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TDM Special Interview Louie Vega  
TDM Special Interview Louie Vega
あらゆる音楽に命を吹き込み、その世界観に一瞬にして彩られてしまう。その空間が一体となり、エネルギーに満たされる。ダンスミュージックの華麗なメロディラインや心地良いトラック、そしてわずかな隙間に見せる音色がソウルフルでダンサブル。 Louie Vegaの産み出す音楽には幸せを感じずにはいられない。そんな彼への単独インタビューに成功。取材数日前にvelfarreで行われた「MASTERS AT WORK」でのプレイやダンサーに対しての想いなどを聞かせてくれた。
"Little" Louie Vega Louie Vega

世界の音楽業界全体から最も大きな注目を集めている プロデューサーチーム、MASTERS AT WORK(以下MAW)のメンバー。伝説のクラブSound Factory Barで行われた「Underground Network Party」のレジデントDJを務め、日本のハウスダンスの先駆者たちはこのパーティーに多大な影響を受けた。その他、ニューヨークハウスチーム・DANCE FUSIONが彼のアニバーサリーイベント「Dance Ritual」のためにショウケースをいったのも有名な話。2006年度のグラミー賞においては、ベスト・リミキサーに輝いた。


2006.12.10 MASTERS AT WORK Supported by nixon Produced by Primitive Inc. LIGHTING : AIBA

TDM:
昨夜のパーティーでターンテーブル7台によるセッションを行いましたが、どうでしたか?


Louie Vega(以下V):
ああいうセッションはブロックパーティの頃から何年もやってきていることで、Kenny Dope (ケニードープ) とチームを組むようになってから、更に進化させて4つのCDJと3つのCDJを使うことにより更にクリエイティブが活かされるようにしたんだ。そしてルーティンではなく自然発生的にプレイすることができる。実際僕とケニーはお互いの仕事の都合で1ヶ月間全く会うことも話すこともなかったんだけど昨日のようなセッションができたんだ。

このセッションをやろうと思いついたのは1993年くらいだからちょうどMAWをやり始めた頃かな。その頃はターンテーブルだけど今はCDJを使ってのセッションだね。でも最近では更に進化させてDVDJを使ったセッションを考えているよ。Anane (アナネ) 、Mr.V (ミスターV) 、India (インディア) や、MAWでの『Elements Of Life』や『Nuyorican Soul』※といったプロジェクトなどでも誰もやっていないような映像をセッションで使おうとしている。今度来る時のセッションはもっと進化していると思うよ。

※Nuyorican Soul (ニューヨリカン・ソウル) …ルイとケニーによるMAWとは別名義の音楽プロジェクト。ニューヨークで育ったプエルトリカンは、ふたつの文化をあわせ持つ人種であり、これに誇りを持って、自らを「ニューヨリカン」と呼ぶ。そのルーツとなるジャズ、ヒップホップ、ラテン、サルサ、ハウスを融合させた近代的なサウンドを産み出している。

TDM:
ダンスミュージックパーティー「Dance Ritualj」のアニバーサリーの時にNYのハウスチームDANCE FUSIONがパフォーマンスをしたと聞きましたが、ルイにとってのダンサーの存在とはどういうものですか?


V :
彼らは僕が一緒に仕事をした人たちの中でも最も素晴らしい人たちだと本当に思ってるよ。Sound Factory Bar※からの付き合いだし、彼らは僕が音楽に対して持っている情熱と同じような情熱を持っているし、クラブにも毎週来て音楽を感じに来るところを見るとすごく音楽を理解しているなあとも思うね。他にも何チームかあるけどDANCE FUSIONとの付き合いが一番長いしセントラルパークでNuyorican Soulのショーをやったけど、そこでオープニングアクトをやってもらったんだ。本当素晴らしかったね。だからものすごく尊敬しているんだ。

※Sound Factory Bar…NYにあった伝説のハウスのクラブ。(NAO氏インタビュー参照)。

TDM:
ルイが思う"ダンサーが楽しめる"NYのクラブシーンを教えてください。


V :
CIEROはダンスフロアーはそんなに大きくないけど、ベビーパウダーを持ってきて踊るダンサーは結構いるね。僕自身も毎週水曜日にBLAZE ※のKevin Hedge (ケビン・ヘッジ) と一緒に「Roots」ってイベントで回しているんだけど、そこには色々な人が来るんだ。ダンサー、ブレイカー、ヨーロッパの人たち、地元の人たち、様々な人がね。CIELOではFRANCOIS K.※の「DEEP SPACE」もやっているし、SHELTERもダウンタウンの新しいスペースでやっていたり、結構楽しめるところはあるよ。ただし、昔のVYNL (バイナル) みたいに大きなスペースではあまりやってないなあ。

