコットとは、昔、他のオーディションで会ったことがあって、そのときはベスト6まで残ったんだけど、私が学生ビザだったから落ちちゃった。

それからラプソディーのカンパニーのショーに行ったときに、ロスにいるはずのタニーシャと繋がっている知り合いと偶然会って、「そういえば、タニーシャが“あの時のジャパニーズは元気かしら”ってすごく探してたよ。」って言われた。やっとビザが取れたこととか説明したら、「じゃ、本人に伝えておくよ」って言われて、それからしばらく経って、本当にタニーシャから連絡が来たの!

そのときはタニーシャから「ショウをお願いしたい」って言われたんだけど、進めていったらショーン・ポールのビデオクリップだった。アーティスト名として大きい人と、ダンサーとして仕事ができて、リリースパーティーでも踊らせてもらえてすごく嬉しかった!

Start from $8.その流れで、紹介でエージェントのBlocに入れてもらったのはすごくラッキーだった。そうすると自動的にオーディション情報が回ってくるから、レッスンを受けてはオーディションを受ける日々になっていったよ。そのおかげで、今回日本に帰ってくる直前にソウルトレインアワードでも踊ってきたからね。

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今回の帰国した目的は?

Meg

今回は家族のための帰国。だから、ワークショップやショウタイムの予定を入れてないんだよね。自分的にダンスをやるための帰国の時はもう少し自分のフリースタイルを固めたからやりたいなって思ってて。今は、あっちでいろいろなジャンルのダンスをしてるから、まだまだ模索中、本当に日々勉強っていう感じ。英語もバイト先は日本人はほとんどいないから、とても勉強になるよ。

そういった意味で本当にショーン・ポールのビデオクリップの仕事は嬉しさの種類が違った。自分で取れた!っていう自信につながった。

鳥肌モノの嬉しさ・・・“踊り続けろってことかな。” 


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ショーン・ポールとの仕事での何かエピソードってある?

Meg

Start from $8.ショーン・ポール本人がすごくお茶目な人。最初の出会いが、ジャンピングシューズみたいなバネの付いた靴で現れて、ダンサーたちを笑わせてくれたよ。

あとは、振り付けのタニーシャ・スコットが思いつきの人だから、振りができたのが、撮影が「始まります!」って言われるギリギリ前。勘弁してくれよ〜って思ったね (笑) 。

ギャラリーもいっぱいで緊張したし、本人も監督椅子に座って見てるから、見られてないのに「私、見られてるよ〜!」って思ったり (笑) 。面白かったなぁ。

Start from $8.あと、リリースパーティーのショウ本番前に皆で円になって、右足を出して肩組んで、「リハーサルやレコーディングで皆とけんかしたりしたけど、全てはこの本番のために真剣に取り組んできたから楽しもう。」それを言われたときはもう、鳥肌モノで、「うわ!自分もこのメンバーに入ってるー!」って思った。



私自身もアメリカにはこういう仕事をするために来たからね。ニューヨークは日本ほどダンスイベントもなくて、披露する場がないんだよね。CARNIVALは年に2回だし、それまでに私がニューヨークに来て人前で踊ったのはスーツ着て踊ったポッピンのショーだけ (笑) 。

だから、あの嬉しさのために、また次の日からもやりたくもないバイトも頑張れるし、その活力になる。「また明日からも頑張っちゃおう!」って思えた。

結構落ち込んでるときに限って、そういう話が来たりするもんだから、踊り続けろってことかなって思うよね。

年齢や国籍も関係なく、友達や恋人、ダンスに関しても枠組みが無くなった。


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ニューヨークのダンスシーンはどんな感じ?エンターテイメント的にはやっぱりロスの方が勢いはあるのかな?

Meg

私もニューヨーク来て何もできなかったときは、「ここにいる意味は何だろう・・・」って考えちゃって、ロスに行ったほうがいいのかなって焦ったりもしたけど、実際ニューヨークでもできることはいっぱいある。たとえばニューヨークでオーディションに受かればロスでの仕事もできるわけだし、そこはつながっていくと思う。

正直、私は“たまたま来ちゃったニューヨーク”って感じだから、別にニューヨークにこだわってるわけではないんだけどね (笑) 。でも、今はニューヨークにたいして好きな部分も嫌な部分もあるかな。

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どんな部分?