そういえばCrazy Legs (クレイジーレッグス) もよく僕のパーティーには来てくれるね。ちなみに年明けにはNYのLOFTでRock Steady Crewと初めてパーティーをやるんだ。かなり楽しみだね。

※BLAZE…Josh Milan (ジョシュ・ミラン) とケビンからなるデュオ。1980年代からクラブシーンで活躍し続けている。
※FRANCOIS K(フランソワK)…前述のジョー・クラウゼルらと共に「Body & Soul」のレジデントを務めるハウスクラブシーンを代表するDJ。

TDM:
普段はどんな曲をよく聞くのですか?


V :
家では奥さんがワールドミュージックが好きで、よく聞くね。僕自身はジャズ、ヒップホップ、アブストラクトなんかをよく聞くよ。息子はロックとかヒップホップをよく聞いているね。 音楽は僕の人生の中で大きな部分を占めているよ。毎日24時間聞いているよ。寝てる時もね(笑)。

TDM:
どんな曲に刺激を受けますか?


V:
そうだね、今まで僕が集めた2万枚近くのレコードコレクションから一番刺激を受けるなあ。僕の集めたレコードのアーティストやプロデューサーからは色々なことを学べるし、刺激を受けることができる。あとライブに行ったり、イベントに行ったりすることに、より刺激を受けたりもできるし、車を運転しながら音楽を聞くことによっても、刺激を受けたりするね。

TDM:
今回の新しいアルバム『Mix The Vibe』についてお聞かせください。


V:
レーベルのKING STREET SOUNDSとは付き合いが長いし、僕が今まで関わったKING STREET SOUNDSの曲の集大成みたいな感じだね。そういうこともあって、もともと1枚にまとめる予定だったんだけど2枚になったんだ。あとはライブの感じをそのままCDにすることを意識したよ。たまたま仕事でスペインのイビザ島にいて、カフェマンボウっていうビーチにあるカフェでレコーディングしたんだけど、そこにミスターVやアナネやケニーも呼んで、即興のライブの感じでレコーディングしたんだ。今までにないライブのフィーリングをそのままにレコーディングできたから僕もすごくエンジョイしながらできたね。

TDM:
これからはどんなことに興味がありますか?


V:
“ムービーサウンドトラック”みたいのをやっていきたいね。やっぱりビジュアルを用いた表現をもっとしていきたいと思う。色々な音楽を結びつけることはもう十分やったからこれからは音楽とビジュアルを結びつける試みをもっとしていきたいね。感じて聴くという感覚から、感じて観るという感覚に持っていきたいね。
「ダンサーは何よりも音楽に対して自分たちと同じように感じ表現している」と、ダンスに対する熱い想いを語ってくれたLouie Vega。お音楽自体がとてもナチュラルな形で彼のライフスタイルに入っていて、話している空気も心地良い。彼のプロジェクトであるElements Of Lifeでは、様々な音楽スタイル、カルチャー、アイディアの融合によって新しいカルチャーを築いているが、その光景もリアルに伝わってくる。様々な人間同士のリアルなセッションが、彼の音楽を素晴らしい作品に仕上げていくのだろう。ダンスも同じことだと思う。彼の次の展望には映像とのコラボレーションが課題だそうだ。ダンサーがフューチャーされる日も遠くはないのではないだろうか。
Interview by AKIKO(TDM Staff) & ART
Photo by Iwao Otake
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「Mix the Vibe」  / Louie Vega For the Love of King Street
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Mix the Vibe
/ Louie Vega For the Love of King Street


■発売日 : 2006/11/03
■レーベル : King Street
■品番 : KCD249

Tony Humphries、Joe Claussell、Danny Krivit、David Morales、Shinichi Osawa、Doc Martinといった人気DJが手がけてきたKing Street SoundsのMix CDシリーズ"Mix the Vibe"にLouie Vegaが登場。
今年で13周年を迎えたKing Street Soundsの誇る人気シリーズ"Mix The Vibe"に登場したNYの誇る唯一無二の才能、Louie Vegaによる、多くの才能を抱え共存し続けるNYのダンスミュージックとクラブ・カルチャーを象徴する、雄大な愛の詰まった特別な意味を持つ清純な2枚のCDである。



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