Meg

Start from $8.人間がストレート。知らない人でも会えば褒めあったりする感覚が気持ちいい。嫌な部分は全部じゃないけれど、ゲットーな所というか、バスに並んでても順番を守らないとかね。それに対して全部日本で生まれ育った当たり前の自分の感覚で見ちゃうと、全てがストレスになって、自分が辛くなってしまう。だから、「私はこうだけど、あの人はこういうタイプなんだな。」って、枠が取れて考えられるようになったよ。

そうすると他人に対する自分の感覚の枠も取れて、いろんな友達の層も増えた。「これじゃなきゃダメ!」っていう考えがなくなったから、年齢や国籍も関係なく、友達や恋人、ダンスに関しても枠組みが無くなったんだよね。

それまで、どこかアメリカ人って別の生き物のように思ってたけど、言語が違うだけで、現地では人が普通に生活してるんだよね。日本にいるときはスパニッシュの文化ってあまり触れないけど、あっちではスペイン語圏が多くて、よくスパニッシュと間違われて「Hola!」って話しかけられる。私もそのまま「Hola!」って返すけどね (笑) 。いろんな人がいて、そういうやり取りが楽しいな。

逆に日本に帰って電車に乗ると、失礼な表現かもしれないけど、人のフレーバーがつまんない。ニューヨークはいろんな種類がある。人もダンスも食べ物も。そこはすごくニューヨークの好きなところかな。


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今Megちゃんが受けてるレッスンはどういうものなの?

Meg

今はマージョリーとジャジー・Jかな。特に最近はロッキンをやってる。それが、この間ソウルトレインのオーディションにも活かせたと思うよ。

ヒップホップは気が向いたら受けてるよ。あとは、バレエ受けたり、友達とニューヨークスポーツクラブ (NYSC) っていうジムで練習。たぶん、現地のダンサーたちや、ニューヨークに来る歴代日本ダンサーも、そこの会員になって夜中もガンガン練習してるよ。日本みたいに外で練習できないからさ。

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マージョリーは自分も好きなダンサーの一人だよ。

Meg

ホント!?彼女のレッスンはミリタリーだよね!汗でTシャツが絞れるくらいになる。でも、そのしごかれる感がまた気持ちいいんだよね〜。

彼女は人的にもすごく好きで、カルチャーを背負って踊っているというか、リアルな人だなって思う。上手いだけじゃなくて、彼女の髪型からファッション全てに意味がある。そういう意味では自分も日本人であることを忘れてはいけないなって思った。日本を出てから、日本の良さが改めてわかったよ。

人の立場がわかるようになった。 


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日本のダンスシーンはどう映ってる?

Meg

う〜ん、、、全部の人、チームがそうではないし、こう言うと生意気に聞こえるかもしれないけど、正直、学芸会にしか見えなくなってきたかなぁと。

自分が今アメリカにいるからこそ特に感じるのは、リリックを全部わかっているかどうか。

日本は音やお約束のところだけにしか対応するしかない。リリックにはめていないショウタイムはもったいないなって思う。そのあたりの見方は私も変わったところかな。歌詞を無視して、自分の中で気持ちよく踊って終わるのは自己満に見えちゃう。だから、あっちではダンスだけじゃなくて言葉も勉強してるよ。

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なるほど。渡米したことは本当にMegちゃんのプラスになってるんだね。

Meg

うん。私は実家も出たことがなかったから、本当にゼロから始まったんだけど、人の立場がわかるようになったというか、友達には器が大きくなったねって言われる。本当に何も考えずに突っ走ってきちゃったなって思うよ (笑) 。

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Megちゃんの今の生活ってどんな感じ?

Meg

やっと一人暮らしにも慣れて、独り言も増えた (笑) 。怠けるときは思いっきり怠けるし、なんせ残高8ドルスタートだったから、テレビもない部屋でラジオを聞くか瞑想するしかなかった (笑) 。

朝は起きるようにしてます!と言っても、一度も朝のヨガに行けたことはないけど (笑) 。無理なく11〜12時くらいに起きて、まずはラジオをつけて、ご飯を食べて、毎週水・木は洗濯の日。レッスンを1〜2つ受けて、最近はジャイロ(Gyro) にはまってて、やることはストレッチとか、身体のどこを使っているのかがすごくわかって、バレエダンサーもやるとすごく違うみたい。それをやると怪我もしにくくなるし、いずれ私もその資格を取りたいなって思ってる。そういうレッスンを受ける以外には、バイトの生活かな。ニューヨークにいて、まだ自由の女神を見たことがない。よく「腰重たすぎでしょ!」って言われる (笑) 。そんなに出没するエリアは広くなくて、ブルックリンとかも行かないし、クィーンズに住んでて、マンハッタンに行くくらいかな。

ジャイロキネシス(GYROKINESIS)、ジャイロトニック(GYROTONIC):
Gyro〜は英語で『輪・円運動、らせん、スパイラル』の意。ヨガ・気功・水泳バレエなどの様々な運動をベースにした円周形・螺旋形の動きから成り立ち、体幹にある背骨を反る、丸める、ねじるといった動きを円やらせんを描くように行いながら、呼吸と組み合わせ、正しい骨格姿勢でインナーマッスルや関節に負担をかけずに調整する。


1980年代にバレエ・ダンサーであったジュリオ・ホバス氏が、NYで 怪我・故障の克服、身体能力の向上のために“ダンサーのためのヨガ”として考案。ジェイロキネシスはマットや椅子を使ったフロアーエクササイズ。ジャイロトニックは、プーリータワーという木製のマシーンを使って行う、全身のトータルワークアウト。


ニューヨークに来た意味。


Meg

Start from $8.日本人の方がダンサーとしてはすごいんじゃないかなって思うよ。まだチャンスは来ていないだけで、日本でもあっちで通用するレベルの上手い人たちはいっぱいいる。

アメリカ人はパワーがあるけど、雑な感じがするんだよね。日本人は踊りが丁寧だし、明確だから、すごく好き。だから、どんどん出て行ってほしいと思うよ。

私も遅かれ、ニューヨークに行ってから、ダンスの意識以外にも、それまでになかった人付き合いができるようになって、いろいろな意味で本当に行って良かったなって思うから。

落ち込んだときや煮詰まったとき、アッシャーのライブ映像を大切にしているんだけど、それを見ると初心に返れる。最初に“Caught Up”で始まるんだけど、それを見た瞬間にテンションが上がるんだよね。あのダンサーたちのスタイルが全てが自分の中でのヒット。ヒップホップの難しくなさそうなんだけど、でも、大きくてカッコいい動き・・・あれを見ると、ニューヨークに来た意味を考えさせられる。「あ、やんなきゃ」ってまた頑張る活力になる。

だから、いつかはミッシー・エリオット、アッシャー、シアラとか、今ならクリス・ブラウンとか?そういうヒップホップの強いアーティストの仕事をしてみたいな。

実は、英語がしゃべれたら女優さんになりたいって思ってたので、そういう意味でビデオクリップはしゃべらないけどストーリーを作っていく過程で好きだから、ライブツアーを回るというよりかはビデオクリップに参加していきたい。

来年はロサンゼルスに行って、いろいろオーディションを受けてみようかなって思ってるよ。やっぱり撮影が多い分、チャンスは多いと思うから。

あとは、ニューヨークで細々と服の買い付けをやってるので、そっちも成功させていきたいな。ぜひ興味があれば『BRANCH into N.Y.C(ブランチ イントゥー ニューヨーク)』のWEBサイトをチェックしてね!

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これからも活躍を期待してます!今日はありがとうございました!
'09/12/09 UPDATE
interview & photo by AKIKO


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